ソードアート・オンライン〜アメイジング・フィスト〜   作:明石雪路

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戦いは終わり、盃を打ち付けあう

「しかし、全員生きててよかったよ」

 

ジャックはそう言って今しがた大量に購入しストレージにしまわれた食材アイテムを確認し、アイテムウィンドウを閉じた。

帽子を外して深深と頭を下げるプレイヤーショップの店主に手を振り、次の店に向かう。

 

 

「おかげでこうしてパーティができますもんね」

 

 

次に向かうのは酒屋だ。羊皮紙と地図を持ったツクヨミが少し前を歩く。

布装備のジャックはともかく、ツクヨミの格好も普段のフルプレートではなく私服だった。

 

 

白の厚手のワンピースの上から藍色のジャケットを羽織り、ベージュのブーツを履いている。何故かいつもの円盾《ピース・ルーラー》を背負っているのが減点と言えるだろう。彼女いわく落ち着かないらしい。

 

 

レドレス城での戦闘後、ジャックの店《Warrior’s Rest》で雑魚寝して一晩を明かした《ガーディアンズ・オブ・アインクラッド》のメンバーは今夜打ち上げパーティをすることになった。

 

 

 

 

シャーロットとドラゴンの2人は調理、《風魔忍軍》とジャック達は買い出し、アルゴはクエストの進行状況の確認として心当たりのある場所をあちこち回っている状況である。

 

 

「しかし、その恰好いいね、似合ってるよ。盾しょってんのが逆にイイ」

「あ、ありがとうございます。背中が軽いと落ち着かないんですよね」

「それわかる、僕もガントレットとか外したばっかの時は足が余計に上がっちゃうんだ」

「ハンマーも吊ろうとしたらドラゴンさんにそれはないって」

「カッコいいのになぁ」

「か、カッコいいんですか? かわいいのではなく?」

「その服装は可愛いし、盾とハンマーはカッコいいよ」

 

 

 

「ふ、ふへへ」

 

 

 混みあがってくる感情を押さえようとした結果、顔面神経痛の患者のような表情になってしまうツクヨミ。

 

 

 

 

 

「なあ、これからどうするんだ? ≪軍≫とか」

「それなんですけど、軍をやめようと思って」

「え、いいの? 止められない?」

「もう決めたので、いいんです。止めようったって、どうせ私に勝てる人いないし」

 

 

 中々パワフルな発言に冷や汗が流れる。

 

 

「それに、やりたいことが見つかりましたから」

「本当か? よかったじゃないか! 何するの?」

「それは……」

 

 

 目をあっちこっちに泳がせて言葉を探し、

 

 

 

「冒険がしたいんです。だからその……付き合ってくれませんか?」

「! 喜んで。僕も誘おうと思ってたところだ」

 

 

 ジャックが手を差し出す。ツクヨミは、その手を握り硬い握手を交わした。

 

 

「じゃあさ、敬語とかやめないか?」

「そうで……そうだね。よろしく、ジャック」

「ああ、よろしく、ツクヨミ」

 

 

 

 

 二人が店に戻ると、風魔忍軍とシャーロット、ドラゴンの四名が調理や飾りつけを行っていた。

 

 

「アルゴは?」

 

 

「レア物の酒を取ってくると言っていたぞ、クリア寸前でアイテムを渡さずに取っておいたクエスト報酬らしい」

『アルゴさんって美味しい食べ物とかも知っててすごいよねε-(`・ω・´)フンッ』

 

 

そこで店のドアが開いた。アルゴだ。

 カウンターに並べられた酒の量を見ると、呆れたように言った。

 

 

 

「オマエラ……それで酒が足りるかっつーノ!」

 

 

そういってアルゴがウィンドウを操作すると、ストレージから50本近く酒瓶や樽をオブジェクト化。大量の酒が並べられた。中にはシェリー樽らしき樽も見受けられる。いったいどこから持ってきたのか。

 

 

「おおー! すげーよアルゴ!」

「は、早く宴会を始めるでござる!」

「ほらリーダー、グラス持って!」

 

 

 早くもメンバーはテキパキと準備を始め、瞬く間にすべてのテーブルが料理でおおわれていく。

 

 

 ツクヨミにグラスを渡されて周りを見ると、それぞれジョッキやグラスを持ってジャックを見ている。

 

 

 

「ほら、リーダー。なんか言えヨ」

 

 

 アルゴに促され、何というべきか迷う。

 少し思案して、ジャックは口を開いた。

 

 

「今回は、みんな力を貸してくれてありがとう。正直だれが死ぬんじゃないかとビビってたけど、全員無事でクエストクリアできたことをうれしく思うよ。

 正直まだあいさつしたいことはあるけど……食事が覚める前に食べようぜ。

 ガーディアンズ・オブ・アインクラッドに、乾杯!」

 

 

 

「「「『「「乾杯!!!」」』」」」」

 

 

 

「正直、アジリティ特化って今はきつくないでござるか?」

「武器性能上げて手数で押し切ればなんとかなるよ」

「一撃食らったら死にかけるのがなんとも」

『私がヘイト集めるからシャルはずっと斬り続けることができるんだよ(・ω・)ノ』

「回避タンクかー」

 

 

「そういえば私はジャックに負けっぱなしだったな、今度予定を開けろ、今度こそ決着を付けようじゃあないか」

「うえええ、そういえばこいつ殺し合いは嫌だけどバトルは好きなんだった」

 

 

 

「これから二人はどうするんダ?」

「なんでこいつはバーチャルの酒でここまで酔えるんだ……?」

「冒険することにしたんだよ、一緒に!」

「ホオ―、じゃあいくつかクエストの情報買わないカ? まだ素人ちゃんが受けるには厳しそうで調査不足なクエがいくつか残ってるンダ」

 

 

 

 

「なあ、それっていつからだ? 我々も少し予定を調整しないと」

『まかセロリ(*^^)v』

「「拙者たちはいつでも暇でござる!!」」

 

 

 

 思いがけない申し出にジャックとツクヨミは目を丸くして顔を合わせ、破顔した。

 

 

 

「それじゃあ次も行くぞ、ガーディアンズ・オブ・アインクラッド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、急にどうしたんだ?」

 

 

宴会が終わった次の日。店の食べ物の後片付けをしていたジャックとツクヨミの元に、昨日『仕事キタ』と帰って行ったアルゴが訪れた。

 

 

アルゴは普段の飄々とした様子はどこへやら、随分と神妙な面持ちをしている。

 

 

「あー、ウーン、そうだナァ……」

 

話があると言って3人でテーブルに着いたものの、なんとも歯切れの悪いアルゴにジャックはゆっくりと口を開いた。

 

 

「なぁ、僕達は仲間だ。そうだろ? アルゴがどんな悩みを抱えているか分からないが、知って力になりたいと思ってる」

「そうで…そうだよ、私もアルゴさんには何度も助けられた。恩返しがしたいんだよ。だからもし差し支えなかったら……話してみてくれないかな?」

「ウッ、親切が骨身に刺さル……」

 

 

胸を押えて苦しそうな反応を見せたアルゴだが、観念したのか口を開いた。

 

 

「ほら、オイラって結構知り合い多いダロ? その中でSAOが始まってからの付き合いのある友達がいてさ、ココ最近は忙しくて連絡取れなかったんだけど、昨日飲み会が終わったあとあったんダ。

『アルゴさん最近メッセージ送っても連絡つかなかったけど、何してたの?』

オイラは言った。

 

『受けてたクエストが特にやばかったカラ……』

『少し前にもアルゴさんって空飛ぶ家に閉じ込められたよね?その時に困ったら直ぐに連絡するって約束しなかった?』

『……ソウデスネ』

『ねぇ、何があったか話してくれる? キリトくんと心配してたんだから』

 

 

「おいちょっと待て、今キリトって」

「ほんとにゴメンナ」

「鼠のアルゴが情報を話したのか! タダで! しかもそのアーちゃんってもしかして」

 

 

 

「それでアーちゃんは言った

『それで、ユニーク使いの人はどこのギルドに入ってるの?』

『それオレも気になるな』」

 

 

「おい、今話に入ってきたやつがキリトか?」

 

 

『入ってないデス』

『ウチのギルドって今人手不足なんだよね、良かったらその人について教えてくれないかな……?』

しかもアーちゃんは血盟騎士団の副団長!」

 

 

「やっぱあの閃光じゃないか!」

 

 

「ほんっとにスマン!」

「ってことは、もう来てるってこと? ≪閃光≫のアスナさんと、≪二刀流≫のキリトさんが」

 

 

 ツクヨミが恐る恐る尋ねると、アルゴは極めて小さな声で

 

 

「多分」

 

 

 そして。

 

 

 

 コンコン、と店のドアを叩く音がした。

 

 

 





 これにて『ソードアートオンライン―アメイジング・フィスト』は完結となります。

 希望があればあとがきだの考えてた話とか書こうと思います。 

 希望がなくても書きたくなったら書こうと思います。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 
 半年くらいで書き切れると思ってたのに二年以上かかっちゃった……。
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