異世界ツクール   作:昆布 海胆

98 / 435
第98話 鬼神の猛威

地中を通り、違う場所から飛び出した魔王だが左腕を押さえながら苦渋の表情を浮かべていた。

たった2撃、その2撃だけで魔王は大ダメージを負っていたのだ。

叩き落とされた時に受けた左腕は折れ、更に叩き込まれた拳によって左腕は粉砕骨折していた。

幸いなのは、左腕を犠牲にする事で即死を免れた事であろう。

 

「ブラックホール!」

 

近付くのは危険と判断した魔王は遠距離戦に切り換え、得意の闇魔法で攻めることにした。

巨体のわりに素早い攻撃を受けたので、動きを封じる作戦に出たのだが…

 

「GOAAAAAA!!!」

 

鬼神目掛けて飛んでいた闇の魔法は鬼神の口から放たれた叫び声だけで粉砕した。

そして、その音の衝撃は魔王にまで届き…

 

「ぐぅわぁぁぁあああ!!」

 

扇状に広がる音の波は避けることもできず、魔王の全身の細胞を振動させズタズタに破壊する!

一同があれほど苦戦した魔王だが、まるで子供のように一方的にあしらわれた。

音の攻撃が止み、魔王は目、鼻、耳…至るところから血を流しながら鬼神を睨みつける。

だが鬼神はそれがどうしたと言わんばかりの態度で魔王に向かって悠々と地響きを立てながら歩みを進める。

まるで何をしてきても全て正面から叩き潰す!と宣言しているかのような優雅な歩みは魔王の選択肢を狭めていた。

闇魔法とは基本的に虚を付く魔法だからだ。

 

その時、空を見上げながら手を天に掲げ倒れたままのゴンザレス太郎の口元が歪んだ。

誰も気付かないその小さな行動。

ゴンザレス太郎によって準備は着々と進んでおり、彼の放つ魔法によりそれは完成した!

ゴンザレス太郎が使用していたのは液体の温度を下げるだけの生活魔法、主婦であれば誰もが使える基本中の基本魔法、料理にも大活躍の冷蔵庫代わりになる『クール』と言う魔法。

そしてそれが完成したのを感じ取ったメールが結界を動かし、ジルが位置を調整する!

 

そして、次の瞬間!

巻き上がる粉塵とこの世界そのものを揺らすほどの振動が発生し、その衝撃に浮かんでいた魔王は吹き飛ばされる!

やがて巻き上がった粉塵が落ち着きそれは姿を現した。

その光景を見ていた一同、前もって聞いていた者以外は誰一人として一体何が起こったのか、目の前にあるそれが一体何なのか分からなかった。

目の前の鬼神が居た場所に超巨大な氷の塊が生えていた!それを現実として受け止められなかったからである。

空に向かって笑みを浮かべるゴンザレス太郎がボソッと呟いた…

 

「名付けて『メテオアイスインパクト』ってね」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。