ソードアート・オンライン〜アメイジング・フィスト〜   作:明石雪路

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書きたくなったので書き始めました。
「死などう」と並行して書くつもりですが、こっち優先になると思います。許せサスケ。


何の為に

2024年10月24日:15時

 

 

アインクラッド第36層迷宮区。

 

「いってぇいってぇ! せめてこう……もっと愛を込めて斬りかかってこい!」

 

 とある部屋で、戦闘が繰り広げられていた。部屋のランプが赤く明滅しており、アラームが鳴り止まない。嘘だ。僕が止めてないだけ。

 

 次々と斬りかかってくるモンスターどもの攻撃を打点をずらしながら受けていく。

 

 ブーッ、ブーッとひたすらわめき続ける宝箱を無視して、僕は周囲のモンスター達に集中していた。

 ソレは竜人間とも呼ぶべき姿をしていて、悪い言い方をすると二足歩行のトカゲが地肌に鎧を着ている感じだ。

〈サージ・オブ・ドラゴノイド〉。第36層の迷宮区にポップするモンスターの一種だ。片刃の片手直剣と円盾を装備した〈ドラゴノイド〉はこの迷宮区のメインモンスターである。

 それらが僕を囲い、HPを削り切らんと剣を振りかぶっている。

 正面のサージが、剣を振り上げた。たちまち刃が青いエフェクトに包まれる。ソードスキル、〈バーチカル〉を発動させようとしているのだろう。流石にソードスキルは受けたくない。

 

 

 僕は素早く懐に入り込むと、体術スキル〈閃打〉を放った。腕を攻撃して動きを阻害するつもりだったが、レベル差故にサージの腕を肩からへし折ってしまう。

 

 

「あっ、ごめん!」

 

 

 思わず謝ってしまった。煽りに聞こえたのか、サージは雄叫びを上げると盾で殴りかかってきた。そちらは敢えて躱さず肩で受け止める。クリティカルを外したつもりだったが、以外に刺さった。HPバーが0.5%ほど削れる。ダメージは少ないがシンプルに痛い。

 

 

「ッだー……。今のはイイの入ったッ!」

 

 

 先ほどから、僕はひたすら攻撃を躱すのでは無く受け止めてきた。スキル〈戦闘時自動回復〉のスキル上げのためだ。

 チクチク斬られているおかげでジャケットが赤いラインで一杯だ。せっかくマスター革職人に大金はたいて仕立てて貰ったってのに、クソダサスパイダーマン擬きと化している。誤解しないでね、スパイダーマンはかっこいいよ。

 

 

 

「くそ、どうせなら店で安い革装備でも用意しとくんだった」

 

 

 

 スキル育成にダメージを受け続ける必要があるのだが、自分から攻撃を受けに行くのは気分が悪い。早くカンストしろ祈りながら攻撃を耐え続ける。

 そして、〈キャプテン・オブ・ドラゴノイド〉の両手剣スキルによって部屋の隅に吹っ飛ばされたとき、ファンファーレと共に視界の上部にメッセージが表示された。

『戦闘時自動回復スキルの熟練度が1000になりました』

 

 

「やっっっっっと、終わったァ!!」

 

 

 ノルマ達成。僕は歓喜の声を上げ両拳を握りしめた。拳にライトエフェクトが集まる。ソードスキルの合図だ。

 

 システムのアシストに含め、体裁きによって設定以上に加速した右アッパーは〈サージ・オブ・ドラゴノイド〉の剣をたたき割りながら顔面に命中した。

 

 

 サージの顔面は大きく陥没してポリゴン片をまき散らす。HPゲージは黄色を越え、赤に入り……爆散した。

 だが、気を抜く暇は無い。背後から襲いかかる新たなドラゴノイドの攻撃を躱し、〈体術〉の上位ソードスキル、回し蹴り〈日輪〉を繰り出した。燃えるようなライトエフェクトを纏い、コマのように回転して放たれた3連続回し蹴りは囲んでいた4体のドラゴノイドを纏めて粉砕した。

 最後にアラームを垂れ流していた宝箱を踏み砕く。

 

 

 部屋の周りにあった隠しドアは全て閉じ、下級〈ドラゴノイド〉モンスターが数体だけ残った。

 

 

「さて、君たちも逃がさないぜ? おしゃれなレザーバックにしてやる」

 

 

 拳を打ち合わせて構えると、残ったドラゴノイド達は怯えるように喉を鳴らした。

 

 

下層のモンスターハウスで莫大な数のモンスターを狩る。これが僕の最適なレベリング兼スキル上げだ。上位の経験値の多い狩場は上位ギルドがほとんど独占しており、そこで貸しを作りながらローテを組んで狩りをするよりかは人気の少ない下層の狩場にいたほうがいい。デメリットはドロップアイテムのレアリティが前線に比べて格段に落ちてしまう点だが、僕は特に気にしていなかった。

まぁこういう場所でのレベリング理由は他にもあるが…。

 

元モンスターハウスから出て少しすると、後ろから

 

「あーッ、稼ぎ部屋潰されてるじゃんか!」

 

悲鳴のような怒声のようなどちらとも取れる叫び声が聞こえてきた。

 

そういえば一部の無謀なプレイヤーからはモンスターハウスは経験値部屋なんて呼ばれていたか。

 

僕は 〈隠蔽〉スキルを発動させ、忍び足でその場を去った。

 

 一仕事終えて迷宮区から出たとき、メッセージが届いた。なじみの情報屋からだ。フロントランナー諸君がフィールドボスを攻略したらしい。その連絡を受けて僕は嬉しいような、置いてけぼりにされたような気分になった。

 ボス攻略。僕が参加していたのは随分と前の話だ。思い出すと懐かしさより嫌悪感が湧き出てくる。このアバターの何処にあるのかわからない胃がねじれるような感じがして、舌打ちした。

 

 

 

 

 空中城アインクラッドに、そしてソードアート・オンラインというVRMMOに僕を含めて一万人のプレイヤーが囚われてから2年が経過した。一万人いたプレイヤーは六千人近くまで減った。攻略された階層は74層。

 僕は攻略に一切参加せずに、雑魚モンスター狩りを続けている。

 

 

 

 

2024年10月24日:18時

 

 

 43層の転移門から出てきたときには、既に日が暮れていた。

 僕は何度も通った道を行き、なじみの鍛冶屋に向かう。店頭のショーケースには楽器店みたいに様々な武器が並んでいる。性能こそ最前線プレイヤーの物には及ばないが、どれもNPC産の物よりも質は高そうだ。

 ラインナップは武器と鎧、アクセサリーもいくつか飾ってある。この店は3階建てで、各フロアが各装備品をそれぞれ扱っているのだ。

 店名は〈レプラコーン商会〉。ここは、中層~下層プレイヤー向けの装備店なのだ。

 

 

 

 店のドアを開けると中はそこそこ多い人間で賑わっていた。店主はカウンターで武器の点検を行っていたが、僕の姿に気がつくと他の店員に任せてこちらに来た。

 

 

「こんにちは、ジャックさん!」

「どうも、今日も賑わってるね、ネズハ」

 

 

 

 すこし小柄で、やや細い垂れ目。真ん中で分けた髪型も相まってドワーフというかノームめいたこの男はネズハという。このアインクラッドで、数少ない〈SAOプレイヤープランナー〉を営むプレイヤーだ。

 

 

「これから夜の狩りに行く人や、今日の狩りの終わりにメンテをしたい人もいますからね。朝と夕方はいつもこんなです」

「ショーケースにアクセサリーみたよ。また熟練度上がったんだな」

「はい! 装飾品担当のリッカさんが最近やる気で、熟練度がついに700に到達したんです」

「じゃあステータス上昇率も少し上がるようになるね。売り上げも伸びるんじゃ無いか?」

「頑張りますよ! セール始めて、初心者向けの特典もつけて……ってすみません。とりあえず応接室に。」

 

 

 

 

 

 ネズハは、過去に――デスゲーム開始初期の2層で――武器の強化詐欺を行っていた。当時は攻略組から大バッシングを受け、大変だったという。弁償してからも普通の攻略プレイヤーレベルまで戻すのにかなり苦労したらしいが、今では再び生産職に戻り、こうして店の主としてプレイヤー達のSAOライフを支えている。その姿を見ると事情をあまり知らない僕も尊敬の念を抱くというものだ。

 

 

「これが、今日の成果ね」

 

 

 ドサドサとテーブルの上に出てくるのは、先ほど迷宮区で集まりまくった〈ドラゴノイド〉からドロップする強化素材だ。鱗や牙、骨がゴロゴロ出てくる。目玉や精巣は仕舞っておいた。こんなので強化された装備を着るルーキーがかわいそすぎる。

 

 

 

「ありがとうございます! これ、今すごく量が必要でして。アイテムの強化に強化確率ブースト素材ってあるじゃないですか。ウチではお金さえいただければ素材はこちらで用意してブーストするようにしてるんですけど、その在庫が切れ気味でして……。でもこれだけあればしばらくは持ちそうです」

「そりゃよかった。でも君ンとこってブースト費用安いだろ。儲け出てる?」

「ブレイブスのメンバーが上の方で狩りをしてくれてるので、その辺りは大丈夫です。それに、強化が足りなくて死んでしまったら申し訳がないですから」

 

 

 

 じゃあ無料にしろって思ったそこの君。こっちにも生活があることを忘れちゃ困る。

 僕はずっしりとコルの入った金袋を受け取り、ストレージにしまい込んだ。

 

 

 

「あの、ホントにそれだけで良いんですか? 本当ならもう一袋出しても」

「いいのいいの、趣味みたいなもんだから」

 

 

 

 そう言って立ち上がった所で、応接室の扉が二度ノックされた。

 

 

「あのーネズハさん。軍の幹部って人が会いたいと……。あと、ロードジャック? って人も呼べと」

「アーオ、マジかよ!?」

 

 

 平等のために出てる杭を削り取るやべー奴らだ。

 僕は白いシャツにカレーをこぼした時のようなアレな気分になった。ナーヴギアはその感情の変化を読み取り、アバターもアレな気分を表した表情になった。

 

 

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