アサルトリリィ Sister's Lost   作:メルティナ

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2話.そのアーセナル、奇人につき…

 

 

工廠科の実習棟に併設されている、戦闘用の武器を整備するための工房。

いくつかの工房があるうちの最奥部にあるその工房は、いろいろな意味で有名なアーセナルを主としている。

その工房に私のCHARMも預けているのだ。

今日は私のメンテ明けCHARMの回収ともう1つとある目的で訪れていた。

私とフウは工房の扉を潜り室内に入るが、少し物が散乱しているだけで中は無人だった。

 

一応、時間指定で待ち合わせしているから、おそらく『深部』かな…。

そう思いながら、私は入り口近くに設置された照明や空調のパネルを操作する。

一見ただの空調パネルに見えるが、それはもう1つ機能を持っている。

 

それはこの工房の更に『深部』に至る道を開くためのものだ。

よく見るとこの操作パネルのボタンは数字を除いたキーボードのキー配列と一致していて、正解のパスワードの順に操作した時のみロック解除パネルとして機能し、それ以外の場合は普通の照明・空調パネルとして機能する。

間違っても平時にロック解除キーを押さないように、これとは別に照明・空調用のリモコンが用意されていて普段はそちらを使っている。

そもそもの話、ここの照明も空調もほぼずっと稼働したままである。

止めているのを見たことは一度もない。

 

 

 

パスワードを入力し、エンターキーに当たる電撃ボタンを押す。

すると、部屋の左奥の壁が滑るように開き、『深部』への道が開く。

 

 

「それにしても、いつもながら凄いパスワードにしてあるね」

「本当だよ。建前上、神庭はG.E.H.E.N.A.に対しては中立の立場にいるんだから、こんな流出して困るようなパスワードは…。はぁ…」

 

入力したパスワードは『G.E.H.E.N.A. FUCK YOU』。

個人の主義主張は勝手だけど、一応自身の置かれている立場というものを理解してほしい。

少々攻撃的な言葉ではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

「やあやあ、ようこそ!フウの字、そしてミカちゃん!」

 

 

『深部』へと進んだ私たちを出迎えたのは、白衣を見に纏い目元が隠れるほど前髪の女性。

 

彼女こそこの工房の主で、私のお抱えアーセナルであり私の雇い主でもあるカイリ先輩。

ガーデンでは基本『様』付けが定着しているが、この人はそう呼ばれるのを嫌い、公の場でない限りもっと普通に接して欲しいとのことから、普段は『先輩』呼びを徹底させている。

奇人のアーセナルである先輩が作るCHARMのデータを私が取り、その対価として私は自身のCHARMを整備してもらうという契約……のはずなんだけど…。

ぶっちゃけ私の労力の方が多いのは気のせいだろうか…?

 

ちなみに『カイリ』という名前は通称で本名は誰も知らないという謎もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩。これ、前回預かっていた試作機のデータと現物です」

「ん〜、ホイホイ。使い心地はどうだったー?」

 

私はギターケースと共に携帯していたCHARMケースを応接テーブルに置き、同時にその時のデータを自身の端末から先輩のパソコンに送る。

そのデータに併せて先輩への報告も行う。

 

 

「まず戦闘力としては問題ありません。初心者向きではないですが、中級者・上級者なら十分に扱えると思います」

「ん。問題点は?」

 

私の報告に淡々と相槌を入れていく先輩。

この時だけは先輩のことを本当に凄い人だと認識できる。

 

「優先して報告すべきなのが1つ。同期させているはずなのに明らかに重量感を感じます」

 

そう。

本来、リリィはマギによってCHARMを同期させることによって、その重厚感からは想像できないほど軽くCHARMを振るっている。

でなければ、リリィたちはかなりの筋肉隆々ということになってしまう。

 

「同期しているのに意味を成していないと言うよりは、CHARMが同期を拒んでいるかのようでした。これは機動力に関わる問題なので真っ先に挙げさせてもらいました」

 

「ああ、うん。それ、仕様だから、次行って」

 

「「はぁぁ‼︎⁉︎」」

 

あっけらかんと言い放つ先輩に私だけでなく、黙って報告を聞いていたフウまでもが、とてつもなく失礼な態度で聞き返す。

 

 

あまりにもすっ飛んだ話ではあったが、一先ず先輩の言うようにもう1つの問題を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では、もう1つの問題点を挙げさせていただきます。………『何故、CHARMが喋っている』のですか?」

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハハ‼︎‼︎やっぱりそこ気になっちゃうよね!ずばり答えは・・・『カッコいいから』‼︎」

 

 

 

「「・・・・」」

 

 

 

待っていましたと言わんばかりに、笑いながら答える天才(へんたい)

その答えに私とフウは思わず頭痛の時のように頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後…。

 

「つまり……昔の漫画で武器が喋っているのを見てCHARMを喋らせるために人工知能を搭載したら、CHARMが同期を拒否する様になったと……」

「そういうこと!」

 

 

 

なんてこった…。

この奇人(ひと)は人類の叡智に1番最後に付けるものを、真っ先に付けてしまったのか…。

 

なんと言うか、やっぱりバカと天才は紙一重というのは事実だったのかな。

 

「おうおう。何その『やっぱりこいつバカなんじゃないか?』みたいな目は‼︎私ちゃんの技術力とミカちゃんの実力があれば問題なかったはず」

「問題があったからこうしてミカが報告しているんですよー」

「あーあー、聞こえない。さ〜て我が愛しの試作機ちゃんはと……。………な、なんじゃこりゃぁぁぁ‼︎」

 

自身のデスクチェアから立ち上がり、フウの嫌味もどこ吹く風と聞き流し応接テーブルに置かれたCHARMケースを開いた先輩は驚愕の声を上げた。

 

 

先輩が思い浮かべていたのはデータ収集という名の家出から帰ってきた反抗期の娘(?)の姿だっただろうが、そこにあったのは……

 

 

「わ、私ちゃんのフェンリス・ヴォルフ(仮)が……あられもない姿にぃぃぃぃ!!!!」

 

そこにあったのはマギクリスタルが破損し、変形機構も剥き出しになったフェンリス・ヴォルフ(仮)が収めてあった。

 

あられもない姿というか人で喩えるなら、グロ映像じゃないかな。

 

「ミカちゃぁぁん!どういうこと⁉︎」

「どういうことも何も、見ての通りです。CHARMがロクに機能せず戦闘に成らず、やむを得ずCHARMは放棄しました。待機していたフウも証言してくれると思いますよ」

「ぐぬぬ……。確かにそこまで低性能なものをミカちゃんに渡した私ちゃんも悪いか………」

 

意外にも早く折れる先輩。

折れるのが早すぎて逆に怖くなってきた。

 

「ま〜確かに大事な実験・・・モルモッ・・・・パーツが居なくなられても困るからねー」

 

何やら怖いことを言ってるよ、この先輩…。

 

「言い直すなら、もっと綺麗な言葉にしてくださいよ…」

「はは〜、気にしない気にしない〜」

「そんなんだから、『真島百由さんの劣化版』とか言われてるんですよ」

「がはっ!!」

 

あ、フウの一言が思いっきり刺さった。

百合ヶ丘の真島百由さんといえば、言わずと知れた凄腕のアーセナルだ。

結構変わり者って話を聞くけど、その分実績もかなりある。

変わり者どころか奇人変人の域に足を踏み入れているうちの先輩とでは、その差は歴然だ。

 

フウに致命傷を与えられた先輩は大人しく試作機のCHARMを片付け、私がメンテナンスで預けていたCHARMを取り出しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これ。もう訓練であんな壊し方しないでね〜」

「あはは…。……善処します」

「ま、私ちゃんとしてはメンテ頻度が増えた方が、ミカちゃんに『貸し』が増えるからありがたいんだけどね」

 

 

私はカイリ先輩からCHARMケースを、受け取りながら苦笑いで返事をした。

 

「でもさ〜、それだって実機としては不安定だから実戦で使うのは危険だよ? もう少し慎重に使って欲しいな」

「そうですね、すみません」

 

先輩の言葉に素直に謝りつつ、受け取ったCHARMケースを開く。

第3世代CHARM『トリグラフ』。

私が使っているのは、そのトリグラフのカスタム機。

通常のブレードモードよりも一回り大きい剣身を持ち、斬撃による攻撃をより強力にした特殊な形態だ。

ちなみにこれは、お姉が改造して使っていた(と言われている)形見のCHARMでもある。

……まぁ、その代償としてなかなかメンテナンスできる人がおらず、使用後には先輩によるメンテナンスが必須なんだけど…。

 

CHARMケースの中には、綺麗に磨かれたトリグラフが鎮座している。

それを見て思わず表情が緩んでしまう。

 

「出た、ミカのニヤけ癖…」

「えっ?」

 

隣にいたフウが呆れたような声で言った言葉に、慌てて顔を引き締める。

うぅ……またやってしまったみたいだ。気を付けていたつもりだったけど、やっぱりまだまだだったか……。

 

「ほら、早く行こうよ。今日はこの前の残党狩りなんだよね?」

「うん、そうだけど。ごめんなさい、カイリ先輩。失礼します!」

 

私は急いでその場から離れるように歩き出す。後ろからは、「また明日ねぇ〜」という先輩の声が聞こえてきた。そのまま廊下を抜けて階段を降りていく。

 

「まったくもう……油断するとすぐああなるんだから。ちょっと人には見せられないほどには気持ち悪いよ?」

「そ、そんなこと言わないでよ! 好きでやってる訳じゃないんだよ!?」

「はいはい、分かってますって」

「むぅ……」

 

頬を膨らませて抗議する私を無視して、フウは先に行ってしまう。その後を追いかけ、工廠科を出た。

 

 

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