パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

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今回はマーベルキャラの若手キャラと古参キャラが登場。時系列としては少し前辺りになります。


第46話 外なる神と繋がりし少女

カマラ・カーンは重苦しい足取りでノウム・カルデアの廊下を歩いていた。窓のない無機質な通路は、彼女の心の中の靄を反映するかのように灰色に沈んでいた。アベンジャーズの一員として、そしてヒーローとしての使命感と、カルデアのサーヴァントたちとの間に生まれつつある溝。その狭間で揺れる彼女の心は、行き場を失った鳥のようにもがいていた。

 

廊下の照明が放つ冷たい光が、カマラの影を床に長く伸ばしていく。その影は彼女の心の中の闇を象徴しているかのようだった。アベンジャーズとカルデアのサーヴァントたち。本来なら同じ目的のために戦う仲間同士のはずが、その関係は決して良好とは言えなかった。カマラはその現状を何とかしたいと思いながらも、具体的な解決策を見出せずにいた。

 

「どうすれば、みんな仲良くなれるのかな......」

 

カマラは小さく呟いた。その声は虚しく廊下に響き、すぐに消えていった。アベンジャーズの主張にも一理あると彼女は感じていた。一般人である藤丸立香少年を、このような危険な戦いに巻き込み続けることへの疑問。それは正義のヒーローとして当然の懸念だった。

 

しかし同時に、カルデアのサーヴァントたちが藤丸少年に寄せる信頼と愛情も、カマラには痛いほど伝わってきた。彼らにとって藤丸は単なるマスターではなく、共に戦い、苦楽を共にしてきた大切な仲間だった。その絆を簡単に切り離すことなど、できるはずもない。

 

カマラは立ち止まり、深いため息をついた。彼女の胸の内には、相反する感情が渦巻いていた。ヒーローとしての正義感と、人としての感情。その二つの間で揺れる彼女の心は、まるで嵐の中の小舟のようだった。

 

「わたしにできることって、何かあるのかな......」

 

再び歩き出しながら、カマラは自問自答を繰り返した。アベンジャーズの一員でありながら、カルデアのサーヴァントたちとも良好な関係を築きたい。その思いは強くあるものの、具体的な行動に移せずにいた。両者の溝を埋めるには、何か決定的な契機が必要だと感じていた。

 

廊下の曲がり角に差し掛かったとき、カマラは不意に立ち止まった。頭の中でアイデアの火花が散った瞬間だった。両者の溝を埋めるには、まず互いを知ることから始めなければならない。そう、交流の機会を設けるのだ。アベンジャーズとカルデアのサーヴァントたちが、戦闘以外の場面で触れ合える機会を作る。それが、今の彼女にできる最善の策だと思えた。

 

「そうだ、パーティーを開くのはどうだろ?」

 

カマラの目が輝きを取り戻した。パーティーという非日常的な空間で、互いの理解を深める。それは単純だが、効果的な方法かもしれない。彼女の心に、小さな希望の灯がともった。

 

 

カマラが廊下を歩いていると、前方からルーラーのジャンヌ・ダルクが歩いてくるのが見えた。窓のない無機質な通路に、ジャンヌの金髪が一際目立つ。カマラは少し緊張しながらも、勇気を出して声をかけることにした。

 

「えっと……こんにちはジャンヌ」

 

カマラの呼びかけに、ジャンヌは立ち止まり、優しい笑顔を向けた。

 

「まあ、カマラさん。こんにちは。ノウム・カルデアの中をお散歩ですか?」

 

ジャンヌの温かな声色に、カマラは少し緊張が解けるのを感じた。他のアベンジャーズメンバーとは違い、カマラはサーヴァントたちともっと交流を持ちたいと思っていた。彼女の若さゆえの柔軟さが、この異世界の存在たちへの好奇心を掻き立てていたのだ。

 

「うん、他のアベンジャーズのメンバーはヘリキャリアにいるんだけどね」

 

カマラの言葉に、ジャンヌは理解を示すように頷いた。彼女の瞳には、若き英雄の純粋な探究心を見出す喜びが宿っているようだった。

 

「それはとても素晴らしい心がけですね。カマラさんのような方がいらっしゃると、私たちも心強く感じます」

 

ジャンヌの言葉に、カマラは少し照れくさそうに頬を赤らめた。彼女の素直な反応に、ジャンヌは微笑みを深めた。

 

「ねぇジャンヌ。もしよければ、ノウム・カルデアのことについて教えてくれない?」

 

カマラの質問に、ジャンヌは嬉しそうに頷いた。彼女の表情からは、若き英雄の好奇心に応えたいという気持ちが溢れ出ていた。

 

「もちろんです。喜んでお話しさせていただきますよ。どんなことが知りたいですか?」

 

カマラは深呼吸をして、勇気を振り絞った。ジャンヌの優しい眼差しに励まされるように、彼女は慎重に言葉を選びながら口を開いた。

 

「あの、ジャンヌ。少し難しい質問かもしれないんだけど...」

 

カマラの声には僅かな震えが混じっていた。彼女の心臓は早鐘を打ち、手のひらには汗が滲んでいる。しかし、この問いを避けて通るわけにはいかない。アベンジャーズとカルデアの間に横たわる溝を埋めるためには、まず互いの本音を知る必要があるのだ。

 

ジャンヌは穏やかな笑みを浮かべ、カマラの言葉の続きを待った。その表情には一片の焦りも見られない。まるで、どんな質問が来ても受け止める覚悟ができているかのようだった。

 

「藤丸の...解放について、ジャンヌはどう思うの?」

 

カマラの問いかけは、廊下に重く沈んだ。一瞬の静寂が流れ、その間にジャンヌの表情が僅かに曇ったように見えた。しかし、すぐに彼女は平静を取り戻し、真摯な眼差しでカマラを見つめ返した。

 

「カマラさん、その質問の意図はよく分かります」

 

ジャンヌの声は静かだが、芯の通ったものだった。彼女は言葉を選びながら、慎重に答えを紡いでいく。

 

「確かに、マスターである藤丸さんは一般の方です。そして、彼がこれほどの危険と隣り合わせで生きることに、疑問を感じる方がいらっしゃるのも理解できます」

 

ジャンヌは一旦言葉を切り、廊下の窓から差し込む光を見つめた。その瞳には、複雑な感情が交錯しているように見える。

 

「しかし、私たちサーヴァントにとって、マスターとの絆は何物にも代えがたいものなのです。藤丸さんは単なる指揮官ではありません。私たちと共に戦い、苦楽を共にしてきた大切な仲間なのです」

 

ジャンヌの言葉には、揺るぎない信念が込められていた。カマラは息を呑み、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「藤丸さんを解放するということは、私たちにとっては大切な仲間を失うことと同じなのです。それに...」

 

ジャンヌは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに続けた。

 

「藤丸さん自身の意思も尊重すべきだと思います。彼が自ら選んだ道を、私たちが勝手に変えてしまうのは正しくないのではないでしょうか」

 

カマラは黙ってジャンヌの言葉を聞いていた。彼女の言葉には重みがあり、単純に否定することはできない。しかし同時に、アベンジャーズの主張にも一理あることも分かっている。この難しい状況にカマラは眉間にしわを寄せる。ジャンヌは言葉を続けた。その声には、迷いと心配が滲んでいた。

 

「ですが......」

 

彼女は一瞬言葉を切り、目を伏せた。その表情には、複雑な感情が交錯しているのが見て取れた。

 

「ここ最近の藤丸さんを見ていると、本当にこのまま戦いを続けさせるのが正しいのかと思ってしまうのです」

 

ジャンヌの言葉は、重く廊下に響く。彼女の声には、マスターを思う深い愛情と、同時に彼の身を案じる切実な心配が込められていた。カマラはその言葉を聞いて、胸が締め付けられるような思いがした。

 

「ジャンヌ......」

 

カマラは小さく呟いた。彼女の声には、ジャンヌの気持ちを理解しようとする温かさが滲んでいた。廊下の冷たい照明が、二人の影を長く伸ばしている。その影は、まるで彼らの心の中の迷いを映し出しているかのようだった。

 

「わたしにも、その気持ち、分かる気がします」

 

カマラは慎重に言葉を選びながら話し始めた。彼女の目には、同じように藤丸を心配する気持ちが浮かんでいた。

 

「でも、藤丸さんには藤丸さんの決意があるんじゃないでしょうか。わたしたちにはそれを尊重する義務があるのかもしれません」

 

カマラの言葉は、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。彼女もまた、この状況の難しさに直面していたのだ。

 

ジャンヌはカマラの言葉を受け止め、しばし沈黙した。その表情には、複雑な思いが交錯しているのが見て取れた。やがて、彼女は静かに口を開いた。

 

「カマラさん、少し気になることがあるのですが...」

 

ジャンヌの声には、慎重さと好奇心が混ざっていた。カマラは首を傾げ、ジャンヌの言葉の続きを待った。

 

「パニッシャー...フランク・キャッスルさんのことですが、あなたの世界ではどのような評判なのでしょうか?」

 

この質問に、カマラは一瞬たじろいだ。パニッシャーの名前を聞いた途端、彼女の表情が曇ったのは明らかだった。カマラは言葉を選びながら、慎重に答え始めた。

 

「ジャンヌ、正直に言うと...パニッシャーの評判はあまり良くないんだ。彼は...」

 

カマラは一度言葉を切り、深呼吸をした。その仕草には、この話題の重さが表れていた。

 

「彼は正義のために戦っているつもりかもしれないけど、その方法があまりにも過激なんだ。殺人を厭わないし、時には罪のない人まで巻き込んじゃう。ヒーローというより、ある意味ではヴィランに近いかも...」

 

カマラの言葉は、廊下に重く沈んだ。ジャンヌは予想していたかのように、苦笑いを浮かべた。その表情には、理解と同時に悲しみが滲んでいた。

 

「やはりそうでしたか...」

 

ジャンヌの声には、諦めにも似た響きがあった。彼女は窓のない廊下の壁を見つめながら、静かに続けた。

 

「私たちの世界でも、パニッシャーさんの...過激な手段には疑問を持つ者が多いのです。マスターの代わりになれるかもしれないという案もありましたが...」

 

ジャンヌの言葉に、カマラは驚きの表情を浮かべた。彼女の目は大きく見開かれ、声には動揺が混じっていた。

 

「え?マジで?パニッシャーをマスターにするなんて案があったの?それって...」

 

カマラは言葉を詰まらせた。彼女の頭の中では、パニッシャーがマスターとなった場合のシナリオが次々と浮かんでは消えていった。それらのどれもが、決して明るいものではなかった。

 

「うん、それはちょっと...いや、かなりヤバイと思う。パニッシャーは確かに強いけど、彼のやり方は...」

 

カマラは言葉を選びながら、慎重に続けた。

 

「彼のやり方は時として残酷すぎるんだ。それに、彼には協調性がない。チームで動くのが苦手というか...」

 

ジャンヌはカマラの言葉に頷きながら、深い溜息をついた。彼女の表情には、この状況の難しさを理解している様子が見て取れた。

 

「おっしゃる通りです。私たちの中にも、パニッシャーさんを快く思わない者がいます。彼の方法論が...あまりにも極端すぎるのです」

 

二人の会話は、重い空気に包まれていた。カルデアの未来、そしてマスターの問題。それらは簡単に解決できるものではないことを、二人とも痛感していた。

 

 

カマラは一瞬躊躇したが、思い切って話題を変えることにした。彼女の表情には、懸念と不安が入り混じっていた。

 

「ねえ、ジャンヌ。クリントのことなんだけど...」

 

カマラの声には、わずかな震えが混じっていた。ジャンヌは眉をひそめ、カマラの言葉に注意深く耳を傾けた。

 

「彼の行方が分からなくなってるんだ。アベンジャーズのみんなも探してるんだけど...」

 

カマラの言葉に、ジャンヌの表情が一瞬凍りついた。彼女の瞳には、驚きと心配の色が浮かんでいた。ノウム・カルデアの無機質な廊下は、二人の間に流れる緊張感をさらに際立たせているようだった。

 

「それは...大変深刻な事態ですね」

 

ジャンヌの声は静かだったが、その中に潜む懸念は明らかだった。彼女は一瞬言葉を切り、何か適切な返答を探しているようだった。カマラは続けた。彼女の声には、友人を心配する気持ちと、状況の深刻さを理解している冷静さが混ざっていた。

 

「クリントって、カルデアのサーヴァントたちのことをあまり快く思ってなかったんだ。ヒーローの中でも特にね」

 

彼女の言葉に、ジャンヌは小さく頷いた。その表情には、状況の複雑さを理解している様子が見て取れた。

 

「わたし、何かトラブルに巻き込まれちゃったんじゃないかって...」

 

カマラの声は途切れがちだった。彼女の目には、友人を失う恐れと、未知の危険に対する警戒心が浮かんでいた。ジャンヌは深く息を吐き、慎重に言葉を選びながら答えた。

 

「確かに、その可能性は否定できませんね。この彷徨海は危険がいっぱいです。でも、クリントさんは経験豊富な戦士です。きっと無事でいらっしゃると信じましょう」

 

ジャンヌの言葉には、励ましと同時に現実を直視する冷静さが込められていた。カマラはその言葉に少し勇気づけられたようだったが、それでも彼女の表情には不安の影が残っていた。

 

 

 

 

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ノウム・カルデアの別の一角、金属の壁に囲まれた広い通路で、奇妙な光景が繰り広げられていた。オレンジ色の岩のような肌を持つ巨大な人型生物、ザ・シングが、長い三つ編みのピンク髪を揺らす少年のような姿のサーヴァント、アストルフォと向き合っていた。シングの岩のような表情には困惑の色が浮かんでいた。一方、アストルフォは好奇心に満ちた眼差しで、まるで珍しい展示物でも見るかのようにシングを観察していた。その視線の先には、シングの岩のような肌や、人間離れした体格が映っている。アストルフォは、その特徴的な声で冗談めかして言った。

 

「わぁ!キミ、シミュレータールームか特異点で出現するエネミーさん?それとも新しいサーヴァント?」

 

その言葉に、シングは眉をひそめた。彼の表情は、岩の表面に刻まれた彫刻のように硬く、複雑な感情を表していた。

 

「俺がエネミー?冗談じゃねえぜ、小僧。俺はファンタスティック・フォーの一員、ザ・シングだ。クリントを探してるんだが、見なかったか?」

 

シングの低く轟くような声が廊下に響き渡る。その声音には、いらだちと焦りが混ざっていた。クリントの失踪は、アベンジャーズのメンバーたちに大きな不安を与えていたのだ。アストルフォは、シングの言葉にも動じることなく、むしろ興味深そうに首を傾げた。彼の目には好奇心の光が宿っている。

 

「へぇ〜、ファンタスティック・フォーって何?新しいアイドルグループ?それにしても、キミの肌、触ってみていい?」

 

シングは、アストルフォの無邪気とも取れる発言に、一瞬言葉を失った。彼の岩のような顔に、困惑と呆れが入り混じった表情が浮かぶ。

 

「いや、触るのはやめてくれ。それより、クリントのことだ。本当に見てないのか?」

 

シングの声には、わずかながら焦りが混じっていた。クリントの安否を気遣う気持ちが、その言葉の端々に表れている。アストルフォは、シングの焦りには気づかないようで、依然として好奇心旺盛な様子だった。

 

「クリントさん?ああ、弓を使う人でしょ?ごめんね、見てないよ。でも、キミのその体、本当にすごいね!岩みたいだけど、動くんだ!」

 

 

ザ・シング、ベン・グリムは、その岩のような体躯を廊下に佇ませながら、深い思考に沈んでいた。彼の青い目は、遠くを見つめるように虚空を凝視している。キャップたちから聞いた藤丸立香の事情が、彼の頭の中で複雑に絡み合っていた。人類の存亡を賭けた戦いに、一般人の少年を巻き込むこと。それは英雄としての彼の信念に反する行為だった。しかし同時に、彼は藤丸とサーヴァントたちの間に築かれた絆の深さも感じ取っていた。その矛盾した状況に、ベンは眉をひそめる。

 

「おい、小僧」

 

ベンの低く轟くような声が、廊下に響き渡った。アストルフォは、その呼びかけに驚いたように振り返る。その表情には、いつもの明るさが薄れていた。

 

「なんだい、岩おじさん?」

 

アストルフォの返事は軽やかだったが、その目には僅かな警戒心が宿っていた。ベンは、その反応を見逃さなかった。

 

「藤丸のことだが...」

 

ベンは言葉を選びながら、慎重に話を進める。その大きな体躯とは対照的に、彼の声音は柔らかかった。

 

「あの子を戦わせることについて、お前はどう思ってる?」

 

アストルフォの表情が、一瞬にして曇った。その変化は、ベンの鋭い目に明確に映った。アストルフォは、しばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。

 

「マスターは...強いよ。ボクたちよりずっと強いんだ」

 

アストルフォの声には、普段の明るさが欠けていた。彼は続けて言った。

 

「でも最近は...少し様子が違うんだ」

 

ベンは黙ってアストルフォの言葉に耳を傾けた。彼の岩のような表情からは、何を考えているのか読み取ることはできない。

 

「マスターは笑顔を見せてくれるけど、その目が...疲れているんだ。ボクにはわかるんだ」

 

アストルフォの言葉には、深い悲しみが滲んでいた。ベンは、その言葉の重みを感じ取った。

 

「そうか...」

 

ベンは深くため息をついた。その音は、まるで山が揺れるかのように重々しかった。

 

「俺たちが来たことで、あの子の負担が増えちまったのかもしれねえな」

 

ベンの言葉に、アストルフォは首を横に振った。

 

「違うよ。マスターは、キミたちが来てくれて嬉しいって言ってた。でも...」

 

アストルフォは言葉を詰まらせた。その瞳には、複雑な感情が交錯している。

 

「でも、マスターは自分の弱さを見せたくないんだ。ボクたちに心配をかけたくないって...」

 

ベンは黙ってアストルフォの言葉を聞いていた。彼の岩のような表情に、僅かな変化が現れる。それは、理解と同情が混ざり合ったような表情だった。

 

「そうか...あの子は、強がってるってわけか」

 

ベンの言葉に、アストルフォは小さく頷いた。二人の間に、重い沈黙が落ちる。その沈黙は、藤丸立香という一人の少年が背負う重圧の大きさを物語っているかのようだった。

 

 

 

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ノウム・カルデアの監視室は、緊張感に満ちた空気に包まれていた。マシュ・キリエライトとレオナルド・ダ・ヴィンチは、大型モニターの前に立ち、息を呑んで映像を見つめていた。その画面には、彼らの想像を遥かに超える衝撃的な光景が映し出されていた。フォーリナーのサーヴァント、アビゲイル・ウィリアムズが、その異形の触手を用いてクリント・バートンを捕らえ、どこかへ連れ去っていく様子が克明に記録されていたのだ。

 

「これは...」

 

マシュの声が震える。彼女の青い瞳には、驚愕と恐怖が混ざり合っていた。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、これをアベンジャーズの方々に見せるべきでしょうか?」

 

ダ・ヴィンチは腕を組み、眉をひそめた。その表情からは、通常の余裕が消え失せていた。

 

「難しい判断だね。カルデアのサーヴァントがアベンジャーズのメンバーに手を出したとなれば、事態が一気に悪化する可能性が高い」

 

ダ・ヴィンチの言葉に、マシュは深くため息をついた。確かに、この映像を見せれば、アベンジャーズとカルデアの関係は取り返しのつかないものになるかもしれない。しかし、隠し立てをすれば、それはそれで大きな問題を引き起こすことは明らかだった。

 

「でも、隠していても...」

 

マシュの言葉を遮るように、ダ・ヴィンチが頷いた。

 

「ああ、その通りだ。隠蔽工作は更なる不信感を生むだけだろう」

 

二人の視線が再びモニターに向けられる。そこには、アビゲイルの触手に絡め取られ、抵抗むなしく連れ去られていくクリントの姿が映し出されていた。その光景は、まるで悪夢のようだった。

 

「アビーさんが、なぜこんなことを...」

 

マシュの声には、困惑と悲しみが滲んでいた。アビゲイルとの交流を思い返せば、こんな行動を取るとは到底信じられなかった。

 

「何か理由があるはずだ。アビーがただの悪意でこんなことをするとは思えない」

 

ダ・ヴィンチの言葉には、冷静さを取り戻そうとする意志が感じられた。しかし、その声には僅かな動揺が混じっていた。

 

「マスターが...」

 

マシュの言葉が途切れる。藤丸立香が昏睡状態にあることを思い出し、彼女の表情が一層暗くなった。

 

「ああ、藤丸君の意識が戻れば、何か手がかりが得られるかもしれない。だが、今はドクター・ストレンジの治療に期待するしかない」

 

ダ・ヴィンチの言葉に、マシュは小さく頷いた。しかし、その瞳には不安の色が濃く滲んでいた。

 

「では、この映像をどうすべきか...」

 

マシュの問いかけに、ダ・ヴィンチは深く考え込んだ。その表情からは、決断の重さが伺えた。キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソーの3名がマシュとダ・ヴィンチに世呼び出され監視室へと来たのはそれから10分後の事であった。大型モニターには衝撃的な映像が映し出され、その前に立つキャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソー、そしてマシュとダ・ヴィンチの表情は、驚愕と困惑に彩られていた。キャップは眉間にしわを寄せ、厳しい表情でマシュとダ・ヴィンチを見つめた。彼の青い瞳には、怒りと失望が混ざり合っていた。

 

「説明してくれ。クリントが君たちのサーヴァントたちと折り合いが悪かったのは知っていたが、まさかこんなことになるとは...」

 

キャップの声は低く、抑えられた怒りを感じさせるものだった。マシュは一瞬たじろいだが、すぐに気を取り直して答えた。

 

「いいえ、違います!アビーさんは決してこのような行為に走る子ではありません。きっと何か理由が...」

 

マシュの言葉は、必死の思いが込められていた。彼女の紫色の瞳には、アビゲイルへの信頼と、この状況を何とか打開したいという強い意志が宿っていた。

 

ダ・ヴィンチも同意するように頷き、冷静な口調で付け加えた。

 

「その通りだ。アビーには確かに強大な力があるが、彼女はそれを悪用するような子じゃない。何か別の要因があるはずだ」

 

トニーは、アーマーのフェイスプレートを開け、動揺した表情を隠せずにいた。彼の目は映像と仲間たちの間を行ったり来たりしていた。

 

「これは...予想外だ。クリントが消えた理由が、こんなところにあったとは」

 

トニーの声には、困惑と懸念が混ざっていた。彼は頭を抱え、この状況をどう打開すべきか考えあぐねているようだった。

 

一方、ソーは腕を組み、思慮深げな表情でマシュとダ・ヴィンチを見つめていた。彼の青い瞳には、信頼の色が宿っていた。

 

「我はマシュとダ・ヴィンチを信じる。北欧異聞帯での戦いを共にした仲間だ。彼女たちの言葉には嘘偽りはないはずだ」

 

ソーの言葉は力強く、室内に響き渡った。しかし、キャップの表情は依然として厳しいままだった。

 

「信頼は大切だ、ソー。だが、目の前の事実も無視できない」

 

キャップは再びマシュとダ・ヴィンチに向き直り、鋭い眼差しを向けた。

 

「君たちの言葉を信じたい。だが、この映像は明らかにクリントが危険な目に遭っていることを示している。これ以上の説明が必要だ」

 

キャップの言葉は、厳しさの中にも僅かな期待が込められていた。マシュとダ・ヴィンチは互いに顔を見合わせ、どう対応すべきか考えを巡らせた。

 

この緊張した空気の中、トニーが口を開いた。

 

「待ってくれ、キャップ。確かに状況は深刻だが、彼女たちの言い分にも一理あるかもしれない。我々も全てを把握しているわけじゃない」

 

トニーの言葉に、キャップは一瞬目を閉じ、深く息を吐いた。彼の表情には、なお疑念が残っていたが、わずかに和らいだようにも見えた。

 

「分かった。だが、これ以上の隠し事は許さない。クリントの安全が最優先だ。彼の居場所を突き止め、救出する必要がある」

 

キャップの言葉に、全員が頷いた。この瞬間、彼らは共通の目的を見出したようだった。しかし、アビゲイルの行動の真相と、クリントの運命については、まだ多くの謎が残されていた。

 

キャプテン・アメリカは、厳しい表情で通信機を手に取った。その青い瞳には、決意と緊張が混ざり合っていた。彼の声は、冷静さを保ちつつも、緊迫感に満ちていた。

 

「全員に告ぐ。アビゲイル・ウィリアムズの保護を最優先事項とする。彼女は危険かもしれないが、まずは安全に確保することが重要だ」

 

キャップの言葉が響き渡る中、マシュは一歩前に踏み出した。彼女の紫色の瞳には、懸命な思いが宿っていた。

 

「キャプテン、お待ちください。アビーさんを、カルデアのサーヴァントたちに保護させてはいただけないでしょうか」

 

マシュの提案に、キャップは眉をひそめた。彼の表情には、疑念と警戒心が浮かんでいた。

 

「それは認められない。君たちのサーヴァントの一人が、我々の仲間を攫ったのだ。信頼関係が揺らいでいる今、そのリスクは取れない」

 

キャップの言葉は冷たく、断固としていた。マシュは一瞬たじろいだが、すぐに気を取り直して再び話し始めた。

 

「でも、アビーさんのことを一番よく知っているのは、私たちです。彼女がなぜそのような行動を取ったのか、理解できるかもしれません」

 

マシュの懸命な訴えに、ソーが同意するように頷いた。彼の青い瞳には、理解と共感の色が宿っていた。

 

「我もマシュの意見に賛成だ。彼女たちを信じてみるのも一案ではないか」

 

ソーの言葉に、トニーも少し考え込むような表情を見せた。彼は手を chin に当て、思案するように言った。

 

「確かに、彼女たちの言い分にも一理あるかもしれない。アビゲイルの能力についても、彼女たちの方が詳しいだろう」

 

しかし、キャップの表情は依然として厳しいままだった。彼は首を横に振り、断固とした口調で言った。

 

「いいや、リスクが大きすぎる。我々の仲間の安全が第一だ。アビゲイルは我々が保護する」

 

キャップの決定に、マシュとダ・ヴィンチは落胆の表情を浮かべた。ダ・ヴィンチは、最後の説得を試みるように口を開いた。

 

「キャップ、アビーは単なる危険な存在ではないんだ。彼女には理由があるはずだ。我々に任せてくれれば、きっと平和的に解決できる」

 

しかし、キャップの決意は揺るがなかった。彼は通信機を握りしめ、再び全員に向けて指示を出した。

 

「決定事項だ。アビゲイル・ウィリアムズの保護は我々が行う。彼女を見つけ次第、直ちに報告せよ」

 

キャップの言葉が響き渡る中、マシュとダ・ヴィンチは無力感に襲われた。彼らの表情には、深い懸念と悲しみが浮かんでいた。アビーの運命と、カルデアとアベンジャーズの関係が、今後どのように展開していくのか、誰にも予測できない状況に陥っていた。

 

 

ノウム・カルデアの薄暗い廊下を、アビゲイル・ウィリアムズはゆっくりと歩いていた。金髪の少女の足音が、静寂を破る唯一の音となっていた。彼女の碧眼は、何か遠くを見つめているかのように焦点が合っていない。

 

 

 

 

 

 

 

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最近、アビーは夢遊病にも似た奇妙な感覚に悩まされていた。しかし、日常生活には特に支障がないため、彼女はそれほど気にしていなかった。ただ、時折訪れる現実感の欠如は、彼女の心に微かな不安の種を植え付けていた。廊下の曲がり角を曲がると、突如として巨大な人影が現れた。アビーは驚いて足を止め、目の前に立ちはだかる大男を見上げた。

 

「おい、お嬢ちゃん。お前がアビゲイル・ウィリアムズか?」

 

低く轟くような声で男が尋ねる。その声音には、どこか粗野な響きがあった。

 

アビーは一瞬躊躇したが、やがて小さく頷いた。

 

「は、はい...私がアビゲイルです。あなたは...?」

 

男は腕を組み、威圧的な態度でアビーを見下ろした。

 

「俺はルーク・ケイジだ。アベンジャーズの一員でな、キャップからお前の保護を命じられてる」

 

ルークの言葉に、アビーの表情が曇った。彼女の心の中で、不安と困惑が渦巻いていた。

 

「保護...ですか?でも、私は別に危険な目に遭っているわけではありません」

 

アビーの声は震えていた。ルークの大きな体格と乱暴な物言いに、彼女は本能的な恐怖を感じていた。

 

ルークは苛立たしげに舌打ちをした。

 

「いいから、さっさと来いよ。説明なんざ後でいくらでもしてやる」

 

彼の言葉は命令口調で、それはアビーの不安をさらに掻き立てた。少女は一歩後ずさりし、両手を胸の前で組んだ。

 

「す、すみません...でも、私はまだ...」

 

アビーの躊躇いを見て、ルークの表情が険しくなった。

 

「おい、いいか?俺は優しくしようとしてるんだぞ。でも、お前が素直に従わないなら...」

 

ルークの言葉は脅迫めいていた。アビーは震える声で答えた。

 

「お願いです...私を放っておいてください。私は何も悪いことはしていません」

 

アビーの言葉に、ルークは眉をひそめた。彼の忍耐は明らかに限界に近づいていた。

 

「悪いことをしてるかどうかなんて関係ねえんだよ。命令は命令だ。さあ、来い」

 

ノウム・カルデアの薄暗い廊下で、アビゲイル・ウィリアムズは突如として現れた巨漢の男、ルーク・ケイジの威圧的な存在感に圧倒されていた。彼女の碧眼には恐怖の色が宿り、小さな体は震えていた。

 

「一緒に来てもらうぜ、お嬢ちゃん」

 

ルークの低く轟くような声が廊下に響き渡る。アビーは本能的に後ずさりし、いつもの戦闘時のように触手を呼び出そうとするが、なぜか力が湧いてこない。彼女の心臓は激しく鼓動し、パニックが全身を支配していく。

 

「い、いやです!離してください!」

 

アビーは悲鳴に近い声を上げ、ルークから逃げ出そうとする。しかし、彼女の細い腕はあっという間にルークの大きな手に掴まれてしまった。アビーは必死に手足をばたつかせ、抵抗を試みるが、ルークの力の前では無力だった。

 

「おい、おい、大人しくしろよ。俺だってこんなことしたくねえんだ」

 

ルークの言葉には苛立ちが混じっていた。彼もまた、この状況を快く思っていないことは明らかだった。その時、廊下の向こうから急ぐ足音が聞こえてきた。アビーの悲鳴を聞きつけたアストルフォが、息を切らせながら現場に駆けつけてきたのだ。

 

「アビー!どうしたの?」

 

アストルフォの声には驚きと混乱が入り混じっていた。彼の目の前には、ルークに腕を掴まれ、必死に抵抗するアビーの姿があった。その光景は、どう見ても正常とは言えなかった。

 

「おい、お前は誰だ?」

 

ルークはアストルフォを警戒するように見つめながら尋ねた。その眼差しには、わずかな緊張が宿っていた。

 

「ボクはアストルフォ。アビーの友達だよ。それで、キミは何をしているの?」

 

アストルフォの声には、普段の明るさは影を潜め、代わりに冷静さと緊張感が漂っていた。ルークは深いため息をつくと、状況を説明し始めた。

 

「俺はルーク・ケイジ。キャップから、このガキの保護を命じられたんだ。お前も知ってるだろ?この子が俺たちの仲間、クリントの失踪に関わってるかもしれねえってことを」

 

アストルフォの表情が一瞬曇る。彼もまた、この複雑な状況に巻き込まれていることを実感したのだ。

 

「でも、アビーはサーヴァントだよ。普通の子供じゃない。そんな乱暴なことしなくても...」

 

アストルフォの言葉に、ルークは眉をひそめた。

 

「わかってる。だが、状況が状況だ。多少の実力行使は仕方ねえだろ」

 

ルークの言葉には、わずかな後ろめたさが混じっていた。しかし、彼の手はまだアビーの腕を離していない。

 

「でも、ねえ。もう少し優しくできないの?アビーが怖がってるのが見えるでしょ?」

 

アストルフォの声には、懇願するような響きがあった。彼の目は、恐怖に震えるアビーと、困惑の色を隠せないルークの間を行ったり来たりしていた。

 

「わかった...できるだけ優しくする。だが、この子が協力的じゃねえのも事実だ」

 

ルークの言葉に、アビーは更に激しく抵抗し始めた。

 

「いや!いやです!私は何もしていません!どうして...どうして皆がこんな...」

 

アビーの声は震え、目には涙が光っていた。その姿は、どこから見ても「危険な存在」には見えず、ただ怯えた少女にしか見えなかった。アストルフォは、この状況をどうにかしなければと焦りを感じていた。彼は、アビーの無実を信じていたが、同時にルークたちの懸念も理解できた。この複雑な状況を、どう打開すればいいのか。

 

「ねえ、ルークさん。もう少し時間をくれない?ボクがアビーと話してみるから。きっと何か誤解があるはずだよ」

 

アストルフォの提案に、ルークは一瞬考え込んだ。しかし、彼の表情はすぐに硬くなった。

 

「悪いが、それは無理だ。俺にはキャップからの命令がある。この子を安全な場所に連れて行くんだ」

 

ルークの言葉に、アストルフォは歯噛みした。彼は、この状況を平和的に解決する方法を必死に探っていた。

 

ノウム・カルデアの廊下は、突如として異様な空気に包まれた。アビゲイル・ウィリアムズの小さな体が激しく震え、その瞬間、彼女の周囲の空間が歪んだ。

 

「やめて!」

 

アビーの悲鳴とともに、漆黒の触手が虚空から現れ、ルーク・ケイジを激しく打ち払った。巨漢の体が廊下の壁に叩きつけられ、衝撃で壁に亀裂が走る。

 

アビーは自分の行動に驚き、青い瞳を大きく見開いた。彼女の表情には恐怖と混乱が入り混じっていた。

 

「わ、私...こんなつもりじゃ...」

 

彼女の声は震え、小さな体は後ずさりしていた。アビーの周りには、まだ黒い霧のようなものが渦巻いている。

 

一方、ルークは壁から身を起こし、顔をしかめながら体の埃を払った。彼の表情には怒りと決意が混ざり合っていた。

 

「くそっ...やるじゃねえか、ガキ」

 

ルークは低い声で呟きながら、拳を鳴らし始めた。その音は廊下に不吉に響き渡る。

 

「多少乱暴になっても、仕方ねえよな...」

 

彼はゆっくりとアビーに近づき始めた。その姿は、まるで獲物を追い詰める捕食者のようだった。この緊迫した状況の中、アストルフォが突如として二人の間に割って入った。彼のピンクの髪が、廊下の冷たい照明の下で輝いている。

 

「ちょっと待って!」

 

アストルフォの声には、普段の明るさは影を潜め、代わりに真剣さが滲んでいた。彼はアビーを庇うように立ち、ルークと向き合う。

 

「ボクが知ってるアビーは、こんな事をする子じゃないよ。きっと何か理由があるはず」

 

アストルフォの言葉は、廊下に響き渡った。彼の青い瞳には、アビーへの信頼と、ルークへの警戒心が宿っている。ルークは足を止め、アストルフォを睨みつけた。その表情には、いらだちと困惑が混ざっていた。

 

「おい、どけよ。俺にはキャップからの命令がある。邪魔するなら、お前も一緒に連れてくぞ」

 

ルークの言葉に、アストルフォは一歩も引かなかった。むしろ、より強く立ちはだかる。

 

「ダメだよ。アビーを傷つけるのは許さない。ボクたちの仲間なんだから」

 

アストルフォの声には、揺るぎない決意が込められていた。彼の背後では、アビーが震える手で彼の服の裾を掴んでいる。この緊迫した空気の中、三者三様の思いが交錯する。ルークの使命感、アビーの恐怖と混乱、そしてアストルフォの仲間を守ろうとする決意。この状況が、どのような結末を迎えるのか、誰にも予測できなかった。

 

アストルフォは、その細い体で巨漢のルークと対峙した。ピンク色の長い三つ編みが、緊張感漂う空気の中でわずかに揺れる。彼の青い瞳には、普段の明るさは影を潜め、代わりに強い決意の色が宿っていた。

 

「ルーク、乱暴はやめてよ。アビーはボクたちの大切な仲間なんだ」

 

アストルフォの声には、普段の軽やかさは消え、代わりに真剣さが滲んでいた。彼は後ろにいるアビーに向かって、優しく声をかける。

 

「大丈夫だよ、アビー。怖がらなくていいんだ。ボクが守るから」

 

アビーは小さく頷いたが、その青い瞳には依然として不安の色が残っていた。アストルフォは再びルークに向き直り、毅然とした態度で立ちはだかる。

 

ルークは、アストルフォの決意に満ちた眼差しを見て、一瞬たじろいだ。彼の表情に、わずかな迷いが浮かぶ。拳を握りしめていた手の力が、少しずつ抜けていく。

 

「くそっ...」

 

ルークは低い声で呟いた。彼の目には、怒りと困惑が混ざり合っていた。しかし、アストルフォの毅然とした態度に、彼も冷静さを取り戻しつつあるようだった。

 

「わかったよ。乱暴はしない」

 

ルークはゆっくりと拳を下ろした。その動作には、まだ若干の躊躇いが見られたが、明らかに態度が軟化していた。

 

「だが、このまま帰すわけにもいかねぇ。任意同行という形なら、構わないか?」

 

ルークの提案に、アストルフォは一瞬考え込んだ。彼の表情には、まだ警戒心が残っていたが、同時に妥協点を探ろうとする様子も見られた。

 

「アビー、どう思う?」

 

アストルフォは後ろのアビーに尋ねた。アビーは小さく震えながらも、ゆっくりと頷いた。

 

「わ、わかりました...行きます」

 

アビーの声は小さかったが、決意が感じられた。アストルフォは安堵の表情を浮かべつつ、ルークに向き直った。

 

「わかったよ、ルーク。でも、アビーを脅かすようなことは絶対にしないでね」

 

アストルフォの言葉に、ルークは無言で頷いた。三人は緊張感の残る空気の中、ゆっくりと歩き出した。アビーはルークの後ろに付き、アストルフォはその横を歩いた。彼らの足音が、静かな廊下に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

********************************************************************

 

 

 

 

 

ノウム・カルデアの一室は、緊張感に満ちた空気に包まれていた。アビゲイル・ウィリアムズは、ルーク・ケイジに連れられてその部屋に入ると、そこにいる多くの人々の視線に圧倒され、小さく身を縮めた。部屋の中央には大きな楕円形のテーブルがあり、その周りにキャプテン・アメリカ、トニー・スターク、ソー、チャールズ・エグゼビア、マシュ・キリエライト、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴルドルフ・ムジーク、シャーロック・ホームズ、シオン・エルトナムが座っていた。彼らの表情は様々で、キャップの厳しい眼差しからソーの同情的な目線まで、アビーに向けられる視線は千差万別だった。

 

アビーは不安げに部屋を見回し、その青い瞳には戸惑いと恐れが宿っていた。彼女の小さな体は微かに震え、金髪が揺れるのが見て取れた。マシュとダ・ヴィンチは、アビーの不安を察したように立ち上がり、彼女に近づいた。マシュは優しく微笑みかけ、ダ・ヴィンチは軽く手を差し伸べた。

 

「アビーさん、こちらに座ってください」マシュは柔らかな声で言った。

 

ダ・ヴィンチも頷きながら、「そうだね、アビー。リラックスして」と付け加えた。

 

二人に導かれ、アビーはゆっくりと席に着いた。彼女の表情には依然として不安が残っており、小さな手で椅子の端をぎゅっと掴んでいた。

 

部屋の空気が一瞬凍りついたかのように感じられた後、マシュが静かに口を開いた。

 

「アビーさん、クリントさんを襲った時のことを、話してくれませんか?」

 

マシュの声は優しかったが、その言葉にアビーの体が一瞬強張るのが見て取れた。アビーは目を大きく見開き、困惑した表情を浮かべた。

 

「え...クリントさんを...襲った?」

 

アビーの声は震えていた。

 

「わ、私は...」

 

彼女は言葉を詰まらせ、周りの人々の表情を不安げに窺った。キャップの厳しい眼差し、トニーの複雑な表情、ソーの同情的な目線。それぞれの反応に、アビーの不安は増していくようだった。

 

「私は...覚えていません」

 

アビーは小さな声で言った。

 

「そんなこと...したはずがありません」

 

彼女の言葉に、部屋の空気が一層重くなった。キャップは眉をひそめ、トニーは腕を組んで考え込むような仕草を見せた。

 

マシュとダ・ヴィンチは互いに顔を見合わせ、困惑の色を隠せなかった。

 

「アビー、本当に何も覚えていないのかい?」

 

ダ・ヴィンチが優しく尋ねた。

 

アビーは小さく頷き、目に涙を浮かべながら答えた。

 

「はい...本当に何も...」

 

その瞬間、ゴルドルフが咳払いをして口を開いた。

 

「これは困ったことだな。記憶喪失か、それとも...」

 

ホームズが静かに割り込んだ。

 

「または、何かが彼女の記憶を操作している可能性もある」

 

シオンは眉をひそめながら、「確かに、アビーさんの能力を考えると、外部からの影響も考えられますね」と付け加えた。

 

部屋の中で様々な推測が飛び交う中、アビーは混乱と恐怖に震えていた。彼女の青い瞳には大粒の涙が溜まり、小さな体は椅子の上で縮こまるようだった。

 

「私...本当に何もしていません」アビーは震える声で繰り返した。「どうか...信じてください」

 

その言葉に、部屋の空気が一瞬凍りついたかのように感じられた。全員の視線がアビーに集中し、彼女の真意を探ろうとしているかのようだった。

 

この緊張した状況の中、アビーの運命がどのように展開していくのか、誰にも予測できなかった。

 

ホームズは部屋の中央に立ち、鋭い眼差しで一同を見渡した。彼の表情には、いつもの冷静さと共に、わずかな懸念の色が浮かんでいた。

 

「諸君、アビゲイル嬢の状況について、私なりの見解を述べさせてもらおう」

 

ホームズの声は、静かでありながら部屋中に響き渡った。キャップやトニー、そしてカルデアのメンバーたちの視線が、一斉に彼に注がれる。

 

「フォーリナーというクラス、そしてアビゲイル嬢自身の特異な体質を考慮すれば、彼女が夢遊病のような状態に陥ったとしても、それほど不思議なことではない」

 

ホームズは言葉を区切り、アビーの方をちらりと見た。少女は依然として不安げな表情を浮かべ、小さく震えていた。

 

「外なる神との繋がりを持つアビゲイル嬢は、他のサーヴァントよりも不安定な状態になりやすい。それは彼女の本質に根ざしたものだ」

 

ダ・ヴィンチが眉をひそめ、腕を組んだ。

 

「つまり、アビーの意識が無いまま行動していた可能性があるということか」

 

ホームズは頷いた。

 

「その通りだ。彼女の意識下で何かが起こっていた可能性は十分に考えられる」

 

マシュは心配そうにアビーを見つめながら口を開いた。

 

「でも、アビーさんがそんな状態だったなら、私たちが気づかなかったのはおかしいです」

 

「必ずしもそうとは限らないよ、マシュ」ダ・ヴィンチが言った。「フォーリナーの能力は、我々の常識を超えているからね」

 

キャップは腕を組み、厳しい表情で言った。「しかし、それが事実だとしても、クリントを攫ったという事実は変わらない」

 

トニーは顎に手を当て、考え込むような仕草を見せた。「だが、意識がない状態での行動なら、アビゲイルに責任を問うのは難しいんじゃないか?」

 

ソーは同意するように頷いた。「我もそう思う。アビゲイルは善良な子だ。意図的にそのような行動を取るとは考えにくい」

 

部屋の空気が緊張に満ちる中、ゴルドルフが咳払いをした。

 

「しかし、このままでは事態の収拾がつかん。何か対策を講じねばならんぞ」

 

シオンが静かに口を開いた。

 

「アビーさんの状態を詳しく調べる必要がありますね。外なる神の影響を抑える方法を見つけられるかもしれません」

 

ホームズは再び一同を見渡し、ゆっくりと言葉を紡いだ。「確かに、アビゲイル嬢の状態を詳しく調査することが、この問題を解決する鍵となるだろう。しかし、それと同時にクリントの捜索も続けなければならない」

 

アビーは小さな声で言った。

 

「私...本当に何も覚えていないんです。でも、クリントさんを助けたい...」

 

彼女の言葉に、部屋の空気がわずかに和らいだ。しかし、依然として緊張感は残っていた。この複雑な状況をどう打開するか、全員が頭を悩ませていた。

 

 

緊張感に包まれた部屋の空気が、突如として変化した。車椅子に座っていたチャールズ・エグゼビアが、ゆっくりと立ち上がったのだ。その動作に、部屋にいた全員の視線が集中する。

 

「私に任せてもらえないだろうか」

 

チャールズの声は静かだが、確固たる自信に満ちていた。彼の青い瞳には、強い決意の色が宿っている。

 

キャップは眉をひそめ、チャールズを見つめた。「エグゼビア教授、君の力を使うつもりか?」

 

チャールズは頷いた。「ああ。地上最強のテレパスである私なら、アビゲイルの記憶を辿ってクリントの居場所を突き止められるかもしれない」

 

その言葉に、部屋の空気が一変した。マシュとダ・ヴィンチは互いに顔を見合わせ、驚きと期待が入り混じった表情を浮かべる。

 

「エグゼビア教授、それは...」マシュの声には、わずかな躊躇いが混じっていた。

 

ダ・ヴィンチが口を開いた。「チャールズ君、ミュータントのパワーをサーヴァントに使用するのは前例がないんだ。リスクは...」

 

チャールズは穏やかな笑みを浮かべた。「分かっている。だが、今はそのリスクを冒す価値がある」

 

シオンが一歩前に出て、説明を始めた。

 

「私たちは、エグゼビア教授を含むミュータントの方々の能力を解析させていただいています。その結果、興味深い発見がありました」

 

マシュとダ・ヴィンチは、真剣な表情でシオンの言葉に耳を傾けた。

 

「ミュータントの能力は、魔術回路に似た特殊な遺伝子によって発現します。これは、サーヴァントの霊基とある種の共通点を持っています。つまり、理論上はミュータントの能力がサーヴァントに作用する可能性があるのです」

 

ダ・ヴィンチは腕を組み、考え込むような表情を見せた。「なるほど。チャールズ君の能力なら、アビーの精神に干渉できる可能性があるというわけか」

 

チャールズは頷いた。「私の能力は、単なる思考の読み取りにとどまらない。記憶の探索、さらには精神世界への干渉も可能だ。アビゲイルの失われた記憶を呼び起こせるかもしれない」

 

キャップは真剣な表情で尋ねた。「リスクは?」

 

「ある」チャールズは率直に答えた。「サーヴァントの精神は人間とは異なる。予期せぬ反応が起こる可能性は否定できない」

 

部屋の中に重い沈黙が落ちた。全員がこの前例のない状況の重大さを感じ取っていた。

 

アビーは不安そうな表情で、チャールズを見つめていた。

 

「私...大丈夫なんでしょうか?」

 

チャールズは優しく微笑んだ。

 

「心配しなくていい。私が君を守る」

 

マシュが決意を込めて言った。

 

「エグゼビア教授、お願いします。アビーさんを...そしてクリントさんを助けてください」

 

チャールズは頷き、アビーに近づいた。彼の手が、ゆっくりとアビーの頭に伸びる。

 

「準備はいいかい、アビゲイル?」チャールズの声は、優しさに満ちていた。

 

アビーは小さく頷いた。

 

「はい...お願いします」

 

部屋の空気が、さらに緊張感を増す。チャールズ・エグゼビアとアビゲイル・ウィリアムズ。ミュータントとサーヴァント。二つの異なる世界の存在が、今まさに交わろうとしていた。

 

 




原作のシビル・ウォーを見るに、キャップも頑固者だからね……(;'∀')
キャップ当たり強いよー。トニーとソーの方が優しいじゃん


やっぱジャンヌやアストルフォみたいな善寄り鯖はヒーロー達と相性良い
それにしてもアストルフォきゅん可愛い(*´Д`)ハァハァ
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