パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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※注意!この回ではFGOメインストーリーである「不可逆廃棄孔イド」の一部ネタバレを含みます!


第45話 不可■廃■孔・■■

ドクター・ストレンジは藤丸の精神世界の深層へと潜っていった。彼の意識は、まるで無限の宇宙を旅するかのように、藤丸の記憶の海を漂う。そこには、一人の少年が背負ってきた壮大な物語が広がっていた。

 

ストレンジの目に映るのは、突如として人理焼却に巻き込まれ、カルデアという組織に引き込まれた藤丸の姿だった。彼は、まるで運命に導かれるかのように、次々と襲い来る試練に立ち向かっていく。オルレアンの炎、セプテムの剣、オケアノスの波、ロンドンの霧、北米の荒野、キャメロットの砂漠、そしてバビロニアの神々。それぞれの特異点で、藤丸は数々の英霊たちと出会い、彼らと共に戦い、そして成長していった。

 

ストレンジは、藤丸の記憶を通して、彼が直面した数々の危機と、それを乗り越えていく姿を目の当たりにする。そこには、単なる少年の姿ではなく、人類の存続を賭けて戦う勇者の姿があった。

 

「なんという重圧だ...」

 

ストレンジは思わず呟いた。彼の目の前で、藤丸が冠位時間神殿ソロモンで魔神王ゲーティアと対峙する場面が展開される。その戦いの壮絶さは、ストレンジですら息を飲むほどだった。

 

しかし、藤丸の試練はそこで終わらなかった。ストレンジは、彼がさらなる困難に立ち向かう姿を目にする。新宿の闇、アガルタの秘密、下総の戦い、セイレムの魔女裁判。そして最後に、地球の白紙化という前代未聞の事態。

これらの記憶を辿りながら、ストレンジは藤丸の精神の強さに驚嘆せずにはいられなかった。しかし同時に、彼の心の奥底に潜む何かに違和感を覚え始めた。それは単なる傷跡や喪失感とは異なる、もっと根本的な何かだった。

 

「これは...予想外の事態だ」

 

ストレンジは眉をひそめ、さらに深く藤丸の精神世界を探索し始めた。彼が気づいたのは、藤丸の精神の深層に広がる大きな歪みだった。それは両親の死に関する記憶をも超えた、もっと根源的な部分で生じているようだった。

 

「この歪みは...藤丸の本質そのものに関わっているのではないか?」

 

ストレンジは慎重に、その歪みに近づいていく。それは藤丸の人格の核心部分にまで及んでおり、彼の存在そのものを揺るがしかねない重大な問題のように思えた。

 

ストレンジは眉をひそめ、深い思考に沈んだ。彼の記憶の中に、ダ・ヴィンチやシオンから聞いた情報が蘇る。藤丸がレム睡眠によって特異点へレイシフトした例が幾つもあったという事実。その瞬間、ストレンジの頭の中で一つの可能性が閃いた。

「もしかすると、藤丸は今、どこかの特異点へレイシフトしているのではないか?」

しかし、その仮説はすぐに覆される。藤丸が廊下で気絶した際、これまでのように精神がどこかへレイシフトしているという結果は出ていなかったのだ。下総の時のように藤丸自身の精神が別の時代へ飛んでいるわけでもない。現状は、それとは全く異なるものだった。

ストレンジは意識を現実世界に戻し、目を開けた。しかし、病室にはダ・ヴィンチたちの姿がなかった。代わりに、部屋の隅にホログラム装置が設置されており、そこからダ・ヴィンチの姿が浮かび上がる。

「ストレンジ、状況は把握したかい?」

ダ・ヴィンチの声は、いつもの軽快さを失っていた。その表情には深刻さが滲んでいる。

「ある程度は。しかし、藤丸の状態が通常のレイシフトとは異なるということは分かった。詳しく説明してくれないか?」

ストレンジの問いかけに、ダ・ヴィンチは深く息を吐いた。その仕草には、普段の彼女からは想像もつかない重々しさがあった。

「藤丸君の状態は、我々が今まで経験したどのケースとも異なる。彼の精神は確かにここにある。しかし同時に、どこか別の場所にも存在しているような...そんな矛盾した状態なんだ。まるで、彼の存在そのものが二つに分裂しているかのようだ」

ストレンジは黙って聞いていた。ダ・ヴィンチの言葉一つ一つが、この状況の異常さを物語っている。

「我々の持つ技術では、彼の状態を完全に把握することも、それを解決することもできない。ストレンジ、君の力が必要だ」

 

ダ・ヴィンチの言葉に、ストレンジは静かに頷いた。彼は既に決意を固めていた。カルデアが行うレイシフトを、自ら行うことを。

 

「分かった。私が藤丸の精神世界へレイシフトする」

 

ストレンジの言葉に、ダ・ヴィンチは驚きの表情を浮かべた。しかし、すぐにそれは理解の色に変わる。

 

「そうか...君なら可能かもしれない。けど、危険も伴うよ?」

ストレンジは微笑んだ。彼は既に、この世界の魔術体系とは異なるものの、ソーサラー・スプリームとしてレイシフトの原理と仕組みを解明していた。

「心配無用だ。私なりの方法で」

 

ストレンジは静かに目を閉じ、精神を集中させる。カルデアのコフィンを使用したレイシフトとは異なり、彼の方法は純粋に精神力と魔術によるものだった。それは、より繊細で、同時により危険な方法でもあった。

 

空間が歪み始め、ストレンジの周りに光の渦が生まれる。それは、カルデアのレイシフトとは明らかに異なる光景だった。より有機的で、まるで生命体のように脈動している。

 

「行ってくる」

 

ストレンジの最後の言葉が響く中、彼の意識は藤丸の精神世界へと沈降していく。それは、単なる記憶の海を越えた、存在そのものの根源へと向かう旅だった。

彼が目指すのは、藤丸の歪みの源。それは藤丸自身の中にあり、表面的な記憶を探るだけでは到達できない深層に潜んでいる。ストレンジは、自身の全てを賭けて、その歪みを正そうとしていた。

 

光の渦が彼を包み込み、ストレンジの意識は現実世界から完全に離れていく。彼が向かう先は、藤丸立香という一人の少年の魂の最深部。そこには、人類の未来を左右するかもしれない真実が眠っていた。

 

レイシフトの光が消え去り、ストレンジの意識が完全に安定したとき、彼は自分が街中に立っていることに気がついた。周囲を見渡すと、そこは間違いなく東京の一角だった。高層ビルが立ち並び、人々が行き交う姿は、まるで現実の都市そのものだった。ストレンジは以前、藤丸の故郷が東京だと聞いていたことを思い出す。

 

「これが...藤丸の精神世界?」

 

ストレンジは呟きながら、慎重に歩き始めた。道行く人々は彼に気づく様子もなく、まるで彼が透明人間であるかのように振る舞っていた。街の喧騒、車のエンジン音、信号機の変わる音。全てが極めてリアルで、ストレンジは一瞬、自分が本当に現実世界の東京にいるのではないかと錯覚してしまう。

 

しかし、彼の鋭い直感が告げていた。これは現実ではない。藤丸の精神が作り出した世界、おそらくは彼の記憶や想像が織りなす心象風景なのだろう。だが、なぜこれほどまでに精巧な世界が藤丸の中に存在しているのか。ストレンジの頭の中で疑問が渦巻く。

 

彼は歩みを進めながら、周囲を細かく観察し続けた。建物の細部、道路の舗装の様子、街路樹の葉の揺れ方。全てが完璧すぎるほど精密に再現されている。これは単なる記憶の再生ではない。もっと深い、もっと根源的な何かがこの世界を形作っているのではないか。

 

ストレンジの足は、何かに導かれるように住宅街へと向かっていった。雑踏を抜け、静かな住宅地に入ると、空気が一変する。喧騒が遠のき、代わりに穏やかな風の音が聞こえてくる。そして、一軒の家の前で彼は足を止めた。

 

「ここか...」

 

二階建ての普通の一軒家。特に目立った特徴はないが、ストレンジの直感がここだと告げていた。藤丸立香の実家。彼の全てが始まった場所。

ストレンジは家の前に立ち、じっと観察を続けた。庭には手入れの行き届いた植物が植えられ、玄関には綺麗な表札が掛けられている。どこにでもありそうな、平凡な家庭の風景。しかし、その平凡さの中に、何か重要な鍵が隠されているような気がしてならない。

 

彼はまだ家の中には入らなかった。そこに踏み込むことの意味を、慎重に見極める必要があった。この家の中に、藤丸の歪みの源があるのかもしれない。あるいは、それ以上に重大な何かが隠されているのかもしれない。

風が吹き、木々のざわめきが聞こえる。ストレンジは深く息を吐き、心を落ち着かせた。彼は今、藤丸立香という少年の魂の最深部にいる。そして、その核心に迫ろうとしているのだ。

 

「藤丸...君の中に一体何があるのだ?」

 

ストレンジの呟きが、静かな住宅街に吸い込まれていく。彼は、次の一歩を踏み出す前に、もう一度周囲を見回した。この完璧すぎる世界。これが単なる心象風景だとしたら、なぜこれほどまでに精巧なのか。そして、もしこれが別の何かだとしたら...。

 

ストレンジの頭の中で、様々な可能性が交錯する。彼は、自分がまだ真実の一端にさえ触れていないことを痛感していた。藤丸の中にある「東京」。それは彼の記憶なのか、想像なのか、それとも全く別の何かなのか。答えはまだ見えない。しかし、ストレンジは確信していた。この家に入ることで、全てが明らかになるだろうと。彼は静かに、しかし確固たる決意を胸に、次の行動を考え始めた。

 

ストレンジは深呼吸をし、静かに家の扉に手をかけた。ドアノブを回す音が、異様なほど鮮明に耳に届く。扉が開くと、予想外の光景が彼の目に飛び込んできた。玄関に一人の少女が立っていたのだ。

 

少女は突然現れたストレンジを見て、驚きのあまりぽかんと口を開けた。その表情には、恐怖よりも純粋な驚きが浮かんでいる。

 

「おじさん……誰……?」

 

少女の声に、ストレンジは一瞬言葉を失った。彼女の容姿は、カルデアにいるダ・ヴィンチと瓜二つだったからだ。しかし、その口調や雰囲気は全く異なり、純粋な少女そのものだった。

 

ストレンジは混乱を抑え、冷静さを取り戻そうと努めた。確かに、これは住居不法侵入に等しい行為だ。しかし、ここは現実世界ではない。藤丸の精神世界なのだ。

 

「すまない。失礼だが、この家に藤丸立香はいるだろうか?」

 

ストレンジの質問に、少女は首を傾げた。彼女の表情には、困惑と好奇心が入り混じっている。

 

「わたし、お母さんを呼んでくるね」

 

そう言って、少女は居間へと向かっていった。その後ろ姿を見送りながら、ストレンジは状況を整理しようとしていた。なぜダ・ヴィンチに似た少女がここにいるのか。そして、彼女の「お母さん」とは一体誰なのか。

 

数分後、奥から現れたのは、ストレンジの予想を遥かに超える存在だった。そこに立っていたのは、南極にいたとされる大人のダ・ヴィンチそのものだった。彼女の姿を見た瞬間、ストレンジの頭の中で様々な情報が交錯する。

 

異星の使徒ラスプーチンによって心臓を貫かれたはずのダ・ヴィンチ。藤丸やマシュの言葉でしか知らなかった、かつてのカルデアを支えた天才。その姿が、今、目の前に立っている。

 

「いらっしゃい。どういったご用件でしょうか?」

 

大人のダ・ヴィンチは、優雅な微笑みを浮かべながらストレンジに語りかけた。その姿は、まさに芸術作品のように美しく、同時に知性の輝きに満ちていた。ストレンジは、彼女の存在感に圧倒されながらも、冷静さを保とうと努めた。

 

「申し訳ありません。突然の訪問で」

 

ストレンジの言葉に、大人のダ・ヴィンチは軽く頭を下げた。その仕草には、深い教養と優雅さが滲み出ている。

 

「どうぞお入りください。ゆっくりとお話を伺いましょう」

 

彼女の招きに応じ、ストレンジは家の中へと足を踏み入れた。頭の中では、依然として疑問が渦巻いている。なぜ藤丸の精神世界に、大人のダ・ヴィンチと、彼女に似た少女がいるのか。そして、彼らは一体何者なのか。

 

居間に案内されながら、ストレンジは周囲を細かく観察した。家の内装は、極めて普通の日本の家庭そのものだった。しかし、その「普通さ」の中に、何か重要な鍵が隠されているような気がしてならない。

 

ソファに腰を下ろしながら、ストレンジは改めて大人のダ・ヴィンチを見つめた。彼女の存在そのものが、藤丸の精神世界の謎を解く重要な手がかりになるかもしれない。しかし同時に、新たな疑問も生まれていた。

 

この状況が、藤丸の歪みとどのように関係しているのか。そして、この完璧すぎる世界の真実は何なのか。ストレンジは、これから始まる会話が、全ての謎を解く鍵になることを直感していた。

 

ストレンジが大人のダ・ヴィンチと向き合っていた時、階段から足音が聞こえてきた。振り返ると、先ほどの少女ダ・ヴィンチが誰かの手を引いて降りてくるのが見えた。その瞬間、ストレンジの目は驚きで見開かれた。

 

少女が連れてきたのは、5歳ほどの少年だった。しかし、その子供の姿を見た瞬間、ストレンジは息を呑んだ。間違いなく、それは藤丸立香だった。幼い姿ではあるが、その特徴的な顔立ちと雰囲気は、紛れもなく彼のものだった。

 

「これは...」

 

ストレンジの言葉が途切れる。彼の頭の中で、様々な思考が激しくぶつかり合っていた。なぜ藤丸がここにいるのか。そして、なぜこんなにも幼い姿なのか。

藤丸立香。人類最後のマスターとして、数々の特異点を修復し、人理焼却を阻止した少年。ストレンジが知る彼は、17歳の高校生だった。しかし、目の前にいるのは、その面影すら見えない幼子だ。

 

幼い藤丸は、無言でストレンジを見つめていた。その瞳には、子供特有の無邪気さと同時に、どこか深い何かが宿っているように見えた。ストレンジは、その視線に言いようのない違和感を覚えた。

 

「立香、こちらのお客様にご挨拶しなさい」

 

大人のダ・ヴィンチが優しく声をかけるが、幼い藤丸は依然として無言だった。ただ、その目はストレンジから離れることはない。

 

ストレンジの頭の中で、疑問が次々と湧き上がる。なぜ藤丸の精神世界に、彼の幼少期の姿があるのか。そして、なぜそれがダ・ヴィンチたちと共にいるのか。これは単なる記憶の再現なのか、それとも何か別の意味があるのか。

 

「失礼ですが...この子は...」

 

ストレンジの言葉に、大人のダ・ヴィンチは穏やかな笑みを浮かべた。

 

「ええ、私たちの大切な息子です」

 

その答えは、ストレンジの混乱をさらに深めるものだった。藤丸立香が、ダ・ヴィンチの息子?その不自然さは、もはや無視できないレベルだった。

しかし、幼い藤丸の存在そのものが、この精神世界の異常さを物語っているようだった。ストレンジは、自分がまだ真実の表面すら捉えていないことを痛感した。目の前に広がる光景は、藤丸の精神の深層に潜む何かを示唆しているのかもしれない。静寂が部屋を支配する中、ストレンジは次にどう動くべきか、慎重に考えを巡らせた。この不可解な状況の真相に迫るには、さらなる探索が必要だろう。しかし、それは同時に、藤丸の精神に深く踏み込むことを意味する。その覚悟を決めながら、ストレンジは再び口を開いた。

 

ストレンジが思考を巡らせている間、静寂を破る小さな声が響いた。幼い藤丸が、おずおずとストレンジに向かって口を開いたのだ。

 

「……おじさんはフランクおじさんのお友達?」

 

その言葉に、ストレンジは一瞬戸惑いを覚えた。フランク……。それはパニッシャー、フランク・キャッスルのことを指しているのだろう。カルデアや妖精國で彼と行動を共にしていた藤丸の記憶が、この幼い姿にも引き継がれているのかもしれない。しかし、次に続いた藤丸の言葉は、ストレンジの思考を凍りつかせるものだった。

 

「僕の家族をころした紅い槍の男はどうなったか知ってる?」

 

ストレンジの瞳が驚愕で見開かれる。その一言が、彼の中に眠っていた記憶を呼び覚ました。パニッシャーが以前、キャプテン・アメリカ、ホークアイ、ブラック・ウィドウ、ウルヴァリンと共に、別世界の冬木で行われた第五次聖杯戦争に介入した際の出来事だ。その時、幼い藤丸は聖杯戦争で召喚されたランサーのサーヴァント、クーフーリンによって家族を皆殺しにされた。その惨劇の現場に居合わせたパニッシャーが、藤丸を救出したのだ。

 

ストレンジ自身は、アベンジャーズを別世界の冬木へ送り届ける役割を果たしただけだった。彼らの世界に突如として湧き上がった泥の原因を突き止めることが、彼の主な任務だった。しかし、目の前にいる幼い藤丸は、明らかにその時の記憶を持っている。

 

この事実は、ストレンジの頭の中で新たな疑問の渦を巻き起こした。藤丸の故郷は東京だと聞いていた。ならば、なぜ冬木に家があった幼い藤丸が、この精神世界の東京にいるのか。さらに言えば、カルデアにいる藤丸は、第五次聖杯戦争に巻き込まれた経験など一言も語っていなかった。

 

ストレンジの思考は、さらに混迷を深めていく。確かに、南極のカルデアに来た当初、藤丸は最初の戦いとして「特異点F」と呼ばれる冬木市へレイシフトしている。しかし、その特異点Fの冬木市は、パニッシャーたちが介入した冬木市とは明らかに別の世界線のはずだ。

 

「これは一体...」

 

ストレンジの呟きが、静かな部屋に吸い込まれていく。彼の頭の中では、複数の世界線や時間軸が交錯し、混沌としたイメージを形成していた。藤丸の精神世界に存在するこの「東京」。そこに、冬木の記憶を持つ幼い藤丸がいる。この矛盾した状況は、一体何を意味しているのか。




ストレンジなら自力でレイシフトできますよねぇ
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