パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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久しぶりの更新!パニッシャーさんって純粋な正義感で悪党狩ってるわけじゃないってのは原作でも描写されてましたしねぇ……。


番外編⑥ 世界を救わない男

エミヤと別れた後、シミュレータルームによって精巧に再現された公園にあるブランコに座りながら物思いに耽る。先程はエミヤとは実に他愛のない世間話をしていた。カルデアのサーヴァントとの喧嘩が絶えない事やレイシフト先での問題行動。エミヤはそういったパニッシャーの行動を特別厳しく叱ったわけではない。ただ笑いも交えて揶揄う程度であった。このカルデアには善悪入り乱れた多種多様なサーヴァントがいるにしても、マスターの方がトラブルメーカーというのは些かどころではない問題ではあるだろう。

 

サーヴァントの面々も藤丸の善性と優しや、コミュニケーション能力に慣れ過ぎているのもあるが、パニッシャーという地雷マスターがカルデアに居座っている以上、トラブルが頻発してしまうのは必然であろう。しかもその度にダ・ヴィンチとマシュがサーヴァントとパニッシャーの間に入って仲裁しているのだから。エミヤからも「あまり彼女達に迷惑を掛けるな」と釘を刺されてしまった。しかしパニッシャーからすればそんなつもりは無いのだが、確かに自分の行動は傍から見れば少々問題があるかもしれないと思い直す。ここはアベンジャーズやスパイダーマンがいた世界とは違う。しかしながら悪を許せないという自分の性根や本質に正直に生きてきたのだから悪属性のサーヴァントとはどうしてもトラブルを起こしてしまう。

 

(まあ、今更生き方を変えられるわけでもないしな……)

 

そんな事を考えつつもやはり気になってしまうのだ。エミヤが先程自分に言った言葉を。

 

────────君はこれまでの戦いの中で世界を救いたいと思った事はあるのか?

 

些細な一言ではあった。しかしパニッシャーの中でその一言がどうしようもない程に引っ掛かる。自分がいた世界……アベンジャーズや他のヒーローが活躍している世界において地球どころか宇宙存亡の危機に陥った事など一度や二度どころではない。地球の内外や規模を問わずアベンジャーズは幅広い脅威や事件に対処する。世界の、社会の、人類の守護者であるヒーロー達は敵の規模など関係なくその力を奮う。しかし自分は違う。例え地球規模の危機が迫ろうと街中に巣食うゴミ……ギャングや売人、強姦魔を相手にしている。他のヒーローと肩を並べた事はゼロではない。しかしサノスやギャラクタスのような巨大過ぎる脅威が地球に迫っても独立独歩の姿勢を崩さずに悪人を狩り続けた。社会を守る気が無いわけでなない、しかし自分はどうしようもなく市井の人間を脅かすような犯罪者を殺す事を優先している。"護る"事より"殺す"事を優先している。スーパーヴィランよりもギャングやマフィアこそが自分の倒すべき相手だと信じて疑わないからだ。

 

それが自分にとっての正義であり、使命なのだ。そういった考えはこのカルデアのサーヴァント達にも気付かれているだろう。

 

 

──────パニッシャーは世界を取り戻す事よりも悪人を殺す事を優先している。

 

 

別に間違いではないし、何なら大当たりだ。世界滅亡の危機の中でさえ悪党という名の害獣駆除をし続ける。世界が終われば市民も犯罪者も無いというのに。いや、そもそもパニッシャーは世界の為に戦っているわけでは無い。あくまでも自分本意である以上、他人の為に戦う義理はないとも言える。だがそれならなぜこのカルデアで人理修復の為に戦っている?何故藤丸立香やダ・ヴィンチ、マシュといった面々に力を貸す?悪を殺したいだけならば何故カルデアの善き人々を助ける?自分はどんな時でも己のするべき戦いを何よりも優先させていた筈だ。

 

「俺が変わった?悪い冗談だ……」

 

パニッシャーは頭を横に振りつつ、自分が変わった事を否定する。

 

(俺の本質は変わらない……変わってはいないんだ……!)

 

心の中で必死にそう言い聞かせる。しかし強く否定すればする程頭の中に藤丸やダ・ヴィンチ、マシュ、ブーディカ、アストルフォの顔が浮かび上がる。違う世界に来たせいなのか?それともここが"ヒーロー"がいない世界だからなのか?このノウム・カルデアに来てからどうにも調子が狂う。そんな事を考えているせいで自分の横にあるもう一つのブランコで遊んでいる存在に気付くのが遅れてしまった。横目でブランコで遊んでいる少女を見ると、ついに自分は幻覚を見始めたのだと思いかけた。少なくとも隣で遊んでいる”彼女"がカルデアに召喚されたという話は聞いてない。ならこのシミュレータールームが作り上げた虚像なのか。長い金髪の髪の毛を靡かせながら少女はブランコを楽しんでいる。と、彼女がパニッシャーの視線に気づいたのかブランコを停止させてこちらに顔を向ける。青い海原かブルーサファイアを思わせる碧眼の瞳がこちらを捉える。

 

「キャスト……」

 

「あ、それあんまり好きな名前じゃないんで出来れば呼ばないで欲しいなー」

 

略称が気に入らなかったのか、楽園の妖精である少女は頬を膨らませてパニッシャーに抗議する。

 

「これ、"ブランコ”って言うんでしたっけ?妖精國ではこんな遊具無かったんですよ?」

 

笑みをほころばせながら楽園の妖精はブランコを再開させる。こうして見ると本当に年相応の少女だ。妖精は人間よりも遥かに長い寿命を持ってはいるが彼女の年齢は妖精國の時点では16歳。人間の年齢で言ってもヤンチャ盛りの年頃だ。

 

「汎人類史にはこんな楽しい遊びがあるんですね!羨ましいなぁ」

 

彼女はそう言って夜空を見上げる。シミュレータールームで作り上げられた偽物の夜空ではあるものの、再現されているのは紛れもなく汎人類史の夜空である。

「綺麗……。宝石箱みたい……!」

目を輝かせて空を見上げるその姿は無邪気な子供そのものだ。そんな彼女を見ているうちに自然と笑みが溢れてくるのを感じた。

 

「妖精國で見られる夜空も綺麗だったとは思うが?」

 

「あ、それはそうですけど何と言うか汎人類史の星空の方がもっとキラキラして見えて……」

 

妖精國も汎人類史も地球にある以上は見える星座にも差は無いとは思うのだが、彼女は汎人類史の人々が見る星空を楽しんでいるようだ。幻覚や再現にしては妙にリアルに見える。今パニッシャーの目の前に映る楽園の妖精は妖精國で出会った彼女にしか思えなかった。

 

「なぁ、聞いてもいいか?お前さんは……」

 

パニッシャーがそう言いかけると、楽園の妖精は右掌をかざして静止する。

 

「今は答えられません」

 

首を横に振りながらそう答える。偽物なのか本物なのかサーヴァントなのか幻なのかは秘密という事らしい。

 

「妖精國で貴方には色々助けて貰いました。ちょっと刺激が強い光景も見られたけど……」

 

「ま、退屈はしなかっただろ?」

 

彼女はやや引きつった笑顔でパニッシャーに感謝を述べる。妖精國では良い思い出も嫌な思い出もある。少しどころではない位には嫌な思い出の方が多いのだが……。そうしていると彼女はブランコ遊びを再開する。今度は大きく動きながら更にブランコを楽しんでいるようだ。そんなに大きく動かせば落下の危険があると思うがパニッシャーは彼女の遊びを見守る事にした。

 

「結構スリルあるんですよコレ!……うわ!?」

 

そう言いながら楽しそうにしている彼女だったがパニッシャーの懸念通り、手を滑らせてしまい地面に背中から落ちてしまう。背中を地面に強く打ってしまったのか大分痛そうにしている。

 

「いたたた……」

 

背中を擦りながら立ち上がる彼女を心配しつつブランコから立ち上がったパニッシャーは彼女の前にしゃがむ。どうやら怪我はないようで安心した。しかし何とも目のやり場に困る光景が広がっている。彼女のスカートの中がパニッシャーからモロ見えになっているのだ。幸いストッキングを履いているので下着の方は見えにくい状態だ。が、彼女はパニッシャーが目を逸らしたのを見て自分の状態に気付く。

 

「……!?ちょ!?見ないで下さい!!」

 

顔を真っ赤にして慌ててスカートの裾を直す。

 

「……見ましたよね?」

 

ジト目でこちらを睨んでくる彼女に対してパニッシャーは遠い目をしながら首を横に振る。

 

「いや、見てない」

 

「嘘つくなー!妖精眼で嘘はバレバレだぞー!」

 

確かに彼女には妖精眼があった。嘘をついた所で意味は無いだろう。プンスカ怒ってる彼女を宥めるパニッシャー。

 

「悪かった。お前さんのスカートの中身を見たのは許してくれ」

 

そう言って彼女の頭を帽子越しに優しく撫でてあげる。

 

「ふにゃぁ……」

 

頭を撫でられると気持ち良さそうな声を漏らすアルトリア・キャスター。そのまま大人しく撫でられ続ける。しばらくすると満足したのか彼女は撫でる手を止めてもらい口を開く。

 

「もういいですよ。許します」

 

そう言うと彼女は立ち上がり服についた砂埃を払う。そして再びブランコに座ると漕ぎ始める。どうやらこの遊具を気に入ったようだ。楽しそうにブランコで遊ぶ年相応の少女にしか見えないが彼女こそがブリテンの救世主。

 

「……彼を……藤丸立香の事をお願いします」

 

その言葉だけを残して少女はいつの間にか消えていた。やはり幻であったのか、はたまたシミュレータールームのバグか。まるで最初からブランコには誰も乗っていなかったかのように、そこには誰もいない空間だけが広がっていた。パニッシャーは消えた楽園の少女の最後の言葉に無言で頷いた。彼女も藤丸の事をずっと気に掛けているようだ。こうして自分の前に現れて伝えたという事は何かこの先大きな事が起きるのではないか?胸騒ぎを覚えつつ公園を立ち去ろうとするパニッシャーの後ろで声がした。

 

「君が誰かの為に戦うのって凄くらしくないとは思わないかい?」

 

暗い公園に爽やかな声が響くが、パニッシャーは後ろを振り返らずとも声だけで誰なのかが分かってしまった。楽園の妖精が現れたのだからこの男もセットで現れるという事なのだろうか?

 

「……何がいいたい?」

 

「率直な意見さ。君は世界の危機だろうと宇宙の危機だろうと自分の為にしか戦ってこなかったじゃないか。悪党を殺さなければいけない使命?自分にとっての義務?悪に怯える市民の為?そんな上等な言葉で誤魔化したところで結局君は自分本位の戦いしかできない」

 

妖精王はキツめの口調でパニッシャーに言う。背後にいる男は大嘘つきとは呼ばれているものの、その言葉がどこまで嘘か、どこまで真実なのかは実際の所分からない。後ろにいる彼が妖精王としての姿なのか、それとも奈落の虫としての姿なのかさえも不明だ。

 

────君は世界を救わない。そして救う気もない

 

パニッシャーはその言葉を聞いて暫し沈黙した後に背後を振り返るが妖精王の姿は無かった。楽園の妖精といい妖精王といい一体何なのか理解できなかったが、わざわざ自分に忠告?に来た事に恐らく意味はあるのだろう。この場所で二人の妖精と会った事を胸の奥に仕舞い込んだパニッシャーはシミュレータールームを後にした。

 

 

 

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翌日、朝早くからパニッシャーは管制室に呼び出された。新たな特異点が発生したらしい。管制室の扉を開けて中に入るとダ・ヴィンチの隣にはジャンヌ・オルタとマリー・アントワネットの2人がいた。今日の任務で同行するサーヴァントのようだ。ルーラーの方のジャンヌとは異なり、ジャンヌ・オルタは悪属性だ。いつ懐の拳銃を抜きたいという衝動に襲われるか分からない。そんなジャンヌ・オルタはパニッシャーを見るなり口角を吊り上げながら言う。

 

「あら?おはよう問題児マスターさん。今日は随分と早いじゃない?」

 

嫌味ったらしく言ってくる彼女に内心イラッとしつつもそれを表に出さないようにして答える。すると今度は隣に立っていたマリーが言う。

 

「ごきげんようムッシュパニッシャー。今回の任務でご一緒させてもらうわ」

 

ジャンヌ・オルタとは対照的に笑顔で挨拶してくるマリー。流石は王妃といった所だろう。パニッシャーがトラブルメーカーであっても悪感情を表に出す事なく普段通りに振舞っている。

 

「おはよう王妃さん。アンタは俺と一緒の任務で嫌じゃないのか?」

 

自分にも愛想良くしているマリーに対してパニッシャーは尋ねた。内心では彼女も自分のような人間がマスターで嫌なのではないか?と思い聞いてみたのだが

……。しかしマリーは首を横に振りつつ答える。

 

「いいえ、そんな事ないわ。それにあなたは本当の意味で悪い人間ではないでしょう?」

 

そう言って彼女は微笑むのだった。マリーの天真爛漫さと天然さは見ていると時々危うく感じてしまう。ターゲットが犯罪者とはいえど大量殺人者には違いないのだから。他者に対する差別や偏見という概念がなさそうなマリーは美しい碧眼でパニッシャーを見つめてくる。そんなマリーの様子にジャンヌ・オルタは嘆息しつつ彼女に言う。

 

「まったく、王妃サマはお優しいわね……。ま、その優しさで足元を掬われないようにしなさい」

 

皮肉めいた口調ではあるが彼女なりに心配しているようだ。

 

「マスターちゃんの保護者ヅラしてるアンタにも分け隔てなく接してくれるなんてマリー王妃は優しいわねぇ?」

 

「喧嘩売ってるんなら今すぐ買ってやるぞ?」

 

両者の視線がぶつかり合い、目に見えない火花が散っているようだ。が、ダ・ヴィンチが二人の間に割って入る。

 

「はいストーーーップ!任務に向かう上でのチームなんだから仲良くしてくれよ二人とも。これから一緒に行動するんだからさー」

 

やれやれと言った様子で言う彼女の言葉に二人は渋々引き下がった。その様子を見たダ・ヴィンチは再び口を開く。

 

「さて、今回の目的地だけど場所は18世紀のフランスだ。現代のフランスのロゼール県に当たる地方だね」

 

特異点先がフランスという事は同行するサーヴァントがジャンヌ・オルタとマリー・アントワネットというのも納得だ。ダ・ヴィンチの話によるとサンソンやデオンといった他のフランス系サーヴァントにもレイシフト適正があるのだがマリーとジャンヌ・オルタが最も適任らしい。

 

「年代的に見ればまだフランス革命の前だね。マリーがまだオーストリアからフランスに嫁いでいない時期になる」

 

フランス革命となるとマリーにとって非常にデリケートな部分に触れてしまう。しかしそれ以前であれば問題は無いだろう。パニッシャーがふとマリーに視線を向けると、彼女は笑顔でこちら側を見てくる。こう見えてマリーは芯の強い女性である。フランス革命の真っ只中でも自分を見失う事はないだろう。

 

「パニッシャー君、くれぐれも二人とは仲良くね」

 

ダ・ヴィンチは訴えかけるような視線でパニッシャーを見つめる。

 

「分かった……善処する」

 

初めてのレイシフトの際、特異点の刑務所で大暴れをしてしまいルーラーのジャンヌとマルタから総スカンを喰らってしまったのだ。また問題を起こされては何らかの罰が下る可能性がある。パニッシャーはジャンヌ・オルタとマリーを交互に見つめる。ジャンヌ・オルタはニヤついた顔で見てくるがマリーは邪気の無い美しい笑顔でパニッシャーにウィンクする。

 

「同じ笑顔でもこうして見ると品性の差ってのは出るもんだな。それも絶望的なまでのレベルで、だ」

 

「あら?それってどういう意味かしら?」

 

怖い笑顔のまま睨んでくるジャンヌ・オルタに対してパニッシャーはどこ吹く風といった調子だ。

 

「二人とも、喧嘩は良くないわ。折角の旅路ですもの、仲良くしましょう?」

 

仲裁に入るマリーはパニッシャーとジャンヌ・オルタをどうにか宥める。ジャンヌ・オルタとは気が合わないものの、任務である以上はパートナーとして付き合うしかない。3人は管制室にあるコフィンに入り、18世紀のフランスへとレイシフトを開始した。

 

「パニッシャー君もいい加減サーヴァントの皆と仲良くしてくれないかな……」

ダ・ヴィンチがボヤいていると、管制室にマシュが入って来る。藤丸の負担を減らす為にこうして特異点の修正任務をしているパニッシャーが気になっているのだろう。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、パニッシャーさんはもう行ったんですね」

 

「うん、18世紀のフランスに向かったよ。パニッシャー君たちが向かった先は現代だとフランスのロゼール県の一部だけど当時は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────"ジェヴォーダン地方"って呼ばれている地域なんだ。




次回からは「ジェヴォーダンの獣編」の始まりです!

しかしロリンチやマリーは優しいなぁ……
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