ノックの後返事が返ってきた。
「入りたまえ」
低い声でギルドマスターの声がしてマコトを筆頭に部屋の中へ入っていく。
呼ばれたのはマコトのパーティーという事でサリアも一緒だ。
多分ギルドマスターはゴンザレス太郎とフーカが一緒だろうと考え門番に伝令を出していたのだが、一緒に入ってきたサリアの姿を見て驚く!
「せ、聖女様?!」
そのギルドマスターの声に反応して奥に居た2名が顔をこちらにやった。
デニムとヤバイだ。
「な、何故聖女様がマコト達と一緒に?」
「あぁ、彼女は聖女ではなく冒険者として生きていく事を決めたそうなんだ。」
マコト、相手はギルドマスターなのにため口である。
でもギルドマスターは特に気にした事もなく、もしかしたら二人の間には何かあるのかもしれない…と考えたフーカはデニムを見て驚く…
(えっ?あれっ?デニムさんってステータスこんなものだったかしら?)
既に6人のステータスは人類最強レベルにまで上がっているのでそう感じても仕方無いだろう。
高速道路を降りたら一般道を遅く感じてしまうあれと同じである。
恐るべしは経験値255倍である。
「それでお話というのは?」
「う、うむ、そうであった。まずはかけたまえ」
そう言われギルドマスター、デニム、ヤバイの3人が向かいに座り、こちらは6人が並んで座った。
このソファーみたいな長い椅子はギルドマスターが過去に倒したシールドタイガーを加工して作った物で、実は盾極のデニムが愛用する盾もこのシールドタイガーの素材から出来ているのは余談である。
『余談だよ』は反対から読んでも『余談だよ』というくらいどうでもいい余談である。
とりあえず話し合いの邪魔になると思い、マコトとゴンザレス太郎は目の前の机の上に大きな角を置いて話を聞く姿勢をとる。
話しても大丈夫と判断したギルドマスターは話し始めた。
「お前達もお伽噺で『戦鬼』と言う名前は聞いたことあるな?実はな、あの話は真実で戦鬼は実在する怪物なのじゃ!」
まさかの戦鬼の話に一同は机の上の角を見る…
「そしてここからが本題なのじゃが、その戦鬼を封じていた封印が解かれてしまったのじゃ!」
一同はもしかしたら戦鬼が他にも居るのかと考えた。
「この国の何処かの洞窟の、人がまず入り込めない場所に封じられていると伝承には残されている…」
この国の…洞窟で…人がまず入り込めない場所…
「そいつは他の魔物を喰らって成長し、昔の冒険者達が封じれた状態よりも更に強くなっているじゃろう。きっと近い内に地上に出てくる、そこでこの町以外のギルドへも要請して対戦鬼用レギオン『勇者の集い』を結成することとなった。そこでマジメの3人とフーカさん、そしてゴンザレス太郎君にはその類いまれなる力をどうか貸してほしい」
そこまで言ってギルドマスターのタトナスは頭を下げた。
本来ギルドマスターが冒険者に頭を下げて頼み事をするなどあり得ないのである。
だがその行動が現状が本当に危機で人類の存続が掛かっていると言うことを証明していた。
それを見たヤバイは我慢しきれず口を開いた。
「すまない!本当にすまない!俺なんだ、俺が封印の祭壇を壊してしまったんだ!」
自身がSランク冒険者に成れると言うことで、浮かれていた時にやってしまった事で人類全体を存続の危機に落としてしまった。
その事に対してヤバイは心から後悔していた。
「俺もすまなかった、俺が同行して助けられていれば…」
ついにデニムまで頭を下げ始めた。
そんな町のトップ3が頭を下げている光景を見て固まる一同…
そして、ギルドマスターが頭を上げそれに合わせて二人も頭を上げた。
「多分、数日は大丈夫だと思う。もし直ぐに決められなかったら後日でも良いから考えてくれ」
「はっはぁ…」
マコトなんとも曖昧な返事を返す。
そこでようやくヤバイがそれに触れた。
「ところでこれは何の角だ?ユニコーン熊にしてはでかすぎるし…」
「あっそれ戦鬼の角です。」
「そうか…戦鬼の…えっ?」
ギルドマスターも何かの聞き間違いかと首を捻り耳を掻いて今度はギルドマスターが聞く。
「これなんの角だって?」
「戦鬼の角と言った」
ギルドマスターの口は閉じずに開いたままで鼻水が垂れる。
まるでギャグ漫画みたいなその光景にサリアが笑いそうになるのを堪えているのだった。