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(´•ω•`)つ (最新話)
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BONFIRE LIT
元を正せば、
ちなみに他の候補としては、暗月の騎士の誓約プレイで使っていたデータにある月女神が元ネタの名前であったり、印象に強いアストラの上級騎士の名でも問題はなかった。なんなら鎧の名前から持ってきてもよかったのだが、それらを踏まえた上でネームレスは灰の名を選んだ。
同じ灰ならアッシュではなくシンダーでもグレイでも問題はなかったのだろうが、ネームレス自身が変に凝るつもりがなかった以上、一番無難なアッシュで済ませるのはもしも理由をかつてのギルドメンバーの中でも仲の良かった面子が聞けば納得の満場一致だったことだろう。
「別にファーナムでも良かったんだがな……まあ、あの時はハベルだったというのもあるんだが」
要塞で与えられた部屋の中、そんな風に胸中の事を漏らしながらネームレスは昨晩から部屋着代わりに装備していた黒金糸から騎士鎧姿────昨日の装備だった岩の如き
軽く手首を始めとした関節部の動きを確認しながら、片手で虚空に生じた
見ての通り、ネームレスは基本的に戦士職。種族由来の魔法を使えはするだろうがそれもあくまで最低限度のモノであったり、プレイヤーならば仕様上習得できるモノのみ。スクロールの魔法など基本的に使用できないことがほとんどだ。
では、取り出したスクロールはどういうものか?
「『傭兵の契約書』」
ネームレスの宣言と共に彼の手の中のスクロールが独りでに手から離れていき、部屋の中で一定の距離を保って宙に浮かぶ。
やはり、独りでに開かれていくスクロールはその書面を赤く輝かせたかと思えば、次の瞬間にはネームレスの目の前で跪く五人の鎧騎士の姿が現れた。それを見てネームレスは一度頷き、
「よし。輪の騎士、お前たちにはしばらくの間、アベリオン丘陵での活動をしてもらう」
彼らへと命令を下していく。
彼らは契約書で呼び出した傭兵モンスターの一種。基本的に金貨消費でも召喚できる傭兵モンスターだが、その中でも種族や装備にステータス設定をプレイヤー自身で用意する必要がある上で設定できる種族やレベル、職業もある程度制限がある、なんていう明らかに一部の趣味人を除けば触るのも面倒という傭兵モンスター作成セットを使ってネームレスが作成した傭兵モンスター。
その証拠、特徴というべきだろうか。
基本種族は
総じてレベル帯は50台で揃えられた彼らは恐らく、この世界ではそれこそこの世界基準の英雄クラスでも出てこなければ倒すことは難しいだろう。
「お前たちに与えている〈
そこまで告げて一度言葉を切り、ネームレスは跪く彼らを改めて見据える。
彼のメイン装備である火継ぎの鎧、それに似たように灼け歪んだ黒い騎士鎧、そしてそれらの上から黒布を被る輪の騎士たち。
直剣持ちが二体、長槍持ちが二体、そして特大剣を二振り持つ騎士、設定されたレベルより気持ち強めの装備を纏う彼らの外見、ネームレスが記憶から思い出して作成したダークソウルシリーズ。
こうしてユグドラシルで見るよりも、現実となった事でより鮮明に輪の騎士の鎧を観察でき、思ったよりも再現できている事にご満悦な表情を兜の下で浮かべながら、ネームレスは命令の詳細を詰めていく。
「ああ、それと見かけたからと言ってむやみやたらに殺すな。曲がりなりにも
命令としては少し長ったるく纏まっていないようにネームレスは内心で自虐紛いに思いつつも命令を全て伝える。
「以上……、何かあるか?」
「────御意、仰セのまマに」
双特大剣の輪の騎士がやや片言交じりにそう返事をすれば、彼らの姿がその場から掻き消える。装備している指輪の能力を使ったのだろう。
それを見てネームレスは邪魔にならない様にベッドへと腰掛けて待てば、しばらくしてドアが独りでに開き、そしてまた独りでに閉まっていく。
輪の騎士らが任務の為に出ていったのを見送って─────
「…………いや、喋れるのかよ」
驚きを隠せない声音でもうこの場にいない輪の騎士らへとツッコミを入れていた。
─────
豪王バザーによる大侵攻は、バザー自身が討たれたことによりいままでの侵攻に比べ規模に対しその収束は早期であった。
負傷者自体は数多いものの、死傷者という点で考えれば驚くほどに少なく、また要塞線そのものにはそこまでの消耗はなかった。故に要塞を任されているパベル・バラハは自身の副官らを始めとする精鋭を一度要塞に置いて、今回の大侵攻の仔細を報告する為に負傷者たちを連れて一時帰還の判断を下した。
大侵攻があったのはつい昨日の事だというのにも関わらず性急な判断と言わざるを得ないがしかし、戦力であるオルランドの重傷を考えれば決して悪い判断とも言えない。
そんな要塞線から最も近い都市、聖王国における最も強固に作られた城塞都市であるカリンシャへと向かう一団の中にネームレスの姿があった。
負傷者の中でもとりわけ重傷な兵士らが乗っている荷車の最後尾のソレにファーナム装備に身を包んだネームレスは乗り込んで入り口側へと腰掛けながらカリンシャまでの道中を過ごすことにしたのだが要塞からカリンシャまでの行軍、負傷者の事を考えた上でのやや速足でありかつ無茶をしない程度の速度での行軍では早くても一日から二日かかるかどうかといった所だろう。その間、少なくとも彼ら聖王国兵ではないネームレスは基本的に暇と言う他ないだろう。
普通ならば例えば野営の準備などを手伝うべきなのだが、既に要塞を出る際の荷物を運び入れの手伝いを申し出た際にやんわりと断られてしまったという事があり、無闇に手伝いをするということが出来なかった。では、この行軍中に何をしていればいいのか、とネームレスは考えながら邪魔にならない程度にアイテムでも弄るか、と考えて……
「よお、灰の旦那。しけた空気してんな、なんだ?もう退屈になっちまったのかい?」
「……いや、別に退屈というわけじゃないさ」
そんなネームレスへと気安く声をかけてくるのは同じ荷車に乗っていた男、オルランド・カンパーノその人。
バザーにやられかなり重症であり寝ているべきはずの男だが、それはあくまで本来ならばの話で、戦場でネームレスが使用したポーションによってオルランドはかなりの重傷をまあまあ重傷と言えば重傷というところまで回復していた。
だから、こんな最後尾の荷車にわざわざ乗り込んできてネームレスへと絡んできていた。
「ただ、流石にこうして相乗りさせてもらっている手前、大人しくしていようとしてるだけだとも……手伝いはどうやら求められていないようだからな」
「ハハッ、そりゃそうだろうよ。あの豪王を真正面からぶっ殺した男なんだ。どいつもこいつもビビっちまうもんだろうさ」
「なるほど……で?早々に絡んできて、いやわざわざこっちに乗り込んできた目的は?」
手元に出しかけていたアイテムをそのままアイテムボックスへとしまい込み、視線をオルランドへと向ければネームレスは彼の目に浮かぶ戦意の様なモノを感じ取りつつ決まりきった質問をかければ、当然返ってくるモノは
「そりゃあ、分かってるだろう?」
「やるなら、しっかりと万全で願おうか」
わざわざ聞くなよ、そう訴える様な目を向けられてネームレスは一先ず先延ばしの返答を伝えながら肩を竦める。それを聞いて、やはりオルランドは当然とでもいうような表情で好戦的な笑みを浮かべてから奥へと引っ込んでいった。
その背を見送りながら、ネームレスはまた肩を竦める。
「……早計だったか?」
リアルではもはや見る事の出来なくなった青空を仰ぎながらそう呟いた。
─────・