吹き荒ぶ風、奏でる音   作:M-SYA

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初見の方は初めまして。

既にご存知の方はありがとうございます。

M-SYAと申します。

この度、ラブライブ! スーパースター!!にて二次小説を書く事といたしました。

現在も進行している二次小説『虹の袂』と並行での更新となりますが、どうぞゆっくり読んで頂けると幸いです。

それでは本編へどうぞ。


序章『孤独な新月』
三人の出会い


 昔、とある二人の子供がいた。

 

 その二人は幼馴染であることから一緒に居る事が当たり前になっており、いつも二人だけの時間を楽しんでいた。

 

 何の変哲もない日常の中、一人の少女が少年の手を引いて住宅街を走り回っていた。

 

「はーくん! はやくはやく!」

 

「ま、まってよ、かのんちゃん!」

 

 はーくんと呼ばれたその少年は疲れのあまり足が動かない様子だったが、かのんという少女は一切気にする様子を見せず自分のペースで少年を連れまわしていた。

 

 いや、年端も行かない少女は今の自分の状況が楽しく仕方がないために少年の様子を気に掛けるまでに至らなかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 少年はやっとのことで少女から解放され、土の上に膝をつけ体全体で息を整えていた。

 

「もうはーくん、男の子なんだからもうすこし体力をつけようよ!」

 

「かのんちゃんが……つきすぎてるんだって……」

 

 少女はまだまだ走り足りないのか少年の様子を味気なさそうに見下ろしていた。全く息を切らしていない様子を見て少年は少女の底知れぬ体力に驚愕していた。

 

「はーくん、ほらっ、あそこの公園で遊ぼ!」

 

 少女は少し離れた先に見えた公園を指差して、少年へと提案する。そして、その返事を待たずにすぐさま駆け出してしまった。

 

「だ、だからかのんちゃん、早いってばー!」

 

 少女が走り出す音が聞こえ、少年は慌てて立ち上がり先に行った少女の元へと走る。

 

 

 

 

「はぁー……はぁー……どうしたの? かのんちゃん」

 

 少年が息を切らして到着した時、少女は公園内の光景を見て固まっていた。普段は見ない少女の真剣な表情を見てそれに倣い少年も公園内へと目を向ける。

 

 そこには複数人の少女達が集まっていた。だが、仲良く遊んでいる様子ではなくむしろ集団で一人に寄ってたかっているようだった。

 

「なんで、あんたがここで遊んでるのさ?」

 

「ここは私たちが遊んでるからあんたはどっかにいきなさいよ!」

 

 詰め寄られている白髪の少女は目に涙を浮かべ、何かを語りかけていた。

 

「あのっ……その……をかえして……」

 

「はぁ? これは没収。あんたがルールを守らないからそのバツね」

 

「そ、そんなぁ……!」

 

「何? 泣けばゆるしてもらえるとでも思うの?」

 

 理不尽極まりない言い分に少女は更に目を潤ませていた。

 

「ひ、ひどい……」

 

 少年はいじめの光景を目の当たりにして何とかしなくては、と考えていた。だが、相手のことを何も知らないので自分が出しゃばって良いものなのか分からず足が動かなかった。そこで自分が出ればこっちに火種が飛んでくるんじゃないかと怖くなり踏み出せずにいた。

 

 だが、弱気になる少年を他所にかのんは集団の中へ飛び込んでいった。

 

「うおぉぉーーーー!!」

 

「か、かのんちゃん!?」

 

 恐れずにただ突っ走る少女を見て、少年はその後を必死に追いかけていく。

 

 追いかけていく最中、既にかのんはいじめられていた少女の前に立ち、守るように両手を広げた。

 

「何やってるのさ! みんなで一人の子をいじめて……ずるいよ!」

 

「誰? あんた、何も知らないんだから突っかかってこなくていいじゃん!」

 

 いきなり現れたかのんに対していじめっ子達は困惑しながらも追い払おうと邪険にあしらう。だが、かのんは臆することなく少女達に立ち向かった。

 

「そんなの関係ないよ! 人の大切なものを取っておいて、自分は悪くないとでも言うつもりなの!?」

 

 かのんは集団の筆頭が持っていた一本の紐に目を向けて返すように訴える。

 

 確かに白髪の少女は髪を右側でお団子に結っていたが左側は何も付けていなかった。しかし、相手が持ってる紐はただの紐ではなく彼女の髪留めに使用しているリボンだった。

 

「はやく、それ返してあげてよ!」

 

「あぁもううるさいなぁ! 別にこんなの要らないからとっとと返すよ! ほらっ!」

 

「ちょっと! 人のものになんてことするのさ!」

 

 リーダー格はかのんの存在を煩わしく感じたのかすぐに話を終わらせようと手に持っていたリボンを返す。しかしただ手渡しで返すのではなく地面に投げ捨てるように返すというあまりにも粗雑な扱いだった。

 

 かのんがリボンを拾い、少女達に憤慨していた時には彼女らは逃げるように公園を去っていた。

 

 かのんは少女達が居なくなって方角を見て、睨みつけるとすぐさま先ほどまで泣きそうにしていた少女へと目を向ける。

 

「だいじょうぶ?」

 

「う、うん……」

 

「かのんちゃん、いきなり行くのは危ないよ!」

 

 少女に対して優しく問いかけるかのんだが、考えなしに行くなと少年に咎められる。しかし、かのんはそんなことはお構い無しのようだ。

 

「でも、この子がいじめられてるのをだまって見てられないよ! はーくんもそうでしょ?」

 

「た、確かにそうだけど……」

 

「あっ、あのっ……!!」

 

 少女を置いて口論していると、割って入るように少女が口を開いた。

 

「た、助けてくれて……ありがとう……」

 

「全然いいよ! それよりもこのリボン、汚れが激しいから近くの水道で洗ってくる!」

 

「あっ、かのんちゃん! ……もう、すぐいつも一人で行っちゃうんだから……」

 

 少女からのお礼に笑顔で返事をすると、投げ捨てられたリボンを拾い汚れを落とそうと蛇口を探しに行ってしまった。いつまでも元気に駆け回るかのんを見て、少年は少々呆れた様子を見せる。

 

 だが、目の前の少女は少年の言葉と表情が一致してないことに疑問を抱く。

 

「……でも、嫌そうじゃないよ……?」

 

「まぁ、あれがかのんちゃんだからね。楽しいことが大好きで、いつもそれに振り回されるんだけど、最後には気づいたら笑ってるんだよね」

 

 不思議に思う少女へ少年はかのんの人間性を口にした。好奇心旺盛な彼女に手を引かれ大変な目に遭うとしてうんざりしてしまうこともあったが、それでも最後はかのんが見せてくれる景色が気持ちよくて災難だと思ってたことも宝物に変わっている。

 

 そんな二人の関係性について話を聞いて少女は興味津々だった。

 

「そうなんだ……なんだかうらやましいなぁ……」

 

 少女から羨望の眼差しを向けられ、嬉しくなり気恥ずかしくなる少年だがそれを掻き消すように話題をすり替えた。

 

「……き、きみ! よく見たら服が凄く汚れてるじゃん! さっきの子たちにやられたの?」

 

「えっ……い、いや……自分で転んじゃって……」

 

 服が全体的に砂で汚れているのを指摘され、少女は必死に言い訳を探していたが、少年の前ではその努力は無に帰した。

 

「でも、汚れ方が転んでできるものじゃないよ!」

 

 少年は汚れを落とそうと優しく少女の服をはたく。しかし、こびり付いた汚れは中々落ちる様子を見せず少年は悪戦苦闘していた。

 

「うーん、中々落ちないなぁ……。あっ! ハンカチ持ってるからこれに水を付けて洗い流そっ!」

 

 少年はポケットにしまっていたハンカチを取り出し、水に濡らそうと蛇口を探しに行こうとする。

 

「あっ、あの……!」

 

 駆け出そうとした少年に少女は声を掛けて足を止めさせる。

 

「どうしたの?」

 

「どうして、こんな私にやさしくしてくれるの? 一人で遊んで、みんなにも嫌われてるこどもなのに……」

 

 少女は服の裾をぎゅっと握り、少年たちが助けを差し伸べてくれる理由を問うた。

 

 少女の疑問に少年は曇りっ気のない笑顔で返事をする。

 

「だって、きみが困ってたんだもん。見過ごすことなんて出来ないよ」

 

「…………っ!」

 

 真っ直ぐに伝えられた気持ちに少女は目を潤ませた。だが、そんな少女を他所に少年は自分の発言を思い出して恥ずかしさのあまり髪をくしゃっと触る。

 

「って、先にかのんちゃんの方が動いてたから僕、人の事言えないけどね……あははっ」

 

 笑顔を見せてその場の空気を和ませようとすると少年は思い出したように自己紹介をする。

 

「あっ、僕、湊月(みつき) 颯翔(はやと)って言うんだ! 君は?」

 

「わ、私は……(あらし) 千砂都(ちさと)……」

 

「ちさとちゃん……いい名前だね! じゃあちさとちゃん、一緒にかのんちゃんの所へ行こ?」

 

「……う、うん……!」

 

 颯翔は一緒に行こうと千砂都へ手を差し伸べ、彼女もその手を握り返す。そして、離さないようにぎゅっと力を入れて二人はかのんが向かったであろう手洗い場へと一緒に走り出した。

 

 

 

 




三人の周りに吹いていたのは暖かく優しい風だった。
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