パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
マリーは、宴の喧騒の中を歩みを進めながら、ふと見覚えのある少年の姿を見つけた。村人たちに囲まれ、その中心で輝いていたのは、彼女たちが最初に出会った村の少年、アランだった。少年の瞳は、獣を追い払ったジャンヌ・オルタの雄姿を見つめており、そこには純粋な憧憬と希望の灯火が宿っているようだった。
「アラン、どうしたの?」
マリーが穏やかな声で語りかけると、アランは我に返ったようにその視線を彼女に向けた。
「ああ、マリー!ちょうどジャンヌのことを見ていたんだ」
少年は、無邪気な笑顔を浮かべながら、己の思いを告白する。
「ジャンヌは本当に強いんだ。あんな獣を追い払うなんて、普通の人間には到底できないよ」
アランの言葉には、ジャンヌ・オルタへの尊敬と賞賛が満ち溢れていた。村を襲う獣に怯える彼らにとって、ジャンヌ・オルタの勇猛果敢な戦いぶりは、まさに希望の象徴として映ったのだろう。
「ええ、そうね。ジャンヌは、あなたたちを守るために全力を尽くしてくれているのよ」
マリーは、アランの感情を受け止めながら、優しく頷く。彼女の心には、アランが最愛の母親を獣に奪われたという悲しみが、重くのしかかっていた。
「アラン……お母さんのこと、まだ悲しんでいるのね」
そう言葉を紡ぎながら、マリーはそっとアランを抱擁する。少年は、一瞬戸惑いを見せたが、やがて安堵したようにマリーの腕の中に身を委ねた。彼の身体は、まだ幼さを残していながらも、どこか逞しさを感じさせた。
「うん……でも、もう大丈夫だ。ジャンヌが獣を倒してくれると信じているからね」
アランの瞳には、悲しみを乗り越えた先にある、揺るぎない希望の輝きが宿っている。マリーは、その強さに心打たれずにはいられなかった。
「そうね。ジャンヌなら、必ずあの獣を倒してくれるはずよ。だから、あなたも負けずに頑張らないと」
マリーの言葉に、アランは力強く頷いた。
「ああ!僕も、村を守るために精一杯頑張るよ!」
少年の決意は、まるで鋼のように強固なものだった。彼もまた、この村の平和を願い、戦う覚悟を持っているのだ。
そのとき、村人たちの歓声が、二人の間に響き渡った。
「マリー!こっちに来いよ!」
宴の中心で踊る村人たちが、マリーを招く。彼女はアランに微笑みを向けると、その輪の中へと飛び込んでいった。
人々の喜びに包まれながら、マリーは宴の熱気に心を躍らせていた。村人たちもまた、ジャンヌ・オルタの勇姿に心を熱くしているようだ。彼らの笑顔は、まるで太陽のようにまばゆく、夜闇を切り裂いて輝いていた。
そんな歓喜に満ちた空気の中で、マリーは人々の視線を集めながら、大きく息を吸い込んだ。
「みなさん、今宵は本当に素晴らしい夜ですわ!」
マリーの透き通るような声が、宴の喧騒に響き渡る。
「私たちには、こんなにも楽しい時間を過ごせる平和がある。でも、それはジャンヌが命懸けで守ってくれているおかげなのです。だから、この場を借りて、私からも宣言させていただきます」
そう前置きをしてから、マリーは全身全霊で、自らの決意を叫び上げた
。
「ヴィヴ・ラ・フランス!」
その言葉は、まるで魔法の呪文のように、人々の心に火を点けた。村人たちの歓声が、一斉に夜空を震わせる。宴のボルテージは、一気に最高潮へと達したのだ。
だが、その瞬間だった。マリーの背筋を、得体の知れない戦慄が駆け抜ける。まるで凍てつくような冷気が、彼女の全身を包み込むかのようだった。
(これは……一体、何……?)
マリーの脳裏に、ある恐ろしい予感が浮かぶ。村人たちが酔いしれる喜びの裏側で、森の奥から放たれる凄まじい殺意。それはまるで、獲物を狙う野獣の眼光のように、禍々しくて邪悪だった。宴に興じる村人たちには、その脅威に気づく余裕などない。血に飢えた何かが、闇の中で蠢いているというのに。
(まさか……また、あの獣が……!?)
マリーの脳裏に、先のジェヴォーダンの獣との死闘が、走馬灯のように蘇る。
あの強敵を、ジャンヌ・オルタは追い払ったはずだ。だというのに、何故またこの禍々しい気配が……。再び獣が襲ってくるのは十分に考えられるがどうも獣の気配とは別の気がするのだ。冷や汗が背中を伝う中、マリーは懸命に平静を装った。この不穏な予感を、村人たちに悟られてはならない。もし彼らがパニックに陥れば、獣に付け入る隙を与えてしまうことになる。マリーは不穏に思いつつも、その場を立ち去った。
朝日が地平線から姿を現し、その柔らかな光が村を優しく包み込んでいく。夜明けとともに、人々の活動が徐々に活発になっていく中で、一人の少女が村の畑に佇んでいた。それは、昨日の宴で村人たちを魅了したジャンヌ・オルタである。彼女は再び村娘の姿に戻り、家畜の世話や作物栽培に勤しんでいた。
ジェヴォーダンの獣による襲撃が頻発するようになってから、村人たちの多くが恐怖に怯え、野外での作業を避けるようになっていた。その結果、放置された畑が目立つようになり、収穫量の減少が村の大きな問題となっていた。そんな中、ジャンヌ・オルタは率先して農作業に取り組み、村の人々の手本となろうとしていたのだ。しかし、彼女一人では到底追いつかないほどの作業量があった。広大な畑を耕し、種を蒔き、水を撒く。そして家畜の世話をし、エサをやり、柵の修繕をする。サーヴァントとはいえ、肉体的な疲労は免れない。次第にジャンヌ・オルタの動きにも、少しずつ緩慢さが見え始めていた。
「くそっ、こんなの私の仕事じゃないのに……」
額に手を当てて汗を拭いながら、ジャンヌ・オルタは思わず愚痴をこぼす。普段は戦いに明け暮れる彼女にとって、こうした地道な作業は性に合わないのだろう。だが、村を守るためには、この仕事も欠かせない。彼女は歯を食いしばり、再び鍬を手に取るのだった。一方、村の中を歩くマリーの心には、昨夜の不穏な記憶が蘇っていた。宴の最中に感じた、森から放たれる凄まじい殺意。あれは一体何だったのか。ジェヴォーダンの獣は、本当に戻ってきたというのだろうか。
そんな思いを巡らせながら、マリーは村の見回りを続ける。人々の安全を確認し、異変がないかを監視するのが彼女の役目だった。
そのとき、村の路地から二人の男が現れ、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらマリーに近づいてきた。男たちは、どちらも30代半ばといったところか。農夫らしい質素な身なりをしているが、垢抜けない風貌からは、どこか不潔な印象を受ける。
「やあ、美しい旅人さん。俺はジャックっていうんだ」
「俺はトマ。君みたいな美人がこんなところで何をしてるんだい?」
男たちは、挨拶もそこそこに、品定めするような目でマリーの体を舐めまわす。その視線には、明らかな好色さと欲望が滲んでいた。
しかしマリーは、そんな下卑た視線にも動じない。生来の天真爛漫さで、男たちに微笑みを向ける。
「あら、こんにちは。いいお天気ね」
マリーの屈託のない笑顔に、男たちは一瞬鼻白むが、すぐに気を取り直して下品な笑いを浮かべた。
「ああ……そうだな。ところであんた、俺たちと少し遊ばないか?」
男の一人がそう言うと、もう一人の男がニヤリと笑って言葉を続けた。
「いい話があるんだ。俺たちと一緒に来れば、楽しいことがあるぜ?」
男たちはマリーの肩に手を回し、強引に連れて行こうとする。しかし、彼女はそんな男たちの腕を振り払うと、毅然とした態度で言い放った。
「ごめんなさいね。私は今忙しいからあなたたちとは遊べないわ」
その言葉に、男たちは一瞬面食らったような表情を浮かべるが、すぐに下品な笑いを浮かべた。そして何も言わずに去っていく。村を襲う獣の脅威に立ち向かうジャンヌ・オルタとは対照的に、マリーは専ら村人の避難誘導に努めていた。戦闘に直接関与しない彼女の姿は、時に非戦闘員と見なされ、侮りの対象となることもあった。ジャックとトマという男も、そんなマリーを見下していたのだろう。だが、彼らの認識は大きな誤りであった。確かにマリーは、生前より武闘派ではなかった。王妃としての立場上、直接戦場に赴くことはなかったのだ。しかし、サーヴァントとなった今、彼女もまた一騎当千の力を備えている。その戦闘力は、ジャンヌ・オルタには劣るものの人間相手に負けるようなものではなかった夕刻が近づくころ、農作業を終えたジャンヌ・オルタがマリーのもとを訪れる。一日中野良仕事に勤しんでいた彼女は、全身に汗と埃を纏っていた。それでも、満足げな表情を浮かべているあたり、労働の喜びを感じているのかもしれない。
「ねえマリー、ちょっといい知らせがあるの」
「なあに?」
「村のはずれに、入浴できる小屋があるのよ。アタシも今しがた、汗を流してきたところなんだけど」
その言葉に、マリーの瞳が驚きに瞠る。
「ええっ、本当に!?」
マリーは、普段の上品な口調を忘れて、興奮気味に叫んだ。彼女は風呂好きで知られており、この劣悪な環境の中でも、沐浴だけは欠かさないようにしていたのだ。
「そ、それで、その小屋はどこにあるの?早く教えてちょうだい!」
「ふふっ、そう焦らないの。ほら、あそこの森の奥に見えるでしょ?」
ジャンヌ・オルタが指差す先には、村からは少し離れた場所に、小さな木造の建物が佇んでいた。普段なら人目につかない場所だが、今はマリーの目にもはっきりと捉えられる。
「わかったわ、すぐに行ってくるね!ジャンヌ、教えてくれてありがとう!」
そう言い残すと、マリーは小走りに小屋へと向かって行った。古びた木の扉を開け、中に入る。そこには、粗末ながらも清潔な空間が広がっていた。
「ああ、待ち遠しかったわ……」
マリーは自分の着ている霊衣を、一枚一枚丁寧に脱いでいく。上品なドレスが床に落ち、白い肌が露わになる。まるで、真珠のように輝く肌。スラリと伸びた手足に、女性らしい曲線美を描く体のライン。その姿はまさに、妖精と呼ぶに相応しい美しさであった。マリーは一糸纏わぬ姿になると、そのまま浴室へと足を踏み入れた。そんな美しい裸身を、新鮮な水の張られた桶へとゆっくりと沈めていく。思わず歓喜の吐息が漏れる。冷たい水が火照った体を優しく包み込み、一日の疲れを洗い流していく。
「はぁ……気持ちいい……」
マリーは目を閉じ、その感触に身を委ねる。普段は決して見せない無防備な表情。それはまるで、神話に出てくる水の妖精のようにも見えた。小屋の壁に空いた小さな穴から、そんなマリーの姿を盗み見る者がいた。ジャックとトマだ。先ほどマリーに絡んできた、下卑た欲望を隠さない男たちである。彼らはニヤニヤと笑みを浮かべ、汚れた目でマリーの全てを貪り尽くそうとしている。まるで獲物を狙う獣のような、鋭い視線を送っていた。しかし、そんな男たちの存在に、マリーはまるで気づいていない。沐浴の喜びに浸るあまり、周囲への警戒が疎かになっているのだ。ジャックとトマは、小屋の外から欲望のままにマリーを眺め続ける。けれど、彼らは決して中には入ってこない。あくまで、隠れて盗み見るだけなのだ。マリーは心地よい沐浴に浸っていたが、ふと違和感を覚えた。まるで誰かに見られているような、背中に感じる視線の重さ。それは、先ほどから感じていた不穏な気配と重なるものだった。
(誰かいるの……?)
マリーは桶から出ると小屋の木窓を開け、堂々とした口調で男たちに声をかけた。
「あら、お二人とも。こんなところで何をしているの?」
その言葉に、ジャックとトマはビクリと体を震わせた。まさか気づかれるとは思ってもいなかったのだろう。2人とも驚愕の表情を浮かべていた。マリーはそんな男たちの姿を意に介す様子もなく、裸体のまま堂々とした様子で木窓から身を乗り出す。その姿は妖精というより女神のような神々しさを感じさせた。その美しさに圧倒されたのか、ジャックとトマは言葉を失って呆然と立ち尽くしていた。マリーはそんな男たちの様子を見てクスリと笑うと、そのまま小屋の外へと出た。そして、全裸のまま仁王立ちして2人の前に立ちふさがる。
「え?あ、あの……その……」
「お、俺達はた、たまたま通りかかっただけだ!」
動揺しながら言い訳を捏ねる男たちに、マリーは優雅な笑みを浮かべる。
「ふふっ、そうなの?でも、私が先に入浴していて申し訳ないわ。お二人も、汗を流したいと思っていたのでしょう?」
「え?あ、ああ、そうだ!そうなんだよ!」
「だ、だからついつい、覗いちまったっていうか……」
ジャックとトマは、必死に取り繕おうとする。けれど、どう見ても不自然な言い訳だった。マリーはそんな男たちの様子を、ただ静かに見つめていた。その美しい裸体には、恥じらう様子も動揺する様子もない。まるで全てを見透かすような澄んだ瞳で、じっと男たちを見つめているだけだ。
「そう、それは残念ね。せっかくだから一緒に入浴したいと思っていたのだけれど」
ジャックとトマは、ゴクリと唾を飲み込む。マリーの裸体に圧倒されて、言葉が出ないのだ。まるで妖精のように美しい姿なのに、その肉体には確かな女の魅力が宿っている。
「ふふっ、素直じゃないのね。でも、そんなところも可愛いと思うわ」
「か、可愛い……?」
「お、俺たちが……?」
予想外の言葉に、男たちは更に動揺を隠せない。そんな彼らの反応を楽しむように、マリーは更に笑みを深めた。
「ええ、とっても。だって、本当は私のことが気になっていたのでしょう?」
「ち、ちがう!そ、そんなんじゃ……!」
「い、いや、それは……その……」
真っ赤な顔で否定する男たちを見て、マリーは満足げに頷く。
「ふふっ、いいのよ。そんなに気にしないで。でも、これからはもう少し正直になった方がいいわ。素直な気持ちを伝えることは、とても大切なことなのよ」
そう言って、マリーはウィンクを投げかけた。
その眩しすぎる笑顔に、ジャックとトマは完全に参ってしまった。
「は、はい……わ、わかりました……」
「こ、これからは、正直に……」
恥ずかしさのあまり、もはや視線も合わせられない。そんな2人の様子に、マリーは満足げに微笑む。
「ふふっ、それでいいのよ。それじゃあ、ごきげんよう」
そう言い残し、マリーは木窓から小屋の中へと戻っていく。後には、呆然と立ち尽くすジャックとトマだけが残された。マリーは再び桶に浸かり、心地良い沐浴の時間を楽しもうとしていた。しかし、その時、外から聞こえてきた悲鳴に、彼女の平穏は突如として破られる。咄嗟に身体を起こし、何が起きたのかを察しようとする。だが、その声の主を特定するよりも先に、マリーの身体は行動を開始していた。全裸のまま、彼女は小屋の木窓に駆け寄ると、躊躇なくそれを突き破って外へと飛び出す。乙女の柔肌を覆っていたのは、湯冷めするほどの冷たい風だけだった。けれど、そんな事はお構いなしだ。マリーの意識は、悲鳴の主を助けることだけに集中していた。そこで彼女が目にしたものは、信じがたい光景だった。昨日、村を襲撃しジャンヌ・オルタに追い払われたはずの獣が、再び村の近くに現れていたのだ。そして、その巨体の下で、ジャックとトマの二人が地面に押さえつけられている。
「きゃあああっ!助けてくれええっ!」
「う、うわあああっ!た、助けて!誰か!」
絶叫しながら、必死に抵抗する男たち。しかし、それも虚しく、獣の圧倒的な力の前には、為す術もない。
マリーは息を呑みながら、その凄惨な光景を見つめた。黒煙に包まれ、全貌の掴めない獣の姿。それはまるで、悪夢の中から這い出てきた魔物のようだった。
獣は不気味な唸り声を上げながら、ジャックとトマを抑えつける。そして、ゆっくりとマリーの方に顔を向けた。血走った双眸が、彼女を捉える。
その瞬間、マリーの背筋に冷たいものが走った。漆黒の闇を思わせる毛並み。鋭い牙と爪。そして、何より、獣の眼に宿る凄まじい殺意。昨日ジャンヌ・オルタが追い払った獣である。
「やめて!その人たちを放して!お願い!」
必死に叫ぶマリーの願いも虚しく、獣はジャックとトマを放そうとしない。それどころか、ますます力を込めて締め付けるばかりだ。獣の爪が食い込み、彼らの皮膚が裂けていく。血が滴り落ち、地面を赤く染めた。
(ど、どうしよう……?下手に動けば、二人が……!)
焦燥に駆られるマリー。だが、冷静さを失うわけにはいかない。王妃として、民を守る者として、彼女には為すべきことがあるのだ。
そう覚悟を決めたマリーの前に、突如として一つの影が現れた。
森の奥から、するりと姿を現したその影は、黒いローブに身を包んだ人間の姿をしていた。
「だ、誰なの……?」
マリーが身構える中、黒衣の人物は静かに獣に近づいていく。そして、その手を獣の頭に添えると、優しく撫でるのだった。その瞬間、信じられないことが起きる。今までマリーに牙を剥いていた獣が、黒衣の人物に懐いたのだ。まるで、飼い主を慕う犬のように。
(あ、あの人は、まさか……?)
直感であった。黒いローブ、獣を操る力。恐らくは魔術師の類だろう。そして、その魔術師こそが、この獣の主であると、マリーは確信した。
「あなたが、この獣を操っているのね?」
詰め寄るマリーに、黒衣の魔術師は無言で頷く。そして、ジャックとトマを抑える獣の横に立つと、不敵な笑みを浮かべながら二人を指差した。その仕草の意味を、マリーは即座に理解する。
(この人たちを助けたいなら、お前が身代わりになれ、と……?)
予想が正しいことを確かめるように、マリーが問いただす。すると、魔術師は再び頷くのだった。
「ひっ……お、お願いです、助けてくださいっ!」
「何でもしますから、助けてくれえっ!」
地面に伏せるジャックとトマが、涙ながらにマリーに助けを求める。
その姿に、マリーの心が決まった。
「……わかりました。私が、身代わりになります。だから、お願い。その人たちを、放してあげて」
懇願の言葉を、魔術師は満足げに受け止める。そして、するりとマリーの前に立つと、スッと手を伸ばした。次の瞬間、黒い鎖がマリーの両手首と両足首に絡みつく。それは、彼女から自由を奪い、魔術師の意のままに操る道具だった。
「きゃっ……!?」
思わず悲鳴を上げるマリー。しかし、そんな彼女の様子も、魔術師は意に介さない。むしろ、愉悦の笑みを浮かべながら、そのまま彼女を引きずるように、森の中へと歩き出すのだった。後には、解放されたジャックとトマが、慌てて村へと逃げ帰っていく姿があった。こうして、マリーは獣と魔術師に連れ去られ、人質となったのだ。深く暗い森の中を、三者は歩みを進める。魔術師に躰を操られながらも、マリーは微塵の隙も見せない。例え全裸で鎖につながれようと、彼女の眼差しは凛としていた。王妃としてのプライドが、そう在れと彼女に命じているのだ。
「……私を連れて、どこへ行くつもり?」
沈黙を破り、マリーが問いかける。だが、魔術師は答えない。ただ、不気味な笑みを深めるばかりだった。森は、次第にその暗さを増していく。まるで、闇の奥底へと招き入れるかのように。それでも、マリーは覚悟を決めていた。たとえ、どんな辱めを受けようとも、屈することなく立ち向かおうと。囚われの身となり、先の見えない状況に置かれながらも、彼女の意志は揺るがない。
(皆のため、この村のために……私は、負けないわ……!)
心の中で念じながら、マリーはひたすらに歩み続ける。魔術師と獣に連れられ、森の奥へと消えていくのだった。
パニッシャーさんの出番ない……orz
しかし王妃様、その恰好は刺激的過ぎますよ( ̄▽ ̄;)