パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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今回はクリントさんの回です。聖杯戦争って基本的に一般の人間に知られていないのと、戦いに巻き込まれて死んでも情報操作されて事故死扱いとかになりますからね。


第35話 クリントとメドゥーサ

翌朝。マイルームでシャワーと着替えを済ませた藤丸と立香は手を繋いだ状態で廊下を歩いていた。藤丸の足取りは力強く、眼差しには迷いがなく、その瞳には希望の光が灯っていた。その隣を歩く少女の瞳にも光が戻っており、二人は昨日までとは違う雰囲気を漂わせている。

 

それは二人がようやく心の整理がついた証拠でもあった。そんな二人の様子を見ながら、アナスタシアは安堵のため息を漏らす。今まではいつ壊れてもおかしくないような危うさがあったが、昨夜の内に二人は別人のように変わってしまった。今、廊下を歩いている藤丸は七つの特異点を修正し、漂白化された地球を取り戻すべく戦う人類最後のマスターに相応しい顔と雰囲気をしている。

 

そう、以前の藤丸に戻ったのだ。両親の死を聞かされて以降の藤丸は精神的に疲弊しており、彼を救う為にアナスタシア達が出来る事は精々彼のメンタルケアしかなかった。だが今の彼の表情を見る限り、彼の心は回復傾向にある事が分かる。その事にアナスタシア達は安堵していた。そして藤丸と立香の前にマシュが現れる。マシュは二人に挨拶を言おうとしたが、昨日までとは見違えるような凛々しく、力強い眼差しと顔をしている藤丸に驚く。

 

「お、おはようございます……藤丸先輩……!」

 

昨日まで、自分に縋り付いてまでカルデアのマスターでいさせて欲しいと懇願してきた藤丸とは別人のようにしか見えない。昨夜一体何があったのか。マシュは気になって仕方なかった。

 

「おはよう、マシュ。昨日はよく眠れた?」

 

いつもと同じように笑顔でマシュに返事をする藤丸。

 

「あ、はい!おはようございます、先輩!私はぐっすりと眠ってしまいました……」

 

そう言って照れ笑いを浮かべるマシュだったが、内心はそれどころではなかった。

 

(何があったんですか!?昨日までの先輩と全然違いますよ!!?)

 

思わず大声を出してしまいそうになるマシュであったが、それをぐっと堪えると、藤丸の隣にいる立香がニヤニヤした表情でマシュを見ている。何故か勝ち誇っているという感じの笑顔であるが、マシュにはその理由が分からなかった。

 

「マシュ、俺はやっぱりカルデアに残るよ。そしてカルデアにいるサーヴァント達のマスターとして最後まで戦う」

 

藤丸は力強く、そしてハッキリとマシュに対して自分はアベンジャーズと一緒に出て行かず、カルデアに残って最後まで戦う事を告げた。もうマシュの目の前にいる藤丸は昨日までの彼ではない。正しく人類最後のマスターに相応しい少年だった。マシュは真っすぐに自分の目を見つめてくる藤丸を見て僅かに頬を赤らめると同時に、微笑を浮かべる。

 

「分かりました……!マシュ・キリエライト、これからも藤丸先輩のサーヴァントとして戦わせていただきます!」

 

そう言ったマシュの表情からは陰りが完全に消えており、それを見た藤丸は安堵した。そして3人で一緒に食堂へと向かう。食堂はいつものように多くのサーヴァントで賑わっており、カルデアキッチン組が忙しそうに人数分の料理を作っている。そし藤丸、立香、マシュの3人はトレーの上に朝食テーブルに座ると3人同時に食べ始める。するとそこにパニッシャーとガレスがやってきた。二人は藤丸たちが座る席の向かいの椅子に腰かける。ガレスはにこやかに微笑みながら3人に挨拶をした。

 

「皆さん、おはようございます!」

 

「おはようガレス。今日も元気だね」

 

子犬のような気質の少女騎士であるガレスは人懐っこく、カルデアのサーヴァントたちからも可愛がられている。彼女の元気な声を聞いただけで心が洗われるような気分になった。現在ガレスはパニッシャーのサーヴァントとして彼に付き従っているが、当のパニッシャーは今朝から頭痛がするらしく片手で頭を抑えていた。

 

「大丈夫?何か薬とかあるけど?」

 

「大丈夫だ、問題ない……。サーヴァントと契約したらマスターはそのサーヴァントの夢を見るとダ・ヴィンチから聞かされていたが、昨夜俺はランスロットに頭をカチ割られる夢を見たぞ……。あれは生前のガレスの記憶で合っているんだよな……?」

 

パニッシャーの言葉を聞いたガレスは暗い顔をする。生前のガレスはアーサー王の円卓に名を連ねる騎士であり、ランスロットを慕っていたものの、そのランスロットによって頭を叩き割られてしまい命を落としたという。ランスロット自身、処刑されるギネヴィアを助ける為にその場に来たのだが、ガレスは尊敬するランスロットと話をしようとしただけにも拘らず、彼は躊躇なくガレスの頭部を割ったのだ。あの時のガレスは兜をしていたのでランスロットは彼女だと知らなかったらしいのだが、そんなガレスが殺される夢を追体験したパニッシャーからすればあまり気分の良いものではない。

 

「ランスロットの奴は自分に懐いていたお前を虫ケラみたいに殺したのか……」

 

パニッシャーの口からはランスロットに対する怒りのようなものが滲み出ている。ガレスのような良い娘をなんの戸惑いもなく殺すような男に良い感情を抱く筈もないのだが。だがそんなパニッシャーに対してガレスは首を横に振る。

 

「パニッシャー殿、あまりランスロット卿を悪く言わないでください……。確かに私は生前あの方に殺されましたが、今でもあの方を尊敬している気持ちは変わりありませんから」

 

そう言ってガレスはパニッシャーに笑顔を向ける。だがこんなにも良い娘であるガレスを一片の躊躇もなく殺害したランスロットに対し、パニッシャーの感情は複雑なものだった。

 

「実はガウェイン兄さまはパニッシャー殿の事を余り快く思われていないのです……。私がパニッシャー殿のサーヴァントになる事に最後まで難色を示しておられましたから……」

 

ガレスは暗い表情で言う。確かにパニッシャーの性格を考えれば大半のサーヴァントは彼を快く思う筈がない。ましてやガレスという円卓の騎士に名を連ねる英霊がパニッシャーをマスターにしたとあらばガレスの兄であるガウェインにとって内心穏やかではいられないだろう。性格や思想からして藤丸とは違い過ぎる。異なる別世界から来たパニッシャーをマスターとして契約を結んだガレスであるが、彼女の屈託のない笑顔と善心はパニッシャーから見ても眩しいものだ。

 

「ま、俺は人様から好かれるような性格はしていないからな。それは自分でも分かっているさ」

 

そう言うとパニッシャーは自嘲気味に笑う。

 

「そ、そんな事はありません!私もパニッシャー殿にはよくしてもらっていますし、他の皆さんもパニッシャー殿が悪い御仁ではない事は理解できています!」ガレスは慌ててフォローするように言う。その様子を見たパニッシャーは苦笑いをする。

 

「それにパニッシャー殿が藤丸殿に向ける親のような目線はこのガレスめは良く理解できております!任務の際はいつも彼を率先して守ってくださっているのは聞き及んでおりますゆえ」

 

ガレスにそう言われ、藤丸とパニッシャーは思わず顔を見合わせると同時に赤面した。それを誤魔化そうとパニッシャーは言う。

 

「まあなんだ、その……これからもよろしくな、嬢ちゃん」

 

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

そう言い合う二人の姿はまるで父と娘のようだ。その様子を見ていたマシュは優しい笑顔で微笑むの。一方、噂をすればというかガレスの兄であるガウェインが藤丸たちの座る席に来た。パニッシャーと契約した妹の事が心配になったのであろう。

 

「ガレス、あなたの様子を見に来ました。新しいマスターである彼とは上手くやっていますか?」

 

ガウェインは心配そうにガレスに対して訊ねる。それに対してガレスは元気いっぱいに答える。

 

「ええ、勿論です!私の事をとても気遣ってくれますし、とっても良い人です!」

 

流石にパニッシャーの事を"とっても良い人"というのは語弊があるが、少なくとも悪人ではない。しかしながらカルデアのマスターへの適性に疑問の余地があるのは間違いではなく、現にゴルドルフやホームズはパニッシャーを問題児として捉えている。ガウェインもパニッシャーの悪に容赦の無い性格をそこまで歓迎しているわけではなく、悪人に対して過剰な暴力を行使する事でガレスに悪影響が出るのではないかと懸念しているようだ。それを察したのかガレスは言う。

 

「大丈夫ですよ、兄様。パニッシャー殿は確かに見た目はちょっと怖いですが、悪い人ではありませんよ!」

 

そう言うガレスの様子を見て、ガウェインは安心したような表情を浮かべた。そして彼はこう続ける。

 

「そうですか……それならば安心しました。……パニッシャー、もし妹に悪い影響を及ぼすようであれば……その時は覚悟しておいてください」

 

そう言ってガウェインは去って行った。恐らくは妹に害をなす存在ではないか警戒していたのだろう。パニッシャーの性格を考えれば、彼が人格的に問題のあるマスターと見られてもおかしくはないのだが……。サーヴァントはマスターの気質に引っ張られると言われており、ガレスがパニッシャーの性格に影響を受けないとも限らない。兄であるガウェインからすれば妹には優れたマスターの元で働いて欲しいと願っているので、パニッシャーをマスターにするのを苦々しく思っていても不自然ではないのだ。

 

「やれやれ、妹想いなのは良い事だが……俺は嫌われ者らしいな」

 

そう皮肉めいた調子で言うパニッシャーにマシュが言う。

 

「そんな事はないですよ!パニッシャーさんは立派な方ですから!」

 

だがそんなマシュの言葉を聞いてパニッシャーはこう言った。

 

「マシュ……俺の場合は"立派"じゃなくて"極端"なんだよ。だがまあ……俺を評価する人間が一人でもいるのなら……それに応える義務はあるな」

 

そう呟くパニッシャーの表情からは、彼の持つ複雑な感情が読み取れる。自分を子犬のように慕うガレスや藤丸、マシュ、ダ・ヴィンチといったカルデアの面々はこうしてパニッシャーを受け入れてくれている。アベンジャーズのようなヒーローからは嫌われていても、極悪人も珍しくないこのカルデアではパニッシャーのような人間はそこまで異端な存在ではないのだから。

 

「このガレスめは藤丸殿とパニッシャー殿のただならぬ関係に興味があります。お二人の間には何か絆のようなものが感じられますので!」

 

ガレスの無邪気な言葉に、マシュと立香は顔を見合わせる。二人は一瞬沈黙したが、すぐに笑い合った。当のパニッシャーも頭を掻きながら苦笑いをしている。

 

「そうですね、パニッシャーさんと藤丸先輩の関係は少し不思議に見えます。まるで昔からの知り合いみたいに思えます」

 

「え?藤丸ってこのおじさんと昔から知り合いなの?」

 

立香は興味津々で藤丸とパニッシャーを交互に見る。

 

「……まぁ、話せば少し複雑だがそんな感じだ。それよりお前も立香っていう名前なんだな。女の方も立香だと色々紛らわしいと思うんだが」

 

パニッシャーは藤丸の事を基本的に"立香"と呼んでいるが、マシュは藤丸と立香を区別する為に"藤丸先輩"、"立香先輩"とそれぞれ分けた呼び方をしている。パニッシャーの呼び方では色々と紛らわしくなってしまうだろう。男の藤丸の方を呼んでいるのか、女の立香の方を呼んでいるのか分からなくなるからだ。

 

「ま、まぁわたしもそこは紛らわしいと思ってたけど、別にそんなに気にするほどの問題じゃないんじゃない?わたしはわたしだし、藤丸は藤丸だよ」

 

「そ、それはそうかもしれないけどさ……」

 

「確かに私も最初はややこしく感じましたけど、今ではもう慣れましたね。お二人共、改めてよろしくお願いしますね」

 

マシュは笑顔で二人に言うと、藤丸と立香も同じく笑顔で返す。パニッシャーとガレスも二人の仲睦まじい様子を微笑ましく見ていた。

 

 

 

 

**********************************************************************

 

 

 

 

サーヴァントというのは基本的に召喚されてからの記憶は引き継ぐ事はできない。ましてや平行世界の聖杯戦争に関する記憶を持っているサーヴァントは極少数の例外を除いて殆どいないと言っても良いだろう。座そのものには記録自体されるのであるが、聖杯を巡る戦いで魔術師に召喚されてから自分がした行動や自分のマスターの事を覚えている方が稀有なのだから。今こうしてクリントの目の前にいるメドゥーサも自分が聖杯戦争に召喚された時の記憶を持たないサーヴァントに入る。クリントは廊下に佇んでこちらを見ているメドゥーサをじっと睨んでいる。サングラスを掛けてはいるものの、その下は鷹のように鋭い眼差しが隠されている。最も、先にクリントの方が向こうから歩いてきたメドゥーサを見たのだが。彼女は何故クリントが自分を睨んでいるのか理解できていない様子である。クリント自身からは少なからず自分に対する敵意が感じ取れた。

 

「……私になにか用ですか?」

 

「サーヴァントは自分が聖杯戦争で召喚された時の記憶は引き継げないってマシュやダ・ヴィンチ、ストレンジから聞いちゃいたが、俺の顔も覚えてないのか?」

 

クリントの言葉にメドゥーサは首を傾げる。クリント自身は冬木での聖杯戦争でメドゥーサと顔を合わせているのだが、当の彼女はそんな事は覚えていないようだ。サーヴァントの性質を考えれば仕方のない事とはいえ、そんなメドゥーサに対して苛立ちを募らせる。

 

「お前が学校で大勢の生徒を贄にしようとした事はちゃんと俺は覚えているんだ。最も、お前自身は覚えちゃいないだろうがな」

 

学校の生徒を贄に……と言われてもメドゥーサはそんな事を覚えている筈もないので、彼女の反応は当然だった。困惑するメドゥーサにクリントは詰め寄る。

 

「え?いや、私は……」

 

突然の出来事に頭が回らないメドゥーサに対して苛立った様子のクリントは彼女を睨む。平行世界の日本……冬木市で行われた聖杯戦争でメドゥーサがしでかした所業をクリントはその目で見ていたし、彼女自身とも戦った。だがクリントの目の前にいるメドゥーサはその事を覚えていない。クリントからすれば犯罪者が自分の犯した罪の部分の記憶だけ綺麗に喪失しているのと同じなのだ。サーヴァントの特性と言えばそれまでなのだが、それで納得できるクリントではない。そして彼の中の怒りが爆発しようとした瞬間、彼に声を掛ける存在がいた。

 

「クリントよ、お主は相当の命知らずと見えるな。メドゥーサはサーヴァントの中でも反英雄に属している。下手に喧嘩を売るような真似をすれば、次の瞬間には自分の命が刈り取られているやもしれんのだぞ?」

 

煽情的なケルトの戦装束を着たランサーのサーヴァント、スカサハが二人の間に割って入る。彼女からすればクリントがメドゥーサに因縁を付けているように見えたのだろう。

 

「俺は平行世界の冬木って街で行われた聖杯戦争でソイツと一戦交えたのさ。その女は大勢の学校の生徒を吸収して自分の魔力に変換しようとしていやがった。このカルデアで召喚されているから、その時の記憶は綺麗に消えているんだろうが、俺の記憶には焼き付いてるんだぜ?」

 

クリントは割って入ったスカサハに対して言う。確かに彼が指摘した通り、メドゥーサがサーヴァントとしてカルデアに現界した際に冬木の聖杯戦争に参加した記憶は存在していないのだ。

 

「現代社会で召喚されたからには、その社会のルールや法に従うのが道理だ。けどまぁ、昔を生きたお前らサーヴァントにはどだい無理な話か」

 

「一応、召喚された際に現代の価値観や情報は頭の中に入ってくるぞ?最も、聖杯戦争ともなれば現代社会のルールなど守っていられんだろうが。ましてや聖杯戦争でサーヴァントのマスターとなるのは基本的に魔術師だ。お主はそういう連中が世間の常識や社会の規範を遵守すると思うのか?」

 

スカサハの言葉に対してクリントは舌打ちする。アベンジャーズを始めとする大半のヒーローは自分の身に宿った強大な力を制御し、それを社会の為に役立てている。そもそもヒーローというのは決して法を超越した存在ではない。アベンジャーズのようなヒーローといえどアメリカという一つの国に暮らす市民として法を遵守する義務がある。極悪の犯罪者やヴィランといえど無闇に殺す事は禁じられ、捕えて法の裁きに委ねている。

 

ヒーローには勝手に犯罪者を裁いていい権利は無いからだ。一歩間違えば街や国、ひいては世界そのものを破壊しかねない絶大な力を厳しく律しなければいけないのはどのヒーローも共通している。それはヒーロー達が自分の体に宿るパワーの恐ろしさと他者に与える脅威をよく理解しているからである。だが聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは自分の力を聖杯やマスターの為に振るおうとする。個人差はあるにしても、基本的に遵法精神を持ったサーヴァントはいないと言っても過言ではない。まして生前に古代や中世を生きてきた英霊など、現代人とは価値観の全く異なるエイリアンと同じだろう。全てのサーヴァントがそうではないにしても、基本的に人を殺す事に対して躊躇しない。

 

「私やメドゥーサのようなサーヴァントはお主らヒーローとは根本から違う。それが免罪符になるとは思わんが、少なくとも今は人理を救うためにこのカルデアに身を置いているのだ。犯した罪をあげつらうなら人理を救ってからでもよかろう?」

 

「……ああそうかよ」

 

クリントはそう吐き捨てるとそのまま歩き去ってしまう。彼からすれば冬木での戦いの記憶が強烈に焼き付いており、その事を覚えていないメドゥーサに苛立ってしまったのかもしれない。怒りが収まらないクリントはやり場のない怒りを廊下の壁にぶつける。壁を叩く鈍い音が廊下に響き渡り、その音を聞いた周囲の者達は何事かと一斉にクリントの方を見る。クリントは自分が注目を集めてしまった事に気付くとバツが悪そうに顔をしかめながらその場を後にした。

 

廊下を進んでいくと、目の前にアビーが立っている事に気づく。いつからその場にいたのか分からないが突然目の前に生えてきたような感覚を覚えるクリント。アビーは無言のままじっとクリントを見つめている。無感情なアビーの瞳は何を考えているのか分からない不気味さがあり、百戦錬磨のクリントでも底知れない不気味さを感じた。

 

「……」

 

アビーは何も言わない。ただ黙ってそこに立ち、感情の読めない瞳でじっと見つめてくるだけだ。やがて沈黙に耐えられなくなったのか、それともこの不気味な空気感に耐えられなくなったのか、クリントは口を開いた。

 

「お嬢ちゃん、何か用か?」

 

するとアビーの口元がゆっくりと動いた。

 

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

 

確かにアビーの口は動いており、何かを喋っているのだがクリントには全く聞き取れない。いや、言葉の意味が分からないといっていいだろう。まるで人間が話す言語とは根本から異なるかのような発音だった。

 

「何を言ってるんだ?」

 

「■□▲◇△」

 

やはり言葉は通じていないようだ。目の前の不気味なアビーを見ている内に不安に駆られたクリントはその場を去ろうとする。が、自分の前に立っているアビーの"影"を見た瞬間、クリントはアクロバットな体捌きでアビーから距離を取る。床に映し出されるアビーの影はまるで巨大な蛸のような生物の形をしており、その影には巨大な目玉があったのだ。瞳ギョロギョロと動いており、まるで生き物のようだ。クリントは直感で床に映る影が何なのかを察知できた。そしてこの事を一刻も早くキャップや他のアベンジャーズのメンバーに伝えなければ……。だが床に映し出された巨大でグロテスクな眼球はクリントの方を見る。そして次の刹那、アビーの身体から生えてきた複数の巨大な触手がクリントを捉える。太く緑色の触手はクリントの身体をガッチリと掴むと凄まじい力で彼を引き寄せる。

 

「お前は―――――――――――シ――マ――――――――――」

 

床に映る巨大な蛸に似た影の正体を口にしようとしたクリントだが、アビーによって深淵の虚無空間へと引きずり込まれてしまった。




強大な力を持っているとはいえ、それ以前にアメリカに暮らす市民であるヒーローは法を超越しているってわけじゃありませんからねぇ。

現代社会で罪を犯したサーヴァントを逮捕した所で、裁判にかけたりムショに入れられるわけじゃないですし(最悪現世から退去されて終わり)


そーいやパニッシャーさんのアライメントって型月的には混沌・善なんでしょうかね?
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