パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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今回もCパートが本編。


第21話 童話特異点

剣戟が鳴る現場に駆け付けた4人が見たものは、先ほどエリザベートを丸呑みにしたヒトデ型の魔物相手に奮戦する2名の剣士の姿であった。片や苛烈。片や清廉な剣技を以てそれぞれヒトデ型の魔物を切り伏せている。

 

「うっらあああ!ぶっ殺せー!!」

 

「斬る!」

 

「これは……手伝う必要は無さそうに思う。しかし見事なものだ。清流の如き剣、波濤の如き剣、いずれ名だたる英雄と見た。我々が手を貸す必要はなさそうだが……」

 

だがゼノビアの言葉に対して藤丸は自分達も加勢すべきだと主張する。

 

「もちろん俺達も加勢で!」

 

「そうだな。そこな者たち!故あって、その戦いに我らも参加したい!応か否か返答を!」

 

ゼノビアが2名の剣士に問いかけると、剣士の1人が彼女の言葉に反応した。その剣士はカルデアに召喚された、円卓の騎士の1人でありアーサー王の嫡子たるモードレッドであった。相変わらずの派手かつ豪快な剣技を持つ彼女はゼノビアの申し出を快く引き受ける。

 

「お?増援か?いやこっちの増援か!いいぜー、遠慮なくブッ飛ばせ!」

 

そしてモードレッドに呼応するかのようにもう1人の剣士であるサーヴァントの渡辺綱も彼女同様、ゼノビア達の助太刀を受け入れる。

 

「ふむ。では、新手が我々の背後から来る。それを任せて構わないか」

 

綱もモードレッドもゼノビア達の助力を快諾してくれた。

 

「無論だ。――よし、言質は取れた。行こう!」

 

「いざ戦いよ~♪お姫様だけど~戦いなのよ~♪」

 

エリザベートは相変わらず唄いながら喋っているが、ミュージカル調で話す彼女を目にしてモードレッドは若干驚いている様子だ。

 

「何か唄いながら変なのが現れた!?」

 

「しかもおおよそ戦う服装ではないが……。ふむ、世とは様々なモノなのだな」

 

「そうよ~♪ロックもポップスも~♪場合によっては唄うのよ~♪」

 

モードレッドと渡辺綱に加勢したゼノビア、エリザベート、藤丸、パニッシャーの4名は襲い来る森の魔物たちを迎撃する事にした。森の奥からはヒトデ型の魔物だけでなく鳥型の魔物、大蛇の魔物まで現れた。こんな魔物だらけの森であればいっそ燃やした方が良かったとパニッシャーは思ったが、今はそんな事を言っていられない。モードレッドは持ち前の豪快な剣を用いて、次々と魔物たちを切り伏せていった。一方ゼノビアは両手に持つ剣と槍を振るって敵を薙ぎ払い、エリザベートは蹴り技を駆使して魔物たちに攻撃を加えていく。そして藤丸とパニッシャーはというと、マスターである関係上サーヴァント達の指揮を執らなければならないので、後方で待機していた。そんな中でも藤丸とパニッシャーは小声で会話する。

 

(……おじさん、マスターとして後方で指揮する気分はどう?)

 

(正直に言えばあまり慣れん。俺は指揮するより直接戦うタイプだからな)

 

パニッシャーは懐からウージーを取り出し、エリザベートやゼノビアに襲い掛かる魔物達目掛けて発砲した。マスターといえども、こうしてサーヴァント達のサポートをする事が可能であり、パニッシャーは令呪を用いての後方支援よりも銃を用いてエリザベート達に助力する事にした。放った弾丸は的確に命中し、それにより数匹の魔物は絶命する。更にパニッシャーは腰のホルスターからハンドガンを取り出して、エリザベートやゼノビアに襲いかかる敵を次々と撃ち抜いていく。海兵隊において射撃でも優秀な成績を収めたパニッシャーにとって、森の魔物などただ大きいだけの的でしかない。しかも弾丸はサーヴァントでさえ致命傷を負いかねない特別性である。サーヴァント達は魔物達に対して優位に戦闘を進めていた。綱は神速とも呼べる剣技を用いて大蛇の魔物を両断し、エリザベートは空中から急降下しつつ蛇の魔物を蹴り飛ばした。サーヴァント達の戦闘速度は音速を超える事も珍しくなく、それ故に人間である藤丸やパニッシャーが入り込める余地はない。そしてゼノビアはバリスタを召喚し、魔物の群れ目掛けて発射する。魔力を帯びた破壊の矢は魔物の群れに命中し、魔物たちは一匹残らず全滅してしまった。

 

「お~わ~り~よ~♪」

 

エリザベートはドヤ顔で決めポーズを取った。

 

「礼を言う。助かった」

 

綱は自分達に助太刀してくれた藤丸たちに感謝の言葉を述べる。

 

「いや、お前たちの腕ならば容易に返り討ちにできただろう。……うちの軍に入らないか?福利厚生はしっかりしているぞ」

 

「どんなに楽な戦いでも、常にまぐれがあるものだ。それから助力には感謝するが、誘いには応じられない。既にこの刀は別のものに捧げている。すまん」

 

「そうか、残念だ。では謝礼代わりに一つ、頼みがあるのだが……」

 

「ん?」

 

そう、エリザベート、パニッシャー、藤丸、ゼノビアの4名はこの森で迷っている。先ほどのモレーの言葉通り、森に魔術による結界が敷かれているのだとすれば、このまま進んだ所で迷子になるのは目に見えている。

 

「実は~私たち~道に~迷ってるの~♪どうしたらいいかしら~♪」

 

これでモードレッドと綱の2人もこの森で迷っているのだとすれば洒落にならないが、聞くだけ聞いてみる事にした。が、そんな予想は杞憂に終わる。

 

「なるほど、迷子か。ならばついてこい。我ら7人(・・・・)、この迷妄の森に居を構えている」

 

「ロクデナシどもの集まりだが、まあ森をうろつくよりは安全だ!」

 

「そうだな。じき、夜になる。夜の森は恐ろしく危険だ」

 

モードレッドと渡辺綱も山岳地帯にいた盗賊団と同様に、他のサーヴァント達とつるんでいるようだ。

 

「ほう、7人で住んでいるのか?」

 

「ああ。皆、良い奴だぞ」

 

「そうかぁ?悪人ぶってる義賊とか、微妙じゃね?ま、いいや。腹減ってないか?メシだけは無限に食えるから安心してくれよな!」

 

モードレッドの快活な笑顔は見る者を明るくする。モードレッドはアーサー王伝説に登場する叛逆の騎士であるが、本人は別に悪人というわけではない。他の円卓のメンバーからの評価は今一つ芳しくないが、円卓以外のサーヴァントたちからは何だかんだで親しまれている。

 

「それはとても美味しい~森の果実~♪」

 

相変わらずエリザベートは歌い交じりの言葉を言う。そして藤丸たち4人は綱とモードレッドに付いていき、2人が暮らしているという家へと向かった。少し森を歩いたものの、すぐに到着した。そして中に通された藤丸たちは、この家に暮らす7人の内の1人であるサーヴァントの俵藤太からご馳走を食べる事になった。モードレッドが言っていた通り、確かに彼の宝具であれば食うに困らないだろう。藤太の宝具によって出された和食は豪華豪勢を絵にかいたようなものだった。藤丸は遠慮なく藤太の宝具によって出された和食を堪能している。

 

「山海珍味、山盛りの米!もちろん日本酒もあるぞ!!」

 

「ご飯おいしい……」

 

藤丸は出された米をモリモリと食べている。パニッシャーは和食は余り食べた事はなく、アメリカ料理との味の違いからかイマイチな反応だった。一方、エリザベートは目を輝かせて食事を楽しんでいる。ゼノビアは黙々と食事をしていた。

 

「……確かに美味しいのだけど、おかしいわね~♪イメージと違うわ~♪これはただの宴会~♪」

 

「この見るからに怪しげな森に突っ込んできたのかよ……。オタクら、もうちょい用心深くなるべきじゃない?」

 

この家に住む7人の内の1人である、アーチャーのサーヴァントロビンフッドは、迷妄の森に入ってしまったゼノビア達に対して呆れている。最も、エリザベートが目指しているチェイテシンデレラ城に行かなければならないので、どの道森に入る事にはなったのだが……。

 

「返す言葉もない……」

 

「ふん、そんな森に居を構えて住んでいるお前等には言われたくない」

 

反省するゼノビアに対して、パニッシャーはロビンフッドの言葉に対して毒づく。

 

「なあに、気にするな!不運は幸運に転ずるもの。ここでアンタのような美しいお嬢さんと出会えたことが、オレにとっては幸運だ!」

 

ナポレオンはゼノビアに対してナンパをしている。しかし、ゼノビアの反応は冷たいものだった。

 

「そのように軽薄な台詞は控えたほうがいいだろう。いろいろ問題を招く」

 

「塩対応~♪ちなみに私には何かないかしら~♪」

 

エリザベートがそう言うと、ナポレオンは彼女の方に視線を向ける。女好きなのは問題だ。

 

「おお、麗しの姫よ。その蜂蜜のような声は、オレに愛を囁くためにあるのかい?」

 

「ホントに口説いてきた!?」

 

美しければ年齢は関係ないとばかりに口説いてくるナポレオンに対してエリザベートは驚く。

 

「おい、愛を囁くのは勝手だがエリザベートの年齢考えろ。コイツの見た目的に色んな意味で危ないのに気づいてるか?」

 

大人のゼノビアとは異なり、エリザベートは明らかにまだ少女だ。そんな彼女にナンパしているナポレオンは見ようによっては犯罪臭がする。

 

「大丈夫さ。オレはこう見えても紳士だから、そこはちゃんと弁えているぜ!」

 

「そう言う奴ほど信用ならんのだ。大体自分から紳士だとか言うヤツは大概ロクなもんじゃない」

 

「はっはっはっ。なかなか手厳しいな!」

 

仮にナポレオンがナーサリー・ライムやジャック・ザ・リッパ―といった子供サーヴァントに対してもナンパしているとすれば脳味噌を銃でぶち撒けてやろうかと思ったが、流石にそこまでの事はしていないようだ。そしてデオンが藤丸に対して飲み物を持ってくる。

 

「こちらはどうだろう?ハーブのお茶だ」

 

「ありがとう」

 

デオンから出されたお茶を藤丸はありがたく受け取る。そして一口飲むと口の中に爽やかな香りが広がった。

 

「この森を出る、か……。難しくはあるが、もちろん不可能ではないね」

 

「よし、やはり森を燃やすしかないな」

 

「アンタはいい加減森林放火から離れなさい!あと、森を焼いちゃったら私達も死んじゃうでしょ!!」

 

サーヴァントが単なる森林火災や山火事で死ぬわけがないのだが、人間であるパニッシャーと藤丸は普通に死んでしまうので、流石に森に火を付けるという案は見送る事にした。

 

「とはいえ今日はもう遅い。闇夜の森を歩くほど、不用心なことはない。どうか本日はこちらに宿泊を」

 

「だとよ。どうする?立香、エリザベート、ゼノビア?」

 

パニッシャーは藤丸たちに対してこの家で寝泊まりするかどうかを尋ねた。

 

「私は別に良いわよ。ハロウィンの夜だし♪」

 

「俺も問題ないよ」

 

「私も特に異論はない」

 

エリザベートの提案により、一行は一晩だけこの家に泊まる事になった。

 

「おまえたちの安眠はこの渡辺綱が請け合おう。ゆるりと休んでくれ」

 

綱の言葉に甘えて今夜はこの家で寝泊まりする事にした。

 

「それにしてもこの家~♪何ともメルヘンね~♪」

 

エリザベートの言う通り、確かにこの家はメルヘンというか童話に登場する家の中だ。モードレッドやナポレオン、ロビンフッドのような大人が暮らすには手狭だし、第一こんなメルヘンな家で暮らす趣味は3人にはないだろう。

 

「たしかにそうだな。お前たち、名のあるサーヴァントだろうに……。この家は少し狭すぎないか?」

 

「といっても召喚されてから、オレたちはここを根城にしているしな。住めば都、作れば根城ってもんさ」

 

「この家はお前の"心象風景"とやらじゃなかったのか?この家に住んでる7人の中でお前が一番ガキっぽいのを考えると……」

 

幼い子供が読む童話に出てくるようなメルヘンハウスに住んで満足そうなモードレッドを子供扱いするパニッシャー。

 

「誰がガキだ!」

 

「こんな童話の世界まんまの家に住むなんざ、恥ずかしくて普通できんぞ」

 

「どういう意味だよそりゃ!?」

 

パニッシャーの皮肉に反応するモードレッド。

 

「いや、悪い意味じゃない。ただ、お前みたいな子供がいる家はさぞ楽しいんだろうなと思っただけだ」

 

「テメェ……」

 

モードレッドはパニッシャーの言葉に額に怒筋を浮かばせている。

 

「私は気に入っているわ。こんなメルヘンな小屋、中々ないもの!」

 

エリザベートは少女心をくすぐられるこの家にご満悦のようだ。エリザベートは家の内装を見てはしゃいでおり、ゼノビアはそんなエリザベートを微笑ましく見ている。

 

「7人……メルヘン……」

 

そして藤丸はこの家で暮らす7人のサーヴァント、山岳地帯に根城を構えていた40人の盗賊サーヴァントの事を思い出した。

 

「7人が……森の小屋に住んでいて……」

 

「どうしたの子イヌ~♪まるで~♪まるで~♪……悩んでるみたいよ~♪」

 

「語彙を増やそう!」

 

「即興だとどうしてもね~♪シェヘラザードのようにはいかないわ~♪」

 

「シェヘラザード……」

 

藤丸は盗賊団の首領であるシェヘラザードが閉じこもっていた天岩戸と、それを開いたエリザベートの唄を振り返ってみる。

 

「そうか!白雪姫と7人の小人だ!!」

 

山岳地帯にいた40人の盗賊と、シェヘラザードのいた天岩戸。そしてこの森の家に住む7人……。自分の辿り着いた結論をエリザベート達に話す事にした。

 

「……それはつまり、ここが童話を元にした特異点になってるってことか?」

 

「私はシンデレラ~♪盗賊団のときは~」

 

「40人……アリババと40人の盗賊か!」

 

「で、オレたちが白雪姫と7人の妖精ってことか」

 

これで全ての辻褄が合った。自分達がいるこの特異点は童話を基にして作られた世界なのだ。何ともふざけた特異点が作られたものだとパニッシャーは思う。迷妄森にいた時、立体映像で現れたモレーがこの特異点を作り上げたという事だろうか……?お子様向けの特異点など作り上げて一体どういうつもりなのかは知らないが、いずれにせよ恐らく特異点の原因であるモレー本人と直接対峙しなければ事態の解決は難しいだろう。

 

「まぁ、オレが妖精なんてガラじゃないけどな。連中、もっと悪質だって話だし」

 

確かにブリテン異聞帯に暮らす妖精の実態を直に自分の目で見たパニッシャーは、モードレッドの言葉に納得する。

 

「俺は妖精を100匹ばかり殺したぞ。いや、もっとか……」

 

「え?妖精殺したことあんのか?連中を殺せるとか、アンタも相当だな。ま、オレも似たようなもんだがな」

 

モードレッドは笑いながらパニッシャーを褒め称える。妖精という存在を倒せる人間となれば流石の彼女も認めざるを得ないのだろう。実際ブリテン異聞帯の妖精は強力ではあったが、連中の弱点と対処法さえ分かれば殺すのは容易い。

 

「あ、オレたち7人が妖精だとしたら、姫がいねぇじゃん」

 

「私がいるわ~♪」

 

「あぁ、うん。とりあえず姫は仮置きで……」

 

モードレッド、綱、ベディヴィエール、ナポレオン、デオン、藤太、ロビンフッド達が7人の小人だとするならば、白雪姫に該当するサーヴァントがいない。エリザベートが名乗りを上げたが、そもそも彼女はシンデレラだ。

 

「となると、この先も童話に関する何かが出てくる可能性があるが……」

 

「もしかすると赤ずきんとか眠れる森の美女とかも出てくるかもな……」

 

パニッシャーとゼノビアはこれ以降も童話を元にした配役がされたサーヴァントに出会う事を予想していたが、モードレッドが口を開く。

 

「今日はとりあえずウチで休もうぜ!」

 

モードレッドの言葉に、エリザベートは何やらウキウキした顔になる。

 

「キングサイズのベッドとかあるかしら?シンデレラたるもの、そういう『なんかすごいベッド』で眠るべきよね

 

「ンなもんあるわけねぇだろ。揃って雑魚寝だよ、雑魚寝」

 

「お姫様なのに~♪雑魚寝~~~なのね~~~♪」

 

そうして藤丸たちは家の床に雑魚寝する事になり、消灯後に就寝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――――アレは狂っている。

 

ヒーロー登録法に反対するキャプテン・アメリカの陣営に付いたパニッシャーは、キャップ陣営に投降してきたヴィランのゴールドバグとプランデラーの2名を彼の目の前で容赦なく射殺した。当然キャップはパニッシャーの行為に激怒し、執拗に彼を殴りつけるがパニッシャーは一切の抵抗をしなかった。そしてキャップは殺人者であるパニッシャーを自分の陣営から追放したのだ。その際、"パニッシャーは狂っている"という言葉を残して……。

 

 

真っ暗な空間の中、パニッシャーは目の前にいるキャップと対峙していた。パニッシャーにとって、少期からの憧れの存在であるキャップであるが、同時に自分とキャップは決して相容れる事のない者同士である事を知っている。犯罪者やヴィランを容赦なく射殺、虐殺するパニッシャーとは異なり、キャップは更生のチャンスを与える。そもそも、正統派のヒーローたるもの不殺が基本であり、それを破るパニッシャーは他のヒーローから軽蔑の対象となっているのだから。堅苦しいヒーローとしてのルールと遵法精神。そのいずれもパニッシャーは従わない。ヴィランをラフト刑務所なりに送った所で、すぐに脱獄して市民を殺傷する。戦っては捕まえ、それで逃げられ、また戦っては捕まえ……。くだらないルーチンワークを繰り返す事しか出来ないのだ。

 

「俺はこういう戦いしかできないんだよキャップ。アンタと違ってな」

 

「……お前のやり方では誰も救えない。お前はただの殺人者だ」

 

パニッシャーはキャップの言う事は否定しない。そもそもそれは事実なのだから。

 

――――"犯罪者だから殺してもいい"

 

その考えは単純で危険極まりなく、そして何より楽観的過ぎる思考回路だった。だがそれでも、自分の中に根付いているこの思想を曲げる事はできないし、するつもりもない。自分にはそれしかできないから……それ以外に良い方法を思いつかないからだ。

 

「お前の様な奴はいつか自滅する」

 

「そんな事は散々他のヒーロー共に言われてきた。今更そんな台詞で俺が動揺すると思うのかキャップ?」

 

パニッシャーは犯罪者や悪党を殺す事でしか市民を救えないと思っている。正義感自体が無いわけではないが、パニッシャーの本質は犯罪に対する"復讐"であり"制裁"。他のヒーローから"殺人者"、"異常者"と言われた事も一度や二度ではない。しかしそれがどうした? 自分はただ単に自分の信じる道を進んでいるだけだ。例え周りから非難されようとも、自分の道を進むだけ。他人からあれこれ非難された程度で犯罪者に対する自警活動を止めるのであれば、とっくに銃で頭を撃って自殺している。そしてキャップはそれ以上何も言わずに闇の中へと消えていった。次に現れた存在を目にしてパニッシャーは目を大きく見開く。

 

――――"何の悪い冗談だ?"

 

目の前の存在を前にして思った事がこれだ。目の前にいるのは狂えるタイタン人である■■■。アベンジャーズの宿敵であり、スーパーヴィラン。そんな■■■がなぜ自分と同じ服装をしているのだろうか?髑髏のマークが施された黒いシャツに、黒のズボン。全身に銃器類を装備している。いつものパニッシャーの普段着と変わらない服装をしているのは何故であろうか?悪夢なら早く醒めて欲しいのだが……。

 

「……やぁ父さん」

 

この台詞を聞いて更に"何の悪い冗談だ?"と思ったのは言うまでもあるまい。目の前の■■■から"父さん"呼ばわりされるなど想像すらしていなかった事だ。ましてや、こんな夢を見ているなど……。

 

「貴方は根本的に他者の罪を赦せない人間だ。今までだってそうだっただろう?貴方が殺した犯罪者にも家族がいたし、中には妊婦だっていた。彼女は自分の赤ちゃんを一度でいいから抱かせてと必死に頼んだのに、貴方は無情にもショットガンで彼女の頭部を吹き飛ばした」

 

確かにその通りであった。だからどうした?犯罪者にも家族がいたところで、それが罪を逃れる言い訳になるのか?

 

「貴様に"父さん"呼ばわりされる覚えはないし、俺のコスチュームを着ているのも悪趣味だ!」

 

パニッシャーが叫ぶと、それを嘲笑うかのように■■■が笑う。

 

「自分の本質から目を背けちゃだめだよ父さん。犯罪者がやり直すチャンスを今まで父さんは踏み躙ってきたじゃないか」

 

犯罪者に人権やセカンドチャンスを与えるつもりはない。そんな物は必要ない。必要なのは死という名の裁きだけだ。

 

「そうだな……父さんが守っている藤丸立香という少年はどうだ?あの子は父さんの本質を受け入れた気になっているようだけど、彼はまだ本当の意味で貴方を理解したわけじゃない。レオナルド・ダ・ヴィンチも、マシュ・キリエライトも、本当の父さんの残酷さを見ればきっと失望する。否、軽蔑するだろう」

 

「……何が言いたい?」

 

「藤丸立香を始めとするカルデアの連中は所詮偽善者。彼らは自分たちにとって都合が良い存在であればどんな相手でも受け入れる。それはつまり、彼らにとって都合の良い人間やサーヴァントがいればそれでいいんだよ。現に父さんだって藤丸立香やダ・ヴィンチから受け入れられているだろう」

 

「知った風な口を利くな!!お前に何が分かる!!」

 

「醜い自分を受け入れてくれた者たちの悪口を言われるのは耐えられないかい?無理もないか。なにせ、自分を理解してくれたのが藤丸立香を始めとするカルデアの連中だけだったんだから……」

 

■■■の言葉を否定できないパニッシャー。

 

「僕も父さんの理解者になったつもりだった……。けど父さんは僕の作った理想の世界を否定し、僕を殺した……。僕は父さんの願いを実現させようとしただけなのに……」

 

その瞬間、■■■の肉体は激しく燃え始めた。まるで内部から突然燃え出したかのように見える。

 

「今はまだいいかもしれないけど、彼等は父さんの本質を見れば掌を返すだろう……。じ、地獄から……見物させてもらうとするよ……」

 

そう言った直後に■■■の肉体は全て燃え尽きた。

 

「何だったんだ今のは……」

 

パニッシャーがそう呟くと、今度は別の存在が目の前にいた。女だ。未亡人が着る喪服を来た美女である。雪を思わせる純白の肌に、ウェーブがかった薄金色の長い髪の毛、そして右手には禍々しい大剣を持っている。その美貌は大抵の男を虜にしてしまうだろうが、ただ一点、氷を思わせる程の冷たい瞳と眼差しは、目が合った者の体感温度を氷点下にまで下げてしまう程の凄みがある。目を見張る程の美貌ではあるが、温かみなど欠片もない女だ。喪服の美女は何も言わずにパニッシャーをじっと見つめている。

 

「……」

 

パニッシャーは警戒して身構えるが、女はそんなパニッシャーを無視して喋り始める。

 

「……つまらない男」

 

喪服の美女はそう静かに言った。

 

「家族を死に追いやった者を殺しても、自分から際限なく復讐の標的を拡大させ続けるなんて、それこそ愚かの極みよ」

 

侮蔑交じりの笑みを浮かべてそう言う女に対し、パニッシャーは無言だった。セントラルパークにおいてギャングの処刑を目撃し、それの口封じとして妻子を殺されたパニッシャー。自分の家族を死に追いやった連中はもうこの世にはいない。だがパニッシャーは復讐の対象を他の犯罪者やマフィア、ギャングにまで広げた。自分から復讐の対象を広げるという行為なのは理解している。それを目の前にいる喪服の女は鼻で笑ったのだ。

 

「本当に貴方は救いようのない男ね。怒りの矛先を復讐対象以外にまで向けるなんて。やっている事はただの八つ当たりじゃない」

 

「さっきから聞いていればお前は何が言いたい?」

 

「いつまでも終わらない復讐を続けて、殺す標的を無限に量産していく。本当に下らない暴走よね?それに何の意味があるの?」

 

そもそも復讐という行為自体が自己満足だというのに、この喪服の女は何を言っているのだろうか?

 

「お前だって似たようなモンだろ」

 

パニッシャーの言葉に、喪服の女は眉を吊り上げる。

 

「……どういう意味かしら?貴方なんかと一緒にされると迷惑なのだけど?」

 

不愉快そうな表情を浮かべる女に、パニッシャーは淡々と答える。

 

「俺は俺なりに自分の中でケジメをつけているだけだ」

 

その言葉に、喪服の女の表情が変わる。

 

「くだらないわ。貴方の言う“自分なりのけじめ”とやらのせいで、関係のない人間を大勢巻き込んでいるというのに……」

 

喪服の女は呆れ交じりの顔でそう言ってきたが、そんな女の態度を気にも留めずパニッシャーは話を続ける。

 

「関係のない人間を殺してるわけじゃない。連中は全員犯罪者だ」

 

「……だからそれが"くだらない"と言っているんでしょう?復讐の対象をどれだけ増やせば気が済むのかしら?まさか死ぬまでやるつもりなの?」

 

恐らく目の前の喪服の女もパニッシャー同様の"復讐者"だ。だが決定的に異なる点があるとすれば、自分の復讐する対象をハッキリと決めている事であろう。"際限なく復讐する対象を増やす"というパニッシャーのやり方に理解できないのも無理はないのかもしれない。

 

「お前には関係ない事だ。俺の人生に口を挟むな。これ以上俺に構うな。お前の言っている事は的外れだし、俺には全く響かない」

 

そう言われて喪服の女は舌打ちをする。

 

「ハァ……、何故かしら。貴方を見ているとこんなにもイライラしてしまう……。まぁいいわ。いずれまた会う機会があるでしょうし」

 

そう言って喪服の女は消えて行く。

 

「何だったんだあの女は……」

 

謎の喪服の女の事を気にしつつ、パニッシャーは夢から覚めた。




■■■が誰なのか、なぜパニッシャーを「父さん」と呼ぶのかについては、コズミックゴーストライダーの邦訳を読まないと分かりづらいかも……(^▽^;)


彼女に関しては、なんとなくパニッシャーさんを嫌いそうなイメージ(同族嫌悪?)だったので。やっぱトラオム編ではカドックの処遇を巡ってパニッシャーとカルデアで対立起きそう。

パニッシャーの性格を考えれば藤丸君達みたいにカドックを共に戦う仲間として認めるわけないし、カドックを許容したらそれはパニッシャーらしくないし……

パニッシャーはカドックを

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