パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
パニッシャーさんって自分の中の暴力衝動と怒りを抑えられない部分があるっていうか……。パニッシャーさんは冬木での聖杯戦争での経験から魔術協会や魔術師に対する印象が最悪なんで仕方ない部分があるんですけどね。
ぶっちゃけ立香がストッパーになっていなかったら今のノウム・カルデアの職員を皆殺しにしてもおかしくないんで(;'∀')
今回は「アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです」の番外編を見た方が今作の藤丸君の立場が理解できると思います。
※4/11 パニッシャーとエルメロイ二世のやり取りを修正しました。
パニッシャーは、銀髪の女への暴力を止めなかった。手が止まらない、怒りが収まらない、憤りが抑えられない。目の前にいる女は自分にとっての"敵だ"。この女の態度が気に入らない。この女はここ……人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長であり、立香はこのカルデアの人間によって南極まで連れてこられた。つまりカルデアの責任者であるこの女や他のカルデアの連中こそが立香を平穏な日常から戦いの日々へと引きずり込んだ元凶に他ならない。パニッシャーはオルガマリー・アニムスフィアの顔面、腹、胸、腕、足、股間、背中を何度も殴りつける。しかし、それでもパニッシャーの怒りは治まらず、むしろ激しさを増していき、パニッシャーは更に蹴りを入れる。
「た、助けて……!誰か!」
オルガマリーは顔を腫らし、血まみれになりながらも助けを求める。しかし周囲には数名のスタッフとAチームの死体が転がっているだけだ。オルガマリーの両腕の手首はパニッシャーによって無残にも折り曲げられていた。恐らくオルガマリーの放つガントを警戒しての事だろう。このカルデアの責任者であるオルガマリーこそが立香を戦いに引き込んだ張本人であり、この女さえいなければ立香は平穏な日常を送れた。……しかし立香が人理焼却を防ぎ、世界を元に戻したのは事実だ。パニッシャーも立香の功績は否定しないし、歩んできた特異点修復の旅も肯定している。だがそれでも腹の虫が収まらなかった。例え結果的に人理修復に成功していようと、立香を自分達の都合で戦場に放り込んだカルデアを許すつもりはない。
「お前、さっき立香に対して"やる気あるの!?"とかほざいていたな?」
パニッシャーはオルガマリーの胸倉を掴んで自分の顔に引き寄せる。確かに立香はブリーフィングルームで寝落ちしてしまい、オルガマリーに怒鳴られて追い出されたのであるが、それも慣れないシミュレータールームでの戦闘をしていた為であり、オルガマリーは立香が無理矢理カルデアに連れてこられた一般人である事を知った上であんな事を言っていたのだろうか?だとしたらとんでもないクソ野郎である。
「…………」
パニッシャーに睨まれたオルガマリーは怯え、何も答えられない。
「黙ってんじゃねえよ」
パニッシャーはそう言うと、オルガマリーの頬を思い切り殴った。殴られた拍子に歯が折れ、口の中に広がる鉄の味に吐き気を催す。
「お前が……お前らが立香を巻き込まなければ、立香は普通の生活を送っていられたんだぞ……!!」
パニッシャーは更に拳を振り上げ、オルガマリーの顔面に叩き込む。
「ひぃっ……!」
パニッシャーがその気になればパンチ一発でオルガマリーを殺す事は可能だが、楽に殺すなどという慈悲を与える気は一切ない。
「お前らは何も知らない立香をこのカルデアに連れてきて、挙句に戦いに放り込んだ……。貴様等の都合で何も知らない子供を戦場に……!!」
パニッシャーはオルガマリーの右腕を掴み、そのまま関節を逆にへし折る。
「ぎゃあああっ!!!」
激痛に絶叫するオルガマリーを無視して、パニッシャーは今度は左腕を掴む。そしてまた逆方向に腕の骨をへし折る。
「あがぁっ……!!ぐぅ……!やめてぇ……お願いだから……もうやめて!!」
パニッシャーは右手で左手首を握り潰すと、そのまま右足も踏みつける。
「ああああああッ!!!」
あまりの痛みにオルガマリーは意識を失いかけるが、パニッシャーによって意識を強引に戻される。
「勝手に気絶するな。そんな事は俺は許さん。まだ俺の質問に答えていないだろう?」
パニッシャーはそう言いながら、オルガマリーの髪の毛を掴んで顔を持ち上げると、彼女の眼前に自分の顔を近づける。
「言え、お前はさっき自分が追い出した立香が一般人だという事を知っていたのか?どうなんだ!?」
パニッシャーの問いかけに、オルガマリーは首を激しく横に振る。
「じゃあお前は立香がただの一般人だと言う事を知らなかった訳か?」
「そ、そうよ……!た、確かに私はカルデアの所長だけど、あの子が連れてこられた民間人だとは知らなかったのよ……!」
オルガマリーは目から涙を流しながら、必死に弁明する。だがそんな彼女にパニッシャーは容赦なく殴りかかる。
「嘘をつくなこのクズ女が!!」
パニッシャーはオルガマリーの髪を掴んだまま壁に叩きつけ、「ふざけるのもいい加減にしろ……!」と言いながら、更にオルガマリーの顔面を床に押しつける。
「ぎゃっ……!」
パニッシャーはオルガマリーの頭を押さえたまま、何度も彼女を床に叩きつけた。
「よくもぬけぬけとそんな事が言えるな……!何も知らない子供をこんな魔術師の組織……カルデアなんかに連れてきて、挙句に戦いに放り込んでおいて、今更被害者ヅラするんじゃねえ!!」
パニッシャーはオルガマリーの腹を蹴り上げると、彼女は血反吐を吐き出す。
「ごふっ……!お、おねがい……ゆるして……」
パニッシャーにはオルガマリーの言葉は届いていなかった。彼はオルガマリーの胸倉を掴むと、そのまま思い切り壁に向かって投げ飛ばす。
「がはぁっ!!」
背中を強く打ち付けたオルガマリーは口から大量の血液を吐きだす。もう死んでもおかしくない程のダメージを受けいているようにも見えるが、パニッシャーは絶妙な力加減で彼女の命をギリギリで保っていた。
「お、お願い……なんでも言うこと聞くから……もうやめて……!」
オルガマリーは芋虫のように床を這いずりながら、パニッシャーから逃げようとする。だがパニッシャーは彼女の髪の毛を掴んで引きずり戻す。
「誰が逃げる事を許可した?お前はここで死ぬんだ」
パニッシャーはオルガマリーの頭を掴んで、自分の方に向かせる。
「こんな事をしても……意味なんてないわよ……!?」
「……そんな事は分かっている。だが俺はどうしてもお前等が許せん」
こんな事をしても意味はないのは分かっている。だがパニッシャーは自分の中の怒りを抑えられない、この女とカルデアという組織だけは絶対に許せない。
「ま、待って!!もう許して!!」
オルガマリーが泣き叫ぶが、パニッシャーは無言のまま、オルガマリーの腹部に膝を叩きこむ。
「ぐえぇ……!!」
オルガマリーは体を曲げて、苦しそうな声を出す。パニッシャーは更に拳を振り上げ、オルガマリーの顔面を殴る。
「ぶへっ……!」
オルガマリーは鼻から血を流し、口の中が切れて歯が何本も折れる。それはもう一方的な"私刑"だった。後にクリプターとなるAチームは御覧の通り死体となって転がっている。立香がブリーフィングルームを退出した後、頃合いを見計らって特別性のスタングレネードを3個もブリーフィングルームに投擲。猛烈な閃光と音が部屋全体に響き渡り、パニッシャー以外の全員が目を眩ませて動けなくなった。
スタングレネードというのは視覚のみならず聴覚も一時的に奪い取る効果があり、その隙にパニッシャーはブリーフィングルームに突入し、Aチームであるキリシュタリア・ヴォーダイム、デイビット・ゼム・ヴォイド、カドック・ゼムルプス、オフェリア・ファムルソローネ、芥ヒナコ、スカンジナビア・ペペロンチーノ、ベリル・ガットの7名の頭部にそれぞれ二発の銃弾を叩き込んだ。我ながら早業だと思ったパニッシャーは、その後、カルデアのスタッフ数名を射殺、天井にサブマシンガンを乱射して残りのチームと職員をブリーフィングルームの外に退避させた。
あれ程恐ろしかったクリプター達とて所詮は魔術師。隙を突けば殺すチャンスなど幾らでもある。正々堂々戦う事なくクリプター達を殺害してのけた。
残るオルガマリーは両腕を折られ、両脚は複雑骨折し、顔はボッコボコに腫れ上がっていた。パニッシャーはそんなオルガマリーに近づき、自分の右手で彼女の首を掴んで持ち上げる。
「が、がは……げほっ……」
パニッシャーは左手で懐から拳銃を取り出しオルガマリーに突きつける。
「や、止めて……殺さないで……。お願いだから、もうこれ以上酷いことしないでよぉ……」
「断る。お前はもう死ね」
涙目で命乞いをするオルガマリー。だがパニッシャーはそんなオルガマリーに対して無慈悲にも発砲する。
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オルガマリーの頭部を拳銃で吹き飛ばしたかと思ったパニッシャーだったが、その直前にマイルームで目を覚ました。自分が南極のカルデアでオルガマリーに制裁を加えたのも、Aチームとレフを事前に殺しておいたのも夢だと分かり、パニッシャーは軽い舌打ちを鳴らす。マシュやダ・ヴィンチから南極でのカルデアの事について、そして特異点修復の旅路について詳しく聞いており、そんな話を聞く内に、夢で行ったような事を望んでしまったのだろうか?
「……せめてあの女を射殺してから目覚めるべきだろう」
おそらく見ていた夢は立香を戦いから遠ざけたいと願う自分自身の望みだったのだろう。パニッシャーはベッドから起き上がり、顔を洗った。そして自分の普段着である髑髏のマークが描かれたシャツと黒いロングコートを身に纏い、マイルームから出る。朝食を食べに食堂に向かうが、目の前で立香が孔明と話をしているのが見えた。
「やっぱり俺は魔術を習得するのには向いてないみたいです」
「そうか。君には君の強みがあるはずだ。焦らず頑張りたまえ」
「はい。ありがとうございます」
「……何の話をしているんだ?」
パニッシャーは立香に話しかける。
「あ、おじさん。おはようございます。実は孔明……エルメロイに魔術を教わりたいと思ってたんですけど、どうも俺には魔術の素養がなくて、孔明には才能がないって言われたんですよ」
パニッシャーは立香と孔明の会話の内容を聞いて鼻で笑う。
「立香、お前は魔術なんて習う必要はない。大体コイツは時計塔出身だと聞いたぞ?あんな犯罪者養成学校の教員から教わる事なんか何一つない」
パニッシャーはエルメロイ二世を指差しながら言う。そう言ってパニッシャーはエルメロイ二世に前蹴りを叩き込んだ。
「な、何をする!?」
パニッシャーは倒れ込むエルメロイ二世に拳銃を向ける。
「黙れ、このゴミ虫が。立香を貴様等魔術師の世界に引き込むな」
が、立香はパニッシャーとエルメロイ二世の間に割って入る。
「待ってくれよ!確かにおじさんは魔術師を信用できないかもしれないけどさ、だからといって時計塔出身の講師を敵視する理由にはならないんじゃないか?」
立香の言葉を聞いた瞬間、パニッシャーは立香を睨みつける。
「立香、お前は時計塔……魔術協会の連中に親御さんを消されたんじゃなかったのか?」
パニッシャーの言葉に立香は歯噛みする。
「……そうだよ。だけどそれは孔明がやった事じゃなく、魔術協会が勝手にやった事なんだ。それに、父さんと母さんの件に関してはもう決着は付いていて、今はもう大丈夫だよ」
パニッシャーは立香の顔を見るが、当の立香は割り切れていないという表情をしている。
そしてパニッシャーの前蹴りで尻もちをついていたエルメロイ二世は埃を手で払いながら立ち上がる。
「やれやれ、乱暴な男だ……。確かに私はマスターに魔術を教えようとはしたが、それは彼が私に魔術の教授を願い出たからだ。無論、私は彼に色々課題は出しているがね」
エルメロイ二世の話を聞いてパニッシャーは銃を仕舞いつつ舌打ちをする。
「魔術師っていうのはまともな連中じゃないって事ぐらいは知っている。お前は立香を魔術の世界に引き込んで立香を魔術師にでもするつもりか?」
「別に魔術師がまともな連中じゃない事は否定しないさ。だが彼はマスター適性がかなり高い上にここまで多くのサーヴァント達と契約する事に成功した史上類を見ないマスターだ。このまま埋もれさせるには惜しい人材だろう。最も、魔術の素養や才能に関してはお世辞にも良いとは言えないが……」
パニッシャーは呆れた様子で溜息をつく。
「それじゃおじさん、孔明。俺はもう行くね」
そう言って立香はその場を去って行った。立香が去った後、パニッシャーはエルメロイ二世に向き直る。
「立香はただの子供だ。戦う必要のない人間を戦わせるなんて俺は反対だが?」
だがパニッシャーの言い分にエルメロイ二世は反論した。
「確かに彼が南極のカルデアに無理矢理連行され、そのまま人類最後のマスターとして特異点の修正に行かされる事になったのは事実だ。一般人だった彼にとってはどうしようもない不可抗力だったからな。だが彼は自分の意思で戦う事を決意し、その結果人理修復を成し遂げ、今は人理漂白から地球を戻す為に戦っている。彼の立場と境遇に同情するのは構わんが、だからといって彼の戦う意思を無視するのは感心しないな。君は彼が歩んできた戦いの道を直接目にしたわけでもあるまい」
パニッシャーは眉間にシワを寄せる。確かにエルメロイ二世の言う通り、立香は己を奮い立たせてゲーティアによる人理焼却を防ぎ、今回の地球白紙化現象の原因である空想樹を切除し続けた。立香の立場に同情するのは自由だが、だからと言って立香のこれまでの戦いを否定する事はできない筈である。このノウム・カルデアにいるサーヴァント達だとて、一般人に過ぎなかった立香が人理修復の為に戦う姿勢を評価して召喚に応じたのだから。
「……もし仮に立香が戦いに放り込まれた事に恐怖を覚え、人類最後のマスターとして特異点の修復に行く事を拒絶するような子ならお前は召喚に応じたのか?」
パニッシャーはエルメロイ二世に問いかける。
「それこそ意味の無い"たられば"に過ぎん。だが……英霊の中には召喚に応じない者も当然出てくる。人理焼却、人理漂白という未曽有の事態を打開できるマスターが求められるからな。だからこそ彼……藤丸立香はそれに相応しいマスターと言えるだろう」
エルメロイ二世の言う通り、カルデアに召喚されたサーヴァントは人類最後のマスターとして相応しい素質と特性を持つ立香だからこそ召喚に応じたのだ。
「どこぞの蜘蛛小僧の言い分だが、"困っている人に迷わず手を差し伸べられるのが本当の意味でのヒーロー"だそうだ。立香が仮に人類最後のマスターとして相応しくない少年でも、カルデアのマスターとしての責務を背負わされている子供を救おうっていうサーヴァントはいないのか?」
「どうやら君は英霊を慈愛の戦士かボランティアと勘違いしているようだな。そもそも今回の事態において我々が召喚に応じるのは、その人間の可能性に賭けているからだ。如何に人理の危機とはいえど相応しいマスターでなければ召喚の呼びかけに応じる事はない」
「要は自分達が力を貸す対象を選り好みしてるだけじゃねえか。立香が人類最後のマスターとして相応しかろうが、相応しくなかろうが助けてやるっていうサーヴァントはいないのか」
「英霊達はそんなお人好しばかりではない。君が考えている程サーヴァントというのは甘くは無いんだ」
立香が普通の少年らしく恐怖に怯え、人類最後のマスターとしての使命と重責に耐えられないような存在なら、サーヴァントは立香の召喚に応じないかもしれない。"そんな臆病なマスターでは人理の修復など不可能だ"とでも言わんばかりに。
「彼は彼なりにこの漂白された地球を元に戻そうと戦ってくれているんだ。彼の持つ覚悟は君にも理解できるだろう?」
パニッシャーだとて立香の戦う決意までを否定したくはない。ただの少年がここまで戦えるという事自体が偉業なのだから。だがパニッシャーは今一つ割り切れていない様子だ。
「ただ……最近の彼を見ていると無理に無理を重ねているようにも見えるのは事実だ。それは私とて感じている」
「…………」
今まで立香は世界を救う為に、人類の未来を取り戻す為に、自分の命を懸ける戦いに身を投じてきた。だが今の立香は様々な意味で疲弊している状態だ。
「パニッシャー、君は彼の事になると途端に周りが見えなくなるな。ちょくちょく他のサーヴァント達にも喧嘩を吹っ掛けているが、いずれ本当に殺されてしまうぞ?君だとてサーヴァントの力は知っているだろう」
エルメロイ二世の言う通り、パニッシャーは自分が悪と判定したサーヴァントや、立香に悪い影響を与えそうなサーヴァントに因縁を付けては喧嘩を売り続け、その度にマシュとダ・ヴィンチがサーヴァント達に頭を下げて謝っているのだ。ただの人間に過ぎないパニッシャーではサーヴァントに勝てる筈もないのと、マシュとダ・ヴィンチが仲裁に入らなければ殺されるか廃人にされていたかもしれない。そうした事が続いて今やパニッシャーはすっかり問題児として認知されてしまっている。だがパニッシャーにとって立香は自分が並行世界の冬木市で助けた時の幼い少年のままなのだ。家族をランサーに殺されて涙を流す子供であり、自分と同じ境遇の……。
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立香は自分のマイルームにマシュを呼び、自分がアベンジャーズがをウム・カルデアに呼び寄せてしまった経緯を説明する。隠し事はいけないと思い、自分が最も信頼できる後輩……マシュにだけは打ち明ける事にしたのだ。
「実は……数日前の夢の中で死んだ父さんと母さんが時計塔の地下にある魔術師の工房で身体を解剖されていた光景を見たんだ……。正直あれが夢なのか現実なのかは分からない。けど……けど夢にしては余りにもリアルで……生々しかった」
立香はムニエルから両親が魔術協会の執行者によって消されたという事実を聞かされた。だが、単に殺されただけでは終わらなかった。まだ息があった両親は時計塔の魔術師の工房へと預けられ、そこで魔術師の研究材料として体内にある臓器や脳を摘出されていた。死後の安寧すらも踏みにじられ、冒涜された光景を目の当たりにした立香は余りにも惨く残酷な両親の末路に絶望し涙した。
「シミュレータールームで父さんと母さんに別れは告げたつもりだ……。けどあれは所詮仮想空間で作り上げられた偽物。現実の父さんと母さんは魔術師の研究材料として尊厳を傷付けられ、辱められた……」
立香は唇を噛みしめながら拳を強く握りしめる。白化した地球を元に戻し、帰るべき日常の象徴であった両親は既にいない。そんな立香の様子を見てマシュは胸を痛める。
「先輩……」
「俺は……俺はカルデアにスカウトされなければ父さんと母さんがあんな目に遭う事もなかったと心の底で思っていたんだ……。けどそれはマシュやカルデアの皆、召喚したサーヴァント達と過ごした日々を否定してしまう……!特異点修復での旅も、冠位時間神殿での戦いも、空想樹切除の為の戦いも全部全部否定してしまう……!俺はそれが嫌なんだ……!けど……けど父さんと母さんを助けたいと思ったのも事実なんだ……。カルデアに連れて行かれたあの日からずっと留守にして心配かけて……俺は二人に謝る事もできなかった……」
"今まで留守にしてごめん。寂しかったよね?"
「こんな言葉も言えないままに父さんと母さんは殺された……。こんな結末は嫌だ……。例え地球を元に戻せたとしてもずっと後悔が残ってしまう……だから心の中であの人たちに……アベンジャーズに救いを求めたんだ……」
それは両親の死に慟哭する立香が願った事である。両親の死を嘆く自分を救う存在としてアベンジャーズが来る事を強く願った。それは人類最後のマスターとしてではなく、両親を救いたいと願う一人の少年としてだった。
「マシュ……俺は人類最後のマスターとして失格なのかな……?」
立香はマシュに自分の本心を吐露する。そしてマシュは立香の隣に寄り添うと、立香の唇に優しくキスをする。突然のマシュの行動に立香は驚くが、マシュは顔を赤くしながら自分の想いを明かす。
「私はそんな事ありません。先輩は人類最後のマスターでもあり、私にとっての大切な人です。私は先輩のご両親を助けたいという気持ちを否定したくありません。例えその方法が間違っていても、それでも先輩は正しい事を願ったんです」
マシュは自分の想いを立香にぶつける。
「マシュ……」
「先輩……私の前では我慢しないでください。泣きたい時は泣いていいんですよ」
マシュはそう言うと、立香を抱きしめる。立香の目から涙が零れ落ち、マシュの胸に顔を埋める。マシュは立香の頭を撫でる。
「……ありがとう、マシュ」
マシュの胸で涙を流すのはこれが最初ではない。だが自分の悲しみを受け止めてくれるのは彼女だけだ。だからこそ立香はマシュに甘えられる。
「いえ、私は先輩の味方です。辛い時はこうして慰めます。私の前では無理をしないでください。弱音を言ってもいいんですよ。先輩の苦しみも悲しみも全部受け止め、支えてこその後輩ですから!」
マシュは立香の涙を指で拭いながら笑顔を見せる。
「うん、俺もマシュにだけは隠し事はしたくない。マシュには嘘をつきたくはないからさ。だからこれからも頼りにしているよ、マシュ」
「はい、お任せ下さい。それと……その、先輩は私の事が嫌いですか?もしそうなら……悲しいです」
マシュは悲しげな表情を浮かべる。
「そんな事ない!俺はマシュの事が好きだよ。もちろん他の皆も好きだ。でも一番好きなのはマシュなんだ」
立香は真剣な眼差しでマシュを見つめる。マシュの顔はみるみると赤くなり、恥ずかしそうな様子で立香から視線を逸らす。
「そ、そんなにストレートに言われると照れるというか……。あぅ……もう、ずるいですよ……そんな風に言われたら……その……」
そうして立香はマシュを抱き寄せる。マシュは一瞬驚いたが、すぐに立香の背中に腕を回した。マシュの温もりと柔らかさが伝わってくる。そして立香は気付けばマシュの唇と自分の唇を合わせていた。
流石に修正前はエルメロイ二世の言動がおかしかったんで、それの修正とパニッシャーとのやり取りを大幅に追加しました。
サーヴァントだってボランティアじゃないですからね……