パニッシャーが人類最後のマスターと共に戦うようです   作:ドレッジキング

7 / 60
ガレスちゃんは正しく理想の騎士だよ……(´・ω・`)
そういえば藤丸君とマシュは聖杯戦争で無関係の人達が死ぬのをどう思ってるんだろう…?


第7話 処刑人と少女騎士

立香が行動できなくなった時の予備員であるパニッシャーではあるが、出来る限り立香の負担を減らしたいとダ・ヴィンチやマシュに伝え、こうして微小特異点の修正の任務を行っていた。パニッシャーはノウム・カルデアのサーヴァント達からは良い目で見られているわけではないが、そんなパニッシャーに付いてきたのがガレスだ。

 

「マスター。お仕事、お疲れさまです。えへへ……」

 

「…………」

 

ガレスの言葉に無言で返すパニッシャー。形式的には立香がガレスのマスターであるのだが、彼女はパニッシャーに対してもマスターと呼んでくれている。人懐っこい性格をしているガレスであるが、やはりサーヴァントと人間では根本的な考え方が違う。パニッシャーの微小特異点の修正任務に同行するサーヴァントとして名乗りをあげたのがこのガレスであるが、サーヴァント達にちょくちょく喧嘩を吹っ掛けるパニッシャーに対しても、ガレスは笑顔で接してくれていた。

 

「マスターは、私達が嫌いですか?」

 

「……」

 

ガレスの質問に黙りこくるパニッシャー。その沈黙は肯定を意味している。しかしガレスはめげずにパニッシャーに話しかける。

 

「マスターの過去に何があったのかは知りません。ですがサーヴァント達は全員が悪い存在ではないんです。確かに中には悪いサーヴァントもいますけど、それでもカルデアにいるみんな良いサーヴァントです」

 

「……」

 

ガレスの言葉にまたもや無言を貫くパニッシャー。しかしガレスは構わずに続ける。

 

「私は、マスターがどうしてサーヴァントを嫌っているのかを知りたいのです。……マスターは、どうして私達の事が嫌いなのですか?」

 

ガレスは美しい瞳で長身のパニッシャーを見上げる。甲冑に身を纏った少女騎士である彼女は、生前アーサー王に仕えた円卓の騎士の一人である。清廉潔白で誠実な騎士である彼女は生前騎士王に忠誠を誓っており、そしてサーヴァントとなった今はマスターである立香にも仕えている。基本的にサーヴァントは聖杯戦争で呼ばれる存在であるのだが、人理漂白という未曽有の危機である今は英霊の座から現界し、こうしてノウム・カルデアに身を置いて人理を取り戻す為に戦っている。人理の為に戦うという事は即ち世界の為に戦う事を意味する。そういう意味ではアベンジャーズと似たような立場にある。

 

「……お前達サーヴァントは基本的に聖杯戦争で呼ばれるんだったな?」

 

「はい!私達サーヴァントは聖杯戦争のマスターの召喚に応じ、現世に顕現します。サーヴァントには七つのクラスがあり、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーとなっています。私はランサーです」

 

「そんな事を聞いているんじゃない。お前は……お前達サーヴァントはマスターの命令であれば文字通り"何でも"行うのか?」

 

「え…?は、はい。それはマスターの命令ですから。それがサーヴァントとしての使命です」

 

「……そうか」

 

ガレスは少し困惑しながら答える。パニッシャーはそんなガレスに背を向けると、そのまま何処かに歩いて行ってしまう。ガレスは慌ててその後を追う。「ま、待って下さいマスター!どこに行くんですか!?」

 

ガレスはパニッシャーの後を追いかける。するとパニッシャーは立ち止まり、背中を向けながら告げた。

 

「マスターの命令なら……お前は戦いを偶然に目撃してしまった人間を手に掛けたり、魂喰いの為に民間人を狙ったりするのか?」

 

「え……?」

 

パニッシャーの問いかけにガレスは立ち止まる。聖杯戦争というのは七組の魔術師とサーヴァントが聖杯を巡り、最後の一組になるまで殺し合う儀式であるが、魔術というのは一般の人間には知られてはならず、万が一見られてしまった場合、目撃した人間の記憶を消すか、或いは殺して口封じをするかの二択になる。そして聖杯戦争では魔力不足を補う為、マスターの命令でサーヴァントは無辜の民の精気や魂を吸い取り、自分の魔力の糧とする『魂喰い』をする場合もある。どちらにしても普通に暮らしている人々からすれば迷惑を通り越して害悪であり、更に威力の高い宝具を街中で放ち、それによって甚大な被害が出れば目も当てられない事になる。

 

「ええと……その……」

 

ガレスはパニッシャーの言葉に返答に困る。サーヴァントはマスターと契約している関係上、逆らう事は基本的にできない。そしてマスターにはサーヴァントに対する絶対命令権である『令呪』が存在する。令呪を用いてサーヴァントに対して命令を行使できる代物であるが、これがある故に嫌な命令でも従わなければならない。

 

「私は騎士です……!そのような非道を行うような真似は絶対にしません!」

 

パニッシャーの問いかけに対してガレスは首を強く横に振り否定する。ガレスにとって騎士とは正しき行いをする者であり、その騎士道に反する行為をする事など決してありえない。しかしガレスはそんな自分の考えに対して違和感を覚えていた。

 

(……本当に、そうなのでしょうか?)

 

ガレスは自分の言葉に疑問を抱く。サーヴァントとなった今の自分はマスターの為に戦う騎士だ。だが自分が使えるマスターが目撃者の口封じや、魂喰い、街中での宝具解放という命令を下してきたならば、果たして自分はそれを拒否できるのだろうか?ガレスはそんな疑問を抱きつつも首を横に振る。

 

(いえ……そんな事はありません。マスターが私にそんな命令を下すなど……)

 

ガレスは自分に言い聞かせるように呟く。だがガレスは心の中で自分が出した答えに納得できずにいた。マスターが非道な命令を要求してきた場合、自分がそれを拒める保証はない。

 

「いいかガレス?お前達サーヴァントはマスターと共に聖杯戦争に勝ち抜き、聖杯を手にすれば良いんだろうが、聖杯戦争が開かれる地には戦いとは無関係の人間達がいる事を忘れるな。彼等はお前達の事情など何も知らないんだ」

 

パニッシャーは思い悩むガレスの目を真っ直ぐに見つめながら語り掛ける。

 

「……はい」

 

ガレスは少しだけ悩んだ後に小さく返事をした。

 

「私は……できれば無辜の民を巻き込みたくはありません。それは私の願いと相反するものです」

 

ガレスはそう言って視線を落とす。

 

「ですが……私はサーヴァントです。マスターの命に従わなければなりません。私も本当はそんな事はしたくはないのですが……」

 

ガレスは消え入りそうな声で呟いた。自分はサーヴァントであり、マスターに仕える存在。一蓮托生の関係である以上、マスターの命令を断る権利はサーヴァントにはない。だがガレスはそれが自分の本音ではない事を自覚していた。

 

「マスターは……聖杯戦争で何を見たのでしょうか?」

 

「平然と市民を手に掛けようとするサーヴァントを見た。戦いを目撃したという理由で一家を惨殺したサーヴァントや、町中の人間の精気を吸い上げて魔力にしていたサーヴァント、学校に結界を展開し、中にいる生徒を全員殺そうとしたサーヴァントも知っている」

 

パニッシャーは睨むような視線でガレスを見据える。

 

「……そんな、酷い」

 

ガレスは目を見開いて絶句する。

 

「答えろ、お前も令呪とやらで命令されればこんな非道な行為をするのか?マスターの命令には従うのがサーヴァントだからな」

 

そんなパニッシャーのガレスは唇を噛み締める。

 

「そんな事はしません!!」

 

ガレスの叫びが平野に響き渡る。そして思わず兜を脱いでパニッシャーに詰め寄った。

 

「私がそんな事をするわけがないでしょう!?確かに私は騎士として、サーヴァントとしてマスターを裏切りたくないんです!!けど……けど……そんな残酷な事、とてもじゃないけど私にはできません。だって、そんなのってあんまりです。どうしてそんな事ができるのですか!?」

 

「お前達サーヴァントがマスターの命令に従うからだ!!」

 

パニッシャーの怒声に、ガレスは思わずビクリとする。

 

「そんな、そんなのはおかしいですよ。私は、そんな命令は聞き入れられません。そんな命令をするマスターなんて嫌です。そんなマスターに仕えなければいけないなら、いっそ死んでしまいたいくらいに……!」

 

ガレスは震える手で槍を握りしめ、今にも泣き出しそうになる。だが、そんなガレスの様子を見て、パニッシャーは小さく息を吐いてから口を開く。

 

「……お前は優しいんだな。少なくとも、俺の知る聖杯戦争に参加していたサーヴァントとは違う」

 

そう言ってパニッシャーは兜を脱いだガレスの頭を撫でる。

 

「俺は……あの戦いで多くの人間が死んだ事を決して忘れない……。そしてあの戦いに参加したサーヴァントも許さない……」

 

パニッシャーは自分が見た聖杯戦争に参加したサーヴァントに対する怒りを口にするが、ガレスの頭を撫でる手は優しかった。

 

「マスターが私達サーヴァントを嫌う理由が分かりました……。前からマスターの事は怖い人だと思っていましたが、聖杯戦争を知らない無辜の人々の為に怒ってくれる優しい人なのですね」

 

ガレスはそう言って自分の頭を撫でるパニッシャーに笑顔を向け、それから少し寂しそうな表情を浮かべる。

 

「ですが……私達サーヴァントは基本的に自分を召喚した魔術師に従わなければなりません、これは私達サーヴァントに共通する悲しい性のような物でして。……いえ、マスターを責めるつもりはないのです。ただ、私はマスターが優しい人だと分かって嬉しく思っているんですよ」

 

「…………お前は、本当にいい奴なんだな」

 

パニッシャーは優しく微笑み、ガレスは照れ臭そうに頬を赤らめる。

 

「……はい、ありがとうございます!」

 

そうこうしている内に、彷徨海にいるダ・ヴィンチから通信が入る

 

『話は聞かせてもらったよ~。パニッシャー君は顔に似合わず優しいねぇ』

 

通信機の映像のダ・ヴィンチがニヤニヤした顔でパニッシャーをからかう。

 

「うるさい」

 

「あはははははは!」

 

ダ・ヴィンチとパニッシャーのやり取りに、ガレスは楽しげに笑う。

 

「ガレス、お前が良いサーヴァン……良い奴でよかった。お前が味方で良かったと思う」

 

パニッシャーの言葉にガレスは顔を赤くする。

 

「マスター、その……えへへ。私もマスターと出会えて、とても嬉しいですよ!聖杯戦争で犠牲になる無辜の民の為に怒ってくださるマスターと巡り合えたのは、私にとって何よりの幸運ですから!」

 

ガレスは満面の笑みで答え、それを見たパニッシャーは思わず苦笑いしてしまう。

 

 

 

 

 

*******************************************************:

 

 

 

 

 

微小特異点の修正を終え、彷徨海に帰還したパニッシャーは廊下を歩いていた。サーヴァントの中にはガレスのような善良で優しいサーヴァントもいる事を知り、サーヴァントに対する見識を僅かに改めた。ガレスは無辜の民の殺害や魂喰いといった非道をハッキリと否定したのだ。例え聖杯戦争で召喚され、マスターの命令であろうと、彼女の持つ正義と矜持に反する行為には従わないだろう。それは彼女の…ガレスのサーヴァントとしての在り方だ。そんな事を考えていると、不意に後ろの方から誰かに声を掛けられた。振り向くとそこには酒呑童子が立っていた。

 

「あら、旦那はんやない?奇遇やなぁ、こんな所で会うなんて。何か考え事?」

 

酒呑童子はニヤついた顔でパニッシャーに近付いてくる。しかしパニッシャーは鬼である酒呑童子の身体から放たれる禍々しい殺気を感じ取り、距離を取る。

 

「そないに邪険にせんといてぇ。ウチはあんさんの事が"気に入っとる"さかい」

 

親しげに言う酒呑童子であるが、パニッシャーは警戒を解かない。

 

「まあまあ、そう構えへんでええんちゃうかしら。うちは別に悪ぅないし。ほら見ての通り、今は丸腰やろ?せやから何もできひんって事やけど」

 

まるでパニッシャーの反応を楽しむかのような素振りをしつつ、両手をひらりと振った。

 

「俺に何の用だ…?」

 

パニッシャーは酒呑童子を睨みながら言う。酒呑童子は鬼であり、人間とは根本的に価値観が異なる存在だ。こうして親し気に話しかけてきたとしても、次の瞬間には首が飛ばされているかもしれない。それだけ酒呑童子は気まぐれな鬼である。

 

「何やつっけんどんやなぁ。折角話し相手になってあげようと思ったんに」

 

酒呑童子は後ずさりするパニッシャーを見て、つまらなさそうな表情を浮かべものの、すぐにパニッシャーを揶揄する様な笑顔に戻った。

 

「あんさんは他のサーヴァント達に喧嘩をようけ売っとるみたいやねぇ。そんなんじゃいつか痛い目に遭うかもしれんで?」

 

酒呑童子の言葉は最もである、パニッシャーは自分が『悪』と判定したサーヴァントや、立香に悪い影響を与えそうなサーヴァントに対してしょっちゅう喧嘩を売っているからだ。

 

「そないに喧嘩を売り続けとったら、いつか本当に命を狙われるで。例えば、今この瞬間とか……」

 

そう言った直後、酒呑童子の小柄な身体からは猛烈な圧力が迸った。パニッシャーは瞬時にそれを察知して距離を取ろうとするが、酒呑童子の蹴りがパニッシャーの腹を捉えていた。咄嗟に後方に飛んだので、致命傷は免れたがそれでもダメージは大きく、パニッシャーは廊下の床を転がる。

 

「ぐッ……!」

 

「案外反応がええのね。普通の人間やったら今の蹴りで上半身と下半身がおさらばしとるはずなんやけど」

 

酒呑童子はパニッシャーを見下ろしつつ、ニヤリと笑いつつ、パニッシャーに使づいてくる。

 

「こんなにサーヴァントに喧嘩を売ってるあんさんは、自分の行動がどういう結果になるのか気付いてへんねん。日頃の行いは大事やさかい。こうしてウチがあんさんに攻撃しても、"あんさんから攻撃されたんで仕方なく反撃しただけやで"と言えば済む話や」

 

確かにサーヴァント達に喧嘩を売っているパニッシャーは反撃されて大怪我を負っても何ら不自然ではなく、そんなパニッシャーの日頃の行動を見逃す酒呑童子ではなかった。ノウム・カルデアに召喚されたサーヴァントとはいえ、根本の性格まで変わっているわけではないのだから。性根から邪悪である酒呑童子は、こうして人間を嬲り殺す事に対して聊かの躊躇も無い。虫を踏み潰す程度の感覚で人間を殺戮する正真正銘の鬼なのだから。

 

「あんさんはウチらサーヴァントを甘く見過ぎや。自分が毎日のように喧嘩を売り続けたサーヴァント達がどういう存在なのかまるで分ってへん。せやから、これから死ぬような目に遭おうとも、それは全部自業自得や」

 

所詮パニッシャー自身は立香の『予備員』であり、その予備員であるパニッシャーは毎日のようにサーヴァント達に対して因縁を付けて争っていた。そんな行動を続けていればサーヴァントからの怒りを買い、殺される事態になってもおかしくない。酒呑童子はそんな『問題児』であるパニッシャーに興味を持ち、自分なりに観察していた。その結果、パニッシャーを殺しても問題ないと思ったのだろう。

 

「ウチらのマスターは藤丸立香ただ一人。あんさんは所詮マスター適正があるだけの部外者に過ぎへん。せやから、うちらに危害を加える資格なんてあらへんで」

 

パニッシャーは懐からウージーサブマシンガンを取り出し、酒呑童子に銃口を向けて引き金を引いた。対サーヴァント用の特殊弾をが連続発射されるが、酒呑童子は受けたら危ないという事を分かっているらしく、身体を捻らせて銃弾を回避する。だが、パニッシャーは更に銃撃を続ける。だが酒呑童子とてサーヴァントである。弾丸程度は簡単に回避してしまう。

 

「ちょこまかと……!」

 

「あぁ、それと……さっきも言うたんやけど、自分の日頃の行動はきちんと考えなあかんで。考えとらんからこういう事態を招いてしまうんや」

 

パニッシャーは即座に後退して酒呑童子から距離を取る。すると、いつの間にか背後に回っていた茨木童子がパニッシャーの首を掴み、軽々と持ち上げた。

 

「ぐっ……!?」

 

「あんさんは所詮人間。ウチら鬼からすれば呆れる程に脆いわぁ。この世界にはな、あんさんが太刀打ちできへん存在が山ほどおる。神霊、冠位、空想樹、人類悪……。こんな連中が蔓延ってる世界であんさんは自分を"たふがい"だと思うとるだけや。ウチからすればあんさんは単なる肉の塊にしか見えへん」

 

パニッシャーは必死に振り解こうとするが、首を掴む手はビクともしなかった。

 

「そんなに死にたいんやったら、今ここで殺してもええんよ?どうする?」

 

パニッシャーは後ろから自分の首を掴んで持ち上げている酒呑童子の顔目掛けて裏拳を放つ。しかし、酒呑童子は余裕の表情を浮かべたままパニッシャーの裏拳を受け止めた。

 

「無駄や。いくら暴れても今のあんさんの力はたかが知れてる。それこそ、そこらをうろついてる野良犬にも劣るわ」

 

酒呑童子はパニッシャーを放り投げて、廊下の壁に叩きつける。パニッシャーは壁から離れて床に着地し、再びウージーを構えようとする。しかし、それよりも先に酒呑童子がパニッシャーに接近し、パニッシャーの顔面に蹴りを叩き込む。

 

「うおっ……!!」

 

「あんさんはただでさえ弱い。そのくせに、自分の力量も判らずにサーヴァントに喧嘩を売ってこのザマや。はっきり言って無様やで」

 

酒呑童子がその気になればパニッシャーなど一瞬で肉片にされてしまう。それをしないという事は酒呑童子はどれだけパニッシャーが足掻けるのかを試してるのだ。パニッシャーは酒呑童子に勢いよくタックルを仕掛けた。酒呑童子の小柄な身体であればすぐに倒せる筈である。が、鬼である酒呑童子はパニッシャーの渾身の体当たりを自分の人差し指だけでで受け止めた。

 

「なんや、それで終わりかいな。つまらん男やな」

 

パニッシャーは咄嵯にナイフを抜いて酒呑童子の心臓を突き刺そうとする。が、その前にパニッシャーの腕を掴まれてしまう。パニッシャーはもう片方の手で酒呑童子に殴り掛かる。だが、酒呑童子はパニッシャーの手を振り払い、パニッシャーのみぞおちに強烈な一撃を食らわせた。

 

「がは……!?」

 

パニッシャーは口から吐血する。防弾チョッキを着ていても酒呑童子の拳の威力は減らす事はできず、パニッシャーの肋骨の何本かは折れてしまった。

 

「そんなもんかいな。やっぱりあんたは雑魚どす」

 

「黙れ……」

 

パニッシャーはよろめきながらも立ち上がる。

 

「何度でも言うたる。あんさんは無様な負け犬や。この程度の攻撃でダメージを受けて息切れしとる時点であんたは弱者や。そもそも普通の人間がサーヴァントに勝とうなんて無理があるんやで?」

 

「減らず口を叩くな……!」

 

肋骨が折れた状態でパニッシャーは酒呑童子の顔面に前蹴りを叩き込んだ。体重100キロを超えるパニッシャーの蹴りをまともに受ければ常人なら致命傷を負うだろう。しかし、酒呑童子はパニッシャーの攻撃を片手で軽々と防いだ。

 

「ホンマ、滑稽なほどに道化やで。自分の実力と相手の強さも見極められへんとは……これじゃあ子分共の方がまだマシやなぁ?」

 

酒呑童子はパニッシャーの足を掴みながら振り回し、勢いよく壁に叩きつける。これには流石のパニッシャーでも堪えきれなかった。

 

「ぐ……!」

 

パニッシャーは全身の痛みに顔を歪める。そんなパニッシャーの胸倉を酒呑童子は掴んだ。

 

「えぇか? あんさんのやる事なす事全てが無駄や。無意味な正義感をふりかざして寿命を縮めるだけ。そんな事をしても誰も救われへんどすえ?」

 

酒呑童子の言葉を聞いたパニッシャーは酒呑童子を睨み付ける。

 

「殺気だけなら人間の中でも大したもんや。けどなぁ……殺気に見合うだけの強さがまるであらしまへん。今のあんさんはそこらの木っ端悪党と何も変わらへん」

 

酒呑童子はパニッシャーを嘲笑う。しかし危機的な状況にも関わらず、酒呑童子のような危険人物でさえ自分のサーヴァントとして従えていた立香の器の大きさにパニッシャーは感服するばかりだった。例えアベンジャーズのリーダーであるキャップでさえ酒呑童子の手綱を握る事など不可能だろう。いや、寧ろキャップのような高潔なヒーローだからこそ酒呑童子を従えられないのだ。普通の人間であり、中立的な立場に立てる藤丸立香だから酒呑童子は立香をマスターとして認めていたのだろう。だがそんな事を考えている暇などない、酒呑童子は床に倒れているパニッシャーに近付き、腹を軽く蹴る。

 

「自分の日頃の行いには気をつけなければあきまへんわぁ。けどあんさんの持つ"気迫"と"殺意"だけは褒めたるえ。圧倒的な力を目の前にしてもそんな眼ができて、尚且つ闘争心が少しも衰えないなんて中々できる芸当じゃありまへん」

 

そして酒呑童子は、パニッシャーを無理矢理立ち上がらせると、自分の手で防弾チョッキを貫通しつつパニッシャーの腹を突いた。パニッシャーの腹から鮮血が滴り落ち、彼は激痛に悶える。

 

「あんさんでもちゃんとした"魔術回路"はあるんやねぇ」

 

酒呑童子はパニッシャーが持つ魔術回路をクチュクチュと弄り回し始める。

 

「ぐ……!?」

 

「いっちょ前に魔術回路だけは立派なモン持ってるやん。一応サーヴァント達のマスターになっとるんねぇ」

 

そう言って酒呑童子はパニッシャーの腹に自分の手をグリグリと押し込み、パニッシャーは苦痛の声を上げた。

 

「ぐぅ……!?」

 

パニッシャーの腹からは大量の血が滲み出ており、彼の顔色も青ざめている。

 

「あははは! ほんまえらい目におうたなぁ。こんな風に無抵抗のまま甚振られる気分ってどんな感じなん?」

 

酒呑童子は楽しそうな笑みを浮かべながらパニッシャーの顔を覗き込むと、パニッシャーは酒呑童子の顔面に向けて口から血を吐きつける。

 

「……!」

 

「おぉ怖い。けどそんな態度とってもうちの堪忍袋の緒は切れへんよ?」

 

パニッシャーの拳が酒呑童子の頬に直撃する。だがパニッシャーの攻撃はそこまで効いておらず、酒呑童子はパニッシャーの腹に突き刺している自分の手を更に深い所まで差し込んだ。

 

「が……は……ッ!!」

 

パニッシャーは痛みに堪えながらも、今度は足を使って酒呑童子の頭を思い切り蹴り上げる。しかしパニッシャーの足を掴んでいる酒呑童子はニヤリと笑う。

 

「あんさんじゃ無理や。そないな蹴りじゃウチをこの場から動かす事さえできん。自分の力量も弁えんとサーヴァントに喧嘩を売り続けるからこういう目に遭うんどす 」

 

酒呑童子はもう片方の手でパニッシャーの首を絞めあげると、そのままパニッシャーの体を持ち上げ、壁に叩きつけた。

 

「ぐっ……う……う……」

 

パニッシャーは地面に倒れ込み、口から多量の血を吐き出す。パニッシャーの口から出た血がノウム・カルデアの廊下を赤く染める。

 

「普通の人間ならとっくに泣き叫んで命乞いをしとるのに、あんさんはまだ諦めるつもりはないみたいやねぇ。ホンマ根性だけは大したもんや。せやったらもっとえげつなく痛ぶったろか? このまま体を引き裂いて内臓を引きずり出してもええんよ?」

 

酒呑童子は笑顔で物騒極まりない事を呟くと、パニッシャーは酒呑童子に視線を向ける。

 

「……やれるもんなら……やってみやがれ……!」

 

酒呑童子によって痛めつけられたにも関わらず、闘争心は未だに折れていないパニッシャーは立ち上がると酒呑童子を睨みつける。

 

「驚いたわぁ、そんな傷でまだ立てるなんて。普通は骨が砕けてもおかしくないんやで。やっぱりあんさんは只者じゃないんやねぇ」

 

酒呑童子は感嘆しながらパニッシャーに近付く。

 

「……」

 

パニッシャーは酒呑童子に対して構えるが、体がふらついている。一瞬でも気を抜けば意識が飛びそうな状況の中で、パニッシャーは歯を食い縛って必死に耐えていた。

 

「そんなフラついた状態で戦えるんかいな。それともここで大人しく降参するんか?」

 

酒呑童子はパニッシャーに尋ねると、パニッシャーは鼻で笑って答えた。

 

「笑わせるな、お前に降参するように見えるか?」

 

「見えへんね。せやからうちもこっからは遠慮せんと本気でいくで」

 

酒呑童子はどうやら本気でパニッシャーを殺すつもりらしい。だがパニッシャーは諦める気は少しも無かった。どうやって目の前の酒呑童子を倒すのかについて思考を巡らせる。そして酒呑童子が動いた瞬間―――――

 

パニッシャーの首を狙った酒呑童子の手刀が当たる直前、酒呑童子の身体は横からの槍の一撃により吹き飛ばされた。吹き飛ばされた酒呑童子はすぐさま体勢を整え、パニッシャーのいる方向を見据える。

 

そこにはパニッシャーを庇うようにして自分を睨むガレスの姿があった。

 

「酒呑童子殿!マスターに…パニッシャー殿に手を出すのは私が許しません!」

 

ガレスの言葉を聞いた途端に酒を飲んで酔っぱらうように顔を赤くする酒呑童子。だがすぐに冷静さを取り戻す。

 

「ガレスはん、あんさんの後ろにいるマスターもどきの男はウチらサーヴァントに喧嘩を売りまくっている事は知っとるよね?そんな男をどうして助けるんかなぁ」

 

「確かに彼は私達に敵対心を剥き出しにしています。しかしそれには理由が……」

 

「理由なんて関係あらへん。そいつがウチらサーヴァントを嫌い、攻撃してくる以上ウチらもただ黙ってやられるわけにはいかん。そんな事も分からんの?」

 

「……分かりました。ではあなたと戦うしかありません。私はあなたと戦いたくはありませんでしたけど」

 

ガレスは槍を構えると、酒呑童子も戦闘態勢に入る。そしてガレスは後ろで倒れているパニッシャーに向けて言う。

 

「パニッシャー殿、ここはガレスめが引き受けます。貴方は安全な場所に避難して下さい」

 

ガレスの呼びかけにパニッシャーは反応しない。だがそれでもガレスはパニッシャーに向かって叫ぶ。

 

「パニッシャー殿!聞いていますか!?」

 

「……分かってる。分かってはいるんだが、こっちは意識が飛びそうなんだ……。あの女にこっぴどくやられたからな……」

 

「パニッシャー殿!血が!?」

 

ガレスはパニッシャーの腹から滴り落ちる血を見て驚く。

 

「ああ、大丈夫だ。こんな傷は慣れてるからな。それより早くここから逃げろ」

 

「そんな!見捨てる訳ないじゃないですか!」

 

「お前も見ただろう。あいつは強い。このままだとお前までやられるぞ……!」

 

パニッシャーは言うが、ガレスは首を横に振る。

 

「いえ、私は騎士として酒呑童子殿を止めなければなりません。パニッシャー殿、今暫く辛抱してくださいませ」

 

ガレスは自分の愛用の槍を構えると、酒呑童子に向かって突撃して行った。




そりゃあんだけサーヴァントに喧嘩売ってたら酒呑童子みたいなのに目を付けられるよね


マーベルだけでなくアメコミってヒーロー間の力の差というかスペック差が酷いイメージ。マーベルの公式データベースによるとパニッシャーの腕力は550ポンド(約250kg)のベンチプレスを持ち上げられるとあるけど、酒呑童子に比べたら……(;^_^A


今回はパニッシャーさんも下総のぐだと同じく酒呑童子に腹クチュクチュされちゃいました


パニッシャーさんの単純戦闘力って型月でいえば代行者レベル?ZERO時代の言峰には勝てるかなぁ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。