パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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パニッシャーさんの幕間はこれで終わり。やっぱ藤丸君は改めて凄い……。

汎人類史を取り戻す為に空想樹切除しなきゃいけない藤丸君やカルデアがパニッシャーさんに悪判定されるかどうかについては意見が分かれそう……。


パニッシャー 幕間の物語 在りし日の記憶③

暗い取調室で目覚めてからどれ位経っただろうか?椅子に座らされた状態で両手は後ろに回され、太い鎖が巻き付けられている。自分が逃げ出せないようにしているのだろうが、随分と用心深い事だ。ただの手錠では心もとないと判断しての事だろう。暫くすると扉を開けて恰幅の良い中年男……自分にとっての元・相棒であるマイクロが入って来た。マイクロはパニッシャーを気絶させた際に用いた弾丸を手に持って見せてくる。

 

「麻痺弾だ。広報用にはもっと聞こえのいい名前があるんだろうが、要するに英軍が北アイルランドで使ったゴムの弾頭だな。通常は一発で足りる。いくら君でも、三発目を額に当てた時にはもう決まったと思った。だが君は動きを止めなかった。だから追加で四発撃った。さてフランク、話をしよう」

 

そう言うとマイクロは部屋に置いてあった机を引っ張り出すと、そこでパニッシャーと向かう合うように椅子に座る。

 

「急いで話を進めなければ、時間がない。当初は論理的に尋ねるつもりだった、こんなに殺してどうるのかと。また、君の愛国心に訴える道も考えたが…そんなものはパニッシャーになった時に捨てただろうと思い直してね。一度などは、君が殺害した死者の数を示して罪悪感に訴えようとさえ思った。余裕がなかった証拠だな」

 

マイクロは用意した封筒から三枚の写真を取り出した。三枚の写真にはそれぞれパニッシャーの妻であるマリア、娘のリサ、息子のデビッドが映っており、マイクロは写真を机の上に置いた。

 

「だが、とにかく結果を出さないと君はべセルに殺されてしまうんだ。だからフランク、すまないが……」

 

そう言うとマイクロはパニッシャーの家族の事について話始める。

 

「リサが元気なら今年でもう37…デビッドも33になっていたはずだ。君とマリアには孫がいたろう。だがそんな未来は来ない、何をしたところで起こった事は変えられん。私が君に手を貸したのは、自分の息子が殺されたからだ。罪なき市民を襲う無秩序な暴力、それを生み出す組織犯罪に一矢報いたいとの思いからだ。だが犯罪は尽きなかった。犠牲者は生まれ続けた。そして法を無視して生きる連中のやり方を、君も私も…誰であっても変える事はできなかった。だから私はやめた。君はそえに気付いていながらもやめようとはしない」

 

マイクロは自分とパニッシャーがいくら犯罪者と犯罪組織を殺そうが、それで犯罪の撲滅に繋がるわけではないと20年にも渡る戦いで思い知らされた。

 

パニッシャーは黙ったまま何も答えなかったが、マイクロは気にせず言葉を続ける。そしてパニッシャーが何故犯罪者に対する自警活動を続けているのかの理由を口にした。

 

「つまり君は殺人が好きなのさ。元々持っていた素質がベトナムで覚醒したんだろう。二度目の出征で偵察狙撃手を務めた時はまだ正気だったようだな。転機は三度目だ。恐らくは…何かをきっかけに暗黒が君を誘い…君は応じてしまった」

 

地獄のようなベトナムの戦場を戦い抜いてきたパニッシャーは、敵と戦っている内に殺人という行為そのものに魅入られたのだとマイクロは言うが、パニッシャーは黙ったままそれを聞いていた。

 

「その後、人生を壊された君に、自分を抑える理由はなかった。家族の悲劇を言い訳に使って、恐ろしい道を進み始めた」

 

だがマイクロの口から出た"家族の悲劇を言い訳に使って"というワードを聞いたパニッシャーは顔をこわばらせる。そしてマイクロに対して静かに言い放った。

 

「写真を片付けろ。でないと殺し合いになるぞ」

 

パニッシャーの言葉に対してマイクロは何も言わずに封筒を手に取り、写真を全て中に戻した。

 

「君だってまだ人間だろう。気が狂ったわけでもない。狂人ならマクドナルドあたりで銃を乱射しているはずだ。ダーマ―やゲイシーとも違う。君が自分の行為から快感を得ていたとは考えられない。感情も残っている。家族が映った写真に対する反応がその証拠だ。だったら私の提案には聞く価値があるはずだ。パニッシャーの存在を永遠に過去に葬る道を提供したいのだよ」

 

そう言ってマイクロは世界で最も有名なテロリストの名前を挙げた。

 

「ビン・ラディンを殺りたくはないか?真剣な話だ。雑魚は忘れろ。マフィアも無視しろ。太ったイタリア系の親爺が殺す人間の数なんてせいぜい年に2ダースかそこらだ。そんな連中より本物の怪物を相手にしろ」

 

要するに町に蔓延る末端の犯罪者よりも、世界に脅威を与えているテロリストの相手をしろと言いたいのだろう。マイクロは熱心に語り始める。

 

「数千単位で殺す奴ら。遠くから命令を出す奴ら。狂信者を街に放って善良な市民を殺傷させる奴らだ。フランク、世界に出て奴らを狩れ。祖国のため、文明のために政府が全面的に支援する。米軍の資金力や機動力と君が築いた技術を組み合わせて真に処罰に値する者達に向けろ。奴らを狩り、殺し、消し去れ。震え上がらせてやれ。それこそが…君のやるべき事だとは思わないかね?」

 

マイクロの理屈は正しい。だがそれはパニッシャーにとって意味のない言葉であった。そしてマイクロは自分のパトロンである者達の事も語りはじめた。

 

「べセル達はCIAだ。担当業務は…言葉を飾らずに言えば暗殺だ。今言ったような奴らを消す暗殺者を求めている。ところが困った事に最高の暗殺者を調達するに足る資金も権限も与えられていない。国外で武装集団を雇おうとすればたちまち議会の委員会に叩かれる。だから、秘密裏に動かせるプロが必要なのだ。その点、現在の君は公式には存在しない人物だ。君がここにいる事を知る者は1ダースにも満たない。連絡は私が請け負うから君がべセルと話す必要もない」

 

マイクロは実に饒舌に自分の背後にいる者達の事を喋る。パニッシャーはそんなマイクロの話を黙って聞いていた。

 

「標的の指定を受けたら、必要な情報と武器弾薬は無制限で与えられる。作戦計画も君に一任されるし、報告書を出す必要もない。いつどこで仕掛けるか、君の好きにしていい。これは私が主張して彼らに呑ませた条件だ。彼らは君の意向で動き…好きな場所に君を運ぶ。君さえよければ、私がまた情報取集と分析を担当しよう。武器の準備もだ。政府が後ろ盾につくから、装備の選択肢は今までとは段違いだぞ。やる事は昔と同じだよ。ただ、もっと大きな善のために働くんだ。答えは?」

 

マイクロの問いかけに対してパニッシャーは口を開く。

 

「イエスかファックかって…」

 

「そうさ」

 

「ファックだ」

 

パニッシャーの答えにマイクロは動揺を見せる。

 

「なぜだ?」

 

「俺は誰のためにも働かん。飼いならされたお前とは違う」

 

「仕方なかった。理由は言った通り…」

 

「俺の知ったことか。部下を背中から刺すような連中の下で戦うのか。連中が始めた戦争を戦って、連中が生み出した怪物を殺して、連中が石油利権で肥え太る間に、劣化ウラン弾で癌になって死ぬのか。兵器会社を儲けさせるための戦争に戻るつもりはないからな。そんなのはベトナムで飽き飽きだ」

 

パニッシャーはマイクロの申し出を断る。しかし、マイクロは諦めずに説得を続ける。

 

「そんな事はないぞ…」

 

「ワシントンにはお前に反対する奴が6万人いる。ただし奴らは黒い壁に刻まれた名前だけの存在だから口は利けんがな」

 

「フランク…べセルに殺されるぞ…あぁ糞!」

 

マイクロはパニッシャーの返答に頭を抱えた。そして暗い取調室の片隅にダヴィンチは立っている。マイクロとパニッシャーはダヴィンチの存在には気付いていない。

 

(パニッシャー君……君は……)

 

パニッシャー自身の心象風景を見たダヴィンチは、彼が抱えているであろう闇に触れる。そして夢は再び切り替わる。

 

 

 

 

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今度は何もない黒い空間が広がっており、その中にダヴィンチとパニッシャーの二人が立っている。本当に光さえも届かないであろう空間だが、ダヴィンチは前にいるパニッシャーの姿を鮮明に見る事ができた。そして自分の前に佇んでいるパニッシャーに声を掛ける。

 

「パニッシャー君……」

 

だがパニッシャーはダヴィンチの声に反応せず、ずっと後ろを向いたままだ。

 

「君の家族の事は……本当に気の毒に思う。まさか君にあんな過去があるなんて思わなかった」

 

だがパニッシャーは無反応だ。

 

「君が……君が悪を許せない理由が分かった。愛する人の死は、どんなに時間が経っても忘れることはできない。決して癒される事のない疵として心の中に残り続ける」

 

ダヴィンチの言葉に対して相変わらずパニッシャーは沈黙したままだ。

 

「大切な人を喪ったらもう二度と会えない。その悲しみを、苦しみを、痛みを理解できない者は、きっと幸せだろう。だけど、それは悲しい事だ。誰かを愛するという事は、相手の事を想う気持ちだ。愛しているからこそ悲しむ。人というのはそういうものだ」

 

ダヴィンチはパニッシャーに語り掛けるが、それでも彼は無言のままだ。

 

「だからこそ、私は君の悲しみを理解したい。君の悲しみに寄り添いたい。それが私にできる精一杯の事なんだ……。君に犯罪者を殺すのを止めろなんて私の口からは言えない。だけど、これだけは分かって欲しい。君の中にはまだ人を愛する事ができる心が残っているだろう?君が藤丸君を見る目なんてまるでお父さんじゃないか」

 

ダヴィンチはパニッシャーの背中に向かって言葉を投げかける。

 

「藤丸君は凄い子なんだ。偉業を成した大英雄だけじゃなく、悪辣と残虐で歴史に名を残した英霊ですらもあの子に力を貸す為に召喚に応じた。彼の周りには本当に色んな英霊が集まってくる。だから……藤丸君はきっと君の事も受け入れてくれるはずさ」

 

ダヴィンチの言葉にようやくパニッシャーは振り返る。

 

「藤丸君は優しいから君が今の道を歩む事になった過去を否定する事は無いよ。寧ろ彼なら正面から君を受け入れようとするはずだ。それに、もし彼が受け入れられなくても、私が絶対に君を赦すと約束する。だって、私は天才だからね」

 

ダヴィンチの自信満々な笑みに、パニッシャーは少し照れくさそうにそっぽを向く。

 

「藤丸君もね、パニッシャー君の事が結構好きなんだ。過去に自分を救ってくれたおじさんだって言っているけど、あまりその事は覚えてないんだって」

 

そう言いつつ、ダヴィンチは後ろを向いているパニッシャーに歩み寄る。そして背を向けているパニッシャーに対して語り掛けた。

 

「パニッシャー君、こうして君の過去を知る事ができて私は嬉しい。辛い過去や悲劇的な過去を他人に見られたくはないだろうけど……それでも他者を理解するには必要な事なのさ。藤丸君だって多くのサーヴァント達の過去に触れてきたからね。私もパニッシャー君の過去に触れられたのは無駄じゃないと思ってる」

 

ダヴィンチの言葉にパニッシャーは正面を向き、ダヴィンチの目線までしゃがむと彼女の頭を優しく撫でる。

 

「……お前らは大したやつだ」

 

そう言うパニッシャーの顔はどこか優しげに見えた。

 

「……ありがとう」

 

ダヴィンチも精一杯の笑顔を返す。

 

「……ああ」

 

そう言い終わると、ダヴィンチは夢から覚めた。

 

 

 

 

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ベッドの上で寝ているダヴィンチが瞼を開けると目の前にはハチワレの猫がいた。

 

「ニャ―」

 

まるでダヴィンチに対して"おはよう"と言っているかのような声。

 

「おはようパニッシャー君。よく眠れたかい?」

 

そう言ってダヴィンチはハチワレの猫を抱き寄せ、優しく抱きかかえる。

 

「ニャァー」

 

「よしよし、君は本当に可愛いね。お腹が空いただろう?キャットフードを食べようか」

 

ダヴィンチがハチワレの猫を床に置く。するとハチワレの猫はダヴィンチから離れてキャットフードを食べる。

 

その様子を見ていたダヴィンチは、先程見た夢を思い出していた。

 

(夢の中でパニッシャー君の過去を見た……。彼にも愛する家族がいたけど、公園で処刑を行っていたマフィアに口封じとして殺された。それが彼が"パニッシャー"になる切っ掛けだった)

 

ダヴィンチは夢中でキャットフードを食べるハチワレの猫に近付き、背中を撫でる。

 

「パニッシャー君。夢の中でも言ったけど、私は君を受け入れる。君の過去を知った上で、君を仲間として受け入れるよ。だから、安心してくれ」

 

キャットフードを食べ終わったハチワレの猫はダヴィンチの足に身体を擦り付ける。

 

「フゥー」

 

ハチワレの猫は目を細めて気持ち良さそうな表情を浮かべた。そんな彼を見て、ダヴィンチは微笑む。そしてハチワレの猫を抱っこすると、彼を猫に変えた人物の元に行く事にした。神代の魔術師にして、メディアの師匠でもあるキルケーの所だ。モルガンを始めとした幾人かのサーヴァントはパニッシャーをハチワレの猫に変えたのはキルケーだという事を知っていたようだ。ダヴィンチはキルケーのマイルームへと足を運び、ハチワレの猫を彼女の前に出して、元の姿に戻すように言う。

 

「パニッシャー君を猫に変えたのは君だろうキルケー?だったら彼を元に戻してやるんだ」

 

「ソイツは常日頃から私たちサーヴァントに喧嘩を売ったような態度を取るから罰を与えたのさ。ピグレットにしてもよかったんだけど、それじゃ私がやったとバレるからねぇ」

 

ダヴィンチ:「だからって本人の許可もなく勝手に猫に変えていいはずがないだろう」

 

キルケーは反省の色を見せず、不貞腐れた表情でそっぽを向く。

 

「パニッシャー君を元に戻すんだ」

 

「ああもう煩いなぁ!わかったよ戻せば良いんだろ!?」

 

キルケーは杖を用いて詠唱を唱えると、ハチワレの猫の身体は光に包まれて人間に形へと変化していく。そしてそれは元のパニッシャーへと変化した。

 

「俺は……元に戻ったのか……」

 

パニッシャーは自分が元に戻る事を信じていなかったらしく、元に戻れた事に驚いていた。そんな彼の様子を見ていたダヴィンチは苦笑いする。

 

「ようやく元に戻れたねパニッシャー君」

 

パニッシャーは自分を猫にした張本人であるキルケーをジロリと睨んだ。

 

「何だよ?私はちゃんと元に戻したじゃないか」

 

「……確かに元に戻してくれた事には感謝する。だが、俺を猫にしたのはお前だと聞いたぞ」

 

「仕方ないじゃないか!キミが他のサーヴァントに喧嘩を売りまくるから、私は仕方なく猫にしたんだから!」

 

サーヴァント達に対して事ある毎に喧嘩を売っていた事は事実なので、キルケーの言い分も一理あった。

 

「パニッシャー君もできれば喧嘩を売る行為は控えた方が賢明だと思うよ」

 

「……善処しよう」

 

ダヴィンチはパニッシャーと共にキルケーのマイルームを出ると、一緒に歩きながら話をする。

 

「その……君の家族の事はあんまり話さない方がいいかな……。君自身もあまり触れられたくないだろうし」

 

「……正直に言えばあまり思い出したくない」

 

パニッシャーはそう言いつつダヴィンチから離れる。そしてダヴィンチは去っていくパニッシャーの背中に向けて叫んだ。

 

「パニッシャー君……!かつて君にも愛する家族がいた事を知れただけで嬉しい!君が……君が二人の子供の優しい父親だった事も……」

 

ダヴィンチの声にパニッシャーは一瞬立ち止まったが、すぐに去っていく。そして去っていくパニッシャーの背中をダヴィンチは見つめていた。

 

「かつて優しい二児の父だった彼は家族の死を切っ掛けに変わってしまった……。けど人を思いやる心と弱者に対する優しさまで捨てたわけじゃなかった……」

 

ふとした事が切っ掛けで人は変わる。ダヴィンチはパニッシャーがかつては優しい人間だった事を夢の中で知る事ができた。家族との輝かしい時間を過ごす彼の顔は、今とは違い父親としての優しさに溢れていた。だが悲劇は人を変える、悲劇は人を歪める、悲劇は人を堕とす。家族を愛するが故に彼は変わった。もう二度と取り戻す事のできない家族との日常、暖かな日々と愛。

 

パニッシャーは失ったものの大きさ故に今の自警活動をしている。あの日生き残った自分にできる事……自分にしかやれない事をするべく。他のヒーローとは決して相容れない。"殺人者"と罵られようとそれでもパニッシャーは自分の道を進み続ける。それこそが彼が自分にしかできない戦いだと知っているのだから……。

 

 

 

 

 

*************************************************************

 

 

 

 

 

数日後、パニッシャーが廊下を歩いていると、藤丸とマシュが現れた。

 

「おじさん、事情はダヴィンチちゃんから聞いた」

 

どうやらダヴィンチは藤丸とマシュにも夢で見たパニッシャーの過去を話したらしい。パニッシャーとしては触れられたくない自分の過去を広められるのは良い気がしないが、この二人に隠し事は通用しないと諦める。

 

「……」

 

無言でその場から去ろうとするパニッシャーであったが、藤丸がそれを止める。

 

「待ってよ、おじさん。俺は別におじさんがパニッシャーとして犯罪者を殺している事を咎めようなんて思っていない」

 

「……」

 

「俺だって今まで特異点や異聞帯で多くの人を見てきた。その中には悪人もいたし、中には善人もいる。だからおじさんみたいな人間でも俺は……」

 

藤丸の言葉に、パニッシャーは足を止めて振り返る。

 

「……俺の過去はお前には関係無いだろう?」

 

「確かに関係ない。だけど、俺達はもう仲間だろ? それに、もし俺が本当に悪い奴で、俺が悪事を働いた時に、おじさんは俺を裁けるの?異聞帯にある空想樹を切除すれば、その異聞帯は消滅する……。今まで俺とマシュ、カルデアは汎人類史を取り戻さなければいけない立場で幾つもの異聞帯を消してきたから……」

 

そう語る藤丸の表情は暗い。その言葉に嘘はない。しかし、その瞳の奥には悲しみが潜んでいる。空想樹を切除するという事は即ちその異聞帯を滅ぼす事であり、藤丸と彼が所属するカルデアは文字通りの"世界の破壊者"だ。

 

「俺は正義の味方じゃない。単に悪党を駆除しているだけの男だ。俺自身、世の中の犯罪が消える事を願っているかと言えばそうだとしか言えん」

 

「先輩、パニッシャーさん……」

 

パニッシャーは二人に近付き、真剣な眼差しで藤丸とマシュを見る。

 

「立香、そしてマシュ。お前たちは俺のしている事を間違っていると思っているんだろう?」

 

アベンジャーズや他のヒーロー達から忌み嫌われている事実をパニッシャーは嫌という程知っている。所詮法律を無視して犯罪者に裁きを下す自分は邪道であり、ヒーローの道から外れている。

 

「それは否定しません。ですが、私と先輩は決して貴方自身を否定しません」

 

マシュは真っすぐな瞳でパニッシャーを見て答える。ダヴィンチが以前言っていたが、マシュはまず他人の良い所を見つけようとする。善良な英霊も悪辣な英霊も共生しているこのノウム・カルデアではパニッシャーのような存在はさして珍しくはないのだろう。これはアベンジャーズには無い懐の深さだ。

 

「おじさんにもかつて愛する家族がいた事はダヴィンチちゃんから聞かされた。けど……おじさんお奥さんや子供たちはもう……」

 

藤丸の表情は暗く、悲しみに満ちている。藤丸も両親を魔術協会に消され、その悲しみからシミュレータールームに引きこもり虚像の両親と暮らした経験を持つ。だからこそ家族を喪う痛みは誰よりも理解していた。

 

「俺の父さんと母さんも……協会に殺されたから……」

 

藤丸は目から出る涙を腕で拭う。

 

「俺はおじさんのしている事を肯定してはいない。けど決して否定もしない。ただ、おじさんを受け入れたいんだ。それが、俺にできる唯一の事だと思うから」

 

藤丸はどんなに悪逆と残忍で満ちたサーヴァント相手でも、決して目を逸らさずに受け入れてきた。それこそが、藤丸が人類最後のマスターである証であり、このノウム・カルデアのサーヴァント達が従う理由である。あのダヴィンチも"藤丸君は本当に凄い子なんだ"と笑顔で自慢しているほどだ。

 

「立香、お前は本当に大したやつだ」

 

パニッシャーはそう言って藤丸の頭を優しく撫でる。まるで本当の自分の息子の頭を愛おしむかのように。

 

「……ありがとう」

 

藤丸はパニッシャーに礼を言う。パニッシャーの目には藤丸が5歳の少年の姿をしており、パニッシャーを見上げながら屈託のない笑顔を浮かべている。

 

「それからマシュ、お前もこい」

 

「え……?はい」

 

パニッシャーはマシュを呼ぶと、彼女の頭も藤丸の時と同じように優しく撫でた。

 

「マシュ、お前は立香を守ってやってくれ。コイツはお前にとって大切な存在だろう?」

 

パニッシャーの問いかけにマシュは力強く答える。

 

「はい。私の命に代えても、必ず守り抜きます!」

 

マシュの言葉にパニッシャーは笑みを浮かべるとその場を去っていった。

 

「先輩……パニッシャーさんってまるでお父さんみたいでしたね。先輩と私を撫でる時の表情、とっても優しかったです!」

 

「うん。ああ見えておじさんは二人の子供の父親だったからね。もしかしたら俺とマシュを……」

 

恐らく、かつて失った自分の娘と息子の面影を藤丸とマシュに重ね合わせているのだろう。藤丸とマシュは去っていくパニッシャーの背中を完全に彼の姿が見えなくなるまでじっと見つめていた。




伊達にジルドレェやモリアーティ、ヘシアンロボ、コヤンスカヤといった英霊達のマスターじゃないですねぇ。善も悪も中庸も、受け入れてこそのカルデア。キャップやデアデビルじゃ藤丸君やマシュみたいにはいかないんだよな……。


ちなみにマーベル公式データベースに記載されているパニッシャーさんの身長は6フィート3インチ(191cm)とありました。ランスロットと同じ身長だからデカい……(^_^;)


ちなみに他のメンバーは

キャップ→6フィート2インチ(188cm)
ソー→6フィート6インチ(198cm)
トニー→6フィート1インチ(185cm)
だそうです
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