母性たっぷりの聖母様先輩が義母になった件。~取り敢えず、お隣さん全員が家族になりました。~   作:藤宮氏

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第6話 一色家家族会議toリモート

「しっかし、まさか佐奈達と一緒に住むことになるとは……」

 

 引越し業者の人達が、一軒隣の家から家具や荷物やらを運び込んで来るというなんともシュールな光景を横目に、俺は独り言交じりに隣に居た佐奈に言う。

 

「なに? 私が一緒に住んだらダメかしら? お姉ちゃんと二人暮らしがお望みだった?」

「いや、そんなこと言ってねぇだろ。兄妹関係にはなったものの思春期真っ只中の健全な男子高校生が同じ学校の女子と同居って、ラノベの中でしか有り得ないだろってことだ」

「でも、お父さんもお母さんからも許可貰ってるし……」

「うん。確かにそうなのだが……」

 

 そうなのだが……。

 

 

 ・・・昨夜、俺の家で行われた『一色家家族会議』でイタリアに住んでいる佐奈たち――否、俺たちの両親とのZOOM通話での事・・・

 

「お父さん、何でわざわざビデオで通話してきたか、分かってるよね? この件について、詳細を話して頂戴」

 

 佐奈がPCのインカメに向かってそう言う相手――穏やかで優しそうなおじさん、佐奈たちの父である(ひろむ)さんである。

 

『おいおい、可愛い娘から離れて暮らしていて通話もほとんどなし。やっと電話が掛かってきたと思ったら第一声が『もしもし』や『お疲れさま』じゃないのはどうかと思うぞ~?』

「パパ。今はそんなことはどうでも良いのです。早く心愛達と秀にぃに詳細を」

『わっはっはっ、どうでも良いとは何だね? これでも私は一家の大黒柱。感謝されてもしきれないと思うのだが。まぁ良い。それより秀くん。二週間ぶりだね。元気してたかい?』

「は、はい。お陰様で……」

 

 人間、悲しい出来事は極力思い出したくない。脳内には佐奈の両親も来てくれていた両親の葬儀の光景がフラッシュバックし、俺は思わず暗い表情をしてしまう。

 

 すると、同じ部屋に居たのか佐奈のお母さんがモニターに割り込んでくる。

 

『こら、弘さん! あなたって空気が読めないの?? ごめんね~。お父さん、空気が読めなくて~』

「いえいえ、今までお世話になってきましたし、お構いなく。こんばんは――あ、いやそっちではこんにちはですか?」

『あぁ、こっちでは十五時だからこんにちはだね。――それより、千晴達と秀君が一緒に居ると言うことは、ある程度の事は千晴から聞いているのかな?』

「え、えぇ、まぁざっくりとは」

 

 さっきの気さくなおじさんの雰囲気から一変、THE・エリートを醸し出す真面目な表情に俺は思わず言い淀む。

 

『なら話は早い。――のだが、まずは一つ謝らせてほしい。今回の件、秀君への相談なしに勝手に決めてしまってすまなかった』

「そ、そんなとんでもない。俺に相談しなかったのには何か理由が有るんでしょう?」

 

 俺が言うと、弘さんは下げていた頭を上げ『うむ』と話を続ける。

 

『実は一カ月前から君のおばあさんから相談を受けていてな。秀君は知っていると思うが、君のおじいさんの事もあり、いずれ面倒を見るのにも無理が出てくると』

「…………」

 

 俺のじいちゃん。パーキンソン病、所謂(いわゆる)体が動かなくなる脳神経系の病気である。じいちゃんは三年前にその病気を発症し、今や人の助けなしでは生活できない体になってしまっている。ばあちゃんが俺ん家で暮らせないのにもこのことが関係している。

 

『だから色々話し合った結果、君の両親と仲の良かった私たちが秀君を引き取ることになった。その際、親子関係になっていた方が保険やらで何かと困らないだろう』

「……でも、一緒に暮らすのにはどういう理由が?」

 

 俺が聞くと、今度はモニターからではなく、俺の対面に座っている千晴さんがジト目で言った。

 

「だって、秀君、食事以外の家事が全くできないでしょ~?」

「うぐっ!?」

 

 想像以上に強い理由を突かれ、俺は机の上でへたり込む。

 

「そ、ソンナコトナイデスヨ?」

「嘘だ~、玄関に秀君のパンツが転がってたよ~? 普通に生きてて玄関にパンツが有ることなんてないよね~?」

「ゴフッ!?」

 

 今度はその理由を裏付ける有力な根拠で体を貫かれる。

 確かに、通常、玄関にパンツが転がっている事なんてそう無い。

 

 俺たちの会話を聞いていた弘さんが愉快そうに笑いだす。

 

『まあ、理由はそれだけでは無いのだがなそれに、可愛い可愛い娘たちだけを家において海外に行くのにはちと、不安が有ったしな』

「知ってます? それって親バカと言うんですよ?」

『そんなことない。私はこれでも早稲田出だよ?』

「“バカ”ってそういう意味じゃないんですよね~」

「そうだ、君はどこの大学に――」

 

 このやり取りにご満足だったのか、弘さんが違う話に持っていこうとすると、佐奈がまたも顔を赤らめ言った。

 

「でも、その私たち、高校生でしょ? 男女で一緒に住むのは……その、倫理的にどうかなって?」

「そうですよ。僕の性別が男なの忘れてません?」

『いやいや、そんな事は無いぞ? ちゃんとアンな事やアンな事をすることも想定済みだ』

「は?」

「なっ!? お父さん!?」

「「パパ♡」」

 

『アン』の部分だけ明らかに声を女声に変えた弘さんに普通の人ではない千晴さんと心愛を除き、俺と佐奈は普通の人の反応をする。

 

「そこは親バカらしく『お前にそんなことはさせん!』とか『そんなことをしたら承知しない』とか言う場面では??」

『いやいや、秀君なら将来の事を考えても安心だよ。思う存分アンパンしてくれ』

「っ! もういい。お父さん! 切るよ!」

「あちょ、佐奈、弘さんとの話はまだ終わってないのだが……」

『あ~、秀君。出来るだけ避妊はしてくれ。俺はもうだめだ。後はよろしくたのん――』

「ひ、弘さん!?」

 

 モニターには『通話終了』の文字。こうして波乱の『一色家家族会議』は幕を閉じたのだった。

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