吹き荒ぶ風、奏でる音   作:M-SYA

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お待たせしました。

本編、29話です。

それではどうぞ!




両手に華?

 

『サニーパッションでした〜! みんな〜、ありがとうね〜!』

 

『引き続き代々木スクールアイドルフェスを楽しんでいってね!』

 

 サニーパッションのライブが終わり、摩央さんらは観客に手を振ってステージから降りる。観客も「ありがとう!」、「サニパ様〜!」と各々が声を上げながらペンライトを左右に振っている。

 

「さっきのサニーパッションさん、すごく楽しかったね!」

 

「あぁ、あのパフォーマンスといい、客の煽り方といいさすがは場数を踏んでるスクールアイドルだったな。他のグループらとレベルが違う」

 

 千砂都とサニーパッションのライブを振り返り、彼女らが他のスクールアイドルとは一線を画していることが明らかに分かった。ただ客と楽しむだけではなく、パフォーマーとしてダンスを魅せる力も備わっており、そのキレは抜群だった。会場のボルテージも未だ冷めない様子を見るに彼女らが今回のイベントで上位に着く可能性は非常に高いだろう。

 

「そういえば、だいぶ周りも暗くなってきたね〜、かのんちゃん達の番まではあと少しかな?」

 

「そうだな、恋さんは未だ連絡付かずだし、一体どこで油を売ってんのか……」

 

 結局、恋さんからは音沙汰がない。一度こちらから連絡をするべきかと思い、スマホを取り出そうとする。その瞬間スマホのバイブレーションが響きわたる。

 

「…………燈香?」

 

 ディスプレイには『日向 燈香』と表示され電話がかかってきていた。チャットアプリもIDを交換しているが何故電話を掛けてきたのだろうか。

 

「……もしもし?」

 

『あっ、颯翔くん!? メッセージを送っても全然返事が来ないから焦ったよ〜!』

 

「えっ、メッセージ?」

 

 燈香の声に焦りが込められており、電話を受けながら通知を確認するとそこにはチャットで燈香から5件ほどのメッセージが送られてきていた。『部活終わったけど、イベントは続いてる?』『颯翔くーん?』など練習終わりに送ってくれていたのだが一向に俺からの返事がなく、焦りを隠せなかったようだ。

 

「あぁ……悪い、ライブに夢中で気付かなかった」

 

『そうだったんだね。ライブはもう終わっちゃった? 部活が終わって今から向かおうと思うんだけど、間に合うかな〜?』

 

 話の感じを察するに燈香はどうやらまだ学校にいるようで、これから会場に来るとなると所要時間は約30分だろうか。

 

「いや、結高のスクールアイドルはまだだから今から来れば間に合うぞ。そっちに迎えに行くか?」

 

『うーん、代々木公園への行き方までなら分かるけどステージの場所が分からないから代々木公園に着いたらまた連絡していいかな?』

 

「分かった。なら原宿駅前の入り口で待ってるから着いたら連絡してくれ」

 

『はーい! せっかく楽しんでる時にごめんね、颯翔くん……!』

 

「気にするな。気を付けて来いよ」

 

 燈香に忠告を入れて通話を切る。そして、俺はこの場を離れようと動き出そうとするが千砂都が声を掛けてきた。

 

「どこか行くの?」

 

「クラスメイトの友達のところ。部活が終わって今からこっちに来るって話だから迎えに行くんだ」

 

「そうなんだ。私も付き添おうか?」

 

「そこまではいらんさ。お前は澁谷たちに声でも掛けにいってやれよ。俺なんかが行くよりかは遥かにやる気が出るだろうさ」

 

 千砂都には俺へのお節介で時間を潰してほしくない。そう思って1人で行くことを伝えるが千砂都は何か物申したげな表情をしていた。

 

「……そっか。わかった、じゃあついでに颯翔くん達が良い席で見れるように陣取っておくね?」

 

「そうしてくれると助かる。じゃあ、行ってくる」

 

 千砂都に断りを入れて、俺は会場を一時的に後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、颯翔く〜ん!!」

 

 代々木公園の原宿駅前の入口で待機していると燈香が人混みを避けながら走ってきた。結構な時間を走っていたのか、彼女の額には汗が滲んでいた。

 

「おう、お疲れ燈香。部活終わりなのに悪いな」

 

「んーん、気にしないで! なんとかこっちに間に合ってよかったよ〜! それで唐さんたちのライブは?」

 

「まだ始まってねえさ。彼女らは大トリを務めるから始まるまでにまだ猶予はある」

 

「お、大トリを務めるんだね……? いきなりプレッシャーが凄そう……」

 

 俺の話を聞いて、燈香は冷や汗を掻きながらクーカーの心痛を察するように声が震えていた。確かに彼女らはスクールアイドルとしてライブを行うのは今日が初めてなのだ。そのライブがそれなりに規模を有しているもので尚且つ大トリだから緊張しないはずがない。

 

「さっ、時間もあまりねえし、さっさと行くか」

 

「うん!」

 

 ライブも後半戦に入っている。悠長にここで話していたらクーカーの勇姿を見逃してしまうので積もる話は歩きながらすることにした。

 

 その道中で、燈香は既に来ているであろう人物について聞いてきた。

 

「そういえば、恋ちゃんはこっちに来てるの?」

 

「それがどこにも姿が見えねえんだよ。学校の仕事がそんなに残ってんのか……?」

 

「う〜ん、でもいつも恋ちゃんが仕事で使ってる生徒会室は鍵が閉まってたよ? 練習終わりに寄り道したからもうこっちにいるものだと……」

 

 なんと、燈香の方も学校内に恋さんがいないか見回ってくれていたようだ。それでもいないということは既に現地入りしてるかこの場を退散をしてるかの二択となる。

 

「恋さんの事だからドタキャンはしないと思うけど……会場に着いたら連絡を取ってみるか……」

 

「………………」

 

 会場に向かいながら俺は小さく呟く。そんな俺を奇異なものを見るように燈香が見つめていた。キョトンとしながら無言でいる燈香の視線に気づくのに、そう時間を要さなかった。

 

「……ん? 燈香、俺の顔に何か付いてるか?」

 

「えっ!? いや……そうじゃないんだけど、颯翔くんがそれを持ってきてる事が珍しいなぁって思って……」

 

「それ……? …………あっ」

 

 燈香が見つめる視線の先にあるのは俺の手首からストラップでぶら下がっているペンライトだった。そういえば、ステージを離れてからずっとこの状態にしていたことを完全に失念していた。燈香との合流が先だと後手に回していたため普段の俺とは相反するイメージを彼女に与えていることだろう。

 

「いや、これは俺が持ってきたわけじゃなくてな……?」

 

「ふふっ、颯翔くんってばそこまで楽しみにしてたんだね。なら私も全力で楽しまないと!」

 

「ち、違うんだこれは……」

 

 千砂都に借りただけ、そう言えば済む話なのに燈香が有無を言わさぬまま1人で合点を得ていた。俺は弁明を試みるも、当の本人はなんだか年下を見るような温かい目をしてるし、これはきっと何を言っても意味がない。ステージが近くなるにつれて大きくなる喧騒の中、俺はただため息をつくことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ〜! 綺麗なステージ〜!」

 

 会場に着くと、ステージは先ほどまでと色合いを変えて可憐だけれども美しい、そんな姿を形成していた。まだ多くの人が残っている様子を見るに、ライブはまだ終わりを迎えていないようだ。

 

 燈香はスクールアイドルのステージを初めて見たのだろうか、眩しい輝きを放つステージにただ見惚れていた。

 

「千砂都は一体どこに……」

 

 千砂都に連絡を取ろうとした矢先、スマホに電話が掛かってきた。相手は今まさに連絡を取ろうとした相手だった。

 

『もしもーし!? 颯翔くん、そろそろかのんちゃん達のライブが始まるよ!』

 

「えっ、マジかよ! 今ステージに着いたけど千砂都はどこにいるんだ?」

 

 血相を変えた様子で話す千砂都。そして、ちょうどライブもラストにまで迫っていたということで流石にやばいと思って電話を掛けてくれたようだ。千砂都の場所を確認しようとすると観客席の前方で手を振ってる女の子の姿が見えた。

 

『今、大きく手を振ってるんだけど見えないかな?』

 

「見えた見えた、今そっちへ向かう。……燈香、行くぞ」

 

「えっ、は、颯翔くん!?」

 

 人混みの中を分けながら進むため燈香と別れないように彼女の手を引きながら最前列を目指す。突然手を握られた燈香は思わず声を上げるが千砂都の姿を目で追うことに必死だった俺は、そんなことなどすぐに頭の中から抜け落ちていた。観客の間を割り込みながら進んでいくと千砂都が2人分の席を空けて待ってくれていた。

 

「悪い、遅くなった」

 

「もう颯翔くんってば全然メッセージに気づいてくれないから焦っちゃったじゃ〜ん!」

 

「えっ……また……?」

 

 開口一番、何故か聞き覚えのある言葉を千砂都にぶつけられる。まさかな、と思いつつスマホの通知を確認すると、そこには千砂都からのメッセージが怒涛の勢いで送られていた。

 

 だが、それを見ると同時に俺はある疑問が浮かんだ。俺は千砂都にチャットアプリのIDを教えたつもりはないが、何故彼女は知ってるのだろうか。

 

「……颯翔くん……また……?」

 

「おいおい、俺のせいなのかよ?」

 

 先ほどは燈香にあらぬ誤解を与えてしまってその罪悪感に苛まれていたのだ。その上でスマホの通知に気づかず、おまけにこのようなデジャヴを起こしていることに一種の奇跡さえ感じてしまう。嫌な方向に空気が持っていかれてる予感がした俺は口を開こうとする。

 

「それより千砂都、お前どうして……」

 

「あっ、その子が颯翔くんのお友達?」

 

「へっ? は、はい。日向 燈香と言います……!」

 

 今度は俺の番と話を切り出そうとしたが千砂都に話の余地すら与えられず俺の後ろにいた燈香に声を掛ける。燈香もいきなり呼ばれたからか返事が上ずっていた。

 

「へぇ〜燈香ちゃんって言うんだね! 私は嵐 千砂都。颯翔くんの昔馴染みなんだ、よろしくね♪」

 

「颯翔くんの昔馴染み……?」

 

 俺の知り合いがこの学校にいると思わなかったのかあっけらかんと話す千砂都に驚きの表情を見せる燈香。確かに彼女にはかのんとの関係も話したことがなかったし、千砂都のことも知らないからこういった反応になるのはおかしなことではないか。

 

「それにしても……2人ともお熱いんだね?」

 

「はっ? お前、何を言っ……て…………」

 

 千砂都の目つきが明らかにおかしくなり突然何を言い出すのかと思ったが、彼女の目線の先を追うと全てを理解した俺は無言で固まってしまった。はぐれまいと繋いでいた燈香の手を未だ握っていたのだ。燈香もいち早く事態を察したようですぐに顔を赤くし手を離した。

 

「ち、違っ……! 私と颯翔くんはそんな関係じゃ……!?」

 

「うわぁ〜すごく顔が真っ赤〜。こんな素敵な子を持っちゃって颯翔くんも隅には置けないね〜?」

 

「お、俺と燈香はそんなんじゃねえから……茶化すのはやめろ」

 

 下手に取り乱したら今の千砂都は余計に揶揄おうとする。なんとか止めようと平静を装うが恥ずかしさが抜け切れず顔面が熱くなるのをただただ感じるしかなかった。気まずい空気になる俺と燈香を見て、千砂都は耐えきれず吹き出してしまう。

 

「ぷっ、あはは! 冗談だよ〜、颯翔くんもそんなに顔を赤くしちゃってかわいいな〜」

 

「お、お前……絶対に許さねぇ……」

 

 こいつは絶対にいつか分からせる。この屈辱は絶対に忘れない。

 

 ステージの横でクーカーは緊張しているだろうに、それとは全く対照的な気の抜けた空気の中で俺は密かにそう心に決めていたのだった。

 

 






君とその子はどんな関係なの?

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