本来であればそれは悪手だ。
魔物を喰いその都度回復しながら成長する戦鬼、無限に魔物が沸くモンスターハウス。
無限に成長し続ける戦鬼はどんどん手がつけられなくなっていくからだ。
しかし、考え方によってはそこに籠ると言うのは…戦鬼を倒せると言う前提条件の上ならば悪い話ではない。
強くなればなるほど倒した際のレベルアップは大きくなるのだから。
しかし現状は、ダメージも既に殆ど与えられないくらい強化された戦鬼が相手なのだ、
こいつにいつまで籠城が持つのかは分からない。
既に食べた魔物のスキルを獲得し、使い始めている戦鬼がメールの結界を破壊出来るようになるまでそれほど時間は無いのだ。
きっと普通の冒険者であればそう考えるだろう。
「お願い、タツヤ…私のヒーロー」
フーカの柔らかい唇の感触にゴンザレス太郎は目を覚ます。
既にメールの結界は戦鬼の攻撃で半分程が瞬時に破壊され、直ぐにメールが修復する不利ないたちごっこが続いていた。
籠城し始めた事で死んでいる食料となる魔物が近くに居ないため、戦鬼は彼等を標的にしてきているのだ!
モンスターハウスから産み出された魔物は直ぐに戦鬼の力を察知し、逃げるように離れているのだ。
「ジルさん!」
飛び起きたゴンザレス太郎はジルに今の位置から横穴を掘り、別の場所に出口を作るように頼む。
そして、直ぐに開けられた横穴を使い、そこからモンスターハウス内の戦鬼から逃げている魔物を次々に魔法で撃ち抜いていく!
「ランススパーク!」
「アイスクラッシュ!」
ジルは雷系、フーカは氷系の魔法で次々と魔物を倒していった。
ジルはともかくフーカは攻撃魔法を覚えたばかりで精度はそれほど高くない、だが二人ともゴンザレス太郎の指示で神力を多目に消費するが、着弾後広範囲に被害を広げる系統の魔法を使用しているので次々と魔物を撃破していく…
倒した魔物は既に体長4メートル程に成長した戦鬼が腕を伸ばし直ぐに捕獲して口に運び喰らう。
まず異変に気付いたのは魔法を使い慣れてたジルであった。
「神力が減ってない?!」
神力の消費の激しい広範囲魔法を連続して放っていれば、貯めている神力の残量はいくら魔物を倒して増やしても足し引きマイナスで残量は減少していく。
攻撃魔法での攻撃をメインに扱うジルだからこそ、その残量には常に気を配っているのが普通なのだ。
なのに魔法を幾ら使用しても神力の残量は減らず倒した魔物の分だけ増えていっていた!?
これがゴンザレス太郎の打ち込んだコードの一つ『弾無限』の効果であった!
これは飛び道具に限らず、遠距離を攻撃できて何かが減少するものの減少を無かったことにするチートコードであった。
弓矢なら矢が、水鉄砲なら水が、そして…
「これならいけるかも!」
ジルが戦鬼のダメージを神力の消費を考えてなければいけそうと考えていた。
丁度同じように頃にフーカも異変に気付いた。
だがフーカの場合はジルとは違い直に確認ができるのだ!
「戦鬼のHPが減ってきてる!?」
それは反撃の兆しであった。