パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
※パニッシャーさんは原作コミックではこれぐらいの虐殺行為は普通にしています。
容赦なく、躊躇なく浴びせ付ける銃弾の雨が囚人たちの身体を貫通していく。立ち向かってくる者、逃げる者、その場に動けずにいる者と様々だったが、それでも微塵の情けも掛けずにパニッシャーはM16を一心不乱に囚人たちに浴びせていく。まるでそこに命乞いをする者がいる事など頭にないかのように……。サンフランシスコに存在するサンクエンティン刑務所は全米で最も悪名高い刑務所だ。ここに収監される囚人は凶悪な犯罪を犯した者が多数を占めており、死刑囚だけでも数百名に及んでいる。そんなサンクエンティン刑務所にいる囚人が聖杯を手に入れ、あまつさえそれを用いて囚人たちを脱走させたというのだ。
ノウム・カルデアに来て初めての特異点修正任務とレイシフト。パニッシャーの初陣であるこの任務では多くの囚人の死体が築き上げられた。無言で囚人達に弾幕を浴びせ付けるパニッシャーを見ているのはマルタとジャンヌ。余りの彼の容赦の無さに言葉を失う他なかった。すると突然、牢獄内にいた囚人の一人が隠し持っていた銃を発砲する。放たれた弾丸はパニッシャーの顔に向かって直進するが、銃声を聞いた彼は即座にM16からS&W M29に持ち替えて撃ち返した。その一発が見事に男の眉間に命中して絶命し、男は地面に倒れ込む。パニッシャーはそのまま刑務所内を進み、マルタとジャンヌもそれに続く。新たなカルデアのマスターとなったパニッシャーがどのような人物なのかは事前にダ・ヴィンチから聞かされていたものの、いざ実際に目の当たりにしてみると恐ろしい以外に感想はなかった。
「酷いわね」
死体の山を見てジャンヌは思わずそう呟いた。刑務所内にはパニッシャーが殺した囚人達の死体が転がっている。こちらに向かってきたので正当防衛と言えるのだが、中には逃げているだけの囚人までいた。そして歩いているパニッシャーは牢屋にいた一人の囚人を見つけると銃口を鉄格子に入れ、引き金を引こうとする。しかしそこにマルタが止めに入る。
「待って!これ以上殺す必要はないわ!」
そう言ってパニッシャーの腕を引っ張る。
「邪魔をするな。どうせこいつ等は生きる価値すらもない奴等だ」
「けど、だからって無抵抗な相手を殺すのはやり過ぎよ!!」
この前にも何度かマルタとジャンヌから注意を受けていたパニッシャーであるが、状況が状況なだけに彼のやり方に目を瞑るしかなかったが、流石に目に余ったようだ。マルタはパニッシャーの目を見据えながら言う。
「いい?わたしたちの任務は特異点の修正。無抵抗の人間を殺し回ることじゃないのよ」
「だがこれも結果的には社会にとってプラスに働く。こいつ等囚人は税金で暮らしてるんだ。刑務所にいる囚人の人件費は馬鹿にならん。ならこうして"口減らし"してやる事で国に貢献できる。違うか?」
「……あなたのしている事は間違っています。彼らはいずれ刑期を終えて外の世界に帰るんです。自分の犯した罪を償い、真っ当な人生を歩む筈だった彼らをあなたはその手で葬り去ったんですよ!?これは余りにも残酷な仕打ちです!!」
ジャンヌはパニッシャーの所業に対して怒りを露わにしながら言う。確かにジャンヌの言う事も間違いではない。更生した犯罪者が再び犯罪に手を染めてしまうケースは決して少なくない。しかしそれはあくまで可能性の話であって確実性はない。もし仮に犯罪を犯すような人間であっても更生の機会が与えられるのならそれに越した事はないだろう。それがジャンヌの考えであった。
「お前はこの刑務所にぶち込まれてる連中が一人残らず心を入れ替えて真人間になるとでも思ってるのか?」
「そうは言っていません……。ですが彼らもいつかはこの刑務所を出て社会に戻って来るでしょう。その時のためにも今ここで命を奪う必要なんて……」
「甘い考えだな。いいか?特にこのサンクエンティン刑務所に収容されているような奴等は釈放されてもまた犯罪を犯す。罪を犯して捕まって、刑務所に入れられて釈放され、また罪を犯すっていうループの人生を送っているような連中だぞ?それならなんだ?どれだけ罪を犯しても最後に心を悔い改めりゃお前としては満足なのか?」
「……」
黙り込むジャンヌ。そんな彼女を尻目にマルタが割って入る。
「あなたの言い分はよく分かったわ。でもわたしもジャンヌの意見に賛成よ。罪人だからといって勝手に裁いていい権利は誰にもないわ」
聖女であるジャンヌ、聖人であるマルタからすればパニッシャーのしている行為は単なる私刑であり、到底容認できるようなものではなかった。そんな中、マルタが話を続ける。
「あなたがどんな過去を持っているのかは知らないけれど、あなたのやっている事は正しいとは言えない」
「常に正しさだけで世の中が回るんなら誰も苦労はしねぇよ」
マルタとパニッシャーの視線がぶつかり合う。特異点の修正任務だからこそある程度は我慢していたジャンヌとマルタだったが、ここに来て遂に爆発してしまったようだ。そんな二人に挟まれる形でいるのもあり、流石のパニッシャーも居心地の悪さを感じていた。
「だったらどうしてあんな殺し方をするんですか!?あなたも少しは命を大事にして下さい!!」
ジャンヌは感情的になって叫んだ。するとそれを聞いたパニッシャーは深い溜め息を漏らす。昨日、ジャンヌとマルタの目の前で情報を提供してくれたサンクエンティン刑務所の囚人を背後から射殺したのだ。あの件で自分に対する悪印象が生まれたのだろう。
「答えて下さい!!あなたには人としての心があるのですか!?」
今度はマルタが言う。
「そうよ!あの時だっていきなり囚人に銃を向けて引き金を引いたじゃない!わたしたちに情報を提供して協力してくれた人なのにあなたは銃で殺したのよ!?信じられないわ!」
二人の非難に対し、パニッシャーは反論する。
「お前等は現代よりも人の命が軽い時代に生まれた割には罪人に優しいんだな。だが俺は昔から悪人を何人も殺しているぞ?そもそもあいつ等が生きてる価値なんざなかったからな」
そう言って拳銃をホルスターに仕舞うと二人に背を向ける。
「話は終わってないわよ!」
マルタはそう言うとパニッシャーを正面に向かせ、乱暴に壁に押し付ける。
「さっきの質問の答えがまだでしょ!何であんなことをしたの!?」
するとパニッシャーは静かに答えた。
「理由なんてないさ。ただあいつが気に食わなかっただけだ」
そう言った瞬間、マルタが彼の胸倉を掴む。
「ふざけないで!そんないい加減な理由で許されると思ってるの!?今回の任務が初めてだから仕方ないかもしれないけど、今後は勝手な行動は慎んでちょうだい!」
マルタが怒鳴り声を上げる中、ジャンヌは冷静に問う。
「悪党や罪人、咎人だからといって好き勝手に裁いていい権利は誰にもありません。まして命を奪ってしまうなど言語道断です。もし本当に理由があるなら聞かせてください」
ジャンヌの言葉に続くようにマルタが口を開く。
「あなたが今までどのような人生を歩んできたかは知らないけれど、今はこうしてマスターになった以上は無闇に命を奪うような真似はしないでちょうだい。わたしやジャンヌの本来のマスター……藤丸立香ならあなたのような真似は絶対にしないわ」
「俺は立香とは違う。あいつのやり方を見習うつもりもない」
「では何故このような真似をしたんですか?」
ジャンヌの質問にしばらく沈黙が続いた後、ゆっくりと答える。
「道徳や倫理、法律で人間を律しきれるもんじゃない事はお前さんも知っているだろう?そして人としてのモラルが無いようなクズは心なんて入れ替えない。ましてや更生なんぞ期待するだけ無駄だ」
人間の皮を被ったサイコパス、ソシオパス、シリアルキラーにチャイルドマレスターといった異常者は確かに存在している。そして彼らには一般社会の倫理・規範・道徳など持ち合わせていない事も。人権が発達した現代社会ではそういった者達にも更生の機会を与え、更正を促そうとする動きが多く見られるようになった。人権は確かに現代社会が生み出した偉業であり、誰しもが平等な社会を築けるかもしれないという希望でもある。しかし、全ての人間に等しく権利を与えるというのは同時に人としての心を持たないケダモノにまでチャンスを与えてしまう結果となる。残虐な殺人を犯した加害者にも人権が適用され、先進的な更生プログラムにより社会復帰を果たすケースは決して少なくない。しかしパニッシャーは明確にこれを否定している。更生などするだけ無駄、反省など意味はない、懺悔など遅い。パニッシャーにとって、犯罪者など駆除すべき害獣でしかないのだから。社会を壊す罪人には容赦の無い制裁を加えなければならないのだ。
「人は誰しも更生の機会を与えられるべきです!罪を犯したからといってその命を奪っていい筈がありません!!」
ジャンヌの強い訴えを聞いたパニッシャーは小さく鼻を鳴らす。
「甘ったれた理想論だな。ま、お前さんの生きていた時代なら教会で懺悔の告白をすればそれで罪はチャラだったんだろうが」
「あなた……いい加減にしないさいよ?」
マルタは静かな口調ではあったが明らかに怒っているようだった。それでも構わずに続ける。
「罪人が更生すれば、ソイツが殺した人間が生き返ったりするのか?」
「……そうは言っていません。ですが罪人の中には本当に心を改めて罪を償う人生を歩んだ者もいるんです。更生の機会を身勝手な理屈で奪い取るあなたより余程マシです!」
ジャンヌの瞳は真っ直ぐであった。それは紛れもなく彼女の本心であったのだが……。
「更生……更生……更生、か」
吐き捨てるように言うと頭を搔く。
「罪人や悪党とはいえ"生きている人間"だ。生きている以上は罪を犯す道も更生の道もあるからな」
「何が言いたいんですか……?」
ジャンヌの問いに間髪入れずに答える。
「俺が言いたいのは"生きている以上は無限にチャンスがある"ってことだ」
「意味が分からないんだけど……」
困惑する二人にこう続けた。
「生きているからこそ罪人への道も、更生への道も歩める。だからお前等はクズに慈悲を与えてるんだろ?死ねばそういう道も断たれるからな。結局のところ、お前等は死んだ人間より生きている人間の未来が大事なんだろ?」
パニッシャーの言葉の意味を二人はようやく理解したようだ。そう、犯罪者が奪った人間にはそういったチャンスすらも奪われているのだ。未来もない、将来もない死者……。だがそんな人間を殺した悪党は生きている。生きている以上は再び犯罪者の道を歩むか、更生への道を歩むかを選ぶ事ができる。しかし殺された被害者には未来永劫そのような道を歩む事はできない。つまり生きている人間の方が必然的に優先されるというわけだ。
「死んだ人間には道は歩めない。だが被害者を殺したクズには生きている限り道が与えられている。お前等なら生きている方を選ぶよな?」
皮肉と侮蔑混じりのパニッシャーの言葉にジャンヌとマルタは押し黙る。彼の主張は間違ってはいないのかもしれない。だが納得できるものではなかったからだ。
「それではただの殺戮ではありませんか!!」
ジャンヌの怒りに満ちた叫びは通路内に響き渡る程の大きさだったが、当の本人であるパニッシャーは全く意に介していない様子だった。
「別に良いじゃねぇか。クズが減ればそれは社会にとって結果的にプラスに働くんだからな」
「あなたは……!あなたって人間は……!」
マルタは歯を食い縛りながら震える拳を握り締めていた。
「……あなたは過去になにがあったのですか?」
が、ジャンヌは一旦怒りを抑えつつ、パニッシャーに尋ねてみる。すると彼は溜め息を吐くようにして言うのだった。
「特に何もないさ。ただクソ野郎どもを殺ってきただけだ」
「そんなものじゃないでしょう?あなたは常に怒りを内包しながら生きている。まるで憤怒の化身のように感じます」
その言葉に対して彼は何も答えなかった。
「そうね……あなたがどのような経緯を経て今に至るかは分からないけどこれだけは言えるわ!あなたのやり方を認める訳にはいかない!どんな理由があろうともわたしは許さないわ!」
マルタはそう言い残すとパニッシャーに背を向けて歩き出した。それに続くようにジャンヌもまたその場を後にする。一人残されたパニッシャーは無言のまま立ち尽くしていた……。
二人から見ればフランクさんのやってる事は許容できないでしょうねぇ……(;^ω^)
ジークフリートやシグルドだったら許容されてたかも?
マルタはタラスクに説教(物理)するだけで済ませてくれる人ですし、ジャンヌは言わずもがな。戦争中に無抵抗の兵士や投降したイングランド兵を虐殺した逸話とかは……無いですよね?(^_^;)