人類最後のマスターが車椅子だったら   作:三和

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「あ、そう言えば…」

 

「ん?何?」

 

ジャンヌに助けられつつ…寝巻きに着替えているとジャンヌが口を開く……いや、何でニヤニヤしてるの?物凄く嫌な予感が…

 

「アンタ、例のエミヤと付き合ってるって本当かしら?」

 

「……何で、知ってるの?」

 

少なくともジャンヌにバレる要素は何も無かった筈…いや、本当に何で…?

 

「客が噂してたのを聞いたのよ。」

 

「え…?」

 

何で…よりにもよってお客さんにバレてるの…?私、エミヤさんと付き合ってから、恋人らしい事なんてほとんどやって無いんだけど…

 

「その様子だと、何でバレたのか分からないって感じね?」

 

「うん…確かに付き合ってるのは本当だけど、紅ちゃんに節度有る付き合いしろって言われたから…その、少なくともあからさまにそう見える様な事は何もしてない筈…」

 

「……実際、あの女将にそう言われたのは事実なんだろうけど…結局はアンタがヘタレてるだけだったりしない?」

 

「う…」

 

反論はちょっとしにくいなぁ…

 

「少なくともそう言うのは普通半分は建前で、人に分からない程度で且つ…程々なら問題無いって意味じゃないの?」

 

「そう言うもの?」

 

「アンタ、分かってて聞いてるわよね…?」

 

「……そりゃまぁ、分かるけどさぁ…」

 

単に駄目なら、紅ちゃんも従業員同士の恋愛は禁止って言うだろうしね…

 

「う…良いじゃん、私の勝手だし…てか、結局何でお客さんにバレてるんだか…」

 

「あいつらは雰囲気で分かったとか言ってたわね…ま、当然と言えば当然なんでしょうけど。」

 

「え…?」

 

「いや、ここに来てるのって大抵既婚者じゃない?それも元から大半が人間じゃない連中で基本的に不死…そりゃ伴侶との付き合いも長いでしょうから…そう言う男女間の機微なんて見てれば分かるんじゃない?」

 

「あー…」

 

まぁ、言われてみればそうだろうなって思う…と言うか、よりにもよってお客さんにバレてるのか…どうしよう…ここ常連さん多いし、これから相当弄られるかも…

 

「何凹んでんのよ…そう言うやり取りも結局アンタの仕事の内なんじゃないの?」

 

「いや、だって…別に酒の肴にして欲しい訳じゃないし…」

 

あんまりからかわれるのはなぁ…これでも清い付き合いのつもりだし…エミヤさんなら余裕であしらうんだろうけど…私はどうしたら…とか考えてたらジャンヌが溜め息を吐いた。

 

「溜め息吐かないでよ、これでも本気で気にしてるんだから…」

 

「あのねぇ…仕事の邪魔になるなら、それこそ女将に言って出禁にして貰えば良いんじゃないかしら?」

 

「いや、良いの…?」

 

「アンタの仕事滞るなら他の客の迷惑になるし、普通に営業妨害だから理由にはなるんじゃないの?」

 

「まぁ、確かに…」

 

「ホント、アンタって一々下らない事気にするわよねぇ…」

 

「下らないって…ジャンヌに何が分かるの…」

 

少なくとも、冷やかされて良い気はしないと……まぁ、ここに来る人(?)たち…何だかんだ度が過ぎた弄りはして来ない気はするけどね…そこまで性格的に終わってるなら、それこそ最初から紅ちゃんが出禁にしてそうだし…

 

「へぇ…つまりそれは、私に恋愛経験が無いって?」

 

「いや、無いでしょ?」

 

ジャンヌはあくまで聖女ジャンヌの反転した姿を模して作られた存在…元は座に存在履歴は無かった訳だし、本来のジャンヌとしての記憶もほぼ無いとかって話だった気がする…そう考えたら彼女はまだ誕生したばかり。恋愛経験なんて、当然無い筈…

 

「有るわよ?」

 

「え?」

 

「だから、有るって言ってるのよ恋愛経験。ま、あくまで現在進行形だけど。」

 

「は?え?えぇぇぇぇ「うっさい!」痛っ!」

 

頭を叩かれた…さすがに手加減はしてくれてるんだろうけど、それでもやっぱり痛い…

 

「うー…何するの「アンタねぇ…客から苦情来るでしょうが。夜中に騒ぐんじゃないわよ」う…ごめんなさい…」

 

確かに私が悪いけど、まさかジャンヌに正論で怒られる日が来るとは…いや、でも…本当にあまりに衝撃的で…

 

「えっと…相手誰?私の知ってる人…?」

 

「何でアンタにそこまで言わなきゃいけないのよって、言いたい所だけど…ま、候補は絞られるから黙ってても仕方無いわね…」

 

そりゃ、この場所で現在進行形でとかなったら候補は非常に少ない…まさか同性じゃないだろうし、必然的に武蔵さんや、紅ちゃんは除外…異性で考えても、エミヤさんは私と付き合ってるから無い…で、お客さんの誰かととそこまで深い付き合いしてるとはさすがに思えない…と言うか、お客さんに手を出したりしたらそれこそ紅ちゃんに怒られる…じゃあまさか…!

 

「え?まさか、巌窟王さんと付き合ってるの?」

 

「……ハァ…悔しいけど、付き合うまで行ってないわよ…今は、私が一方的に絡んでるだけね…」

 

「おお…」

 

「何よ、その目は…」

 

ジャンヌの頬が仄かに赤く染まっている…と言うか、まさかあのジャンヌが…うわぁ…何か良いなぁ…私もこれでも女子…人の恋バナはそれなりに大好物。

 

「基本、私があしらわれてるだけだから別に面白い話なんて何も無いわよ。」

 

「それでそれで!?何か切っ掛けとか有るの!?」

 

「……さぁねぇ、改めて考えると私も良く分かんないのよねぇ…何であいつが気になるのか…」

 

……正直私には何となく、ジャンヌが巌窟王さんに惹かれる理由は分かる…ここに居るオルタとしてのジャンヌのクラスは確かアヴェンジャー、復讐者のクラスだった筈…巌窟王さんに確認した事は無いけど、あの人の生涯から察するに…サーヴァントとして召喚されたら、当然あの人も同じクラスになる筈…

 

「巌窟王さんの場合、女性との付き合いは徹底的に避けるだろうしね…本気で猛アピールしないと、中々落とせないと思うよ。」

 

「何よ、アンタ何か知ってる訳?」

 

「まぁ、生涯に関しては色々と…でも、この場では言わない。多分、知らない方がアタックしやすいと思うよ?」

 

でも、こうしてエミヤさんを選んだ私としては…サーヴァントとしてのジャンヌが同じクラスの人に惹かれたんじゃなくて、あくまで自分の素直な感情に従っただけなんだと信じたい…だから、私は余計な事は言わない…一応人間である私と違い、二人はサーヴァント…上手く行く可能性だって元々低いとは思う…だけど、そんな事は一切気にしないでこのままジャンヌに邁進して欲しい…

 

だって、巌窟王さんはもう自分の生涯を終えたからサーヴァントになってる…だったら生前の事は元より、サーヴァントである身の上も気にしないで欲しい…少なくともここでなら、二人は争う理由だって無いからね…

 

「頑張って、応援してるから…痛っ…何するの!?」

 

またジャンヌからデコピンされた…だから痛いって!

 

「うっさい…自分の事、気にしてなさいよ…」

 

正直、今こうやって私にそっぽを向けて悪態吐くジャンヌはもうこのまま抱き締めたいくらい可愛い!……まぁ実際にやったら、確実に本気で反撃されるだろうからやらないけど…

 

「えっ?私の事?私は地道にやって行くから気にしなくて良いよ。」

 

「……アンタ、そんなに悠長にやってる時間有るわけ?」

 

「う~ん…さぁ?」

 

ここに来てからも、私の肉体の方は少しずつ駄目になって行ってるだろうけどね…

 

「さぁって、アンタ「もちろん諦めた訳じゃない。でも、好きな様にやって世界まで救えたら最高だって思わない?」…ぷっ…良いわ、アンタ…本当に良い感じに私好みになったわね…そうね、アンタはそうやってワガママなくらいがちょうど良いと思うわ。」

 

「ジャンヌみたいに?「一言多いわ」痛っ!だから、一々デコピンしないでよ!跡残るかも知れないじゃん!」

 

「良いんじゃない?愛嬌有る様に見えるわよ?」

 

「むぅ…何か、ジャンヌってでっかい子供みたいだよね…」

 

「むっ…聞き捨てならないわね、じゃあアンタは何なわけ?」

 

「私?私は、そうだなぁ…ジャンヌのお姉ちゃんとか?…いひゃい!?「何処がよ、自分がトイレ行きたくなっても分からないし…おまけに自力で行く事も出来無い奴の何処がお姉ちゃんなのよ」いひゃい、いひゃいって!」

 

頬を抓られる…ちょっ!爪!立ててる!

 

 

 

……とまぁそんな感じでじゃれあって、紅ちゃんが怒って注意しに来るまで私たちはその日、騒いでいた…無理なのは分かっててもやっぱり願ってしまう…こんな、穏やかな日常が…続いてくれたらなぁって…

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