パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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久しぶりの投稿!ペーパームーンクリアしてようやく製作意欲が高まってきましたw


番外編⑤ 妥協と譲歩

広々とした大浴場は湯舟から立ち昇る湯気によって視界が曇っており、まるで雲の中を漂っているかのような感覚に陥ってしまう。こうして大浴場を貸し切り状態にしている形で入る湯舟は実に心地よいものだ。特にここ数日間立て続けにトラブルに巻き込まれ続けた事もあり、こうして何も考えずにのんびりと過ごせる時間はとても貴重である。この貴重な時間を存分に堪能しなければ勿体ないというものだ。ノウム・カルデアの使命は何もまっさらな状態になった地球を元通りにするだけではない。人類の歴史の流れに発生するイレギュラー……特異点の修正までしなければならないのだ。

 

 

任務には何日も時間を要するのも珍しくなく、彷徨海に帰って来たと思ったら翌日にはまた別の時代に発生した特異点の修復任務に赴かなければならない事もザラだ。おまけに今の地球は白紙化しており、世界に存在していた娯楽なども綺麗サッパリ消えている。休暇で外の世界に行くという事も出来ないのを考えると、こうした大浴場のような福利厚生を充実させなければ到底やっていけないだろう。おまけにノウム・カルデアには生きている人間よりもサーヴァントの方が圧倒的に多い。シミュレータールームを用いて街や環境を再現してそこでバカンスや遊びを満喫しているサーヴァントも珍しくなく、藤丸やマシュも彼等の遊びに付き合っている。パニッシャーは藤丸と一緒に湯舟に入り、隣にいる藤丸は頭にタオルを乗せて極楽気分でいる。

 

「あ~、気持ちいい……」

 

「いい湯だな」

 

そう言ってぼんやりと天井を眺める。濃い湯気に覆われていて上まではあまり見えないが、それでも心地良さは変わらない。任務から離れれば年相応の青年のように気の抜けた顔になってしまう。

 

「日本の文化には慣れないが、銭湯ってのは意外といいもんだな」

 

アメリカ人である自分にとって風呂と言えばシャワーしか存在しないし、湯船に浸かるという習慣はあまりない。しかし日本人にとってはそういった物も大事なのだろう。現に藤丸はこうしてリラックスしながら入浴を楽しんでいるのだから。

 

「でしょ?こうやってゆっくりくつろぐ時間が大事だと思うんだよね。毎日が忙しいからさ、こういう機会がないと疲れが取れないっていうか……」

 

言いながら顔を綻ばせる少年の表情はとても微笑ましいものがある。ノウム・カルデアには3桁にも昇るサーヴァントがいるが、彼等のマスターである藤丸の身はたった一つだ。幾らサーヴァントの数を増強して戦力を充実させても藤丸が死ねばそれまで。パニッシャーにもマスター適正とレイシフト適正があったからこそ藤丸に続く第二のマスターとなれたわけだが、性格や気質の問題からかサーヴァントの面々とは中々上手く行っていない。最初の特異点修正任務ではジャンヌとマルタに所業を咎められたし、カルデア内のサーヴァントにもパニッシャーが行った囚人への虐殺行為は知れ渡っている。それ故に中々パニッシャーと契約してくれる者が現れない。ダ・ヴィンチやマシュが契約してくれるサーヴァントを見繕ってくれるとは言っていたが……。その時大浴場の扉を開ける音が聞こえた。自分と藤丸の二人しかいないから貸し切り気分でいただけで、大浴場自体は開放されているのだ。足音からして二人だろう。湯気が濃いので姿が視認できないが誰と誰が来たのだろうか。

 

「ん?誰か入ってきたね」

 

藤丸は湯気の向こうから来る二つの影を見る。誰が来たのか気になる藤丸は目を凝らした。そして湯気から現れた二人の姿を見た瞬間に思わず変な声を上げてしまう。

 

「え?」

 

現れたのはバーヴァン・シーとモルガンだった。この大浴場は時間帯によっては混浴となるのを思い出す藤丸。が、藤丸は二人の恰好を見て顔をみるみる内に赤らめる。大浴場に来た二人は身体にバスタオルすら巻いていないのだ。身体を拭くタオルは手に持ってはいるものの、自分の肢体を惜しげもなく晒している。

 

「お、ザコ。お前も入ってたんだな」

 

バーヴァン・シーは湯舟に浸かりながら自分とモルガンを見ている藤丸を見て笑いながら言う。その視線はまるで獲物を見つけた蛇のようだ。

 

「何も驚くことないでしょ。この時間帯は混浴なんだから」

 

確かにそうだが……こうも堂々とされるとこちらが恥ずかしくなってくる。藤丸は顔を逸らして必死に彼女達を見ないようにしている。

 

「ちょ、ちょっと!せめて前ぐらい隠してよ!」

 

顔を真っ赤にしながら叫ぶ藤丸。しかし、そんな彼を嘲笑うかのようにバーヴァン・シーが言う。

 

「は?別に隠す必要なんてないじゃない。ってかアナタって意外とウブなのね」

 

そう言って妖艶な笑みを浮かべるバーヴァン・シー。その仕草はとても色っぽく、大人びていた。彼女は自分の美しさを自覚しており、それを最大限引き出す術を心得ているようだ。バーヴァン・シーの肌は白く、その白い肌と彼女の血のように赤い髪の毛がコントラストになっている。胸は大きい部類であり、両腕を使って胸を強調してくる。見ているだけでマシュマロのように柔らかい感触を想起させられるようだ。明らかに彼女は自分の胸を見せつけて藤丸を挑発している。

 

「ねえ、どうなのさ?興奮しちゃった?あはは、変態じゃん」

 

藤丸は挑発してくるバーヴァン・シーの方を見ないようにしており、彼女はそんな藤丸を見てケラケラと笑っている。が、彼女の隣にいたモルガンはバーヴァン・シーを諫める。

 

「バーヴァン・シー、あまり虐めるのはやめなさい」

 

「ちぇ~」

 

バーヴァン・シーも母であるモルガンに注意され、渋々と言った様子で挑発行為を止める。モルガンの肢体は正に芸術品と呼んでも過言のないものだった。陶器のように滑らかな肌と娘であるバーヴァン・シーに劣らない程の白い肌。細くしなやかな腕や脚。豊満ながらも引き締まった身体。人間のモデルでもここまで目を奪われてしまう程の身体の持ち主はいまい。地面にまで到達するかと思うほどの長い銀髪を後ろに束ねており、視線を下に移せば女性としての証がしっかりと縦に刻まれていた。霊衣を脱いで真っ裸になっても妖精國の女王としての威厳と存在感は消えていない。モルガンは美しい水晶のような双眸でパニッシャーと藤丸を見つめている。藤丸は恥ずかしさのあまり顔を逸らしているのでモルガンの裸体は見ていないが、パニッシャーはバッチリと見ている。マスターの藤丸に見られるのではなく自分に見られているという状況に機嫌を悪くしているのでは?とパニッシャーは思ったがこちらを見つめてくるモルガンの瞳を見れば蔑みや不満の感情は無いように感じ取れた。

 

「……せめて身体にタオルぐらい巻いてこい。この子はまだ未成年だぞ?」

 

パニッシャーは青少年である藤丸にとって刺激が強すぎるであろう裸体を晒しているモルガンとバーヴァン・シーに注意をする。パニッシャー自身は一糸纏わぬ姿の二人を前にしても冷静だった。

 

「……隠す必要はありません。隠さなければならない恥ずかしい部分など私にはありませんから」

 

「そうそう、見られて困るようなもんじゃないでしょ?」

 

バーヴァン・シーは意地の悪い笑みを浮かべ、わざとらしく自分の身体を抱き締めて見せ、わざと胸の谷間を強調する。それを見たパニッシャーは頭を抱えた。

 

「未成年者に対する性的な誘惑はNGだ。直接手を出さなくても目の前で裸になるのも立派な性的虐待に入るぞ?」

 

人間社会のルールや倫理など妖精である目の前の二人が理解してくれるとは思えないが、とりあえず警告だけはしてみる。妖精國の女王として君臨してきたモルガンに言った所で納得してくれるかは不明だが……。

 

「汎人類史のルールですか……。残念ながら我々が聞く義務も従う義理もありません。妖精という種族である私達に人間社会の道徳や倫理を説いた所で無駄だと理解できるでしょう?」

 

やはりというか流石は妖精國を2000年支配してきた女王だ。汎人類史のルールや法律など糞くらえと言わんばかりの態度。人間社会の倫理観は妖精には通じないと薄々理解していたつもりだが、モルガンは格が違う。まさに唯我独尊といった所だ。

 

「それに私もバーヴァン・シーも、タオルで隠さなければならない程の卑しい身体はしていないつもりですが……?」

 

確かに現在の地球は白紙化している上に国家や国連も纏めて消失している以上、法律などあってないようなものなのだが……。藤丸はモルガンの裸体が気になるのか、チラチラと覗いてしまっている。未成年故に女性の身体に興味を持ってしまうのだろう。

 

「あ!ザコがお母様の身体をジロジロ見てる!」

 

バーヴァン・シーは意地悪そうな笑みを浮かべてモルガンの裸体をチラ見しちえる藤丸を揶揄う。すると藤丸は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「おいおい、そんなウブな反応するなよ。マジでキモいからさw」

 

バーヴァン・シーはクスクスと笑いながら、からかい続ける。パニッシャーは二人の暴走ぶりに溜息を漏らす。仕方ないから藤丸と一緒に湯舟から出る事にした。

 

「立香、出るぞ」

 

パニッシャーは藤丸を湯舟から立たせる。

 

「あ、タオル!」

 

藤丸は湯舟に落ちたタオルを拾い上げ、自分の股間を隠した。が、バーヴァン・シーは藤丸が立ち上がった瞬間に彼の股間の部分を見たようで、タオルで股を隠す藤丸を見て大爆笑している。

 

「ぷっ!!コイツ勃ってるじゃん!ダッセー!!」

 

バーヴァン・シーは大声で笑い、指をさしてゲラゲラと笑う。彼女は藤丸を馬鹿にしているが、そもそも全裸でやって来たのはバーヴァン・シー自身である。

 

「私とお母様のハダカを見てチ〇ポビンビンにおっ立ててるなんて……マジ変態だわ」

 

バーヴァン・シーは自分の体を抱き締めてクネクネしながら、さらに煽るような発言をする。パニッシャーは付き合ってられないという風に藤丸を連れて二人から離れていく。

 

「おい、オマエ。股にデカチンぶら下げてる癖して全然勃ってないのな。お母様の股とか胸とかガン見していた癖によぉ」

 

バーヴァン・シーはパニッシャーにまで挑発をしてくる。が、パニッシャーは所詮ガキの戯言と切って捨てて藤丸と一緒に大浴場を出ていく。藤丸には大変刺激的な時間だったが、彼には真っ当な恋愛をしてもらいたいので痴女がいる空間から引き離さなければならない。最も、バーヴァン・シーはまだしもモルガンは悪意があってやっているわけでもなさそうだったが。

 

「俺は別にあのままいても良かったんだけど……。流石にちょっと刺激的ではあったけどね……」

 

藤丸は浴場でのモルガンとバーヴァン・シーの裸体を思い出しているのかまだ顔を赤らめている。年頃の男の子である藤丸が色香に塗れた女の全裸を見たのだから、刺激的どころの話ではない。パニッシャーが連れ出していなければ間違いなく手を出されていただろう。……モルガンやバーヴァン・シーが強姦紛いの行為をするとは思えないが未成年者への影響を考慮して藤丸を引き離す事を選んだ。藤丸にはあの二人ではなくマシュがいるだろう。

 

「ダメだ。あいつ等は痴女、それが事実だ。いいな?分かったな?」

 

「う、うん……。わかった」

 

納得していないような藤丸だが、渋々と頷いた。

 

 

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大浴場で汗を流したパニッシャーはさっぱりした気分で廊下を歩いていた。自分と契約してくれるサーヴァントを探さないといけない。双方が同意の上で契約をしなければならないのだが、自分を受け入れてくれる英霊はいるのだろうか?ヴィランや犯罪者を始末するというやり方を受け入れ、気にしないというサーヴァントがいるとすればそれは混沌・悪、或いは中立・悪といった碌でもない連中だ。そういった輩と契約して共に行動しようものなら背中に銃口を突き付けてトリガーを引きたいという強烈な衝動に襲われる事となるだろう。生前が大悪人という英霊も珍しくないカルデアで、自分に合う者を探すのは中々骨が折れた。エルキドゥ……或いはエミヤ辺りだろうか?それともメリュジーヌ?いや、彼女は藤丸にぞっこんであり、自分と契約はしてくれないだろう。そして悩んでいる自分を脅かそうと後ろから近づいてくるサーヴァントに気付かないパニッシャーではない。

 

「アストルフォ、その手には乗らんぞ」

 

そう言いつつ振り返ると、アストルフォが満面の笑みで立っていた。三つ編みにしたピンク色の長い髪をいじりながらパニッシャーに挨拶してくる。元気いっぱい、といった感じである。

 

「やあ、パニッシャー!今からボクやブーディカとシミュレータールームに行かない?」

 

屈託のない笑みを見ているとこちらまで明るくなってくるようだ。彼はいつも笑顔を絶やさない子だ。

 

「悪いが遠慮しておく。俺は忙しいんでな」

 

「えー、どうして?もしかして契約相手探し?」

 

「あはは、そういう事ならアタシ達も手伝ってあげようかな?」

 

アストルフォの後ろからブーディカも来る。まさかこの二人が自分と契約してくれるとでもいうのだろうか……?パニッシャーは一瞬そんな考えが頭をよぎる。しかしこの二人が悪人に対する苛烈な制裁を率先して行う自分についていけるのかどうか甚だ疑問だ。先日の特異点の修正任務のジャンヌとマルタのように、やり方や主義が合わないマスターとサーヴァントでチームを組んでも衝突からの喧嘩別れが関の山。何よりアストルフォとブーディカは善性の強いサーヴァントである。そんな二人を自分流の戦いに付き合わせるのは気が引けてしまう。

 

……しかし、それでも誘ってくれた事は嬉しい。せっかくだから言葉に甘えてみるのも悪くはないだろう。二人の好意に甘え、パニッシャーは二人と一緒にシミュレータールームに行く事にした。パニッシャーはブーディカとアストルフォの二人とシミュレータールームへと向かうが、それにしてもこのアストルフォの人懐っこさは天性のものだ。過激なやり方を平然とやってのける自分に対してもこうして親しげに付き合ってくれるのだから。アストルフォも藤丸に負けず劣らずの善性の持ち主である事は間違いない。その純粋でまっすぐな心が羨ましい、と思った。

 

「何ならボクが契約してあげてもいいよ?」

 

冗談半分で言っているように見えても、理性蒸発を体現したこの少女(?)は割と本気で言っているようにも聞こえてしまう。パニッシャーやブーディカもそれに同意するかのように頷いている。

 

「ジャンヌやマルタの奴から聞いてるだろ?俺は微小特異点の刑務所で大勢の囚人を殺したんだ。そんな頭のおかしい殺戮者の俺と契約してもお前さんが嫌な思いをするだけだ」

 

パニッシャーは隣を歩くアストルフォの頭を撫でながら言う。アストルフォは気持ちよさそうに目を細める。

 

「ううん、全然気にしないよ。だってそれって必要な事だったんでしょ?それなら仕方ないじゃん。それよりさ、キミの事もっと教えてよ」

アストルフォは屈託のない笑顔でそう言った。"必要な事"……とはいうが曲がりなりにも協力者の囚人さえ殺したパニッシャーの行為を仕方ないで割り切ってしまうのはどうかと思った。そもそも善性の高いアストルフォなら凶悪犯といえども殺生は好まないだろう。それなのにここまであっさりと納得されてしまうのは少し意外でもあった。

 

「あたしもアストルフォもアンタのやった事ぐらいは知ってるよ。その上で、アンタが悪い奴だとは思ってない」

 

「いや、俺は悪い奴だ。受刑者を裁判の判決も無しに殺すんだぞ?こんな俺が悪い奴じゃないだなんて、ちゃんちゃらおかしくて笑ってしまうだろう」

パニッシャーは自嘲気味に笑った。自分は今まで数え切れないほどの人間を殺してきた。相手は世の中に害悪しか振りまかない犯罪者、無辜の民を食い物にする極悪人、弱者を殺す殺人者……数えきれない程殺してきた。

 

「でも、それでもあんたはあたし達を助けてくれるじゃないか。それは、悪いことなのかい?」

 

ブーディカは微笑みながらパニッシャーに語りかけた。

 

「それにさ、あたし達のマスターを……藤丸立香をあんなに気に掛けてくれてるじゃないか」

 

そう言って、ブーディカは微笑んだ。その言葉に、その表情に嘘偽りはなかった。ブーディカの言葉を受けて、パニッシャーはふと気付いた。

 

(そうか、こいつは俺の事を認めてくれているのか。そして、俺もこいつの事が気に入っている。何だか、照れくさいな)

 

そう思いつつも、心はどこか暖かかった。

 

「それに……あたしの方がよっぽど極悪人だよ?あたしがまだ生きていた頃にあたしは……」

 

ブーディカは笑みを浮かべつつもどこか暗い雰囲気を纏いつつ自分の生前を語ろうとするものの、アストルフォが後ろから声をかけてきた。

 

「シミュレータールームで二人の新婚旅行の場所を再現できるね!」

 

ぶち壊してくれた……理性蒸発騎士はものの見事にブーディカのシリアスな雰囲気をぶち壊した。

 

「あ、ああ……そ、そうだね!……って何が新婚旅行よ!」

 

ブーディカは動揺しながらもアストルフォを怒鳴りつける。

 

「えー、二人って何か相性良さそうじゃん。お似合いだと思うんだけどなー」

 

「アンタはいきなり何言ってるのさ!?ほら、さっさと行くよ!」

 

ブーディカはアストルフォの頬を引っ張りつつ、彼女(?)をズルズルと引きずってシミュレータールームへと向かう。

 

「痛い痛い!!冗談だって、冗談!!」

 

「ったく、この子はホントにもう……」

 

ブーディカは呆れながら、アストルフォを引きずり続ける。

 

「わーん、痛いよブーディカママァ~」

 

「……やれやれ」

 

アストルフォの頬を引っ張りながらシミュレータールームへと向かうブーディカの後を付いて行くパニッシャーは顔に手を当てながら呟く。

 

 

 

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――――所詮仮想空間。

 

 

そう言い表すのは個人の自由ではあるが、そんな言葉を吐き出せる人間は余程感受性に欠けているか、現実の出来事や光景しか受け付けない体質なのであろう。仮想現実を構築しているとはいえどそのリアリティたるや本物そのもの。照り付ける明るい陽射し、肌を撫でるように吹く微風、青々とした草が覆い茂る原っぱ、草木を揺らす心地良い葉音、鼻腔に滑り込む自然の匂い。この中で暮らすサーヴァントは少なくないとは聞くが、これならば定住している者が現れてもおかしくはあるまい。殺風景なカルデア本部とマイルームばかりを見続けては精神が先に参ってしまう。

 

 

長期間太陽の光を見ない生活を強いられては人間の活動上好ましくないのだ。そんな生活に楽しみを与えてくれるのがこのシミュレータールームだ。訓練に使うも良し、休息に用いるのも良し、暮らすのも良し。商用に転用すれば世の技術に革命を起こせそうなものだが、そこは神秘の秘匿の関係上NGである。一般社会に魔術を用いた技術を流出させるなど協会が許さないであろう。アストルフォ、ブーディカと共に公園の遊歩道を歩いて散歩するパニッシャー。アストルフォは元気一杯に先を歩いている。一方、ブーディカは時折後ろを振り返り、パニッシャーが付いて来ているかを確認している。そうして歩いている内に、三人は丘へと辿り着く。丘からは広大な草原を見渡す事ができ、地平線の彼方まで続く緑の絨毯が目に入る。遠くの方には湖も見え、幻想的な景色が広がっている。

 

「ほら!見てよあれ!」

 

そう言いながら指差す先には川があり、その先には小さな町が見える。流石にシミュレータールームの面積を考えて街を丸々再現するのは無理があるだろう。魔術を用いて空間を拡張しているとはいえどこかで限界が来てしまう。遠くに見える街は立体映像であろう。それでも外の世界と何一つ変わらない景色にパニッシャーは感心していた。そしてパニッシャーとブーディカは芝生の上に腰を降ろして座り込んだ。アストルフォは川の方に向かい、泳いでいる魚を眺めている。無邪気な子供のような姿にパニッシャーも頬が緩む。

 

「ねぇ、このカルデアにいるサーヴァント達の事をどう思う?」

 

ブーディカが隣にいるパニッシャーに質問してくる。このカルデアに新入りのマスターとして入って来たはいいものの、どうしても性格上の問題で何人かのサーヴァントとトラブルを引き起こした事がある。その度にダ・ヴィンチやマシュが仲裁に入っているのだが。生前は血生臭い戦乱の時代を生きていた英霊でもこのカルデアにいる以上は必要以上に争う事はないのであるが、マスターの立場であるパニッシャーが問題を起こしているのだ。

 

「……全員と仲良くするのはあんたの性格的に無理だとは思うけど、こんな事を続けていたらいつか命を落とすかもしれないよ?殺しに躊躇しない連中も多いんだしさ」

 

必要以上に"悪"に対して残酷な性質はカルデアで活動する上で間違いなく枷になる。特に、最近ではその傾向が強くなっている様に思えるのだ。だからこそブーディカは心配しているのだ。

 

「そんな事十分すぎるほどに理解してる。俺は平然と他者を踏み躙るような害虫に対して寛容じゃないんでな」

 

「もう……分からず屋なんだから。いい?今カルデアにいる悪属性のサーヴァントだって現在進行形で悪行を重ねてるわけじゃないでしょ?そもそもこのカルデアで召喚された以上、汎人類史を取り戻す為に戦っているんだからさ。自分の好き嫌いだけで相手に喧嘩を吹っ掛け続けてちゃ仲裁に入ってくれるマシュやダ・ヴィンチに迷惑ばかり掛けるじゃない」

 

確かにブーディカの言う通り、トラブルの発端は大体がパニッシャーにあり、しかも相手を散々に煽るのだ。明確にパニッシャーの方から喧嘩を売っている以上、問題児と見なされるのも当たり前であろう。彼女の言う事が全面的に正しい事もあり、パニッシャーも少し考える。

 

「……んじゃ利敵行為をする奴や特異点を作り上げるようなサーヴァントはどうすればいい?カルデアに所属しているわけでもないような奴なら始末してもいいだろう?」

 

「ああもう!あんたは自分が嫌いな"悪"と戦う口実ばかり探しているじゃない!そんな考えじゃ何時まで経っても変わらないよ!もっと相手の立場になって考えてみな!」

 

珍しく怒るブーディカに対してパニッシャーはややたじろぐ様子を見せた。どうやら彼女も本気で怒っているらしい。

 

「あたしは何でアンタがそこまで悪人を憎むのかは知らない。けどカルデアのマスターとして戦う以上は"譲歩"や"妥協"も必要な事だよ。それは分かってるんでしょ?」

 

善も悪も中庸も、全ての英霊と等しく絆を結んできたマスターの藤丸立香がどれだけ凄いのかはパニッシャーも理解できている。自分では到底ここまで多くの英霊を絆を深める事はできないし、何より相手の意見を尊重する事ができないだろう。

 

「アンタに対してあたし達のマスター……藤丸立香と同じ働きをしろとは言わない。けどマスターとしてカルデアに身を置いて戦う以上は最低限の協力はして。少なくとも自分から喧嘩売ったりなんて絶対ダメだからね?」

 

ブーディカはパニッシャーに顔を近づけて言う。彼女の吐息が掛かりそうな距離まで接近していたが、こうして見るとブーディカの美しい顔立ちを良く見る事ができた。彼女は碧い瞳で真剣にこちらを見つめてくる。ブーディカの説教に対して、流石のパニッシャーも頷かざるを得なかった。自分が好き嫌いや選り好みが激しい性分なのは理解している。だがカルデアのマスターになった以上はある程度寛容でなければならない。少なくとも率先して悪事を働いていないサーヴァントに対して自分から喧嘩を売ったりする行為は自重するべきであろう。

 

「夫婦喧嘩は終わった?」

 

が、理性蒸発騎士がひょっこりと顔を覗かせてくる。

 

「ち、違うって!!……いや、うん、まあ、確かにさっきのやり取りはちょっと、その……お互いに近かったけど……」

 

ブーディカは顔を赤くしながらモジモジとしている。普段の彼女からは想像もつかない姿だ。その様子を見てパニッシャーは思わず吹き出してしまう。笑い声をあげるパニッシャーに対して、ブーディカは顔を赤くして怒り出す。

 

「あっ!笑ったわね!?人が折角真面目な話をしてるのに!!」

 

そう言って頬を膨らませるブーディカであったが、本気で怒っているわけではないようだ。その証拠に口元は緩んでおり、目元も笑っているように見える。気を取り直して丘の下まで行く事にした。アストルフォ、ブーディカ、パニッシャーは公園内にある園道を歩くと道沿いに屋台を見つける。どうやら店主が作業をしているようだがあの店員もシミュレータールームによって作り出された存在だろうか?と思いきや遠目から見ても店主の顔は見覚えがあった。彼は……

 

「あ!エミヤ!ここで屋台やってるの?」

 

ブーディカと同じくカルデア厨房組のエミヤが屋台で焼きそばを作っているではないか。エミヤがこちらに気付くと笑顔を向けて来る。

 

「ああ、ブーディカか。見ての通り、絶賛営業中だよ」

 

そう言う彼の手元には出来上がったばかりの焼きそばがある。美味しそうな匂いが漂ってきた。

 

「お、美味そうだな」

 

「試しに食べてみるかい?」

 

自信たっぷりに言うエミヤ。エミヤは出来上がった焼きそばを三人前用意した。アストルフォ、ブーディカ、パニッシャーは皿を取って食べ始める。カルデアが誇る一流シェフが作っただけあってとても美味しい。三人は舌鼓を打ちながら食を進める。

 

「これ本当に美味しいね!ボク大好き!」(もぐもぐ)

 

「エミヤの料理には慣れていてもやっぱり美味しいんもんだね」(ぱくり)

 

「ホントだな、これなら毎日でも食べられるぜ」(もぐ……もぐ……)

 

濃厚なソースとシャキッとした野菜、そして豚肉の歯ごたえがたまらない。一口食べただけで食欲が掻き立てられてしまうほどの美味しさだ。その後も次々と箸が進みあっという間に完食してしまった。

 

「美味しかったぁ~ごちそうさまでした」

 

両手を合わせて満足そうに笑うアストルフォ。その横ではブーディカも同じように手を合わせていた。パニッシャーも同様に感謝の意を示す。

 

「ご馳走さん」

 

それを見たエミヤは満足そうに笑う。そして屋台から出るとパニッシャーに声を掛けた。

 

「パニッシャー、ちょっと私に付き合わないか?」

 

「構わんが……」

 

「お二人さん、悪いが彼を借りていくよ?」

 

エミヤはブーディカとアストルフォに許可を取りつつ、パニッシャーと並んで園道を歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―――――怒りだった。

 

悲しむよりも怒りを選んだ。絶望するより憤怒に身を任せた。涙するよりも激怒する事を望んだ。嗚咽するより怒声を、悲嘆するよりも憎悪を。今もあの公園で起きた出来事が鮮明に脳裏に焼き付いている。放たれた弾丸に貫かれる妻と子供達。自分の腹にも撃ち込まれ激痛に悶えるものの一命を取り留めた。

 

 

 

 

 

―――――そこで自分は"死んだ"。

 

 

生きてはいたが"死んだ"。それまで生きていた"自分"が死んだ。自分の家族が血の海に沈む光景を見た時、自分も死んだ。今生きているのは"新たなる自分"。あの日の悲劇を起点として生まれた"自分"。あの出来事が切っ掛けて誕生した”自分"。

 

 

 

 

―――――死を与える。

 

 

死を、死を与える。残酷に、無慈悲に、冷酷なまでに死を与える。生など無駄だ、生きているだけで害悪そのもの。悪を殺す、悪を滅ぼす、悪を消す、悪を討つ。

この身は"私刑執行人"。あらゆる悪意、全ての罪に鉄槌を下す。かつて救えなかった家族。失った絆、奪われた平穏、奪われた未来。何もかも奪っていった者共へ与えるは死。決して赦さぬ、安らかな眠りなど無い。罪を犯す者に裁きを、悪を為す者に死の鉄槌を。

 

 

 

 

 

 

 

それこそが自分の――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――パニッシャー君?




モルママとバーヴァン・シーの裸なんて間近で見たら自分なら秒で勃っちゃう……(^_^;)


そういえばパニッシャーとモルガンの相性ってどんなんだろう?フランクさんの所業を目の当たりにしても咎めるイメージはないような(小言は言われそうだけど)。悪を許さないっていうフランクさんのポリシーを考えれば仲良くするのはやっぱり無理なんかなぁ?(;^ω^)
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