ソードアート・オンライン〜アメイジング・フィスト〜   作:明石雪路

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更新が遅くなってすみません。リアルが馬鹿みたいに忙しくなったのが原因であります。
できるだけ早く更新できるように頑張ります。


陰謀推理

2024年10月25日:PM1時

 

 

 

「なんか変な匂いしませんか?」

「うーん、毒竜の肉を丸焼きはまずかったか」

「変なデバフとか勘弁しろよナ、この後も仕事あるんだからサ」

 

 

 47層、僕の家とバーを兼ねた店、〈Warrior Rest〉のグリルから紫色の煙が燻っていた。鼻孔を不愉快な悪臭がチクチクと刺激してきて、なんだか気分が悪い。

 タイマーが鳴ったので中のブツを取り出す。紫色の表面に茶色の焦げ目がついたステーキが僕ら三人の前に現れた。匂い消しのハーブは一杯乗せたが、特に変わってない。香ばしさの上から煙っぽさと草っぽい匂いがフュージョンしたような匂いがする。臭い。

 

 

「一口目食べて良いですよ」

「遠慮すんなヨ、マスター」

「毒味しろって言って良いよ」

 

 

 二人ともフォークに突き刺した肉の一切れをこちらに差し出してくる。女性二人からアーンされる機会などそうそう無いが、毒々しい肉を食わされる機会もそうそうない。

 観念してまとめてパクリ。咀嚼を始めた瞬間、ジャリジャリとした食感と鼻から突き抜けるような臭み、そして舌を侵食するえぐみが雷のごとく口内を荒らし回り、放たれたイナズマブレイクが僕の味覚を破壊した。

 

 

「オエッ、ウエエエエ…………」

 

 

 ここまでマズい食材アイテムも珍しい。二度と食べるものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。柑橘系の酒を1リットル飲み干して口内をさっぱりさせた僕は、知らん顔してストレージからアイテムを取り出し、アルゴの前に差し出した。

 

 

「アルゴ。コレで何かわかるか?」

 

 

 置かれたのは、今日のクエストで手に入ったアイテム全てだ。

 廃村で討伐したシュマルゴアからのドロップ品と教会の物品をいくつか。撮影した写真も並べてある。

 アルゴは適当に拾った強化素材の骨をいじりながら物色していると、残った竜の肉に突き刺した。

 

 

「まずはこれだよナ、シュマルゴアの肉。この竜は三層のエルフクエで出てくる名前ダ。知らない?」

「僕はやってないから」

「私もです」

「しょーがないな、情報料はタダにしといてヤル。シュマルゴアってのは3種類いるエルフのうち、フォールンエルフと呼ばれる種族の将軍ノルツァーが倒した竜のことダ。エルフクエを進めてもその竜と戦うことは無かったけどナ」

「じゃあ僕らが倒したのは?」

「そいつの子どもじゃないカ? 設定としては。この骨のフレーバーテキストを見てミロ」

 

 

アルゴから受け取った骨のテキストを見ると、〈シュマルゴアのあばら骨。幼体のため、強度はあまり高くない〉と書かれている。

 

 

「幼体にしてはかなり大きかった気がするけど」

「親はもっとデカかったりしてナ。まあそれは置いといて、シュマルゴアが出てくるって事は、フォールンエルフが何かしたってことで、そいつらと戦うことになると思ウ。てか戦ったんだロ? 刀使いと」

「ああ、眼帯の美女だった。火傷痕が残念だったよ」

「多分そいつは〈剥伐のカイサラ〉ダ。超強かったダロ。」

「刀が一回掠めてHPを1割。二度とやりたくないね」

「やっぱり。9層のエルフクエの終盤でも出てくるんだけど、その時クリムゾンよりちょい濃いカラーだったゾ。鬼ツヨNPCと凄腕二人でやっと倒せたって感じ。」

「でも、その割にはすぐに退きましたよね。あっちの方が多かったのに」

「確かに。何でだろうな。」

 

 

 「まだ早かった」とか言っていた気がする。早い? つまりまだ何かをする予定があったということだろうか。

 

 

 

「他に何かなかったカ? こういうイベントはヒントがあるのが普通なんだケド」

 

 

 アルゴに言われてあることを思い出した。少しドロップ品を漁り、埋もれていたソレを引っ張り出す。

 

 

「ナンジャコリャ」

「地下室に何故か綺麗な状態であったんだよ」

「トレーシングペーパーみたいですよね」

 

 

 取り出したのは、十数枚の紙だ。直線や曲線が入り交じった模様が大きく書かれた紙が何枚もあったのだ。ツクヨミの言うとおり、少し透けているのが気になる点である。カイサラと戦った後、地下室の端に転がっていた机の側に散らばっていたのだ。

 

 

 アルゴは何枚か掴んでマジマジと観察を始めた。そしてすぐにあることに気がついた。

 

 

「この右下の円の中にマークっぽいのがあるナ。そっちの紙取ってクレ」

 

 

 紙を渡すと向きを変えて角をそろえて重ね、テーブルの上に広げた。そして重なった模様が一つのエンブレムを浮き上がらせた。氷と雷が交差するようなデザイン。

 

 

「これはフォールンエルフの紋章ダ。あいつらのアイテムには基本的に全部刻まれてイル」

「良く覚えてるなあ。僕そういうの苦手だわ」

「こんぐらい覚えてないと情報屋なんて名乗ってらんないんだヨ」

 

 

 アルゴの生き字引具合に感嘆していると、重なった紙を見てツクヨミが言った。

 

 

「あの、これってもしかして地図じゃ無いですか?」

 

 

 紙の中央には、曲線と直線が重なって一つの模様が形成されていた。円形や六角形といった決まった枠組みの中に部屋のような四角形や階段と思しき円、それらを繋ぐ直線やカーブが並んでいる。浮かび上がったソレは、まさしくどこかのマップだった。

 

 

「何枚かで地図が見えてくるのか。んじゃ、フォールンのマークに会わせて重ねていこう」

 

 

完成してテーブルに並んだのは、三枚の地図だった。

 

 

「これは一層、五層、六層の迷宮区のマップデータだナ」

 

 

 地図を一瞥するやいなや、アルゴはきっぱりと言い切った。

 

 

「ホントォ? そんな昔に突破したマップなんて覚えてるわk

 

 

 アルゴはバサバサとオブジェクト化させた迷宮区マップを広げると、フォールンの地図と並べた。全く同じ構図。

 

 

「すみませんでした」

「まー、アルゴ様のシステム外スキルってヤツダ。もっと褒めても良いんだゾ」

「すごいですアルゴさん! さっきもすぐに推理しちゃうし、流石アインクラッド一の情報屋です!! 生き字引! スパコン! 歩くノイマン!」

(ノイマンは歩けるだろ)

 

 

 目をキラッキラさせてアルゴを絶賛するツクヨミとニヤニヤするアルゴ達を一度宥めると、話を纏めた。

 

 

「纏めよう。

このイベントのボスはフォールンエルフの剣士カイサラ。プラスであちら側のクエを受けたオレンジギルド〈クラッシャーズ〉。

カイサラは一度死んだと思いきやまだ生きていて、何か企んでいる。

ヒントは地図三枚。ここのどこかに行けば何かわかるってことか?」

「いや、その場所『じゃない』迷宮区に行くべきかもナ」

 

 

 アルゴが僕の推測を否定した。ツクヨミもソレは意外だったようで、意見を求めるように僕の方を見たので、肩をすくめた。

 

 

「だって、その地図が必要だったら地下室に忘れていかないダロ。もうその場所で何かをしたから捨てていったとも考えられないカ?」

「じゃあ、何をしたのか知るためにも回っておくべきじゃね」

「……確かにそーだナ。じゃあそっちも回るか。」

「じゃあこの迷宮区何をされたのか、これ以外の迷宮区でこれから何をされるのか調べていくか。っていっても、72層もあるんじゃあ、回るのも一苦労だな」

「エルフクエの延長なら、あんまり高い層まで広がらないと思います」

「とりあえず10層までの迷宮区を見て行くカ。しっかし、それでも時間がかかってしゃーないナー」

「それに敵の数も多い。クラッシャーズって構成員10人以上いたよな」

「軍への報告の限りでは22名です。私も、一度に7人以上の戦闘は自信ないです」

「対複数人の戦闘が出来るヤツの方が可笑しいんだヨ。ツッキーは十分強いヨ」

 

 

 アルゴが苦笑しながら言い、ツクヨミがキョトン顔。

 PK経験浅いのに四人相手に完封できたツクヨミの方がヤバい。一体どこで修行してきたんだ。

 

 

 ソレはともかく、目の前の問題集中しなくてはならない

 三人でうーんと唸って思案顔。といってもアウトロー集団を探してボコるのに取れる手段は一つしか無い。

 

 

「パーティを作ろう。PK野郎どもとタメを張れる、イカした奴らとな」

「攻略組から引っ張るのは無理だゾ。今は75層のフィールドボスに向けてピリピリしてるカラ」

「軍からは?」

「今軍の内部でゴタゴタが起きてて、ちょっと。私が今ここにいるのも軍曹さんに『トップ二人が荒れてる所に強さナンバー2の大尉が出てくるのはマズいっすよ』って言われたからでして」

「じゃあ今暇なヤツは誰なんだ」

「攻略に参加せずに好き勝手レベリングしたり、強さを求めてデュエルしまくったり、アインクラッド生活を気ままに謳歌している奴ら」

 

 

 

 頭が痛くなった。

 




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