人類最後のマスターが車椅子だったら   作:三和

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「アンタ、こんな所で何してるの…?」

 

「久しぶり、ジャンヌ。何って…見ての通り、仕事だよ…私はこの旅館の宿泊受付担当。」

 

一夜明けて閻魔亭にやって来た意外なお客…エミヤさんが先に来てたのと、昨日彼に来た時の事を話してたせいか、私にはそれ程の衝撃は無かった…もちろん、会いたいとは…ちょっと思ってたけどね……まぁ疑問が有るとしたら…本来は座に記録として登録されて居ない彼女が、普通にここに来るのってどう考えても可笑しいんだけど…正直彼女なら武蔵さん並に何をしても不思議じゃないって気がするし…

 

「……本来のお役目はどうしたのかしら?」

 

「それなんだけど…私、気が付いたらここに居たんだよね…カルデアには帰れないみたいだし…タダ飯食らいなんて嫌だから、出来る仕事無いかって聞いたらここに回されたの。」

 

「そう…楽そうな仕事ね。」

 

「いや、結構大変だよ?…そりゃまぁ、マスターやってるよりは楽かも知れないけど…」

 

「……良いんじゃない?命の危機は無いんでしょ?」

 

「…まぁヤバいお客さんはたまに居るけど…従業員が強いからね…」

 

まぁ、女将の紅ちゃんですらかなりの実力者みたいだし…

 

「ふーん……まぁ…元気そうで安心したわ…」

 

最後にボソッとジャンヌが呟いたが、私には何て言ったか聞こえなかった…

 

「……えっと、今の良く聞こえなかったんだけど…何か言った?」

 

「別に…と言うか早く受付やってよ…アンタの仕事でしょ?」

 

ジャンヌがそう言いながらいきなり私の頭に手を置いて、髪をわしゃわしゃと掻き混ぜる…

 

「わっ…いきなり何するの!?」

 

「髪が跳ねてたから直そうとしただけよ。」

 

「コレは元からだよ!?あ~もう…取り敢えずコレに名前書いて…」

 

「……コレで良いかしら?」

 

「うん、OK…じゃ、閻魔亭へようこそ……あ、ちょっと良い?」

 

私はスタスタと私の前を通り過ぎ様としたジャンヌに声を掛ける……ジャンヌの履いていたブーツを雀さんたちが苦労して下駄箱に運んで行くのが見える…

 

「何よ? 」

 

「その格好…」

 

「何よ、似合ってない?」

 

まぁ似合ってるか似合ってないかと言う問いなら、似合い過ぎるくらい似合ってはいる…首元にファーが付いていて、前を開けたコート(いや、もしかして元々閉めない仕様…?)に、かなりぴちっとした材質の服を来ている(エナメルって言うんだっけ…?)上下一体型で上はノースリーブ、下はミニスカ仕様で大胆に更け出された足…私はこの手の服装に詳しくは無いから、何て言う服なのかも知らないけど…まぁその点は今は良い。

 

「いや、めちゃくちゃ似合ってるけど「なら良いじゃない。何が不満なのよ?」えっと…」

 

彼女の不機嫌そうな表情は実際はポーズみたいなもの…この表情のジャンヌは別に怒っていないのを…私は知っている。

 

「……私は別に不満とか無いけど…早めに浴衣に着替えた方が良いよ?今日結構女癖の悪いお客さん泊まってるから…そんな格好見られたらややこしい事になるかも…」

 

「私がそんな奴にどうこうされると「神話に出て来る本物の神が相手で、素手で勝てるなら別に多少殴っても良いけど…火事起こされても困るし」……マジで言ってるの?」

 

「ここ、そう言う旅館だからね…そもそも…ジャンヌみたいな存在が来れるのもそのせいだから……と言うか、知ってて来たんじゃないの?」

 

まぁ殴っても良い、とか言える辺り私も図太くなったなぁ…とは思う。まぁその人(?)最初は私にまで手を出そうとして来たからね……幸い、向こうは奥さん同伴だったからその場で思いっきりぶん殴られて…私は結果的に手を出される事は無かったけど…

 

私は基本的にここから一人で動く事は無いから、これから先も大丈夫だとは思うけど…ジャンヌの場合はお客さんだから、向こうが一人の時に遭遇する可能性は有る…

 

「忠告ありがとう…さっさと温泉でも入って着替えるわ…」

 

「うん、ごゆっくり~……ふぅ。」

 

ジャンヌの姿が見えなくなって私は一息吐く…ジャンヌが来てくれたのは嬉しいけど…今日ちょっとお客さん多いから疲れ気味…あ。

 

「調子はどうでちか?」

 

紅ちゃんが来てくれた。

 

「うん、大丈夫だよ……そう言えば武蔵さんは?」

 

「……あまりにもサボりちゅぎなので、サボれない様にエミヤさまに見張りをお願いしまちた…手が空いたのでアチキは様子を見に来たでち。」

 

あー…まぁそうなるよね…

 

「あー…そっか…まぁ見ての通り私は大丈夫だよ…」

 

「……あんまり大丈夫じゃなさそうでちね。さっさと行くでちよ?」

 

「あー…ごめんね…?」

 

紅ちゃんが私の背後に周り、車椅子のハンドルに手を掛ける……実を言うと…さっきからトイレ行きたくて仕方無かったんだよね…今日何か妙にお客さん多いし、雀さんたちも忙しそうだから黙ってたんだけど…表情でバレちゃったか…と言うか、今の私は霊体の筈なのに何で行きたくなるんだろう…

 

「良いでち……ちょっとここ頼むでちよ。」

 

「ごめんね、終わったら戻るから…」

 

「チュン!」

 

近くに居た雀さんに代わりを頼んで、紅ちゃんにトイレまで連れて行って貰う事に…本当、不便だなぁ…




「ところで…その髪型はどうしたでちか?」

「その…さっき知り合いがお客として来たんだけど、何かいきなりグチャグチャにされて…」

「……お前ちゃまはもう限界の様でちゅし、後で直してあげるでち。」

「……ありがとね。」

「気にしないで良いでち。」
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