夢の支配者と半冷半熱とヘルフレイム
エンデヴァー事務所の前で轟はドレミーとばったり出会う。
「……お前もか。ドレミー」
「はい、No.2なら得られることは大きいので。……何か不都合があったでしょうか?」
「……いや」
「……そういえば、最近エンデヴァーさんの夢の内容が変わっているんですよね……」
「……夢の内容?」
変化した夢の内容に轟が興味を示す。
「よく夢の住人の方のオールマイトだけを見つめていた夢がほとんどだったのですけれど、最近はオールマイトとその近くにいる家族を見つめているらしいのです。……あの人も少しずつ変わろうとしているのかもしれません。自覚の有無は別としてですが」
「親父が……家族を?」
「あの人なりに仲直りしたいのですかねぇ?まぁ、頭の片隅にでも留めておいてください」
「……そうか」
ドレミーが轟にエンデヴァーの夢の変化を伝えていると、エントランスから受付の女性が駆け寄ってくる。
「轟 焦凍様、並びに甘夢 獏様。お待ちしておりました。到着次第、コスチュームに着替えて社長室に来るように、と社長より申し付けられております。更衣室へとご案内しますので、こちらにお越し下さい」
「分かりました。轟さん、ここはどちらが素早く着替えられるか競走です。早着替えはヒーローの基礎スキルになるかと」
いや、ならねーよ!と周囲のサイドキックは一瞬思ったが、何故か一理ある気もしたので、後日早着替えの練習をするか検討したそうな……
「……」
「ふふふ、私の圧倒的勝利ですね。轟さん、エンデヴァーと同じぐらい地……シンプルなコスチュームなのですから、素早く着替えられるかは重要かと」
「なんでそんなに早着替えを念押しするんだ……?」
「サラッと俺と焦凍のコスチュームをバカにしたな貴様!?」
「してません」
「だが地味と言お「言ってません」…………まぁいい。お前達のヒーロー名を聞こう。まずは焦凍、お前からだ」
「チッ…… 俺のヒーロー名は『ショート』だ」
「ショート……自分の名前から取ったか!いい名前だ!」
轟が舌打ちしながらヒーロー名を答えると、エンデヴァーは平静を装いつつも内心では歓喜していた。『焦凍』という名前は親である自分たちが考えて付けた名前だ。それを自らヒーロー名にしたというのだがら、父親でもあるエンデヴァーとしては嬉しかった。……実際は考えるのを面倒くさがった轟が適当に付けたヒーロー名なのだが、それは秘密だ。
そしてドレミーの番になる。
「では、私の番ですね。名字の甘夢から取って夢の支配者、ドレミー・スイートです。どうです?いい名前でしょう?」
「あぁそうだな、いい名前だ」
「おやぁ……?焦凍さんの時とは随分と態度が違いますねぇ?……あぁ!もしかして最近エンデヴァーさんが焦凍さん達家族に謝る夢を見ていたのはそういう事なんですかぁ!」
ドレミーはニヤニヤとドレ顔でエンデヴァーを煽り、エンデヴァーのプライベートをサラッとサイドキック達の前でバラすというゲスい事をした。
サイドキック達の半分以上は生暖かい目でエンデヴァーを見守るという、ある意味拷問に近い事をしてしまった。
当のエンデヴァーはプルプルと差恥で震えており、ほっこりした顔をしているサイドキック達は後でしっかりとしごいてやる事を誓った……
「焦凍!甘夢!お前たちは未熟だ!仮免すら持たぬ身でヒーロー名を名乗るなど烏滸がましい!サイドキックたちや他の者たちがお前たちをどう呼ぼうが俺は関知せんが、俺はお前たちの実力を認めるまではヒーロー名では無く、名前で呼ぶことにする!いいな!」
「はい、轟 炎司さん!」
「どっちだよ。というかなんで親父の本名知ってるんだ?」
「何故貴様は人のプライベートにずかずかと入り込むのだァ!!!」
「出会って数秒でテノヒラクルーする人に発言権はありません。この手帖のお陰で昨日どこにいたか、どんな夢を見たのか、全てが書かれており、プライベートは筒抜けです。焦凍さんの場合は母親に会っている夢が多いですね」
「そうなのか」
「夢の世界の住人は感受性が高いので、欲望のまま行動することが多いのです。あ、エンデヴァーさん、この後個人でお話があるのでよろしいでしょうか?」