パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
2部7章に夢中になっていて投稿できなかった……( ̄▽ ̄;)
アーサー王の伝説というのは藤丸やマシュ達カルデアの存在している汎人類史……否、藤丸達のいる世界だけに在る伝承ではない。アベンジャーズやパニッシャーが元々いた世界にも当然ながら存在している。そしてアベンジャーズは自分達の世界のアーサー王本人と共闘した事さえもあるのだ。
最も、アベンジャーズが共闘したアーサー王はカルデアにいるアルトリア・ペンドラゴンとは異なり壮年の男なのだが。そしてそのアーサー王の異父姉たるモーガン・ル・フェイがパニッシャーとガレスの目の前にいる。強大な魔術を用いてブリテンを支配しようとしている邪悪なる魔女がモーガンだ。その彼女が何故ノウム・カルデアのシミュレータールームにいるのだろうか?だがそんな疑問は後回しだ。今のパニッシャーとガレスは極めて危機的な状況に置かれている。考えるのは後回しにしなければならない。
「モーガン・ル・フェイ……。何の用だ」
パニッシャーはガレスを庇うようにしてモーガンの前に立つ。美しい黒髪と緑色のドレスを着たモーガンは魔的なまでの妖艶さと色香を放っていた。カルデアに居るモルガンも美女ではあるが、モーガンは彼女とは別のベクトルの美女といえる。アベンジャーズでさえ彼女の持つ力には苦戦したのだ。自分とガレスの二人だけではモーガンを打ち倒す事は困難を極めるだろう。
「パニッシャーよ、取るに足らん犯罪者や下賤な悪党を狩るしか能の無い殺人狂がまさかこのカルデアに所属しているとはな。実に滑稽じゃのう?」
モーガンはくつくつと笑いつつ、パニッシャーを見据える。
「貴様は俺達に何の用だ?用が無いんならとっととお帰り願おうか。勿論、帰る時は死体でな」
パニッシャーは迷わず得物であるグロック17を抜き、銃口を20メートル先に立つモーガンに突き付ける。だがモーガンは余裕の態度を崩さない。
「妾を殺すつもりか?そんな事は無意味だというのに」
彼女の言う通り、パニッシャーがモーガンと戦って勝てる見込みは限りなく少ない。スーパーヴィランであるモーガンに単独で対処できるヒーローは限られているからだ。特殊能力も、特別なパワーもない普通の人間が鍛えられる限界程度の肉体と銃器類、そして戦略を武器にするパニッシャーはモーガンから見れば路面を這う蟻と同じだ。モーガンはその気になれば指先一つ動かすだけで、周囲の空間ごとパニッシャーを欠片も残さず消し飛ばせるだろう。ガレスは目の前に現れたモーガンを見つめながら不安そうに言う。
「パニッシャー殿……あの女性は何者なのでしょうか……?見た所、魔術師のようですけど……」
ガレスの問いに、パニッシャーは静かに答える。
「……あの女の名はモーガン・ル・フェイ。便宜上、モーガンという名前にしているのはカルデアに召喚されたモルガンと混同させない為だ」
ガレスとてアーサー王率いる円卓の騎士の一員であり、汎用人類史のモルガンの娘である。最も、汎人類史のモルガンと目の前にいるモーガンは同じアーサー王伝説に登場する魔女でも全くの別人なのだが。
「……すると彼女はパニッシャー殿やアベンジャーズの方々の世界のモルガン・ル・フェイという事ですか?」
ガレスの問いかけにパニッシャーは頷く。と、モーガンはパニッシャーの隣にいたガレスに視線を向ける。
「ふん……パニッシャーよ、お主も随分と惰弱な男に成り下がったものよ。以前のお主は世に蔓延る犯罪者や悪党を狂人のように殺し尽くす殺戮兵器の如き男であったが今や見る影もない」
侮蔑混じりの言葉に、しかしパニッシャーは特に反論しなかった。
「犯罪者共に恐れられ、アベンジャーズのようなヒーロー共からは蛇蝎の如く嫌われるお主でも、カルデアという微温湯に浸かり続ければこうも無様に変わるものなのか。殺意と憤怒に彩られた処刑人が聞いて呆れるわ」
そう言って高笑いをするモーガンに対し、パニッシャーは無言のままだ。が、モーガンの言葉にガレスは真っ向から反発した。
「パニッシャー殿を侮辱する事は許しません!貴女に彼の何がわかると言うのですか!」
怒り心頭といった様子で叫ぶガレスだったが、そんな彼女に対してモーガンは嘲り笑う。
「ほざくでない小娘。そのパニッシャーという男はとっくに人間の心など捨て去ったのだ。人の心を捨て、世の犯罪者を殺し尽くす事に一生を捧げていたにも関わらず、このカルデアという組織に属してからはすっかり処刑人としての顔は鳴りを潜めておる。カルデアにはそやつにとって殺すべき英霊が山のようにいるというのに。今やパニッシャーはそのような英霊共とさえ馴れ合う始末だ。お主は何とも半端な男よなパニッシャー……いや、フランク・キャッスルよ」
確かにそうだ。ガレス自身、初めてカルデアに来た時のパニッシャーの事を覚えている。抜き身の刃物、暴発寸前の拳銃、噴火寸前の火山、剥き出しの猛毒……。パニッシャーを一言で表す表現がそれらだ。事実、何度もカルデアに召喚されたサーヴァント達とトラブルを起こした事もある。そのせいで命を落としかけた事さえ一度や二度ではない。不愛想で、無口で、攻撃的な男。それがフランク・キャッスルという男を見たガレスの第一印象だった。だがそんな彼でもこのカルデアのマスター……藤丸立香の前では優しい目をしていた。藤丸だけではない、マシュ・キリエライト、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
他にもボイジャーのような子供サーヴァント達に対しては不器用ながらも優しい顔を見せていた。過剰なまでに悪を憎み、度を越している程の怒りを抱えているパニッシャーだが、それでも人としての優しさを備えているのだ。以前、特異点の修正任務に同行したルーラーのジャンヌやジャンヌ・オルタからの証言によれば『彼は一般市民……無辜の民が命を奪われるのを最も嫌っている。彼等を戦いに巻き込まないようにするし、巻き添えを受けた人々がいれば全力で助けに入る。目の前に殺すべき悪党がいても彼等を守る事を最優先している』とあった。それまではパニッシャーに良い感情を抱いていなかった二人だが、その特異点の任務における彼の一面を見て考え方を改めたらしい。
「パニッシャー殿は人間の心を捨ててなどいません!」
モーガンに対してガレスは怒鳴る。
「ほう……」
モーガンは目を細めると、ニヤリと笑った。まるで何かを確信したかのように。
「なるほどな……その男はお前にとって大事な人間か?」
「……パニッシャー殿は今の私のマスターです!そして私はこの方のサーヴァント!」
ガレスはパニッシャーを守るようにしてモーガンの前に立つと、得物である馬上槍を構えた。
「ほう?殺人狂の貴様にも懐く小娘がいるとはな。いや、サーヴァントなど所詮はただの使い魔。自分が仕える主人は誰でも良いよいのだろうな。ハハハ!」
侮蔑的な笑いを零すモーガンに対し、ガレスは槍を構えながら反論するしようとするが、先にパニッシャーが口を開く。
「……もう一度言ってみろモーガン・ル・フェイ」
ガレスを侮辱したモーガンに対して全身から突き刺すような殺気を迸らせながら睨むパニッシャー。
「何だ?使い魔に過ぎんその小娘を馬鹿にされて頭にきたのか。しかしその娘も随分と貴様に懐いている様子。ふっ、大方その小娘は貴様に奉仕でもしているのだろう。パニッシャーよ、貴様もそのガレスとかいう使い魔を自分の性の捌け口として楽しんで……」
が、モーガンが言い終わらない内に彼女の眉間をパニッシャーの銃弾が貫いた。銃声が鳴り響き、弾丸が命中した衝撃で脳漿が飛び散り、頭部を失ったモーガンの身体が倒れる。
「いい加減黙れ。貴様の口から出る不協和音は周囲に毒だ」
「パ、パニッシャー殿……!?」
「これで奴の声は聞こえなくなった」
そう言ってパニッシャーは銃をホルスターに収めると、そのまま何事もなかったかのように歩き出そうとする。
「パ、パニッシャー殿……!彼女の死体が……!」
ガレスの言葉と同時にモーガンが倒れている場所を見ると、そこには彼女の死体が跡形も無く消えていたのだ。
「……!ガレス!」
「はい!」
まだモーガンは生きている。そう察したパニッシャーはガレスと共に身構える。
「妾を何回殺そうと意味などない。妾は過去に生きる者だからな」
モーガンの声のした方を向いた瞬間、パニッシャーの身体は固まった。モーガンの使い魔であろう複数の怪物がパニッシャーの家族……マリア、リサ、デビッドを捕らえているのだ。先程パニッシャーが会った妻子が、今目の前で人質となっている。
「あなた……!」
「パパ……!助けて……!」
「お父さぁぁん!!」
必死に叫ぶ三人の声。だがそんな彼らを見て、モーガンは笑っていた。
「まぁ、こんな人質などハナから意味など無いのだがな。所詮この3人はこのシミュレータールームとやらで作られた精巧な偽物……虚像に過ぎん」
モーガンの言う通り、彼女の使い魔に捕らえられている妻子はシミュレータールーム内で作り上げられた偽物だ。つまり本物のマリア、リサ、デビッドとは違う。パニッシャーの妻子はとっくの昔に墓の下にいるのだ。所詮は偽物……虚像に過ぎない3人を人質にした所で意味などない……。無い筈なのに……。
「……!」
だがパニッシャーは引き金を引けなかった。偽物だと分かっているのに何故動けないのか、何故銃の引き金を引けないのか。それはパニッシャーにも分からない。
「どうした?こんな人質の価値など微塵もないハリボテなど無視して妾を銃弾で蜂の巣にすればよかろう」
モーガンは挑発するが、それでもパニッシャーは動けなかった。そんなパニッシャーの様子を見たモーガンはニヤリと笑う。
「偽物の家族でさえ撃てなくなっているとは……。やはりお主はカルデアという組織にいる内に自分でも気付かないレベルで脆弱になったようだな」
モーガンがそう言うと、怪物の一匹がリサの肩に噛みついた。そしてそこから血を吸っていた。
「いやっ!やめてぇっ!」
リサの叫び声が響く。
「やめろモーガン!俺の娘に手を出すな!!」
目の前で怪物に血を吸われる娘のリサを目の当たりにしたパニッシャーはモーガンに銃口を突き付ける。
「偽物の娘が嬲られているのを見るだけで動揺するとはな。やはり貴様は弱くなっているぞパニッシャー。周囲から恐れられた処刑人が聞いて呆れるわ」
「パパ……!痛い……!助けて……!」
苦痛に満ちた声を上げる娘の姿を目にしたパニッシャーの頭に血が昇る。モーガンの指摘通りだった。かつての自分ならこんな状況に陥ったとしても冷静に対処していた筈だ。なのに今は銃を撃つどころか指一本すら動かせずにいた。
「以前お主は、フッドの奴に妻子を生き返らせて貰った事があっただろう?その時は躊躇なく付近にいたヴィランを脅して妻子を焼却したというのに」
そう、以前の自分であれば生き返った本物の妻子であろうとも殺す事ができた。だが今は…。
「パニッシャー殿……!」
ガレスはパニッシャーを心配そうに見つめている。
「ふん。今更罪悪感でも覚えたか?カルデアのマスターの小僧と交流する内に甘さまで芽生えたとはな。あんな何処にでもいるような取るに足らん小僧に情が移るとは馬鹿げておるわ」
パニッシャーの持つ銃に装填されている魔術弾でモルガンを殺す事は可能だ。しかしモルガンは幾度でも復活してくるし、撃った瞬間に怪物達に対して人質にしているマリア達を殺すのを命じる可能性が高い。以前の自分であれば躊躇なく撃っていた筈なのに、今はこうして動けないでいる。人質のマリア達が虚像だと知っていてもだ。
「俺の妻と子供達を解放しろ……!」
再び家族を目の前で失うという恐怖心と焦燥感から苛立つように叫ぶ。だが次の瞬間には冷静さを取り戻し、怒りを抑える為に深く息を吐いた。今の自分では駄目なのだ。こんな精神状態ではとてもじゃないが勝てないのだ。だからまずは冷静になる必要がある。そして冷静な思考になった上で覚悟を決める必要があった。もう自分には守るべき物などない。守るべき物など……。しかしそう考えれば考える程に頭の中に藤丸、マシュ、ダ・ヴィンチ、ガレスといったカルデアの面々が浮かび上がる。
(俺は一体……どうしたんだ……?)
自分でも理解出来ない感情だった。セントラルパークで妻子を失った自分にはもう守るべき物など無くなったというのに。あの日に人の心を捨てたというのに。どうしてこんなにも動揺しているのか?
「偽物の家族でさえ人質として機能している時点で貴様は弱くなったのだ。ほら、この通り」
モーガンが指を鳴らした瞬間、爬虫類のような彼女の使い魔が抑えていたマリアの右腕を引き千切る。彼女の絶叫がシミュレータールームに響き渡り、千切られた箇所からは大量の血液が流れ出す。
「いやぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
目の前では激痛に悶える妻のマリアの姿がある。そんな彼女を見たパニッシャーは思わず叫ぶ。
「やめろモーガン!!これ以上妻を傷つけるな!」
するとモーガンはニヤリと笑って口を開く。まるでもっとパニッシャーを甚振りたいと思うように。
「……まだ言うか?」
そして使い魔の怪物はマリアの頭部に噛り付き、彼女の頭を砕いた。脳漿が飛び散り、鮮血が流れるその光景を見て、思わず目を背けたくなる衝動に駆られたが何とか堪える。ここで目を逸らしてはいけないと思ったからだ。
「イヤ!!ママぁぁぁ!!!」
それはあまりにも凄惨な光景であった。今、目の前に映る光景こそが紛れもない現実であり、真実なのだと思い知らされたような気がした。虚像であってもリアルな鮮血が流れ落ち、母の死を目の当たりにしたリサとデビッドは悲鳴を上げる。
(何故……何故撃てないんだ……!?)
妻であるマリアの死を目の当たりにした今でさえ銃で攻撃できないパニッシャー。そんな彼の姿を見たモーガンは高笑いをあげる。
「ハハハハ!どうしたパニッシャーよ!冷酷非道な処刑人からただの軟弱な男に成り下がったお主では妾を殺せんとみた!また大事な者を失う事を恐れているのか!?こんな虚像の家族の死にさえ動揺するとは!」
そう言うと同時に怪物達はリサとデビッドに群がり、二人を食らい始める。
「やめろぉぉぉぉ!!!」
彼は堪らず叫ぶ。だが目の前では自分の子供達が怪物達によって貪られていく。銃を乱射して怪物達に攻撃を加えるパニッシャーだが、怪物達の数が余りにも多く、殺し切れない。
「シミュレーターで生み出された虚像など妾の使い魔共の養分にさえならんわ。それに……」
モーガンは呆然としているパニッシャーの姿を見て鼻で笑う。
「偽者の家族の死を目の当たりにして動けずにいる貴様はもう処刑人でもヴィジランテでもない」
呆然自失としているパニッシャーはすっかり戦意を喪失していた。床に両膝を付き、両手も力なく垂れ下がっており、まるで抜け殻のようだった。
「パニッシャー殿!気をしっかり持ってください!パニッシャー殿!!」
ガレスは呆然としているパニッシャーの身体を揺すりながら必死に呼びかける。だがその甲斐もなく、彼の目は虚ろなままだった。
「……答えてくれガレス。俺は……俺は弱くなったのか……?シミュレーターで創り出された妻子の死を目の当たりにしただけでこのザマだ……」
それを聞いたガレスは思わず叫んでしまう。
「貴方は弱くなってなんかいません!!ただ……愛する人達の死に悲しんでいるだけです!!」
そう言ってモーガンを睨み付けるガレス。
「許さない……!死んだパニッシャー殿の家族を利用して彼を悲しませるなんて……!」
「使い魔の分際で何をほざくか!まあ良い。貴様らをこの虚像共と同じ末路を辿らせてやろうぞ!」
モーガンは侍らせている使い魔の怪物達に合図を送り、ガレスを取り囲もうとする。が、その時……。
「全く……こうも易々と侵入者に入られるとは。カルデアのセキュリティを強化しておくように我が夫に対して言うべきでしょうね」
突然響いてきた声にモーガンとガレスは声の方向に目を向ける。そこには―――彼女がいた。長く美しい銀髪の髪の毛を靡かせ、黒と青を基調としたドレスを纏った妖精の女王……モルガン・ル・フェイがこちらに向かって歩いてくるのだ。近付く度に彼女のヒールの音が響いてくる様はなんとも威圧感があった。
「モルガン……陛下……?」
妖精國を支配していた冬の女王、モルガンはガレスとパニッシャーの横に立つ。
「呆けている時ではありませんよ。まず目の前にいる不快極まりない存在を排除しなくてはなりません」
モルガンはモーガンに対して冷徹な視線を向ける。モルガンとモーガン……同一の存在にして同一ではない二人がここに相対した。
自分で書いていてマジでモーガンに殺意沸いた……(#^ω^)