「それ本気で言ってるの?」
町を出て最初の夜、一同は手頃な場所で夜営をしていた。
焚き火を中心に各々が座ったり立ったりの状態で今後の事を話し合っていたのだが、馬車の振動に1日揺られ痛くなった腰を擦りながらゴンザレス太郎は今回の最終目標を話した。
それに対してサラが怒り気味に詰め寄ってきたのだ。
「ゴンザレス太郎様、私もそれは少々無理があるのではと思いますが…」
サラの影から出て、何処から出したのか分からないティーカップにお茶を注ぎながら執事服ではなくパジャマ姿のニセバスチャン、頭の三角帽子が妙に気になる。
そんなニセバスチャンも続いて反論してくるが、それ以外のメンバーは特に気にした様子もなく…
「目標は高い方が良いし、ゴンザレス太郎には何か考えがあるんだろ?」
マコトが答えてくれる。
ちなみにこの旅のメンバーは、ゴンザレス太郎、フーカ、マコト、ジル、メール、サラ、ニセバスチャンである。
サリアは今回の勇者の集いに参加して人々を聖女様として導くために残ってもらったのだ。
ヤバイとデニムもそちらに加わり、少数精鋭で攻める事となった。
「タツヤが大丈夫と言ったから信じる」
フーカのその言葉にサラは「あなたと違って私はゴンザレス太郎を心から信頼してますから」っと言われてると勘違いして膨れっ面になる。
そんなサラの姿に「あぁお嬢様がお年頃に」と感動しているニセバスチャンは置いておいて、ゴンザレス太郎はメールとジルに頼み事をする。
「えっと?こうですか?」
「そして私はこう?」
それは結界士メールのオリジナル結界、平面ではなく湾曲した結界を2枚出し、結界の間にジルが水魔法を使って水を溢さないようにする合体魔法であった。
もちろんこの効果は…
「何これすごい!?」
「こんな小さい石の傷がが大きく見える!?」
そう、虫眼鏡である。
これを複数繋げれば望遠鏡代わりとして遠距離から様子を伺えると考えたのだ。
サラの話通りであれば敵は今頃は更に増えて、恐らく万を超す大軍勢。
情報は勝敗を決する鍵となるのは基本であった。
「お二人は到着までこの魔法の練習を繰り返して自由に使えるようになっていて下さい。僕に考えがありますんで」
ゴンザレス太郎のその言葉に責任重大と考えた二人は真面目な顔で頷く。
フーカはメールと同じ様な湾曲した結界が出せないか練習をし、サラはその様子を見ながらゴンザレス太郎の言った最終目標を思い出して…
「ちっ、無理だよ…」
っと歯を噛み締めながら呟き、その日は過ぎていったのであった。