パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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アストルフォきゅんからパパと呼ばれてみたい……(願望)


番外編③ パパさん

翌日、パニッシャーはノウム・カルデアの食堂で昼食を食べていた。先日の特異点での囚人大量虐殺の件が他のサーヴァント達にも知られているせいか、不思議とパニッシャーの周囲にはサーヴァントが寄り付いてこない。まともでないマスターとして見られているのか、それとも単に気に入られていないだけなのか。いずれにせよ嫌われる事には慣れているのでパニッシャーはさほど気にしてはいないようだ。すると突然後ろから声を掛けられる。

 

「ねぇパパ」

 

その言葉を聞いたパニッシャーは思わず口に含んだ食事を吹き出してしまう。何とか吹き出すのを堪え、声のした方向を見るとそこには笑顔のアストルフォが立っていた。

 

「誰が"パパ"だ」

 

パニッシャーが不機嫌そうに言う。アストルフォは天真爛漫を絵にかいたようなサーヴァントであり、時々突拍子もない言動をする。今回彼から発せられた言葉もその類だろうと思う事にした。が、次の言葉でそうはいかなかった。

 

「昨日、泣いているマスターに胸を貸してあげてたじゃん。あの時のキミは完全にマスターのパパだったよね」

 

ニコニコしながら話し掛けてくるアストルフォに頭痛がしてくる。確かに昨日、涙を流す藤丸に対して、パニッシャーは彼を抱き寄せ、胸に抱いてやった。その時の様子を見ていたのだろう。或いは誰かから聞いたのか。だが父親扱いされるのは御免被る。自分は断じてそういう存在ではないのだ。

 

「俺はアイツの父親になった覚えはない。勘違いするな」

 

「えー?マスターはあんなにキミに懐いてるのに?」

 

「それはアイツが俺に対して勝手に甘えてきているだけだ」

 

実際問題、彼が自分に甘える理由など一つしかない事は分かっていた。自分を父親のように感じているのだろう。

 

「けどアンタは立香から甘えられるのに満更でもなさそうじゃない?」

 

パニッシャーとアストルフォの会話にブーディカも入ってくる。ブーディカは昼食を乗せたトレーを持ってパニッシャーの隣に座った。

 

「俺にはガキを甘やかす趣味は無い」

 

そう言ってパニッシャーは食べかけのパスタを啜る。

 

「じゃあなんであの時、胸を貸してあげたりしたんだい?」

 

ブーディカはニヤリと笑みを浮かべながら問う。彼女の顔を見て思わず黙り込んでしまうパニッシャー。

 

「もー、素直じゃ無いなぁ!本当は嬉しかったんでしょ!」

 

そう言われると何とも複雑な気分になるが、図星なのは間違いないので反論できないのが悔しいところである。

 

「……別に嬉しくなんかない」

 

ぶっきらぼうに呟くと黙々と食事を再開する。そんな様子をみて、二人は顔を見合わせてニヤニヤしていた。今の藤丸は精神的に相当追い詰められているだろう。シミュレータルームからは自分の意思で出たといえど、心の傷は深いはずだ。話によればアナスタシアがルームに籠る藤丸を迎えに行ったらしい。

 

「アンタはあたしやアストルフォみたいなサーヴァントじゃない。かといって魔術師でもない。立香と同じ本当の意味での普通の人間なんだ。だから……立香に一番寄り添えるのはきっとアンタなんだよ」

 

ブーディカは笑顔でそう言った。そして続けて言う。

 

「ま、もし、あんたが嫌ならあたしがその役やっても良いんだけど?」

 

冗談っぽく言うと、アストルフォがすかさず反応した。

 

「それならボクだっておじさんとパパ活したいよ!」

 

「……パパ活?」

 

聞きなれない言葉がアストルフォの口から出てきたが、この際気にしないことにした。母性溢れるブーディカなら母親のような包容力で藤丸を癒してくれるだろう。藤丸の母や姉を名乗る不審者……もといサーヴァントがカルデアにはいるが、父を名乗る不審者はいない。

 

「パニッシャー、キミとブーディカならマスターのパパとママになれるかもしれない!」

 

「「は?」」

 

アストルフォの発言にパニッシャーとブーディカの声がハモった。パニッシャーとブーディカの反応を見て、さも当然とばかりに言葉を続ける。

 

「パニッシャー、キミとブーディカが結婚してマスターを養子にすれば正式に親子として認められ……」

 

が、彼の言葉が終わらない内にパニッシャーはアストルフォの頭を素早くヘッドロックしつつ、拳骨で彼の脳天をグリグリしはじめる。

 

「痛だだだだだだ!?」

 

人間の拳骨などサーヴァントのアストルフォには痛くも痒くもない筈なのだが、そこは空気を読んでいるのだろう。

 

「アストルフォ~?ちょっとこっちに来なさい」

 

にっこりと微笑むブーディカだが、目が笑っていない。その微笑みを見たアストルフォの表情はみるみる青ざめていく。恐らくこれから何をされるのか理解したのだろう。

 

「ひえ!?ちょ……ちょっと待って……今食事中……いだだだだだっ!!」

 

有無を言わさずにアストルフォに電気あんまをするブーディカ。彼女の足がアストルフォの股間をグリグリと刺激する度にアストルフォが悲鳴を上げる。その様子をみた周りのサーヴァント達がドン引きしているのが分かる。どうやらいつもの光景のようだ。やがて悲鳴が途絶えるとアストルフォは気絶してしまったようでぐったりとしている。が、即座に立ち上がると涙目で抗議してくる。

 

「ヒドイじゃないかー!拳骨に電気あんまって虐待だよー!訴えてやるー!」

 

「へぇ……まだ足りないみたいだね」

 

ニッコリとした笑顔だが殺意に溢れた表情をするブーディカを見て、再び顔面蒼白になるアストルフォ。これ以上余計な事を言えば本気で殺られかねないので大人しく引き下がる事にした。

 

「ゴメンね。アストルフォはいつもあんな感じだから。悪気は無いんだよ」

 

パニッシャーの隣に座りながら苦笑いしながら話すブーディカ。彼女もまた、藤丸の事を気にかけているサーヴァントの一人だ。彼がマスターとしての務めを果たさず、虚像の両親と暮らしていた時も一貫して擁護していた。彼女がいなければ今頃どうなっていたか……想像するだけで恐ろしい。

 

「別に気にしていない」

 

「そう?ありがと。それより聞いたよ。初めての特異点の修正任務で沢山囚人を殺したって?」

 

ブーディカもジャンヌとマルタから囚人虐殺の事を聞いたらしい。確かにあの刑務所の囚人連中は更生の見込みのない奴等ばかりだった。だがだからといって殺した事に後悔はない。自分の選択に悔いはないのだから。

 

「それがどうした?」

 

ブーディカ:「いやさ、私も生前に結構人を殺してきたけど……いくら何でもやり過ぎじゃない?もう少し加減できなかったのかなってさ」

 

少し困ったように笑うブーディカだったが、彼女自身も生前にローマに対する反乱を起こした際にロンディニウムで大勢のローマ市民を殺している。兵士でさえない一般人さえ容赦なく手に掛けてきた彼女でも、パニッシャーのやり方には疑問があるのだろう。とはいえパニッシャーは普通に生きている人間を殺したりは決してしないのだが。

 

「俺は普通に生きている人間が死んで、悪に生きる人間が生を貪り続けるのが気に入らないだけだ。結局生きている人間だから、死んだ人間と違って未来があるから"人権"とやらが尊重されているんだろうよ。囚人共に殺された人間は未来さえも潰されたってのにな……」

 

そう言ってコーヒーを飲むパニッシャーの目はどこか遠くを見ているような眼差しをしていた。彼にとって悪人を殺す事はただの作業に過ぎないのだ。善人が殺されれば怒りを覚えるかもしれないが、罪人の命までは気にとめていないのである。と、そんな事を話しているとジャンヌ・オルタがパニッシャーの隣の席に座る。ブーディカと挟まれる形となったパニッシャー。

 

「面白そうな話をしてるじゃない、パパさん」

 

アストルフォと同じく、彼女もパニッシャーの事を藤丸の父親代わりと思っているのだろうか。まあ実際に父親と同じような役割をしているので否定しきれない。

 

「善人には生を、悪人には死をって考えはオルタの方のアルジュナみたいね。安易な二元論で生きていると、いつか足元を掬われるわよ?世の中そう単純じゃ無いわ」

 

そう言いながらコーヒーを飲むジャンヌ・オルタ。ルーラーの方のジャンヌとは違い、真っ向からパニッシャーのやり方を否定する事はしなかった。性格こそ捻ている部分があるが、根本がジャンヌなのでそこまで悪い人物ではないのかもしれない。

 

「だろうな。ただ、そういう連中に対して情をかけているから刑務所がパンク寸前なんだろ?人権尊重ってのも素晴らしいが何事にも限度があるんだ」

 

「あら、ご名答ね。ま、アナタのしている事は世間一般では大量殺人と呼ぶんでしょうけど」

 

パニッシャーがしている事は所詮は私刑なのだ。社会はそういった行為を認めてはいないし、現に元々いた世界ではパニッシャーは警察から犯罪者として追われている。殺す相手がマフィアやギャングといった無法者であろうと殺人は殺人なのだから。とはいえこの世界ではそのような法は存在しないので咎める者はいないだろう。ましてレイシフトによる特異点の修正でいちいち現地の法律を守っているわけでもない。しかしそれを差し引いてもパニッシャーが特異点であるサンクエンティン刑務所でやらかした囚人虐殺は目に余るものがあったのだが。

 

「あはは……でもまあ確かにあの数の囚人を殺すのはちょっとやりすぎかもね……」

 

確かに藤丸であればあの刑務所で虐殺など決して行わないだろう。悪に容赦なく死を与える苛烈なパニッシャーだからこそ成せる技なのかもしれない。

 

「でもアタシ個人としてはやっぱり嬉しいかな。アンタが立香を支えてくれることに。マスターとしては失格だろうけど、彼の"父親"としてならこれ以上ないぐらい頼りになるからね」

 

ブーディカの言葉に頷くジャンヌ・オルタ。彼女もまた同じ気持ちなのだろう。

 

「それじゃあ今後ともよろしくね、"パパさん"♪」

 

ジャンヌ・オルタはニヤけた顔で言う。明らかに揶揄われているようだ。

 

「その呼び方はやめろ」

 

「どうしてよ?別に良いじゃない、呼びやすいんだし」

 

暫くの間はカルデアのサーヴァントから"パパさん"や"お父さん"と呼ばれる事が続くだろう。

 

「それで、ブーディカとの挙式はいつになるの?」

 

アストルフォが先程言った言葉を聞いていたのだろうか、ジャンヌ・オルタも冗談めかしで聞いてくる。彼女の言葉にブーディカは流石に困った顔で注意してくる。

 

「こらっ!アストルフォが言った事を真に受けないの!」

 

どうやら彼女は本気で怒っているようで、顔が赤くなっていた。それを見たジャンヌ・オルタはケラケラと笑う。周囲のサーヴァントもブーディカたちのやり取りを微笑ましそうに見ていた。




パニッシャーさんとブーディカママって境遇が似てるような……?
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