太陽が登り、戦いの朝がやって来た。
作戦は昨日ゴンザレス太郎から全員に行き渡り、地面に書かれた簡単な地形図を目安に最後のチェックを行う。
それと同時にジルとメールによる合体魔法で作り出した簡易版望遠鏡を覗いて一同は絶句した。
「鬼の…山が出来てる…」
サラの言葉通りそこには町の姿は無く、恐らく中心に魔王子アーサーが守る魔王の妻の魂石があるのであろう。
そこを目指す鬼が集まり押し退け合い、まるでピラミッドのように積み上がって町を覆い尽くしているのだ。
「ざっと見て200万匹ってところね…」
200万匹の鬼+魔王が相手なのにこちらは人間が5人に魔族が2人…
「大丈夫!僕の知ってる話では4人で表の世界だけでなく裏の世界の全ての敵と戦いゾマーと言う魔王を倒した人たちも居るそうですから!」
ゴンザレス太郎…全く説得力がない言葉だが、なんにしても各々は任された役割を果たすだけ。
絶望的な戦いに挑むというのに笑みが溢れるマコトに続きゴンザレス太郎も先頭に立ち。
「行くか相棒!」
「行こう相棒!」
青年と少年は握った拳を合わせ進み始める。
目指すは魔物の町の西にある山!
馬車は大きく迂回しながら進む。
鬼達に気付かれないように…
その中でサラは納得がいかなかった。
ゴンザレス太郎の作戦を聞いてどう考えても鬼達をどうにかする方法に辿り付かなかったからだ。
そんなモヤモヤしたサラにフーカは声を掛ける。
「貴女、タツヤの事本当に好き?」
「な、なによ突然!」
「最後かもしれないから聞かせて、好き?」
「ま、まぁ嫌いじゃないわよ…かなり」
「フフッそうね、だったら彼を信じてみて」
フーカの言葉に妙な説得力もありサラは覚悟を決める、そして然り気無くサラの本心をフーカは『スピリチュアリティ』で確認していたりする。
そんな二人の視線を背中に受けながら、ゴンザレス太郎は空を見上げた。
「雲一つない晴天、天も味方してる」
ゴンザレス太郎の言葉に首をかしげながらマコトはジルとメールを見る。
二人はゴンザレス太郎から頼まれた事を確認し合いながら話し合っていた。
そんな中、馬車は山を登り最初にゴンザレス太郎とマコトとニセバスチャンが降りる。
更に馬車はジルの操作で山を登り、魔物の町が一望できる場所でサラとフーカが降りる。
最後にジルとメールが高い場所で馬を固定して配置に着く。
全ての配置が完了し、ジルとメールからの水魔法の光の反射で合図を貰ったサラとフーカは町に向かって各々の最大出力魔法を放つのだった!