母性たっぷりの聖母様先輩が義母になった件。~取り敢えず、お隣さん全員が家族になりました。~   作:藤宮氏

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第2話 昼休み

「んぐっ、――な、何だよ……」

 

 ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべてこちらを見ている(さく)に俺は喉を鳴らす。

 

「いや~、相変わらず(しゅう)はモテモテでやんすなぁ~」

「……黙れ、出っ歯ねずみが」

「わぉ辛辣ぅ」

「あはは~、二人って本当に仲が良いのね~」

 

 朔の発言に俺がジト目を向けていると、隣で会話を聞いていた千晴さんが自慢の母親(ママ)みを大量に放出しながら話に入ってくる。

 

「『あはは~』じゃないですよ。今の会話のどこに仲良し要素が有ったんですか?」

「いやいや~見てたら分かるわよ~。二人であんな事やこんな事の一つくらいやってるんでしょ~?」

「えっ!?♡」

「「やってません!」」

 

 学園内の聖母様としてどうかと思う発言に俺たちは声を荒げる。まったく、千晴さんから見て俺たちはどう見えているのか。それと、これは勘違いかも知れないが佐奈(さな)が一瞬何かに反応した気がするが――嫌な予感しかしないので触れないでおこう。それより――

 

「あ~、心愛さんよ、俺のカツ丼食ってるところ悪いが、退いてくれませんかねぇ?」

「ふぇ? 秀にぃの食べかけのカツ丼=心愛の物。秀にぃの膝の上=心愛の物。違いますか?」

「違います。貴方の昼食は自分が頼んだうどんで貴方の座る場所は誰も座っていない席です。あとちゃっかり俺の膝を物扱いするな」

「いてっ! んも~、か弱い少女にデコピンするなんて! DVだ! キャーここにドメスティックバイオレンス秀にぃがいまーす」

「それを言うとお前も人のカツ丼を無断で食ってるだろーが!」

「べぇー可愛ければそれでいいんですぅ」

 

 可愛ければって……こいつ自分で言ってるぞ。

 

「あー、今『こいつ可愛いって自覚してる』って思ったでしょー! 心愛は別になるしすと? とかそういうのじゃないですからね!?」

「あ~、はいはいすみませんでした」

 

 俺が呆れた声でそう言うと、心愛が「んも~」とポカポカと腕を叩いてくる。もっとも、全くもって痛くないのだが。そこで、千晴さんと反対、俺の右側に座っていた佐奈が心愛の首根っこを掴むと心愛が「ひっ!」と顔を青ざめさせる。

 

「こーこーあー? 秀が困ってるでしょー?」

「あ、あの~、秀お兄様~。今何してますか? 忙しいですか? 救ってもらって良いですか?」

「某ラノベタイトルで俺を釣ろうとしても無理だな。 お前はちょっと反省しておけ」

「だって?」

「そんなぁぁぁ~」

 

 佐奈がそう問いかけると心愛は威圧に耐えかねたのか「ごめんなさい」と言いながらトボトボと朔の隣に座る。

 

「ふぅ、やっと落ち着いたな。あ、佐奈、箸取ってくんね」

「――ん」

「さんきゅ」

 

 俺は佐奈から割り箸を一善受け取ると再度、カツ丼を食べ始める。その姿を見て朔は苦笑いを浮かべる。

 

「あ~、落ち着いてきたところで悪い知らせだ。振り向くが良い」

「あ?」

 

 俺は朔に言われるまま後ろを向く。――すると明らかに運動部感を出している屈強な男が3人、腕組をして立っていた。

 

「あ、あの……なんでしょう?」

「なんでしょうじゃねぇ! 皆の三姉妹神をお前一人で独占してんじゃねぇ!」

 

 確か、サッカー部の部長だった男がそう言うと、一部で「そうだそうだ!」と同調の声が上がる。その横は確か、野球部。そして剣道部。いずれも部長である。

 

 俺はこの男たちを知っている。この学園で最も上位の権限を持つ三大勢力のトップ。『聖母会』、『best of 女神』、『天使ココアのお兄様』の会長だ。そして先輩たちがわざわざここまで来たと言うことは――

 

「単刀直入に言う。我々、一色家姉妹のファンクラブはこの度、対、真田秀作戦において連合を組み、安保条約を結んだ。全ては皆の女神をこの腐った外道から救うため。我々は全身全霊をもって、貴様から一色姉妹を取り返す。今日はその宣戦布告に来たのだ!」

「ふんっ! 俺はお前たちと結ぶつもりなんて無かったんだがな!」

「…………」

 

 あ、安保条約? 宣戦布告? ということは戦争? そこは普通、一色さんの品が下がるから隣に並ぶなとか明らかな悪口を言う場面では? 

 

「だが、できれば我々としても下級生に手を挙げたくはない。そこで、穏便に物事を解決するために貴様と同盟を結びたい」

「ふんっ! 俺は認めたくはないがな!」

 

 おいおい、一人だけ全く納得してない奴がいるんだが……?

 

「そうですか、因みに同盟ってのは?」

「良い質問だ。我々が求めるのはただ一つ。()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「「「「「は??」」」」」

 

 何のことだ? 束縛? 解放? さっきから言っていることが全くもって理解できない。

 

「とぼけるのはよせ! お前が一色家の両親を人質にとって脅しているのは知っているのだぞ! 現に一色さんの家に両親が居ないのは確認済みだ!」

「んんん? すみません。俺にはなんの事だか」

「そうですよ! 秀にぃはそんな事しません!」

「あぁ、天使様……すでに洗脳まで!」

 

 先輩たちの意見に俺は深いため息を吐く。どうやら先輩達は何か大きな勘違いをしているらしい。

 

 だが、先輩たちは本当に宣戦布告だけの為に来たのか、言うだけ言ってファンクラブの集まりへと戻っていった。

 

「何だったの、あれ……」

「――雨の様に来て風のように去っていったな……」

 

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