異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第96話 天の裁き

「ぐぁあ!」

 

鬼王の強烈なパンチにマコトが地面を削りながら後ろに滑る!

二倍以上ある体格差の一撃を肩と腕で受け止めたマコトの悲痛な呻き声が響く!

 

「くそっ、これで最後です!」

 

ニセバスチャンが懐の影からナイフを取り出して投げる!

ナイフは戦鬼の間に居る雑魚の鬼の眉間に刺さり、一撃でその命を奪う。

死んだその鬼を掴んで食べようと口元に持っていった戦鬼の顔面を、ゴンザレス太郎が土の槍で貫いて戦鬼を絶命させた!

 

「よし、鮮烈兜割!」

 

マコトの剣が周りの鬼が死んだことで弱った鬼王の顔面を捉え後ろへ下がらせる。

その間も次々と襲い掛かってくる雑魚の鬼と戦鬼を次々と相手する3人!

その間も次々と襲い掛かってくる雑魚の鬼と戦鬼を相手する3人!

後ろには下がれないし一匹も通せないのだ、雑魚の鬼は死体から新しい鬼を産み出すし戦鬼は死体を食べて更に強くなり回復する。

倒した鬼の分だけ3人は前に進むしかなく、中に居る鬼王は周りの鬼を減らして弱体化させたタイミングでダメージを与えていくしかない、そんなかなり辛い状況の中で3人は戦っていた。

 

 

 

 

その頃中層では…

 

「次!アイツは炎に耐性があるから!」

「他の属性は苦手なのよもぉー!」

 

サラとフーカも次々と出てくる龍鬼をフーカのスキミングで弱点を見抜きサラが倒していく!

敵のブレスはメール直伝の結界でフーカが防いでいるので今のところ戦況は拮抗している。

ただ倒した龍鬼は勿論地面に落下し、それを戦鬼や雑魚鬼が喰ったり繁殖したりして状況は全く変化していなかった。

そして、遂にそれは生まれた。

 

「なに…あれ…」

「嘘でしょ…」

 

繁殖すると言うことは世代交代が行われると言うこと、生き物は必要なものは進化によって得て、必要ないものは退化していく。

空に浮かぶ龍鬼の中に一匹異様な姿のそれは現れた。

ファンタジーで見かける二足歩行する形の龍、マコトから聞いたことのあるその姿はあのSランクモンスター『龍ドラゴン』のそのものだが体の大きさはその倍はあり、頭には二本の黄色い角が生えている。

名付けるなら『鬼龍ドラゴン』であろう。

 

「不味い!」

 

フーカは結界を先程までの3倍の厚さで出現させた!

直後鬼龍ドラゴンから吐かれた七色に輝くブレスは二人の居た場所を飲み込む!

だが二人は生きていた。

フーカは両腕が焼け、サラの盾になるように庇っていた。

 

「こ…の…なにくそがぁぁぁぁぁー!!!!」

 

フーカの後ろでサラは鬼龍ドラゴンのブレスの炎を自分の炎と混ぜ合わせ、巨大な炎王球を超える塊を産み出していた。

フーカが守ってくれてると信じていたからこそ生成に全力を注いで完成させたそれ、今にも暴発しそうな状態をサラは気合いで押さえ込んでいた。

そして、それを気合いで投げ返す!

名付けるなら『灼熱王球』であろうか、他の龍鬼がブレスで止めようとするが全く効果はなく、鬼龍ドラゴンの前でそれは極大の大爆発を引き起こす!

 

両腕を焼かれ膝をついて肩で息をするフーカはサラの慣れない回復魔法で痛みが引くのを感じ、そのタイミングでステータスにレベルを振る。

次はノーダメージで防いでみせる!と意気込むフーカ達の前方には爆発の煙の向こうに新しく生まれた鬼龍ドラゴンの大群が見えるのだった。

 

「ははっまだやれる?」

「とーぜん!」

 

二人は手を貸し合い次のブレスに備える!

 

 

 

 

 

上空で大爆発が起こったと言うのに、誰一人気にもしていない状態でゴンザレス太郎達は戦い続けていた。

 

「うぐぁぁ!!」

 

ニセバスチャンが突然叫び声をあげて頭を押さえる。

ゴンザレス太郎はそれを見て直ぐに地面すれすれにウォーターカッターの魔法を使用し、雑魚鬼の足と共に見えない触手を切断する。

そして、地面から出てくる緑の鬼を優先してマコトが飛ぶ剣激で倒していく!

話に聞いていた触手鬼である!

そして、こいつらが出てきたと言うことは…

 

「避けろー!」

 

ニセバスチャンの叫びに反応して後ろに飛ぶマコトとゴンザレス太郎!

直後二人の周りの地面が地盤沈下の様に沈み、範囲内に居た雑魚鬼だけでなく戦鬼すらも潰れて絶命する。

圧倒的魔力による重力魔法、そんな事が出来る存在と言えば…

 

「ようやくお出ましってね」

 

ゴンザレス太郎は忘れもしないその顔を見て冷や汗が流れるのを感じた。

鬼達の中に一人、人間の姿をした男性が立っていた。

片手を上げてそこから放たれた黒い渦は前に居た鬼達の体を抉り取るように飛んできて、マコトの前に居た雑魚鬼達の体を貫いてマコトに迫る!

雑魚鬼達の体でマコトはそれに気づくのが遅れた。

 

「危ない!」

 

ニセバスチャンがマコトを突飛ばし、黒い渦はそのまま後ろに何処までも飛んでいく…

そう、ゴンザレス太郎の『射程無限』が影響してしまっているのだ。

そして…

 

「ぐぁぁぁぁぁ」

 

マコトを庇ったニセバスチャンは左足の膝から下をさっきの黒い渦に抉られて無くしていたのだった。

それにより陣形が崩れ、鬼達はゴンザレス太郎とマコトの横を一気に通りすぎ後ろにあった死体の山々に繁殖を開始する!?

状況は完全に不利、囲まれる前に脱出を図るゴンザレス太郎とマコトは左右に分かれる!

魔王の前に多数の鬼が居り、その先に片足をなくしたニセバスチャンが残された状況で魔王から先程よりも巨大な黒い渦が再びニセバスチャンに向かって放たれる!

 

「御嬢様、どうか…幸せを…」

 

黒い渦はニセバスチャンの居た場所を飲み込みながら多数の鬼を巻き添えに突き進んでいく!

 

「くそっ!」

 

マコトがその状況を確認しながら逃げつつ叫ぶ!

そして、すぐ横に居た鬼王の存在に気付かなかった。

 

「しまっ?!」

 

鬼王の強烈なパンチは溢れるほどの雑魚鬼のせいで先程よりも更に強烈な一撃となり、マコトを大きく後ろへ吹き飛ばす!

意図せず山のふもとまで吹き飛ばされ転がるマコト、今の一撃で肋骨が折れ肺に刺さっており口から血を吐いた。

 

「ぐっぐはぁ…」

 

そして、その場所から動けなくなる。

ここまでの戦いで疲労も限界に達し、意識はあるが指一つ動かせなくなっていたのだ。

 

「マコトさん!?」

 

ゴンザレス太郎が叫ぶが、その前には目にも止まらない速度で瞬間移動してきた魔王が居た。

魔王の掌がゴンザレス太郎の胸元にあてがわれ、ゴンザレス太郎の耳に魔王の声が小さく聞こえる…

 

「ブラックホール」

 

咄嗟にその手を蹴りあげ、魔王の手から出たその闇の穴とも思える球体はゴンザレス太郎の左肩を少し削り、少し進んだ後周りの空気を吸い始め、近くに居た雑魚鬼の体を空気と共に飲み込む。

吸い込まれながら粉々に潰れていく雑魚鬼の姿に視線をやる間もなく、魔王の拳がゴンザレス太郎の顔面を捉えゴンザレス太郎は後ろへ大きく吹き飛ばされた。

地面を転がり切れた口の中から血が流れるのを気にする間もなく、目の前に現れた魔王に今度は腹部を蹴り上げられる!

蹴りにより空中に浮いたその子供の体を魔王は更に思いっきり殴り付ける!

狙ったのか分からないが、数百メートルも吹き飛ばされ地面をボロ雑巾の様に転がるゴンザレス太郎はマコトの直ぐ横に転がりながら辿り着いた。

仰向けに寝転がり内蔵が破裂しているのか、ゴンザレス太郎の顔色は真っ青になっていた。

そして、魔王が瞬間的に二人の前に現れ歩み寄る。

 

 

 

 

 

ゴンザレス太郎達が魔王の出現で危機的状況に陥っているのと並行して、中層でもフーカとサラはピンチに陥っていた。

フーカは結界をさっきまでの10倍以上の強度で更に枚数を増やし、鬼龍ドラゴンの絶えず常に数匹で吐き続けられるブレスを防いでいた。

フーカの背中に密着するようにサラはフーカを熱から守り、結界を押し込まれないように直接手で結界を押さえて支えていた。

いくら炎に耐性があるとは言え、生身の素手で鬼龍ドラゴンのブレスに焼かれ続けている結界を押さえているその手は既に皮膚が焼け爛れ、直接骨が焼かれていた。

 

「あと少し!踏ん張るわよフーカ!」

「ええ、ゴンザレス太郎を…私達の愛する彼を信じて!」

 

結界は溶け始め二人が飲み込まれるのも時間の問題、ニセバスチャンは消滅しマコトとゴンザレス太郎は動けない。

勝敗は決した。

誰もがそう考えてもおかしくないこの状況、だがそれを覆す叫びが響いた!

 

「この時を!待っていたぁぁぁ!!!!」

 

仰向けに倒れ、息も絶え絶えのゴンザレス太郎の叫びと共に空に放たれる一筋の魔法。

それは空に向かって放たれ大きな爆発音を響かせる!

晴天の空には音しか響かなかったが、それに反応した二人は動きだす!

 

「合図よ!」

「曲げるわよー!!!!!!!」

 

空に向かって手を挙げているジルとメール。

二人はかつて誰も経験したことの無い超大規模魔法を操る!

 

直後周囲の気温が上がったと思った次の瞬間、光の柱が現れる!

圧倒的熱量によりその光は全てを飲み込む、そこに存在する生物や空気中の粒子、更には音すらも飲み込みその光の柱は鬼の山を中心に収束し何も聞こえなくなる。

 

その日、遥か離れたゴンザレス太郎の住んでた町でもそれは観測され、後に天の裁きと呼ばれるのであった。




長くなりすぎましたね(汗)
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