ソードアート・オンライン〜アメイジング・フィスト〜 作:明石雪路
「ハアアアアアッ」
「ヤアアアアッ」
ジャックとツクヨミ、熟達の戦士が二人係りで矢継ぎ早に繰り出していく攻撃を片手剣と片腕で捌くカイサラの戦闘能力はやはり驚異的だった。
ジャックの右拳のフェイントを挟んで仕掛けたハイキックは打点をずらして難なく受け止め、死角から振り下ろされるハンマーは〈ドールフル・ノクターン〉を正面から打ち合うことでパリィを成功させる。
「チッ……ソードスキルじゃないとダメか!」
「痺れるゥゥ……」
ソードスキルの中でも高位の威力を持つ〈無刀流〉、その通常攻撃ですら受け止めるメタルのボディに、薄刃の片手剣で超重量のハンマーを受け止める怪力と技量。加えて
「奔れ」
左腕の宝石が光る。
全方位に雷が放たれた。まばゆいイエローの稲光がジャックとツクヨミに襲い掛かる。
ジャックは右手を突き出し超硬度のガントレットの掌で、ツクヨミは上半身をすっぽり覆う円盾で防御。そのまま食らえば状態異常を引き起こされる厄介な技だが、防御力の高い二人にとっては脅威になり足りえない。だが、
「拘束しろ」
左腕の種子が脈動する。
ボコボコと玉座の間の床を持ち上げながら成長した木の根が二人の足元にまきつき始めた。ツクヨミは必死に円盾の淵で切ったり引きちぎったりと足掻くが、追いつかない。
一方でジャックは短刀〈天津雪風〉を腰の後ろから抜くと、素早く根を切り払って駆けだした。
走りながら短刀を縦回転をかけて投擲。カイサラは腕を振るって軽く弾いたが、その隙をついて飛び掛かる。だが正面からの攻撃はカイサラが左腕で首を掴んだことで失敗に終わった。
ジャックはまるで幼児の持つ人形のようにぶら下げられて捕らえられた。
「グ………動けね……」
ギチギチと首にめり込むメタルの腕は全くほどける気配がない。もう少し力を入れられたら首がへし折れると直感していた。
「随分と粗末な攻撃だな、自棄になったか」
「ンなわけあるか……ツクヨミ!」
「ジャックさん!」
ツクヨミは盾をなげた。カイサラに当たる軌道ではなかったが、目的はそっちではない。
ジャックは右腕を突き上げると、待っていたかのように円盾が手に収まった。
そして、首を掴む腕に振り下ろす!
ズガァン! と気持ちがいいほどのクリティカル音が轟いた。その衝撃は腕の拘束をとき、前腕にクッキリと凹みを残すほどだった。
ジャックのユニークスキル〈無刀流〉は防御力を参照して攻撃力とするスキルである。では、ガントレットを装備した状態でさらに盾を装備したとき、上昇した防御力に比例して攻撃力が跳ね上がるということは自明の理である。
「フッ!」
首を押さえて苦しむジャックはカイサラの横なぎを食らい、地面を転がった。
すんでのところで盾で防御したものの、タンクとしてのスキルを上げていないジャックはダメージをあまり抑えることが出来なかった。
「フ、私としたことが、これはかなり損傷してしまったな」
左腕の凹みを見て、カイサラは少し嬉しそうに笑った。
だが、もう一つの〈損傷〉を見て、その表情に怒りが孕んだ。
ジャックはポーションを飲み干しながら考える。
奴は脅威だ。高い攻撃力と防御力という基礎ステータスに加えて、雷と木を操る能力を持つ。今は必要がないだけで、オブジェクトをブロックの様に崩すキューブの力も使えるはずだ。
では、力の源はどこから来ているのか?
本来のカイサラをはじめとしたフォールンエルフは聖大樹の力を受けているが、代わりに生木と水の近くにいないと弱ってしまう呪いを持っている。
ツクヨミによればその呪いは未だ健在のはずだが、先ほどからずっと戦っているのにカイサラは弱っている様子はない。つまりこの廃城に水と木が存在するというわけだ。水は外の堀、木は左腕の種子によって補われていると考えるならば、必然的に狙うべき点は左腕の種子と水晶に限られてくる。
そして今。
「貴様……水棲馬の水晶を盗んだのか!」
「そうだよ! そうなっちゃ、水の供給どころか消火も防火も出来ないなあ!」
そう叫んだ瞬間、ジャックの背後、玉座の間から一望できるレドレス城の一端から火柱が上がった。
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