吹き荒ぶ風、奏でる音   作:M-SYA

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お待たせいたしました。

本編22話です。

今回もよろしくお願いします!

それではどうぞ!


学校アイドル部?

 

 燈香と学校内の散策を行っている中、部室棟で突如見つけた3階にある部室を目指すべく階段を上っていた。

 

「3階に上がってきたけどだいぶ埃が舞ってるなぁ……?」

 

「使われなくなってからだいぶ時間が経ってるのかもね」

 

 階段に使用されている木材特有の茶色が埃によってくすんだ色に変わっていた。また、天井から吊るされている照明も機能しておらず屋上の窓から差し込む陽光のみで3階が照らされていた。

 

「やっと突き当たりだ。あそこに見えるのは……プレートが汚れてて見えねぇ……」

 

 階段を上りきると、目の前には2つの扉が立っていた。一つは屋上へと続くもの。そして、もう一つはとある教室へと続くものだった。教室名はネームプレートが掲げられているのだが、汚れが多く拭き取らなければ正確に読み取れなかった。

 

 ネームプレートをさっと抜き取り、指で擦るように付着した汚れを取るとそこには既視感のある名前が書かれていた。

 

「……学校アイドル部?」

 

「スクールアイドル部とはまた違うのかな……?」

 

 プレートを見つめながら二人で首を傾げる。世間としてはスクールアイドルという名称で通っている文化だがどうして学校アイドルという名前で部室が用意されているのだろうか。

 

「中は入れるのか?」

 

「さすがに鍵が掛かってるんじゃ──」

 

「開いたわ」

 

「まさかの未施錠……」

 

 開きはしないだろうと思いつつもスライドドアを横方向に力を入れると扉は一切の抵抗を見せずに部屋の中を露わにしてくれた。戸締り管理がおざなりになっていて燈香も怪訝な表情をする。

 

「な、なんか出てこない……?」

 

 部屋の中も電気が付いておらずドアを開けたことで外気により地面に溜まっていたであろう埃が宙を舞い始めた。燈香としては部屋が暗い他にこれも恐怖感を煽る演出となって怖くなっているのだろう。

 

 俺の背中に隠れる燈香を一瞥して仕方ないと思いつつ部屋の中を見渡すと照明のスイッチを見つけたので部屋の中を明るくする。

 

「おばけがいるわけじゃないし怖がることもないだろ」

 

「なんで颯翔くんは平気なの? 科学室では同じように怖がってたのに」

 

「あれは人体模型や骸骨とかの無機質な標本があるから。ここにはそんなもんは置いてないだろ?」

 

 俺はただ科学室に置いてある標本系が苦手なだけでおばけはそこまで苦手意識を持っていない。だが、俺の事を同士と思っていた燈香は頬を膨らませながらジトっとこちらを睨みつけていた。

 

「颯翔くんの事を仲間だと思った私がバカだったよ」

 

「さっき俺の陰に隠れて室内の怖い要素を俺に押し付けようとしてたよな?」

 

 散々な言われようだが、もし俺がおばけ系統も苦手だったなら先ほどこの少女は俺の背中に隠れていたので、自分だけ楽になろうとしていたことになる。だが、そうなる気持ちも分かるし俺もそれで彼女に文句を言うようでは男として情けなさすぎるのでとやかく言うつもりはない。

 

「それにしても部室内は埃が舞ってるとはいえ、何も置かれてないな」

 

「もう活動してないからここで使ってたものは片付けられたってことかな?」

 

「そうっぽいな……」

 

 何も置かれていないタンスや部屋の中を見渡し、学校アイドルに関係するものは何ひとつ置いておらず部室内はもぬけの殻となっていた。だが、それ以外の収穫として別の部屋に繋がる扉を見つけた。

 

「ここはなんだ?」

 

「このドアも鍵はかかってないみたいだね」

 

 燈香が部屋のドアノブを握り鍵が掛かってないことを確認すると俺と目を合わせてくる。その仕草に俺は「開けよう」と言うように頷いてみせる。

 

 燈香も返事をするように頷いてみせ、扉を開ける。別室も電気が付いておらず薄暗い空間が広がっていた。

 

「なんだここ……完全に物置になってないか……?」

 

 そこには数えきれないほどの段ボールやバスケットが積まれており、中身が見えないように丁寧にガムテープや風呂敷で梱包されていた。

 

「神宮音楽学校だった時の記録……みたいなものかな?」

 

「そうみたいだな。資料が纏められたファイルや明らかに使い古されている備品が沢山入ってる」

 

 長年使用されていなかった影響からか若干の埃くささを感じながら、部屋の中を物色する。神宮音楽学校という名称が使われているファイルが多く保管されていたり、部活で使用していたであろう器具関係についても色がくすんでおり、補修等もされずに放置されている様子が窺える。

 

「なんで学校アイドル部の部室横がこんな物置にされてるんだ?」

 

「当時はこの部活が何かの理由で迫害されてた……とか?」

 

 俺がふと疑問を口にすると燈香も困り眉を作りながら憶測を答えてくれる。部室棟の中で学校アイドル部のみが3階に、そして部室の横が物置として使用されている事が妙に釈然としない。神宮音楽学校の細かい歴史については勉強できていないが、当時の文化としてはマイナーだったからこそ学校や世間の風当たりが強かったのだろうか。

 

 だが、ここでそんな議論を展開しても返ってくるのは無情にも沈黙のみ。明確な答えがここで出てくるわけではない。

 

「そうなると学校でのアイドル活動自体は昔から続いてる文化になるんだよな~。……ん?」

 

 燈香が話した予想もあながち間違ったものではないと思い肯定の意見を出していると、部屋の隅で妙なものを見つけた。

 

「なんだこれ……。宝箱かなんかか……?」

 

 そこには飾りつけ等が何も施されていない質素な木箱が置いてあった。周囲が段ボール等で重なっている中でこの箱のみが段重ねで上下に物が置かれていないため、その扱いの差から異様な存在感を放っていた。

 

「うーん、こいつは鍵が掛かってて開きそうにないな」

 

 俺はしゃがみ込んで木箱をじっくりと観察する。木箱を開けてみようと試みたが専用で錠が設けられており、施錠されている関係から中身を確認することは出来なかった。

 

「これにはしっかりと鍵が掛かってるんだね、でもなんでこれだけに……?」

 

「誰かが意図的に仕組んでやってることか……?」

 

 燈香が頭の中に浮かんだであろう疑問に乗っかる形で俺も予想を立てる。隣の部室、そしてこの部屋の施錠管理は緩いくせにこの木箱に関しては施錠がしっかりとしている。もしかして誰かが外からこの箱を持ってきたのだろうか。

 

「でもこいつが何のやつか分からないし、経緯が全く分からんな」

 

 箱の中身が分からないためいくら考えても答えは出ない。異彩を放っていることは確かだが、これを開けるための鍵の在りかについては何も情報がないためそこから先の話を進める事はできなかった。

 

 俺はこの木箱についての追究をやめようと立ち上がる。その瞬間、俺が所有しているスマホからバイブレーションがズボン越しに肌へ伝わってきた。

 

「あっ、これは恋さんか……?」

 

 スマホをポケットから取り出し通知元を確認すると案の定恋さんだった。恋さんから電話が来ているので俺はすぐに通話を開始する。

 

「もしもし?」

 

『もしもし、湊月くんですか? ご連絡が遅くなってすみません……!』

 

 電話を取ると恋さんが少し焦った声色で話してくる。おそらくやっと先生から頼まれていた仕事が終わったのだろう。

 

「気にしないでいいさ。もうそっちの用件は終わったのか?」

 

『はい。今からそちらへ向かいたいと思いますが、お二人はどちらへおられますか?』

 

「今、部室棟の方にいる。1階の入り口で集合する形でいいか?」

 

『分かりました。ではすぐに部室棟の入口へ向かいます。またそこで落ち合いましょう』

 

「了解、そんな急がなくていいから気を付けてな。それじゃあ、またあとで」

 

 恋さんの用件が無事に終わったという事で部室棟の入り口にて落ち合う事で合意を取り、通話を終了する。

 

「恋ちゃん、やっと終わったんだね?」

 

「あぁ、これから準備していくらしい。1階で合流しようって話をしたから今から行くぞ」

 

「オッケー!」

 

 燈香も恋さんと一緒に回ることを楽しみにしていたのかすぐに物置部屋から出ようとする。燈香としては彼女とも仲良くしたいと思っているからこそ自然と張り切っているのかもしれない。

 

 燈香に続いて俺も外へ出ようとするが、忘れないように一つだけ燈香にある忠告をする。

 

「燈香、ここの事については外に漏らしたらまずいような気がするから、ここで見たものは俺達の中の秘密にしておこう」

 

「……確かにさっきの木箱やこの学校アイドル部の扱い、意外と繊細な話になりそうだもんね。うん、わかった!」

 

 全く清掃されていない部室、そして物置内にある資料や謎の木箱。これは話を公にすると学校内に余計な混乱を招きそうな気がした。また、恋さんがスクールアイドルを目の敵にしている以上、学校アイドル部のことも何かしら関わっているような予感がしたのであまり公言したくはないのだ。

 

 恋さんの事情は俺しか知らないが、それ以外の懸念について燈香も理解してくれたようで他言無用を約束してくれた。物分かりが早くて俺は安堵の表情を見せる。

 

「よし、じゃあ恋さんと合流するために下まで戻るか」

 

「おぉー♪」

 

 燈香の元気の良い返事を聞きながら俺は物置部屋、そして学校アイドル部部室の扉を鍵のかかっていない元の状態に戻す。

 

 

 

 学校アイドル部が何故こんなところにあるのか、はたまたそれが今のスクールアイドルや葉月恋という少女とどのような因果関係にあるのか。1階へ戻る最中もその疑問だけが俺の頭をさまようのだった。

 

 

 





学校の歴史、現在にまで続く縁、果たして?
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