鳴海探偵事務所
「しっかし、探偵事務所なのにヒーローってどういう事なんだ……?」
保須市の大通りで梅花 誠一はそう独り言ちる。彼が選んだのは鳴海探偵事務所。調べた所、2人で1人のヒーローというのがキャッチコピーの変わったヒーローで、最近株を上げているのを知ってここを選んで来たのだ。
「おー、あったあった。ここが鳴海探偵事務所か……」
大通りから外れていて、少し錆びている探偵事務所の看板の下にあるインターホンを鳴らし、梅花は相手を待つ。
少しすると、一人の男がドアを開けて出てきた。
男の容姿は、外ハネの黒髪を持ち、右側(向かって左側)が文房具によって留められている髪型に、指穴付きカットソーの上に見た事のないブランドのロングパーカーを着用し、クロップドパンツを合わせ、地球を模した飾りのついたネックレスを首から下げている服装だった。
「やぁ、鳴海探偵事務所にようこそ。僕はフィリップ。Wヒーロー・仮面ライダーWの半身さ」
「…半、身……?」
フィリップの妙な自己紹介に首を傾げる梅花。それにフィリップは顎に指を置いて仕方ないかと呟く。
「そうだね。合体して変身するヒーローって思えばいいさ」
「……あー、何となく想像できました」
「……さて、早速だけど仕事の説明をしよう。梅花君、最近この辺りでよくニュースになっている、”ヒーロー殺し”は知っているかな?」
フィリップが椅子に座り梅花にヒーロー殺しについて知っているか問う。
「あ、はい。なんでも、各地でヒーローを殺してまわっているヴィランだって……」
「うん。それがニュースで流されている内容だね。……でも、僕の個性で見た所、彼は思想犯だ」
「フィリップさんの……個性?」
「僕の個性は『地球の本棚』。本を媒介する事によって発動するデータベースのようなものがあってね。僕の相棒が色んな人に聞き込みをして、僕の個性でヴィランの正体や素性を検索する。これが鳴海探偵事務所の基本スタイルなんだ」
「……それで、ヒーロー殺しの事はなにか掴めたんですか!?」
「そうだね。まず、この保須市に滞在しているのは確実。次に判明しているのは容姿、個性、戦闘スタイル……そして、ヒーローを殺し回るという理由は英雄回帰という思想の下行っているそうだ。簡単に説明すれば、見返りを求めないのがヒーローで、それ以外はヒーローの資格はないという考えだ」
「……でも、それでヒーローを殺すなんて間違ってます!」
「そう、そこなんだ。思想がどれ程高尚なものでも、その為に人を殺したらその時点でアウトだ……っと、とりあえずヒーロー殺しの話はここまでにしよう。まだ情報が不完全なんだ。僕の相棒が調査を終えるまでは君の個性を鍛える」
「俺の、個性……」
「さぁ、早速奥にある部屋で軽く君の個性を見ようかな。僕は準備をするから待っていてくれ」
「はいっス!」
梅花が奥の部屋に入ると同時に、フィリップは浅く思考の海に入る。
(……まさか翔太郎と離れ離れになって、こんな世界に無理矢理連れ出されるとはね……まぁ、彼も翔太郎に似ているから今はそれなりに何とかなっているけどね……)
思考の海から上がったある事を思い出すフィリップであった……