パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
エリザベート、藤丸、パニッシャーの3人はこの特異点のどこかにあるとされる"チェイテシンデレラ城"を探しに歩き回ったが、探索している内に広大な砂漠へと辿り着いた。辺り一面が砂、砂、砂で覆われた正真正銘の砂漠地帯。
「……見渡す限りの、砂漠!」
藤丸は自分達が歩いている砂漠を見て叫び、隣にいたエリザベートも膨大な砂粒の地平が続く砂漠を見てガッカリしているようだ。
「なんでよー!!南瓜の山もなければ、お菓子もなし!ぜんぜんハロウィンって感じじゃないし……。何より私のお城どこ!?チェイテシンデレラ城がないと~♪シンデレラがシンデレラになれないわ~♪」
歌うように話すのは今のエリザベートの特徴のようだ。
「シンデレラといえばお城と王子様だよね」
「そう!王子様も重要ね!でもお城がないと王子様も出てくるはずないじゃない……うう……」
藤丸の言う通り、シンデレラという物語において城と王子様は切っても切り離せない。しかし、童話における城は悪人が住む場所である事も多い。白雪姫に登場する継母の魔女が住んでいるのは城だし、眠れる森の美女のヴィランであるマレフィセントが住むのも城だ。
「エリザベート、一つ聞きたいんだが仮にお前を迎えにきた王子様が悪人である場合お前はその王子を受け入れるのか?」
パニッシャーは何気ない質問をしてみた。
「何よ黒ジカ。急にそんな事聞いてきて。……そうね。私を助けにきてくれた人なら、悪い人でない限り受け入れるわ。」
エリザベートは一瞬だけ考えると、パニッシャーの問いに答えた。流石のエリザベートも外道や悪人を許容するほどに倫理観が狂っているというわけではないようだ。……確か彼女の属性は混沌・悪だった筈だが、属性イコールそのまま悪人や善人というわけではないのがカルデアのサーヴァントの特徴だ。今のシンデレラ・エリザベートの場合、属性自体変わっている可能性があるのだが、彼女自身は言動に反して意外とまっとうなのかもしれない。
「ならいいんだ。気にしないでくれ」
「アンタって悪人に対しては容赦ないけど普通の人間には優しいタイプよね。そういうところは嫌いじゃないわよ。あんまりアンタの事を良く思ってるわけじゃないけど、そこだけは認めてあげる」
藤丸は眼前に広がる砂漠を見ながら今回のレイシフト先の年代と場所を思い出す。
「そういえば確か……レイシフト先は中近東だったはず?」
「ああ~♪どこへ~行って~しまったの~♪私のお城~♪」
目当ての城が見当たらない事を嘆くエリザベート。その時、こちらに近づいてくる足音が聞こえた。砂を踏む音からして人間のものだろう。藤丸達は警戒態勢を取る。
「………この気配、サーヴァントか」
目の前に現れた女性を前にしてエリザベートと藤丸は呆気に取られる。
「へ?」
「誰?」
現れたのは極端に露出度の高い水着を着た褐色の美女だった。頭には純金製のティアラを被り、水着以外にもボロボロの布と金製の鎖を身体に巻き付けている。銀髪の長い髪の毛に青い瞳。右手には紅い槍を持っている。褐色の水着美女は藤丸達に歩み寄ると、エリザベートの方を睨みながら叫んだ。
「ならばこの事態の元凶と見たぞ。―――そこの女!何者か!大人しく、正体を明かすがいい!」
この褐色の水着美女もサーヴァントなのだろう。ともかく色々な意味でデンジャーなサーヴァントが現れたものだ。
「ちょっとちょっと、いきなり何!?……こほん。でも、この突発的な舞台に対応できてこそ真のミュージカルアイドル。ならば歌で返すのが道理というものね。そちらこそ~誰なのかしら~♪忘れてたらごめんなさい~♪」
エリザベートはこのような状況でもミュージカルアイドルとしてのプロ意識?を忘れずに、突然現れた水着の美女に対して歌いながら答える。しかし当の彼女はエリザベートを怪しい者だと思っているのか、警戒心を解こうとしなかった。
「……怪しい奴!」
(怪しいといえば、その……)
藤丸の心の声を代弁するかのように、エリザベートは水着の美女に対して言い返す。
「むっ。怪しさで言えばアンタのほうだってすこぶる怪しいわ。ビリビリの服で、鎖で……まるで逃げ出してきた囚人みたいな……」
「―――私の姿を憐れむな」
「?別に憐れんではいないけど。態度とか雰囲気から、アンタ自身がそう思ってないのはなんとなくわかるし。共演者の内に秘めた輝きを見抜くのもミュージカルスターの能力。漏れ出る高貴さ……生まれつきの品格……そういうの、感じ取れるわ。ぶっちゃけ奴隷どころか、かなりいい身分の存在でしょう、アンタ?少なくとも人の上に立つ存在だってことくらいは……わ~か~る~わ♪」
エリザベートの言葉を聞いて水着の美女は目を丸くした。
「ほう、わかるのか……?」
「それよりサーヴァントっていうなら、アンタだって同じでしょう~♪こっちにとっては、アンタこそが突然出てきた怪しげなサーヴァントー♪いきなり喧嘩腰になる前に、すべきことがあるんじゃない?」
「確かに……そうだ。気が逸っていたのかもしれない。謝罪しよう。女王としては即断即決であるべきだが、今は思慮深く動かねばならんのだろうな。ああ、そうだ。この事態の元凶たる存在について、風の便り……のようなものを聞いていないワケでもなかったのだ。いきなり出会ったサーヴァントがその元凶だと勝手に思い込むとは、我ながら短絡的にも程がある。元凶はなんという名だったか。うーん……もう少しで思い出せそうな……。そう、確か……エ、エリ……」
が、水着の美女の言葉が終わらない内にエリザベートが声を掛けた。
「落ち着いたところで今のうちに自己紹介でもしておこうかしら?主役の紹介タイムこそ序盤にたっぷりじっくり行われるべきものだものね!それすなわち観客の視線独り占めの独演パート。1時間くらいあってもいいと思うわ」
「いや、1時間は長すぎだろう……」
完全にワンマンショーでしかないとパニッシャーは突っ込んでしまう。そしてエリザベートは歌いながら自己紹介を始めた。いかにもミュージカル風な名乗り口上で。
「ららら~、私は、スーパーミュージカルアイドル~♪エリザベート・シンデレラ~ァアア♪」
「うん、そうだ、
水着の美女はエリザベートの名前を聞くと、一瞬沈黙する。
「やっぱり貴様かぁぁぁ!!」
「なになに!?ホントに知らないんだけど私!」
「それで誤魔化せるとでも思っているのか!この砂漠……麗しきパルミラ帝国の異常は私が正さねばならない。なんとしても。
そして水着の美女は自分の真名を藤丸達に名乗り上げた。気高く、誇りに満ちた女王のように。
「私はゼノビア。パルミラの戦士女王ゼノビア!私の国を返してもらうぞ、エリザベートとやら!」
最早この状況では戦闘は避けられないようだ。やむを得ず藤丸は戦闘開始の声を上げる。
「せ、戦闘入りまーす!」
「悲劇的~♪やっぱり一度は戦う運命なのね~♪」
エリザベートは相変わらずの調子だ。そしてゼノビアは自分に身につけられた装飾品の剣を持ち、躍りかかる。動きにくい服装をしている割には意外に機敏だ。しかしエリザベート・シンデレラはミュージカルのような動きで華麗に回避した。エリザベート・シンデレラはくるりと回転しながら、長い脚を用いた蹴り技を繰り出す。
「はっ!」
エリザベートのハイキックが見事に決まり、ゼノビアは吹き飛ばされる。しかし彼女はすぐに体勢を立て直す。そして突然砲台……バリスタのような兵器が出てきたかと思うとゼノビアはそれに乗る。
「女王が命じる、撃て!!」
バリスタからは魔力による砲弾が放たれ、エリザベートに直撃した。否、直撃はしていない。間髪のところでエリザベートは身体を捻り、紙一重で避けていた。
「中々やるじゃない!だったらこちらも~♪」
エリザベートは歌いながら踊り始めた。すると突然彼女の横に白い馬車が現れたではないか。サーヴァントというのは自分の技を展開する際にとんでもない物を召喚してくるとは聞いていたが、まさか馬車とは。
「灰かぶりのお通りよ~♪」
そしてエリザベートを乗せた馬車は猛スピードでゼノビアに突っ込んでいく。白い馬車の突撃を正面から受けたゼノビアは勢いよく吹っ飛んでいった。
「くぅ……なんて力……だが、負けるわけにはいかない……!」
だがエリザベートは追撃の手を緩めない。彼女は自分が履いているガラスの靴を勢いよくゼノビア目掛けて放ち、直撃したゼノビアは大ダメージを受けてしまった。そして間髪入れずにエリザベートはジャンプしつつ空中に舞ったガラスの靴を再び履くと、そのまま踵落としをゼノビアに決めた。仮にもシンデレラが大切なガラスの靴を武器にするというのはどうかとパニッシャーは思ったが、それでもエリザベートの戦闘力の高さに驚きを隠せない。そしてエリザベートの一撃を受けたゼノビアは地面に叩きつけられてしまう。
「ぐぅ……!?舐めるなぁ!!」
だがゼノビアは諦めず、左手に持った槍、右手に持った剣の同時攻撃をエリザベートに叩き込む。容赦無き苛烈な攻撃を受けてエリザベートは吹っ飛ばされた。
サーヴァント同士の戦いの速度は人間の動体視力で追いきれるものではないが、歴戦のマスターである藤丸と、歴戦の戦士であるパニッシャーはゼノビアとエリザベートの戦いをしっかりと捉えていた。
「きゃぁぁ!?」
エリザベートが怯んだ隙にゼノビアは立ち上がり、再び攻撃を仕掛けようとする。
「く……強いわね……!ちょっと待って~♪可能なら話し合いで~♪」
「唄うな。ふざけるな。ふざけている=貴様が元凶と考えても差し支えはなかろう」
何とも滅茶苦茶な理論を振りかざすゼノビアはエリザベートに攻撃を加えようとする。が、そこに藤丸が立ちはだかる。サーヴァント同士の戦闘に生身の人間が割って入る事の意味を知っているにも関わらず、無駄な戦い、無意味な諍い、不毛な争いは彼も好まないのだろう。
「ふざけてはいません!どうか話を聞いてください!」
そして自分とエリザベートとの闘いに割って入った藤丸を見て、ゼノビアは目を丸くした。
「むう。ただの人間でありながら我らの間に割って入るとはなかなかの度胸。いいだろう、少しだけだぞ」
ゼノビアはサーヴァント同士の戦いに割って入ってきた藤丸の勇気に免じて話し合いに応じてくれたようだ。そして藤丸はエリザベートの方を見る。もしかしたらこの特異点の原因は彼女が関係しているのかもしれない。それはエリザベート自身の体質ないし性質が関係しているからだ。が、それとは無関係の事に藤丸は目を見開いた。
(……!!)
「な、なによ?最初の自己紹介パートで私の魅力に既にメロメロだったってわけかしら子イヌ。それはいいけどちょっと情熱的に見つめすぎじゃない?この私でも照れるときは照れるわよ?」
が、エリザベートは藤丸の視線が下の方である事に気づく。嫌な予感がしたエリザベートは恐る恐る視線を下げてみると……。
「――――――」
今のシンデレラ衣装に着替えた際、股間を覆う生地が無かったので仕方なく藤丸が持参していたボクサーブリーフを履いていたのだが、そのボクサーブリーフが先程のゼノビアとの戦闘の影響で無くなっていたのだ……。サーヴァントが纏う霊衣と違って普通の衣類なのでサーヴァント同士の戦闘で無事な筈がないのだが、藤丸は年頃の少年だからか、顔を真っ赤にしながらエリザベートから目を逸らす。
エリザベートは慌てて自分の下半身を隠すように両手で覆った。
「み、見ないでぇ~~~~~~♪」
エリザベートは恥ずかしさのあまり、その場でしゃがみ込んでしまった。
「もう!なんでこんな時に下着が破れるのよぉ~~~~~~~~~~♪」
「え、エリちゃん!もう一つ持参してきてるからこれを履いて!」
藤丸は慌てて予備のボクサーブリーフをエリザベートに手渡した。エリザベートは急いでそれを履き、何とか事なきを得た。
「また小ジカに見られた……。これで二回目……」
エリザベートは頬を赤く染めながら藤丸を睨む。
「ごめんなさい……!」
エリザベートは藤丸をジッと見つめる。
「……この責任は~♪取ってもらうからね~♪」
立ち直りが異常に早いエリザベートは藤丸に詰め寄った。藤丸の顔が一気に青ざめていく。エリザベートは藤丸の耳元に口を近づけると、囁くような声で言った。
「今夜は寝かせてあげないんだから♪」
エリザベートの言葉を聞いた藤丸は一瞬にして顔が茹でダコのように紅潮していく。そしてエリザベートはそんな藤丸の反応を楽しむかのようにニヤリと笑っていた。気を取り直して藤丸はゼノビアが襲ってきた理由について意見を述べた。
「……ひょっとして分裂しちゃったとか?」
「う。そ、それを言われると言葉に詰まるわね。した記憶はないけど自然発生自然分離も有り得るし……。全否定することは……難しいわね」
「本当にエリちゃんはフリーダムだね……」
藤丸の言葉を聞いたゼノビアがジト目でこちらを睨みながら槍を構えた。
「つまり……やはり元凶……?」
「ちーがーうーわーよー!百歩譲って、アンタの聞いた通り元凶の名前がエリザベートだったとしても、それは私じゃないわ。多分エリザベートはエリザベートでも別のエリザベートよ」
「お前は何を言っているんだ?同じサーヴァントがそう何人もいるか!サーヴァントの仕組みとしては有り得ることでも、そうポンポンと発生する事態ではなかろう。しかも都合よく同じ場所にいるなど……」
ゼノビアはエリザベートの言葉を信用できていないようだ。確かにサーヴァントというのは同一人物であろうとも別側面という形で、異なるクラスで喚ばれる事など珍しくないが、都合よく特異点に何人もいるという状況は有り得ないのだろう。しかし藤丸はエリザベートを擁護する。
「エリちゃんに限ってはそうとも言い切れない!」
「えー……」
「そうよ、この私は史上稀に見る~♪視線の独占禁止法違反・ミュージカルアイドルなんだから~♪」
エリザベートがそう言うと、どこからか歓声が聞こえてきたような気がしたが多分空耳だろう……。
「……今の視線の独占禁止法違反、ちょっと我ながら良かったわね……。またどこかで使いましょう。めもめも」
(おい、立香。俺は段々このノリについていくのがしんどくなってきたんだが……)
(おじさん、ここは我慢だよ)
藤丸はパニッシャーに小声で話しかける。
(……正直ウェイドの野郎といるよりも疲れる気がする)
(??ウェイドって誰?)
(忘れろ、こっちの話だ)
「その歌はともかく……そうなのか?ホントに?」
ゼノビアはエリザベートが分裂したという言葉が嘘とは思えないのか、聞き返してくる。
「マスター・藤丸立香の名にかけて信じてください、お願いします!」
「むう、おまえの目……まったく嘘のない目だ。これは信じざるをえない、か。ひとまずはな。いいだろう、話を聞かせてみろ」
藤丸はゼノビアに対して自分達が特異点の修正の為にカルデアからレイシフトしてきた事、そしてチェイテシンデレラ城に向かっている事を説明する。
「というわけで、チェイテシンデレラ城に向かってるのよ~♪理由はハロウィンだしシンデレラだから。そうしなきゃ駄目なの。ゴールがそこなのは確実」
エリザベートも真剣な眼差しでゼノビアに対して自分の目的を告げる。
「ふむ。その城に事態の元凶……もう一人のエリザベートがいる可能性は高いか。そして城はこの砂漠の先、遥か彼方に見た記憶がないわけでもない」
「ホント?なら案内して!退屈な移動も~、歌と踊りで楽しめる~♪それがミュージカルの醍醐味よ~♪」
エリザベートはチェイテシンデレラ城の情報を得て、歌いながら喜びを口にする。
「私が召喚された理由は、おそらく時代と土地の縁だろう。何故なら、この時代には――私の国、パルミラが存在するはずだからだ。そして私の記憶が確かならば、私の国はこんな様子ではなかった」
「……?」
ゼノビアの言葉に不思議そうな顔をする藤丸。
「まず、件の城だ。これがまた随分とメルヘンだ。国土の半分は、奇妙な森になっているらしい。そしてこの砂漠……見覚えがない。なんというか、生前に見た砂漠とは趣が違う。もちろん、ここは間違いなく私の国パルミラだ。それは感覚的に理解できている。その一方で――――どうしようもなく歪んでいる、とも。歪んでいるなら正さなくてはならない。何者かに襲われているなら守らねばならない。具体的に言うと!あの邪悪な城を!完膚なきまでに叩き壊す!」
ゼノビアは自分の国であるパルミラを歪めてる元凶である城を破壊すると宣言するが、当のエリザベートはそれに対して反論する。
「……そこまでする必要はないんじゃないかしら~♪」
しかしゼノビアは祖国パルミラに聳える特異点の原因となっている城を認めないとばかりに言う。
「私の領地、私の国に、あのような悪趣味かつメルヘンな城を置き続ける訳にはいかない。有効射程距離に入り次第、バリスタで跡形もなく吹き飛ばしてやる……!」
自分の国をおかしくしている元凶を破壊するのは最もな理屈だ。しかしエリザベートはゼノビアのこういった考えに異を唱える。
「せめて穏便に引っ越しという訳にはいかないかしら?あれ、一応私のお城!」
「人の土地に勝手に上がり込んできた以上、敵対したと認識しても仕方なかろう。……今はこの藤丸立香の顔を立てておくが……。民を守るため、慈しむためならば私は一切の妥協をせず、叩き潰す。かつて愚かなローマの皇帝から民と国を守ったのと同じようにな」
「ローマと戦った国の女王様、なんですね」
藤丸はゼノビアがローマと戦った国の女王である事を知り、納得した。
エリザベート:「ふーん。アイツとも知り合いかしら?ローマ皇帝っていってもたくさんいるけど」
「ローマ皇帝と親しいような口ぶりだ。まさかアウレリアヌスではあるまいな」
「そんな名前の皇帝は知らないし、赤いのはライバルよライバル!でも~、ミュージカルスキルを手に入れた私のほうが~♪何周ぶんも、先に進んでいるのは~、確・実~♪」
赤いの……というのはネロの事であろう。
「まあ、ローマ皇帝といっても玉石混淆だろう。皇帝全てを唾棄するつもりはない。ともあれ、一緒に行くのに異論はないぞ。協力して事態の解決にあたろうではないか」
とりあえずゼノビアの強力を得る事はできた。
「助かります」
藤丸はゼノビアに対してお礼を言う。
「さて……城の方角は大凡わかってはいるが、問題が三つある」
「なんですって、三つも~♪一つくらいまけてほしいわ~♪」
問題の多さにエリザベートは落胆した様子を見せている。解決すべき問題が多いのは喜ぶべき事ではないのは当たり前なのだが。
「……まあ、まとめれば一つと言えるのかもしれないが」
「一つならいいのよ~♪」
エリザベートが言うと、ゼノビアは城まで行く為の道筋の説明を始める。
「こほん、まず一つ、この砂漠はある特定のルートを辿らなければ、ひどい砂嵐で進めない。二つ目……私も一度城のほうに向かってはみたのだが、ルートの先には高い岩山が立ち塞がっていた。山越えはかなりの労苦を伴うだろう。藤丸立香がいるのなら、なおさらだ。進むなら山の中腹。洞窟だ。岩戸に閉ざされているが、隙間に空気の流れを感じた。きっと山向こうまで洞窟が続いているのだ。もし岩戸を開けることができれば、城への道は拓けよう。そして三つ目は……まあ、これは我らにとってはそれほど障害ではないのかもしれない。風の便りで聞く限り、このあたりには多くの盗賊たちがいるらしい。出会ってしまえば邪魔をされるかも……というところだ」
ゼノビアの説明を聞いたエリザベートは力づくで盗賊と戦うべきだと主張する。
「そんなの、話し合い(物理)で友達にしちゃえばいいんじゃない?ミ・ナ・ゴ・ロ・シ~♪じゃなくて、ミ・ナ・ヨ・ロ・シ~♪」
「ああ。私の国で盗賊行為とはけしからん。見つけ次第、身柄を拘束し裁きを受けさせよう。パルミラの風紀と治安は私が守る!」
ゼノビアもエリザベートも、盗賊に対しては穏便に済ませる気のようだ。しかしパニッシャーは違う。犯罪者であるならば、即刻処刑するつもりだ。
パニッシャー:「甘いぞお前たち。盗賊なんざその場で銃殺刑でいいじゃねぇか」
そう言ってパニッシャーは懐からウージーを取り出し、エリザベートとゼノビアに見せつける。
「盗賊だからって殺してもいいなんて、そんなのおかしいわ~♪」
エリザベートはパニッシャーの考えに異を唱え、ゼノビアはそんな二人を見て呆れた様子を見せる。
「やれやれ。血の気が多すぎるのも考え物だな。パルミラは法の下で秩序が保たれている国。無闇に人を殺すなど、あってはならない事」
「俺のやり方なら裁判も刑務所も不要で、エコロジーだ。無駄な税金を犯罪者の為に使わなくて済むしな。お前等は古代や中世の生まれの癖に、罪人に対する処罰が甘すぎないか?」
「罪人だからって~♪勝手に殺していいわけがないのよ~♪」
エリザベートは相変わらず歌を歌いながら、パニッシャーの意見に反対している。
「おじさん、できればこう……殺さないでほしいんだけど……」
パニッシャーは藤丸の言葉を聞いて、少し考える。
「……出来る限り努力はしてやる。だが抑えがきかない時があるかもしれんぞ?」
「それでもいいよ。ありがとう」
藤丸はパニッシャーに笑顔を見せた。
「よし、出発だ!」
ゼノビアがそう言うと、藤丸、パニッシャー、エリザベートは一緒に砂漠を移動し始める。
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彷徨海からおよそ数百キロ離れた地点。太陽が燦々と降り注ぐ白紙化した地球の表面にドクター・ストレンジは佇んでいた。見渡す限り何もない地球。アスファルトのように平らになった白い地面は、かつて存在した文明や自然の痕跡すらも消し去ってしまった。ストレンジはそんな景色を見ながら、待ち合わせの人間が来るのを待つ。
「我々がいた世界とは異なり、ここでは本当に地球全土が漂白されているのか……」
そうストレンジが呟いていると、後ろから可愛らしい声が聞こえてきた。
「わざわざこんな所で待ち合わせなくてもよかったんじゃありませんか?ドクター・ストレンジ」
振り返ればそこにはアトラス院に属する錬金術師、シオン・エルトナム・ソカリスがいた。アンダーリムの眼鏡をかけ、紫色の長い髪の毛を両サイドで結んでいる美少女であり、汎人類史の生き残りである。
「呼び出して済まない。だが彷徨海では話せない内容だ」
「それは分かりますけど、幾らなんでも離れすぎじゃあないですか? ここまで来るのだって簡単じゃなかったんですよ」
シオンは文句を言いながらも、ストレンジに付いていく。
「彷徨海では盗み聞きされる恐れがある。私は今危険な綱渡りをしている状況だ」
「……アベンジャーズの方々は本当に我々に助力する気があるのでしょうか?正直に言って彼らの態度はあまりにも不誠実かつ傲慢で、協力的ではありません」
シオンは自分の眼鏡を片手でクイッと上げながら、アベンジャーズに対する不満を口にした。
「まあ、あのような露骨な態度では協力する気はないと見られても仕方ないだろう。前置きもなんだ、ここからは互いに腹の内を見せ合おうじゃないかね」
ストレンジがそう言うと、シオンは口をニカっとさせた。まるで待ってましたといわんばかりの表情だ。
「待ってました!さぁ、ドクター・ストレンジ。貴方の話を聞かせてください」
シオンはそう言いながら、ストレンジに詰め寄ってくる。
「パニッシャー氏の為に私の協力の下、聖杯を加工したブレスレットを製作した事をアベンジャーズの皆さんにも伝えていないんですからねぇ?」
意地悪そうな笑みでシオンはそう言った。パニッシャーに対して聖杯のブレスレットを渡した際、さも自分の力だけで作り上げたかのように伝えたが、実際はシオンの協力の下で作られた。
「アトラス院の錬金術師である君の協力でなければアレを作れない。君の錬金術の腕前は至高の魔術師として賞賛したい」
「お褒めいただき光栄です!……それはそうと、何でパニッシャー氏に聖杯のブレスレットを渡したりしたんでしょうか?」
「私の魔術……千里眼を用いて彼の未来を視た。パニッシャーは……フランク・キャッスルは現在向かっている特異点で命を落とす」
「おやまぁ、あの方が命を落とす……?」
シオンは目を丸くして驚いている。
「彼は藤丸少年に手を出した存在に戦いを挑んだ末に落命する。そうなればもう取返しのつかない事態に陥るだろう」
ストレンジは聖杯のブレスレットを渡した理由として、パニッシャーが死ぬ運命を見たのが理由だと答えた。しかし本当にそんな理由だけで聖杯のブレスレットという強力なアイテムをパニッシャーに渡したのだろうか?シオンは訝しむ表情でストレンジに尋ねる。
「本当にそれだけですかねぇ?他にも何かあるんじゃないんですか?」
シオンがそう言うと、ストレンジは真剣な顔で答える。
「彼にはこの先に起きる戦いを阻止してもらわなければならない。私が未来視で見た最も最悪な事態を回避させる為に……」
ストレンジの言葉に対して、シオンは分かっていたという表情を見せる。
「……その最悪な事態というのは大体は想像が付きますけど、我々カルデアがアベンジャーズの皆さんと戦いになるのでしょう?それなら貴方自身がアベンジャーズの皆さんにその未来を伝えて争いを回避させればいいのでは?」
シオンの問いかけにストレンジは首を横に振る。
「いや……キャップにそれを伝えた所で彼は納得しないだろう」
「アベンジャーズの皆さんがカルデアと戦いになるというのは単に意見の相違による対立ですか?ナイナイ!そんな小さい理由でアベンジャーズの皆様が我々に戦いを挑んでくるとは思えませんね!態度こそアレですが曲りなりにも彼等はヒーローですから!」
シオンはわざとらしく笑いながらストレンジにそう言ったが、その直後、真剣な眼差しで問いかけてくる。
「そろそろ教えて頂いてもいいんじゃないですか?この事に関してはホームズ氏も怪しんでいますし、こうして彼等に内緒で私と密会している時点で貴方はアベンジャーズの皆さんとは意見が異なっている」
「そうだったね。お互いに腹の内を見せ合うという約束をしたばかりだった。それでは本題に入ろうか」
裏で色々とやってますなぁストレンジ先生( ̄ー ̄)ニヤリ
そしてやはりパニッシャーさんは重要人物だった。