パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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原作からは微妙に違う展開があります。それにしてもパニッシャーが参加するハロウィンイベントってシュール……(^_^;)


第17話 シンデレラ・エリザベート

「トリック・オア・レイシフト!」

 

ノウム・カルデアの管制室にダ・ヴィンチの可愛らしい声が響いた。ハロウィンという年に一度の行事の最中だというのに呼び出されたという事は、微小特異点の発生という事だろうか。人理を救うという目的がある以上、特異点の発生を看過するわけにはいかないのは分かるが、目出度いイベントの日ぐらいは休ませてやれとパニッシャーは思う。

 

「特異点発生ですか、ダ・ヴィンチちゃん!?」

 

パニッシャーの予想を代弁するかのように、藤丸はダ・ヴィンチに対して言い、そんな藤丸に対してダ・ヴィンチは満面の笑みで答える。

 

「うん、ハロウィンパーティーの最中にごめんよ。私も心苦しいのだけどこのタイミングで微小特異点が発生してしまってね。今回もキミになんとかしてもらいたい!」

 

後ろめたさを感じさせない笑顔で言うダ・ヴィンチだが、微小特異点修正という任務はノウム・カルデアでは完全に事務的な作業と化しており、深刻に捉える程のものではないという事か。感覚がマヒしているのか、もう慣れ切ってしまっているのかは分からないが人類最後のマスターとしてこなすべきルーチンワークになってきた感はある。パニッシャーはまだノウム・カルデアに来てから日は浅いが、当の藤丸はそこまで気にしていないように見える。これまで数々の微小特異点を修正してきたのだから、最早こういった任務に関してはベテランの域なのだろうか。そしてそんな藤丸の任務に同行するべく、彼のサーヴァントであるマシュが声を上げた。

 

「では、わたしも―――」

 

「マシュにはやってほしい別任務があるので、残念ながら今回は別行動ってコトになる。同行サーヴァントはこちらで選出しておいたよ」

 

藤丸のパートナーと言うべきマシュの言葉に対して、ダ・ヴィンチは残念そうな表情で告げた。そしてダ・ヴィンチの言葉に対してマシュも暗い表情となる。

 

「そう、なのですね。残念です……」

 

「今回はどういうハロウィンなの?」

 

「んー、特異点の発生地域は中近東だから、ハロウィンとは限らないかもだ。年代的には……おっと3世紀か。かなり古いぞ。マシュは一緒にいけないけど、パニッシャー君を同行させる事にしたよ。先輩マスターとしてしっかりパニッシャー君をフォローしてくれたまえ!」

 

パニッシャーは藤丸が向かう微小特異点へ同行できるようだ。

 

「おじさんと一緒に行けるんだ!やったぁ!」

 

藤丸は嬉しそうな表情で言う。パニッシャーとしても藤丸と一緒に任務に行く方が彼の安全を守れると考えた。

 

「おやおや、随分嬉しそうだね藤丸君。パニッシャー君と一緒に行くのがそんなに嬉しいのかい?まぁ、気持ちは分からなくもないけれど」

 

ダ・ヴィンチはニヤニヤしながら藤丸に言う。藤丸としてはダ・ヴィンチの言い方に少し恥ずかしくなったが、パニッシャーと一緒なのは純粋に喜ばしい事だった。マシュもパニッシャーと藤丸が共に戦える事に安堵していた。

 

「良かったです、パニッシャーさんが来てくださって。パニッシャーさんはマスター適性が高いので、きっと先輩の役に立てると思います!」

 

パニッシャー自身、藤丸が動けなくなった際の代理のマスターとしてノウム・カルデアに身を置いている。それ故にパニッシャーをマスターとするサーヴァントも何名か存在するのだ。藤丸がいない時の為の予備員と言えばそれまでだが……。

 

「現地に着いたらまずは情報収集―――って今更だね。じゃあ早速、行ってみようか!」

 

藤丸とパニッシャーはそれぞれコフィンに入り、レイシフトを行った。レイシフトの感覚には未だに慣れないパニッシャーであるが、藤丸の手前、平静を装う。そしてコフィンが起動し、二人は指定された時代へとレイシフトした。

 

 

 

 

******************************************************:

 

 

 

パニッシャーが瞼を開けると、そこは洞窟だった。殺風景な岩肌が露出した場所であり、薄暗くジメジメしている。

 

「……洞窟」

 

隣にいる藤丸がポツリと呟いた。レイシフトした先が暗い洞窟という状況でも冷静に今自分がいる場所を観察分析している。流石は歴戦のマスターといった所だろう。

 

「ハロウィンの装飾は見当たらない……。今回はこういう特異点なのかな?」

 

そして藤丸とパニッシャーはお互いの通信機を操作するが、カルデアの管制室とは繋がらないようだ。

 

「まずいな……。カルデアと連絡が取れないし、同行するサーヴァントもいない……」

 

状況は圧倒的に悪かった。通信する事もできず、同行してくれる筈のサーヴァントも見当たらない。

 

「こういう状況に陥るのは珍しくないのか?」

 

「うん、結構あるよ。カルデアが用意してくれたサーヴァントとの相性とか考えてくれるから、あまり心配はしないんだけど……。土地との縁とかの関係でサーヴァントが同行できない例は珍しくないんだ」

 

聞く所によれば藤丸は微笑特異点の修正任務で何度もこういった状況に陥っているらしい。パニッシャーは自分が同行してよかったとホッと胸を撫でおろす。が、その時洞窟内に響く複数の足音を聞き、藤丸を引っ張って岩場に身を隠した。音のする場所を見てみると、パンプキンの被り物をした鎧の騎士達が洞窟内を闊歩しているではないか。見た目からしてどう見てもこちらにとっての味方や有益な情報提供者ではない。

 

(そこかしこに南瓜頭のエネミーがいる!)

 

(最悪だな……。連中はどう見ても友好的な奴には見えんし。あの数を相手にするのは俺でも無理があるぞ……!)

 

藤丸とパニッシャーは敵の数の多さから自分達が不利だと悟る。

 

(おじさん、ここは逃げよう!俺とおじさんだけじゃあいつ等の相手はできない!取り敢えずここを離れよう!)

 

(了解だ……!)

 

藤丸とパニッシャーは気付かれないようにその場を離れ、洞窟の外に出た。そして目の前に建つ建築物に目を奪われる。見る限り近世のヨーロッパの貴族の屋敷がそこにあった。今回のレイシフト先の年代は3世紀と聞いていたが、パニッシャーと藤丸の目の前に聳える屋敷はどう見てもその時代のものには見えない。

 

「3世紀の建物には見えない……」

 

「同感だ。レイシフト先の年代を間違えたんじゃないだろうな」

 

パニッシャーは行き先の設定ミスを疑っていたが、その時だった。少女の歌が聞こえてくるのだ。

 

「1人~♪ 寂しくお掃除~♪ お姉さまとか~♪ お母様とか~♪ そういうのは何故だか見かけないのだけど~♪ 気付いたらココにいたのだけど~♪ だいたい~分かって~いるの~♪ 私は~♪ 世界で~1番~美しい~お姫様~♪ アイドルでもあるの~♪ つまり~私は~♪ 界で~1番~美しい~シンデレラ~♪」

 

目の前で歌っている赤髪の少女には見覚えがある。そう、カルデアで召喚されたサーヴァントであるエリザベートだ。だが今の彼女は普段とは違い、みすぼらしい恰好をしている。

 

「エリちゃん!」

 

藤丸は見知った顔でありエリザベートに声をかけた。そして彼女も声をかけた藤丸の方を向く。

 

「あら?そこにいるのは子イヌじゃないの。いいわいいわ。役者が揃ったってコトなのね!」

 

エリザベートは藤丸の姿を見るや嬉しそうに笑う。"役者が揃った"とはどういう意味なのだろうか。

 

「そして隣にいる黒いコートの男は……確かパニッシャーとかいうヤツね」

 

エリザベートは面白くなさそうな表情でパニッシャーを睨む。カルデアのサーヴァントの中には未だにパニッシャーを快く思わない者も多いので、エリザベートの反応も仕方ないのかもしれないが……。エリザベートの歌は音響兵器だと聞いてはいたが、聞いている限りではとてもそのような物には見えない。

 

(おい、立香。あの小娘の歌は音響兵器だと聞いたんだが?)

 

(あぁ、それか。エリちゃんは他人の為に唄う時はそこまで酷くはないんだ。……反面自分の為に唄う時は……その……)

 

藤丸の表情は苦笑いだった。パニッシャーも察したのか、それ以上は何も言わなかった。目の前のエリザベートは二人をよそに唄を歌っている。

 

「どうしたの~♪ なにを黙っているの~♪」

 

(この歌、すごく上手!ではないかもだけど。鮮血魔嬢が発動しちゃうほどのことはない?)

 

「ねえエリちゃん」

 

藤丸は歌っているエリザベートに尋ねると、彼女は歌いながら答えてくれる。

 

「なあに~♪」

 

「何で唄ってるの?」

 

「そんなの見て分かるでしょうに。今年はミュージカル路線で行く(・・・・・・・・・・・)ことにしたから!アイドルといえば歌!歌といえばそう、ミュージカル!ミュージカル作品で大成するアイドルって、斬新だし素敵でしょう?なのでアンタも要所要所で合わせるように!いいわね?い・い・わ・ね~♪」

 

「なるほど~♪」

 

エリザベートのノリに合わせて藤丸は歌いながら答える。そしてそれを見たエリザベートは満足そうに微笑んだ。

 

「そうそう。まさにそれよ、子イヌ!私は~♪ 世界で~1番~美しい~お姫様~♪ でもね~♪ 今は~屋敷のお掃除中~♪ 自分の才能にも気付かずに~♪ ひたすらに~お掃除を~しているの~♪」

 

エリザベートの恰好と彼女の唄の歌詞を聞く限りでは、所謂「灰かぶりの姫」を演じているのだろう。

 

「そこに現れたのがyou!そう、1人の魔法使い! 知ってるわ。私に魔法をかけてくれるんでしょう?」

 

「魔法というと、聞いた話では何か凄いやつ……」

 

「なにそれ?シンデレラといえば、家事をしている女の子の前に魔法使いが現れて、えいやっと魔法を使って!女の子に素敵なドレスをくれるものなの。というわけで、さあ!早く早く、ハリアップ!」

 

エリザベートは藤丸に対して魔法を使うようにせかしてくるが、彼にそんな技術は無いのでどう反応してよいのか困り果てている。

 

「さあって言われても……」

 

だがエリザベートは尚もしつこく魔法を使うように要求してくる。

 

「もう、早く魔法使って!つーかーってー!何でもいいからやりなさい!私のシンデレラストーリーが、ここで終わっちゃうじゃない!」

 

なんという我儘な少女だろうか。エリザベートは藤丸に詰め寄り、無理やりにでも魔法を使わせるつもりだ。余りの彼女のしつこさに、藤丸もとうとう根負けしたように、適当な呪文を唱え始める。

 

「チチンプイプイ……」

 

「ちょっと!何よそのテキトー過ぎる呪文は!」

 

だが藤丸が呪文を唱えた瞬間、エリザベートの身体は眩い光に包まれた。するとエリザベートの着ていたみすぼらしい衣服はたちまちの内に水色の美しいドレスへと変容していき、彼女の両足には童話で伝えられているシンデレラを象徴する宝石のように輝くガラスの靴が履かされていた。エリザベートのドレスのスカート部分の下には所謂パニエがあり、スカートを美しい形に広げさせていて、まるで妖精がダンスをしているかのような姿に変身していた。頭にはティアラがあり、正しく今のエリザベートはシンデレラそのものだった。

 

「ほんとに衣装が変わった―――!?」

 

藤丸は適当に自分が唱えた呪文によってエリザベートが美しい水色のドレスを身に纏った事に驚きを隠せないでいた。

 

「やったぁ!いいわよ子イヌ、やるじゃない!見なさいな。ふふふふ、このドレス姿!純粋無敵……傲慢無垢……まさに完全無欠のエリザベート・シンデレラよ!」

 

自分が身に纏っているドレスに喜びを隠せないエリザベートであるが、藤丸はある重大な事に気が付き、顔を真っ赤にした。

 

「あら?どうしたの子イヌ。顔を真っ赤にして。私のこのドレス姿がそんなに見惚れるほど綺麗だって言うの?そうでしょそうでしょ?まあ当然よね。なんて言ったって、私は世界で一番可愛いアイドルなんだし!」

 

エリザベートは自分に酔い痴れている。だが藤丸が赤面している理由は別にあった。

 

「エリちゃん……その……その……」

 

藤丸は顔を背けながら言う。そんな藤丸の様子に首を傾げるエリザベート。

 

「どうしたのよ?こんなに美しくなった私が目の前にいるっていうのに、目を逸らすってどういうこと?」

 

エリザベートは藤丸に詰め寄ると、藤丸はエリザベートから逃げるように距離を取る。

 

「エリちゃん……その……言い難いんだけど……」

 

「なによ?言いたい事があるんならハッキリと――――へ?」

 

エリザベートはふと顔を降ろすと、自分の着ているドレスに関する重大な事実に気が付いた。そしてエリザベートはその事を知った瞬間身体をプルプルと震わせる。

 

「ねぇ……子イヌ……これはどういう事……?」

 

エリザベートが着ているドレスのスカート部分にはパニエが付けられており、それによって彼女の股間部分が見える形となっているのだが、その股間部分を覆う生地が―――――無いのだ。つまりエリザベートは自分の大事な部分を藤丸に見せている状態なのだ。

 

「…………見たでしょ?」

 

地の底から湧き上がるような声音で尋ねるエリザベート。藤丸はブンブンと首を振るが、「嘘つきなさい!!絶対見てるでしょ!!」とエリザベートは怒りを露わにする。

 

「信っじらんない!!乙女の大事な部分だけわざと見えるように細工するなんて!!これじゃあまるで変態よ!!」

 

エリザベートは怒りを藤丸にぶつけるが、それは藤丸からすれば完全な濡れ衣である。

 

「いや違うんだよエリちゃん!俺が呪文を唱えたらこうなっちゃっただけで……」

 

藤丸が必死に弁明するがエリザベートの怒りは収まらない。

 

「うるさい!この変態!スケベ!最低!信じてたのに!アンタの事、ちょっとは見直してたのに!」

 

エリザベートは涙目になりながら藤丸に罵声を浴びせる。藤丸は何とか誤解を解こうとするが、エリザベートは聞く耳を持たない。そこにパニッシャーがフォローに入る。

 

「待て、立香に対して魔法を唱えろと要求したのはお前だろう。それに立香が呪文を唱えてドレスを着る事ができただけでも僥倖とは思わんのか?」

 

「幾ら美しいドレスを着ても、これじゃ変質者じゃない!ああもう!」

 

エリザベートは両手で露出した自分の股間を覆う。

 

「もうヤダァーーーーーー!!!」

 

エリザベートの悲痛な叫びは周囲に響き渡った。スカート部分の下のパニエを外してスカートを降ろしたとしても股間部分は見える構造になっている。

 

「お、乙女の大事な部分が見えちゃうなんて、そんなの、そんなの恥ずかしくて生きていけないわよ!」

 

エリザベートは羞恥心に耐え切れず、その場で泣き崩れてしまった。エリザベートの悲しみは尤もだが、藤丸には彼女を慰める術を持ち合わせていない。エリザベートを落ち着かせるために、藤丸は彼女に何か言葉を掛けようとする。

 

「その……エリちゃん。ゴメン……。俺の呪文が未熟だったから……」

 

藤丸は出来る限りの謝罪の言葉を述べるが、エリザベートは首を横に振る。

 

「いいのよ、子イヌ。私も少し取り乱し過ぎたわ。ごめんね。」

 

エリザベートは涙を拭うと笑顔を見せる。

 

「でもさっきの事は忘れないわよ。子イヌがあんなにエッチな男の子だとは知らなかったわ」

 

「いや……だからそれは――」

 

再び藤丸は弁解しようとするが、「分かった分かった!謝らないで!別に怒ってなんかいないんだから」と言いつつ立ち上がった。そしてエリザベートは藤丸に優しく微笑みかける。

 

「そうよね。だって私は世界で一番可愛いアイドルなんだもの!例えどんな辱めを受けても平気よ!」

 

あまりの立ち直りの早さに藤丸は感服した。とはいえ流石に目のやり場に困るので、持参してきた自分の下着をエリザベートに渡す。

 

「男モノの下着だけど、これで良ければ……」

 

エリザベートは藤丸から渡された下着を受け取ると、それを穿く。

 

「ふぅん。まあまあサイズが合うじゃない。」

 

エリザベートは満足げに呟いた。藤丸とエリザベートでは下着のサイズからして違うと思うのだが、何故か藤丸のボクサーブリーフはエリザベートにピッタリと合っていた。

 

「まあいいわ。子イヌの下着で我慢してあげる。さあ分かってるわね子イヌ。これから……」

 

「これから?」

 

「チェイテ城―――いえ、チェイテシンデレラ城を探し出すわ!どこにあるかは分からないけど、きっとあるわ!だって今は――ハロウィンなんだからね!」

 

今がハロウィンだから―――というのも無茶苦茶な理屈ではあるがここは微小特異点。何が起きても不思議ではない。ハロウィンに限らずこれと似た現象はこれまでに何度もあったのか、藤丸もそれを受け入れている。

 

「無茶苦茶な理屈ではあるけど納得してしまう……」

 

「ところで私、どうしてあんな場所で箒を動かしていたのかしら……?まぁいいわ。ともかく、シンデレラといえばお城よ!行くわよ子イヌと黒イヌ!」

 

黒ジカというのは恐らくパニッシャーの事を差しているのだろう。

 

「おい、勝手に変なネーミングを付けるな」

 

「うるさいわね。アンタの名前なんてどうでもいいのよ。ほら早く行くわよ子イヌと黒イヌ!」




エリちゃん立ち直り早い……。そら大事な部分見えたら怒るよね。
そしてエリちゃんから黒ジカ呼ばわりされるパニッシャーさん……
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