姿が見えなくなったゴンザレス太郎、風の音だけが耳に聞こえたその時!
「そこだ!」
タイガのパンチが何もない空間を突く!
確かな肉の手応えに口元がニヤけるタイガ、そのパンチを両腕をクロスして受け止めたゴンザレス太郎が姿を現す。
「参った。俺の敗けだ」
周りの一同は意味が全然分からなかった。
消えたと思ったゴンザレス太郎に、なんの躊躇もなく正拳突きを当てたタイガ!
しかし、何故かタイガは自ら敗けを宣言したのだからそれも仕方あるまい。
「どうやって見抜いたんですか?」
ゴンザレス太郎の発動した新しいコードは『姿を消す』であった。
その名の通り自身の体を透明にして完全に見えなくする。
これは周囲には影響はなく、あくまでゴンザレス太郎一人にしか効果は無かった。
だがそれを容易く見抜いたタイガの方法に興味があり、尋ねたのだ。
「そこの嬢ちゃん、スキミング持ちだろ?」
その言葉でゴンザレス太郎も理解した。
タイガと共に来た女の子『ミシア』とフーカはどちらもユニークスキル『スキミング』持ちである。
なのでこの二人には姿は見えなくなっていてもゴンザレス太郎の居る位置に名前とステータスが表示されている。
姿を消したゴンザレス太郎が超スピードで見えなくしたのか、それとも瞬間移動で何処かへ行ったのか、そう考えたタイガはまずミシアの目を見た。
案の定全員がキョロキョロしている中、ミシアはゴンザレス太郎の居る方向を見ていたのだ。
そして、もう一人のスキミング持ちであるフーカも同じくして一方向を見つめていた。
後は二人の視線の交わる点にゴンザレス太郎が居ると言うわけである。
口で言うのは簡単だがあの一瞬でそこまで考え行動したのは流石Sランク冒険者と言えるだろう。
「それでそっちはいつだ?」
「消えたのと同時ですよ」
「マジか…全然気付かなかったよ」
タイガが聞いたのはゴンザレス太郎がいつやったのかである。
消えたゴンザレス太郎の位置を捕捉したタイガはその辺りに広範囲のスキルで攻撃を繰り出そうとした。
だがスキルが使えなかったので正拳突きで攻撃をしたのだ。
そう、ゴンザレス太郎がもう一つ発動させていたのは『スキル一切使えなくなる』である。
これが全スキルを使用できなくする効果であれば位置を捕捉されることもなかったのだが、この効果は常時発動タイプのスキルと既に発動しているスキルには適用されなかったのである。
「おまけに俺の一撃を正面から受け止めてピンピンしてるもんな、勝てないとは言わないが分が悪いのは間違いない。俺の敗けだ」
その言葉は見ていたアイアンとホネオにも届いていた。
まさかゴン太がSランク冒険者に敗けを宣言させるなど思っても居なかったので、開いた口が塞がらないまま二人はサインを貰うって事すら頭から吹き飛んでしまっていた。