「一体どうしたものか…」
町のギルドの一番奥に在るギルドマスターの私室にてギルドマスターのタトナスは頭を悩ませていた。
先程デニムから報告があり、Sランク冒険者志望の者が誤って封印の洞窟の封印の祭壇を破壊したと聞いたのだ。
「なんでワシがギルマスの時にこんな変な事件ばかり起こるのじゃ!」
机に向かって一人怒りを露にするタトナス、それも仕方がないだろう…
何せこの少しの間に、河川敷の謎の大爆発、聖女様の出現、SSSランクの魔物達の襲撃…
そして、今回の封印の祭壇破壊事故。
どれも数百年に一度有れば歴史に残る大事件ばかりである。
最も全てゴンザレス太郎が関わっているのだが、知らないギルドマスターのタトナスは頭を抱える事しか出来なかった。
ヤバイも本来ならAランク止まりで、フーカの過去を繰り返した歴史では一度もSランク試験は受けておらず、こんな事態にはなっていなかったから本当に御愁傷様としか言えない…
「せめてもの救いはまだ祭壇が壊れたことで何も起こっていないことか…」
タトナスは知らない、今現在ゴンザレス太郎達は戦鬼と戦い、魔海の向こうの魔物の町では鬼の集団による大襲撃が起こっていることを…
「このまま何事もなく自体は終息すれば良いのじゃが…」
そんな独り言がフラグと言わんばかりにギルドマスターの部屋のドアが開けられた!
「ギルドマスター大変です!」
「どうした?」
「空に…空に光の矢が…」
頭痛の種がまたやって来た…とタトナスは部下と共にギルドの外に出た。
その時には場は騒がしくなっていた。
空は夕日が沈み始めており暗くなってきている中、全員が空を眺めているのだ。
「何事だ?」
ギルドマスターの声にその場にいたデニムが「空に光の矢が飛んでいった」と話そうとした時にそれは起こった。
一本、二本、三本…
光の矢は更に次々と空に向かって飛んでいく。
そして、それを見上げる者の中には鑑定系のスキルを持つ者も勿論居て…
「な…なんだアレは…」
まさかそれが戦鬼と戦う冒険者達が協力して放ったレールガンとは思いもせず、人の手には決して負えない恐ろしい神の力と説明された。
それもその筈、Aランク冒険者の中でも破壊魔法で有名なゴウセルの使う『ギガントバースト』と言うユニークスキルは一撃で鉄の塊を粉砕する威力があると有名なのだが、空に飛ぶレールガンを鑑定した者によれば…
「アレは鉄なんて紙以下の存在としてそのまま貫通して飛んでいく威力がある」
と語られた。
空に放たれる無数の光の矢…
まさかそれが白金貨を電気の力で打ち出している省エネ散財砲だとは誰も気付かない…
町の人々は各々様々な憶測をたてるのだった…