パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
森の中を歩く途中、エリザベートが南瓜頭の人形になっている藤丸の容態を尋ねてきた。山羊頭の怪物状態の藤丸と分裂してこの人形に藤丸の意思が入っているのだ。どう見てもまともな状態ではない。
「ねぇ、子イヌ。大丈夫?痛いとかない?」
エリザベートは心配そうな顔で、抱き抱えている藤丸に聞く。人形状態の今の藤丸は自力で歩く事ができないのでこうしてエリザベートに運ばれている。藤丸の意思が入っているので自力で歩行できるのかとパニッシャーは予想していたが、現実はそう甘くないらしい。
「頭が……グラグラする」
エリザベートに抱えられているものの、移動中に揺られているので頭がぐらぐらしてくるのだろうか?
「そ、そうね。ちゃんとしっかり抱えておいてあげるからね」
そう言ってエリザベートは人形になった藤丸を抱き締める。彼女の柔らかい胸が当たると、藤丸の顔が赤くなった。最も、人形なので顔が赤くなっているのかどうかは、周囲の人間には分からないのだが……。パニッシャーは視線を南瓜頭の人形になり、エリザベートに抱き抱えられている藤丸から、自分の隣を犬のように四つん這いで歩くモレーに移す。正直な話、モレーによって山羊頭の怪物に変異させられた藤丸の事を考えれば、こうして犬の真似をさせているだけなのが生温い罰に思えてくる。
「立香がこうなったのは全部お前の責任だぞ?そこら辺は理解できているな?」
パニッシャーは念の為にモレーに確認する。
「はーい。理解できてまーす。だからこうして犬みたいに四つん這いで歩けっていうキミの要望を受け入れてあげてるんでしょー?」
どうやらモレーには自分が何をすれば良いのか分かっているようだ。もっとも、本当に理解しているかまでは怪しいところだが……。
「犬の真似って結構疲れるんだよなー。もうこれ罰ゲームだよなー。いやマジで」
確かに犬の真似はかなりしんどいものだ。だが、これも全て藤丸の為なのだ。
「……その様子だと大して応えてないように見えるんだが?」
「あたし的には精神的に超ダメージ喰らってるからねー。キミも試してみれば分かるよ」
それはつまり、この状態でもまだ反省していないという事だろうか? 正直、この程度の罰では甘すぎると思う。もっと厳しくするべきではないのか?
「お前、やっぱり全裸になるか?犬が衣服を着ているのは不自然だからな」
先ほどはエリザベートやモードレッド達に非難されたので、やらなかったが大して反省もせず、罰も大して効果がないように見えるので再度モレーを脱がせる事を提案した。
「黒イヌ……アンタさっきもコイツを脱がせようとしたじゃないの」
「エリザベート、そもそもこの女……モレーは立香を深淵の聖母とやらに仕立て上げてあんなバフォメットもどきに変えたんだぞ?こうして分裂した方の意識を南瓜頭の人形に入れる事ができたから良いものを、そんな事をやらかしたモレーに対して犬の真似をさせるだけっていう時点で生温い罰だと思わないのか?」
実際、下手をすれば本当に藤丸が深淵の聖母になっていたのかもしれない。そう考えると、この程度で済んで良かったと思わざるを得ない。とはいえ、ここでモレーを許す気にはなれないのだが……。
「まぁ……そりゃそうだけど。私だってモレーがした事を許す気にはなれないわよ。出来れば拷問してやりたい気分だし♪」
エリザベートもモレーに対する怒りを抱いているのは同じのようで、嗜虐心に溢れた目で四つん這い状態のモレーを見る。
「タンマ、タンマ!やめてってば。これ以上罰を受けたら本気で死んじゃいますって」
やはりこの程度じゃモレーは懲りないようで、相変わらず軽口を叩いている。本当に反省しているのか疑問に思ってしまうが、こんな様子では大した罰にはならないだろう。
「モレー、犬の真似自体あまり精神的に応えてないように見えるから服を全部脱げと言っているんだぞ?まぁ、お前にとっては衣服を剥ぎ取られた状態になった程度でもダメージは受けんだろうがな」
「説得力ありそうなコト言ってますけどー、結局マッパのあたしが見たいだけじゃね?ホントむっつりなんだから~」
モレーはケラケラと笑いながら言う。この態度といい、とても反省しているようには見えない。そんなモレーに呆れつつ、エリザベートたちは森の中を進んで行く。モレーだけは相変わらず犬のように四つん這いで歩いているが。
「ならモレー、犬らしくそこの木にマーキングしてみろ」
「は!?うら若き女性になんて事要求してんのよ!?」
流石のモレーもこの命令には露骨に嫌な顔をした。
「黒イヌ……お願いだからもういい加減にしてちょうだい……」
エリザベートはもう完全にうんざりした表情になっていた。
「えー……マジでやんなきゃダメ?」
「パニッシャー、全裸にするよりも酷い事要求してるよ……」
藤丸もエリザベートと同じくモレーにマーキングを要求するパニッシャーにドン引きしていた。傍から見れば変態プレイのようにも見えてしまうが、パニッシャーなりにモレーに対する罰を与えているようだ。殺したりするのはエリザベート達に止められているのでこれがモレーに対する精一杯の制裁なのだろう。だが、ここまでしてもモレーはまだ懲りていないようだった。
「変態プレイを要求されるあたしの身にもなってよね~。犬の真似だけじゃなく、全裸になれだのマーキングしろだの……」
「アンタが子イヌにした事を考えれば十分に甘いと思うけど?子イヌがこうなったのは元はといえばアンタが原因なんだからね!」
「断じて違いますー!あたしにとっても計算違いでした!」
モレーにとっては計算違いでも、当の藤丸からすればたまったものではないだろう。態度を見る限りでは全く凝りているようには見えない。計算通りにしろ、計算違いにしろ、どちらにしても藤丸は酷い目に遭う事に変わりないのだから。
「ねえ、黒イヌ。やっぱコイツ全裸に剥いていいわよ。その方が手っ取り早いわ」
エリザベートはニヤニヤした顔でモレーを見ながら言う。やはり彼女もモレーには痛い目に遭ってもらおうと考えているのだろう。
「はぁ?なんでそうなるのよ?犬プレイの次は露出プレイですかー?全く、どんだけあたしを脱がせたいんだか!エロガッパ!このムッツリスケベ!」
「ちょっと!それは黒イヌに言ってちょうだい!」
「そんなにあたしが気に入らないんなら、退去しますけどー!?」
モレーはサーヴァントなので自発的に退去する事は可能なのだが、パニッシャーとエリザベートはそれを許さなかった。二人だけでなくナポレオンやゼノビアもそれは認めない。藤丸がこうなった責任を取ってもらうという点では同じだからだ。
「カルデアのマスターはこの通り南瓜のマスターになっちまったわけだし、全裸になるぐらい大した罰でもねぇだろ。見た感じあんま反省もしてねーみたいだしな」
「ううむ……。オレとしては納得いかんが……」
先ほどはパニッシャーの案に反発していたモードレッドやナポレオンも渋々モレーが脱ぐ事を認めたようだ。
「あー、メンド。人前でマッパになんなきゃいけねーのは屈辱的だけど、仕方ないかー」
そう言ってモレーは自分の纏っている霊衣を全て解除して裸体をパニッシャーやエリザベートたちの前に晒した。
「ほい、これで満足ー?眼鏡だけは残しているけどそれ以外はぜ~んぶ脱ぎましたー。もう全裸だから、これでいいでしょー?」
モレーは不満そうに言う。だが彼女の体つきは豊満で胸は大きく、お尻も大きく、そしてスタイル抜群であった。人形状態になった藤丸はモレーの裸体を食い入るように見つめてしまう。
(す、すごい……!これが大人の女性の肉体……!)
「あー、カルデアのマスターからの視線を感じまーす。やっぱり若い男の子はこういうのが好きなんかなー?」
モレーは自分の両胸を強調するポーズを藤丸に見せる。ぷるんとした乳房の先端には綺麗なピンク色の乳首が付いていた。
「あれれー?もしかして照れてるー?可愛いー!」
(お、俺、モレーさんのおっぱいに見とれてたの!?そんな、俺はただ純粋にモレーさんの美しさに感動しただけなのに……!)
「そんなにジロジロ見られたら、お姉さん、恥ずかしくなっちゃうぞー?」
「……全裸になっても大して応えてるように見えんな」
「えぇ、そうね……」
全裸にされたにも関わらず、大して恥ずかしがる様子を見せないモレーを見てパニッシャーとエリザベートは呆れかえる。そんな二人に対してモレーはニヤニヤした顔で煽ってくる。
「あらー?二人ともー?ひょっとしてあたしが恥じらいを見せるとか思ってたー?ざーんねんでしたー!あたしは全然平気でーす!」
「……なぁ、コイツマジでぶった斬っていいか?」
「ステイ、ステイ!ここは穏便にいこうよー」
全裸になっても調子の良いモレー。彼女に羞恥心がある事を期待した自分が馬鹿みたいに思えてきた。そんなこんなでモレーはこの恰好のままパニッシャー達と共に森の中を移動する事となった。一人だけ全裸でエリザベート達と行動するモレーの姿は傍から見れば露出狂にしか見えないだろう。
「あー、よくよく考えれば皆さんは着衣なのに、あたしだけマッパってシチュは恥ずかしいかもなー。まぁ、別にいっか」
「子イヌ、見ちゃ駄目」
エリザベートは抱えている人形状態の藤丸の目を両手で覆う。
「考えてみればほぼ全裸のゼノビアがこんなに堂々としているんだ。衣服を全部剥いたところで大した効果が無いのも当然かもな」
「……言っておくが私自身は好きでこんな格好をしているわけではないからな?」
ゼノビアはパニッシャーの発言に対して不機嫌そうな表情で言う。
「えー、でもそっちの彼女の胸と股間は生地で覆われているじゃん。あたしは胸も股間も曝け出してるから、差は大きいと思うよ?」
モレーは自分の胸をさすりながら艶めかしく答える。
「一旦、オレたちの小屋に戻って構わないか?」
"オレたちの小屋"というのは俵藤太やベディヴィエール、ロビンフッドがいた小屋の事だろう。モードレッドとナポレオンも迷妄の森に建てられていた小屋の中で生活していた。
「小屋の場所、分かるの?」
「オイオイ何言ってんた?そんなモノ……わからねぇ……」
モードレッドは自分やナポレオンがいた小屋の方角が分からなくなっているようだ。周囲の森はパニッシャーや藤丸たちが入った時から余りにも様変わりしており、以前ならメルヘンと呼べたものの、今では良くてダークファンタジー、悪く言えばホラーじみた光景になっている。端的に言って気持ち悪い。
「しょうがねぇ。またオレの剣でもぶっ放すか」
モードレッドは自分の宝具を用いて周囲の木々を吹き飛ばして更地にするつもりだ。数時間前も宝具を用いて迷妄の森を吹き飛ばしたのだから、これは有効かもしれない。……彼女の脳筋ぶりに目を瞑ればだが。
「待て待て待て。森から出るときに使うのはいいが、小屋を諸共吹き飛ばす気か?」
「なーに、吹き飛ばされてもアイツらなら気付くって!よーし、やるか!」
モードレッドは気楽に答えるが、モレーは彼女の判断に引いている。
「判断、早すぎません?」
「せめてもう少し調べてから――」
が、ゼノビアの言葉も空しくモードレッドは自分の宝具を発動させた。
――――『
モードレッドは対軍宝具に分類される『
「嘘でしょ!?生え変わるのが早すぎじゃない!」
エリザベートたちも森の木々が短時間で生えてくる光景を見て驚愕している。再生能力まで獲得しているとでもいうのか。
「ちくしょう!まだるっこしいぜ!!」
モードレッドはまた宝具で更地を作ろうとするが、ナポレオンがそれを止める。
「よせ。撃っても無駄なだけだ。だが今の宝具の一撃で小屋にいるロビンフッド達は気付いたんじゃないか?"この馬鹿みたいにデカい魔力の爆発はモードレッドの仕業だ!"ってな感じだ」
「……その馬鹿ってのは誉め言葉だよな?」
「……!森の奥から誰か来るぞ!!」
ゼノビアの言葉にエリザベート、パニッシャー、モードレッド、ナポレオン、モレー、藤丸は森の奥を一斉に見る。すると全身に赤いタイツを来た男がこちらに向かって走って来るではなか。パニッシャーは遠目からでも分かる赤いタイツの男に見覚えがあった。
「……まさか!?何でアイツがこの特異点にいる!?」
「何よ黒イヌ?知り合いなの?」
そして赤いタイツの男がパニッシャー達の前に姿を現す。男は変なポーズを決めながらパニッシャーに声をかけた。
「ようパニッシャーじゃん!元気してた?」
「お前は……デッドプール!?何故お前がここにいる!?」
そう、目の前に現れたのは全身赤タイツに身を包んだヒーロー……もとい傭兵であるデッドプールだった。
「いやさ、俺もいきなりこの妙ちくりんな世界に転移してきたわけよ。そしたらお前等がやって来たから俺も驚いたのよ。だけどお前らもこの世界に来てたなんて驚きだぜ。ところで今どういう状況な訳?そこの可愛い子ちゃん達は誰?もしかしてお前のガールフレンド?けどちょっと年齢が釣り合わなくね?」
デッドプールはパニッシャーの隣にいるエリザベートに視線を移しつつ、勝手にマシンガントークを始めた。
「黒イヌ……コイツ誰なの?」
エリザベートは露骨に嫌そうな表情でデッドプールを見ている。
「こいつは……」
仕方なくパニッシャーはデッドプールの事について説明する事にした。
ついに来やがった……
そしてモレーさん、結局全裸になる(しかも大して効いてない)。