異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第74話 プロアクションマジリプレイ進化する!

洞窟…ダンジョンと呼ばれるそれは生きている。

意思があるわけではなく、ただそこに存在し本能のみで生き続けている。

口を開け、獲物が入ってきたら体内に居る魔物と言う洞窟にとっての微生物が分解消化するために襲い掛かり、死んだ獲物から栄養を吸収する。

その生態はまるで食虫植物の様だ。

どんな生物であろうと体内に異物が入れば排出する。

それはどんな生物でも変わらない…

そう、どんな生物でも…

 

 

 

 

「た…倒したのか?」

 

マコトが恐る恐る戦鬼の死体に近付いて行く。

ゴンザレス太郎はモンスターハウスの魔物達が先程のレールガンの恐怖に近寄ってこないのを良い事に、全員を戦鬼の死体周りに集める。

さぁ、楽しい楽しい素材取りタイムだ!

 

「とりあえず鬼の素材って何処を取れば?」

「基本的に人形の魔物は、人には無い部分と攻撃に使用してくる部位が素材対象だな」

 

ゴンザレス太郎の疑問にマコトが答える。

しかし、全員戦鬼の腕を見て首を横に振る。

成長を続け、今では全長6メートルにも達する巨大生物だ。

腕一本でも町まで運べるかと聞かれたら無理だと答えるしかないし、切断するにしても道具がない。

それに白金貨レールガンであちこち穴だらけなのだ。

 

「っとなると角ね!」

 

フーカの言葉に全員が頷き戦鬼の角を取り始めた。

幸いなのは最後の一撃が脳を貫いたが角は無事だったことだろう。

しかも前のめりに倒れているので角が手の届く所に在ったのも助かった。

 

マコトが角の付け根をナイフで切りながら徐々に引き剥がす。

飛び散る血はメールが結界で防ぎ、ジルがその間の警護をする。

流石冒険者を続けただけあって手慣れたもので、直ぐに素材取りは終わった。

マコトの抱き抱えているその角、もう一本はゴンザレス太郎が持つ。

ここまでのレベルアップで身体能力はかなり強化されているのだが、それでもかなり重かったのかよろけるゴンザレス太郎を慌てて支えるフーカとサリア。

こうして一同は無事に戦鬼の素材を手に入れた。

不思議な事に魔物達はそれ以上出現せず、居た筈の魔物達もいつの間にかその姿を消していた。

洞窟はそのままゴンザレス太郎達が出ていくのを見送り、本当に脱出するまでなにもされなかった。

在る筈の罠すらも無かったのだ。

 

こうして慟哭の洞窟から出た一同は真っ暗になった外で夜営をする事にした。

洞窟にとって、彼等は不必要な消化出来ない異物として認識されたのであろうか、まるで出るのに協力するかのように魔物が出口以外の道に避けて道案内も兼ねてくれた様に見えた。

そのことに各々様々な意見を出したりして盛り上がる中、ゴンザレス太郎とジルは回復&スキル切り替えのため睡眠を取ることにした。

 

ゴンザレス太郎が眠る横で、フーカが死んだと思ったゴンザレス太郎の慌て方とか色々マコトの口から語られていたりするのだが、本人は寝ていたため気付かなかったのは幸いであろう。

フーカの妖艶な蕩け顔は、病みというか闇属性と誤解を受けるレベルだったからだ。

 

また、マコノも今回の件でサリアの事を認めて一人前の冒険者としてやっていけると太鼓判を押していた。

その事にフーカとメールは(遂にロリコンに目覚めたか)と内心思いつつ、サリアの想いが叶いそうなのに喜んだ。

 

そして、夜が明けて目を覚ましたジルとゴンザレス太郎。

戦鬼を倒した際に上がったレベルを振ってから出発しようと話し、二人がステータスを開いて驚きゴンザレス太郎が口にした…

 

「ユニークスキルにレベル999を振って進化出来るようになってる…」

 

そう、二人とも戦鬼との戦いでレベル上限の999まで上がりカンストしていたのだ。

通常であればレベルがここまで上がる前にステータスに振るのでカンストする事はまず無い。

新事実に驚く一同、だがそれも仕方在るまい…

サリアで実証されていたが、ユニークスキルにレベルを振って進化させられるまでレベルを他の物に振らずにためる人間が居なかった為に、ジルの『うつせみ』は進化させられるのを誰も知らなかったのだ。

流石にカンストまで上げないとスキルが成長しないなんて事実を確認する人は過去に居なかった為、成長しないユニークスキルもあると言う認識だったのだ。

そして、ゴンザレス太郎の方もユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』をまさか進化させられるとは夢にも思わなかったのだ。

 

ゴンザレス太郎は生唾を飲み込みながら、ユニークスキルを進化させるのであった。


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