タイガとゴンザレス太郎の決闘から10日が過ぎた。
月は11月になりひんやりした空気が町を覆う中、人間界はゴンザレス太郎達の活躍で戦鬼を倒し人々はなにも知らずに平和な日常を過ごしていた。
その頃、魔界はいよいよ危険な状態に陥っていた。
「東門に戦鬼5体!北門に龍鬼4体!西門に鬼王1体!出現!」
魔界の町の中央、鬼対策室では今日も24時間戦い続けた魔物達が交代で体を休めている。
疲弊しきった様子からここ数日のキツさが目に見えていた。
その理由が、鬼の進化であった。
最初はただの鬼ばかりであった。
だが倒しても倒してもその数は減らない。
そればかりかここに魔界中の鬼が集まり、とんでもない速度で繁殖を繰り返していた。
死体から繁殖を可能とする鬼は同姓であろうと構わず増え続け、共食いを行って進化をし続けていた。
キリンが高い木の実を食べるために首を伸ばしたように、象が体重を支える足を残したまま器用に動かせる鼻を得たように、生物は繁殖と共に進化していく。
ただの鬼だった中から属性耐性を持った鬼が生まれた時から魔王達はワンサイドゲームでは無くなり始めた、広範囲魔法で攻撃して時間稼ぎが徐々に出来なくなり、気付けば戦鬼や龍鬼、そして鬼の王とも呼ばれる鬼が近くに居る数だけ強くなる鬼王までが誕生し町を襲っているのだ。
「東門は少数精鋭で行け!やられて喰われると相手を強くするぞ!北門は残りの全員で死守せよ!」
「魔王様、西門は?」
「ワシが出る!」
そのまま魔王は立ち上がり外へ向かう。
慌てて他の魔物達も指示通り動き出す。
この程度ならまだ大丈夫…
「大変です!」
一人の魔物が慌てて駆け込んできた。
「東の『ロッテルダ』が陥落しました。」
「なんだと?!あそこは優秀な結界使いの魔物が沢山居たはずだぞ?!」
「そ…それが…遠隔操作系の鬼が現れたらしく、最後の伝令に『触手鬼』に気を付けろと」
「触手鬼?!」
触手鬼とは自らの体から極細の触手を伸ばして相手の脳に取り付き、寄生した生き物をゾンビのように操る鬼と言われてる。
触手鬼自体は大して強く無いのだが、気付かない内に取り付かれ操られたら操っている本体を倒さない限り解放されず、味方が敵になる恐ろしい魔物だ。
「いかん、魔王様の所へ誰か!」
しかし、北門へ戦える者は全員指示通りに行ってしまった為に誰も魔王の所へ行けなかった。
脳に寄生されるこの触手鬼は複数で対処すれば一人が取り付かれても対処できるのだが、この時魔王は一人であった。
そして、これが魔界の町『アムステルダ』崩壊の始まりであった…