パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです 作:ドレッジキング
というより今回登場したヘリオンを知ってる人っているのかな…?(;^_^A
「我が夫よ、食べられる動物であればこれだけ揃えましたが、どうでしょう?」
「うん、これなら大丈夫だよ。ありがとう、モルガン」
森の中で狩りをしていた立香達は、モルガンが魔術で捕らえた鹿、猪、熊、兎、野鳥などの動物の肉を袋に詰め込む。妖精國を治めていた女王にして、魔術において神域の天才と言われたモルガンが何故微小特異点で食料の調達をしているのかと言うと、先日ハルクが食堂でバカ食いしたせいでノウム・カルデアの食糧庫に備蓄してあった食材が全部無くなってしまったせいである。
単なる食糧調達にモルガンを同行させたのは、彼女が強力な魔術で動物を捕らえる事ができるからである。とはいえ女王と言われたモルガンがサーヴァントとして召喚され、こうして一緒に動物狩りをしているというのは、ブリテン異聞帯でモルガンと戦った立香達からすれば不思議な感覚である。最も、かつて戦った敵をカルデアに召喚し、サーヴァントとして使役するというのは最早伝統といっていい。
「モルガンは妖精國で俺やマシュ達と戦った時の事は覚えているの……?」
立香は恐る恐るモルガンに質問してみた。サーヴァントというのは生前の記憶を持っているとはいうが、だとすればモルガン自身もキャメロットで立香達カルデアと戦った時の事は覚えている筈である。
「えぇ、勿論。我が夫はあの時の戦いを覚えていますね?」
モルガンはそう言って微笑んだ。立香はモルガンに言われ、改めてモルガンとの戦いを思い出す。妖精國で立香とマシュを始めとしたカルデア勢はノクナレアと連合を組みパーシヴァル、千子村正、グリムといった心強い味方と共にモルガンと激闘を繰り広げた。モルガンを倒したと思っていた矢先、それが実はモルガンの分身であり、彼女は自分と同等の力を持つ分身を幾つも作り出せるという絶望的な能力を持っていた。複数のモルガンの分身の攻撃により、立香達は敗北したと思っていた。だが……。
「……私は自分が死んだ時の事は覚えています。自分の上半身と下半身があの男によって分断され、あの奈落の穴に落ちていく感覚までハッキリと」
モルガンは■■■■■によって自分の分身を皆殺しにされ、魔術で応戦するも力及ばず敗北した事まで覚えていた。確かにモルガンとは妖精國で敵対はしたが、今はこうして立香のサーヴァントとして共に行動している。かつて敵対した時の禍根や怨恨に囚われず、こうしてマスターとサーヴァントとしての関係を構築できるのは立香が持つ強みだと言っていい。
「モルガンさんがこうして私たちの味方でいるのは心強いです。敵対していた時は恐ろしい存在でしたが、味方となった今ではこんなにも頼もしく感じます」
モルガンには自分がトネリコとして活動していた際、マシュと半年も旅を共にした時の記憶はあるのかは分からなかった。だがあえてマシュはその事については尋ねない。モルガンは今こうして自分のサーヴァントとしてカルデアにいるのだから。
「マシュ、貴女は私に何か聞きたい事があるのではないですか?」
モルガンはマシュにそう尋ねる。マシュの言いたい事を何となく察したのであろうか?モルガンからそう聞かれるとマシュは一瞬躊躇うも、答えようとする。が、森の中から現れた存在がマシュの言葉を遮る。
「やれやれ……。ようやく捕まえてきたぜ。どうだ?こんだけありゃ十分だろ?」
そう言ってヘリオンは自分のミュータントパワーである念動力で浮遊させている野生動物を地面に降ろす。ヘリキャリアの中で待機していたヘリオンであるが、ノウム・カルデアに入る事を許され、こうして立香達カルデアが行う微小特異点の修復を手伝っているのだ。
「ヘリオンさん、こんなに捕まえてきてくれたんですね!ありがとうございます!」
マシュはヘリオンが捕らえてきた大量の動物の肉を見て、目を輝かせる。ひょっとしたらモルガンが捕まえてきた動物よりも多いかもしれない。
「ま、俺のミュータントパワーはそこにいる妖精の女王サマの百人分の働きにはなるぜ?」
ヘリオンは立香の隣に立つモルガンを挑発するような言動をする。だがモルガンはそんなヘリオンを鼻で笑った。
「妙な力を使う程度の人間では我が魔術には遠く及びません。あなた程度の力では、我が夫の助けにはなり得ないでしょう」
曲りなりにもモルガンは妖精國を2000年以上も統治し続けてきたカリスマ性と、桁外れとも呼べる魔術の使い手である。サーヴァントとなった今では流石に生前ほどの力は発揮できないにしても、並みのサーヴァントでは相手にならないだろう。
「おい、ちょっと待てよ。俺はあんたの旦那である立香を手助けするためにここに来たんだ。別にあんたに気に入られようとは思っちゃいねえ。だが立香やマシュと敵対したあんたがこうして召喚されて立香に仕えているっていうのは納得できねぇな。いや、納得できないっつーよりは信用ならないって感じか」
モルガンはそんなヘリオンの物言いに、口元に微笑を浮かべる。
「それはつまり、私が我が夫の敵になる可能性があるとでも言いたげですね」
「当たり前だろ、そうでなくても妖精國を支配してた暴君のアンタが素直に心を入れ替えてカルデアに味方するとは思えねぇしな」
だがモルガンはそんなヘリオンの物言いに不愉快そうな表情を見せる。
「知らないのであれば伝えておきますが、サーヴァントとして召喚された今の私は生前の私とは言うなれば別人です。今更我が夫と敵対する意味はありません」
モルガンの言葉にヘリオンは沈黙する。確かに英霊の座に登録され、召喚に応じたサーヴァントは生前の本人とは別人である。しかしそれでも生前の記憶を有しているのであれば、それはもう本人と変わらないのではないか?というのがヘリオンの考えだ。
「ヘリオンさん、モルガンさんは先輩の召喚に応じてノウム・カルデアのサーヴァントになってくれたんです。確かに信用できないかもしれませんけど、モルガンさんのマスターである先輩はモルガンさんを信じています」
マシュはサーヴァントとして召喚された今のモルガンを擁護しようとする。
「……」
そしてマシュの言葉を聞いたモルガンは黙り込む。
「マシュの言う通りだよ。それに、モルガンはもう悪い事なんてしない。それは俺が一番よく知ってる」
そう言うと立香はモルガンの顔を見た。モルガンは自分を信じてくれている立香の目を見ると、少し頬を赤らめながら視線を外す。
「我が夫……」
モルガンは立香とマシュに聞こえない声でそう呟いた。
「……まぁ、そういう事ならいいぜ。ったく、お人良しもここまでくりゃ大したモンだ」
ヘリオンはつまらなさそうに言うと、狩った動物の肉をケースに詰め始める。立香もマシュと共にモルガンが捕らえた動物の肉をまとめ始めた。
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ノウム・カルデアにあるミーティングルームで、キャップ、トニー、ソー、ピーターの4人は立香の事について話し合っていた。
「トニー、ソー、ピーター、君達は立香の事についてどう思う?」
キャップはトニー達に藤丸立香という人類最後のマスターである少年について思う所があるのかどうかを尋ねた。
「僕みたいなパワーを持っていない、平凡な暮らしをしていたのにある日突然人類最後のマスターになって焼却された世界を救う為に七つの特異点を旅し、元凶である魔神王を倒して焼却された世界を救ったんだから凄い偉業を成し遂げた子だと思う。それに……彼はとても優しい子だ。他人の為に自分の身を犠牲にする事ができる、そんな子だ」
ピーターは立香の経歴を見て、直接会った際の感想をキャップ達に告げた。
「けど……彼は本当に色々な物を背負いすぎていると思う。平穏な暮らしから切り離され、世界を救う為の戦いに身を投じなければいけなくなった。そして……彼が背負う事になった運命はあまりにも過酷すぎる。僕は直接立香に会って話したんだけど……彼の笑顔を見ると何故か胸が締め付けられる程に痛くなるんだ。まるで……何か大きな悲しみを我慢しているみたいに。他人には決して見せない、心の奥底に秘めた苦しみと悲しみを必死に押し殺して生きているように思える。そして思ったんだ。"どこにでもいそうな、それでいてこんなに良い子が何で人理という物を背負って戦わなければいけないんだろう?"って……」
ピーターは俯きながら立香の事を語った。
「我は北欧にてあの少年と共に戦った。藤丸立香は自分に課せられた過酷極まる運命を受け入れ、自分の世界を取り戻す為に戦いを続けているのだ。人の身では……到底耐えられぬであろう苦難を乗り越えてな。子供の身で世界の命運を背負いながらも戦うのは余りにも酷な事。それでもあの少年は逃げようとはしなかった。それどころか、その使命を全うするべく、自ら進んで過酷な道に進もうとしている。あれ程の強い意志と覚悟を持った人間はそうはおらぬ。戦いに生きる戦士として生まれたわけでもない、今まで平穏な日常を生きてきた少年がだ」
神であるソーから見ても、漂白化した地球を戻すべく七つの異聞帯にある空想樹を切除する戦いに身を投じる立香の姿は心打たれるものがあった。空想樹を切除するという事は即ち、その空想樹がある世界を滅ぼすという事……。平穏な暮らしをしていた少年は"世界の破壊者"としての業まで背負う事になる。そんな現実を見た立香は迷いを振り切り、空想樹を切除し続けている。全ては自分の世界を元に戻す為に……。
「このノウム・カルデアに召喚されたサーヴァント達は立香のそういった姿を見て彼をマスターとして人理を取り戻す為の戦いに参加しているのだろう。普通の人間の身で世界の命運を背負い、必死に戦うその姿に感銘を受けた英霊は多い筈だ。ごく普通に生きていた少年が世界の為、人類の為に戦うのは確かに称えられるべきだ。だが……」
キャップは一般人に過ぎなかった立香が数多くのサーヴァント達を従えて、漂白化された地球を元通りにする為に戦っている姿を見て確かに胸を打たれた。
「だが……何の力にも目覚めていない、ごく普通の平穏な生活をしていた少年が人理焼却という非常事態に戦場に放り込まれ、命がいくつあっても足りないであろう戦いの日々を送るのは絶対に間違ってる。あの子はまだ子供だ。親に甘えたい年頃なのに、大人でも耐えられない戦場に駆り出されている。いや……"戦場"などいう生易しいものではない」
人の身で戦う立香に感銘を受ける英霊達に対し、キャップはそれに断固として異を唱える。普通に生きていた少年を戦場に駆り出し、戦い続ける事が本当に正しいのだろうか?世界の命運を一人の少年に背負わせ、普通の生活も平穏な暮らしも何もかも彼から奪い去った上で戦う事が果たして許されるのだろうか?
「空想樹を切除する事で、立香は"世界の破壊者"としての業まで背負う事になる。一人の少年には……耐えられない程の重い責務だ」
キャップはノウム・カルデアのドッグで立香と会ったが、彼の悲しみに彩られた瞳が頭から離れなかった。当の立香はキャップの前では自分の本心は隠していたが、キャップは立香の抱えている悲しみと苦しみを見抜いている。
「ソー、君が彼に渡した無線機によるSOSでこちら側の世界に来る事ができた。そして立香は我々アベンジャーズに助けを求めた。……トニー、ピーター、ソー、私達アベンジャーズは立香を助けるべきか?」
キャップの問いかけに、トニー、ソー、ピーターは笑顔で肯定する。
「キャップ、僕達は"ヒーロー"でしょ?だったら困っている人を見捨てちゃいけないと思うんだよね。だからあの子を……立香を何としても助けないと」
「我も賛同する。我は助けを求める者を決して見捨てぬ。過酷な運命を背負わされた少年に救いの手を差し伸べてこその神だ」
「私も賛成だ。立香少年のような子供は、学業に専念すべきだからな。世界の命運やら人理やらというのは我々大人が背負うものだよ」
3人はキャップの言葉に同意する。確かに平穏な暮らしをしていた少年が世界の命運を掛けた戦いに巻き込まれ、人類最後のマスターとして人理を救ったという功績は称えられるべきだ。だがキャップはそれに断固として反対する。あんなに人を思いやれる優しい子を戦場に立たせ、人理を取り戻す為の闘争に駆り出し、世界の運命を背負わせるのは絶対に間違ってる。
立香は自分の平穏な生活を捨て、特異点を修復し、魔神王の野望を打ち砕き、空想樹を切除して異聞帯を滅ぼし、神を殺して今に至っている。彼の肉体と心に刻まれたであろう傷はこれまでの壮絶な体験を考えれば当たり前であり、それを考慮せずして彼を人理を取り戻すの為の人身御供にせんばかりの現状に憤りを覚えた。人類最後のマスター?違う、藤丸立香という子はどこにでもいるごく普通の少年だ。
どのような英霊であろうと心を開き仲良くできる優しい心を持った子だ。過去に生きた
「彼らサーヴァントに我々の考えが通じるとは思えないが、やはり私はあの子が置かれている現状を見過ごせない。彼はまだ年端もいかない高校生なんだ。何も知らない子供を人理を取り戻す戦いに巻き込むのは、あってはならない事だ」
あくまでもキャップは立香を人類最後のマスターとしてではなく、ごく普通の優しい一人の少年として救おうとする。それこそがキャップのヒーローとしての信念だ。そしてトニーが待ってましたとばかりに口を開いた。
「それでキャップ、立香少年をノウム・カルデアから引き離して我々で保護するというプランについてだが……」
キャップ、ソー、ピーターもトニーの言葉を待っていたとばかりに、彼の言葉に耳を傾けた。
アベンジャーズって藤丸君の事を徹頭徹尾「人類最後のマスター」じゃなくて「一人の少年」として見てるんですよねぇ。
海外では子供を戦場に立たせる事に対して忌避感があるっぽいです。
アベンジャーズはヒーローとして藤丸君という一人の優しい少年に業を背負わせるのに断固としてNOと言うんですけど、アベンジャーズの考えに賛同するサーヴァントっているようないないような……?(一ちゃんやニキチッチはどうだろう?)