世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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協力関係

『本当に私達、戦争をさせられるのかな……』

 

 別世界に召喚されて数日訓練やこの世界に関する講義を受けさせられた私達。

 不安から同じ部屋でベッドに眠る皆に話しかける。

 この世界は戦争の真っ最中で、私達はこの国を勝たせる為に喚び出された。

 それが世界の為だと。

 私達4人は、この世界でも稀なほど大きな魔力を保持しているらしく、周りはそれを絶賛した。

 

『でも、地球に帰る為にはそうするしかないんだよね?』

 

 友達の1人であり、私達の中で1番小柄な体型に違わず怖がりな璃里ちゃんが震える声で確認する。

 それに答えたのはいつも冷静で皆の注意役だった冬美ちゃんだ。

 

『そうね。今は、そうするしかないと思う。他に行ける場所もないし』

 

 その声には現状に不満と憤りが籠っていた。

 

『お父さんとお母さんに会いたい……』

 

 璃里ちゃんが皆の気持ちを涙声で口にする。

 そこで渚ちゃんがガバッと体を起こした。

 

『だーいじょうぶ! 誰も居なくなったりしないよ! ボク達皆で帰るんだから!』

 

 いつも明るく、皆を引っ張ってくれた彼女が今も明るさを振り撒いてくれる。

 

『渚ちゃん……』

 

 彼女だって不安がないなんて事は無い。

 怖くない筈はない。

 それでも私達を元気付ける為に明るく振る舞ってくれる。

 

『冬美、璃里、彩那。絶対に皆で帰ろう! それまで、倒れちゃダメなんだから!』

 

 そう言って渚ちゃんが璃里ちゃんの頭を撫でる。

 彼女の存在こそが、私達の支えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色々と言いたい事はあるけど、事情は大体呑み込めたわ」

 

 犬の魔獣を共同で封印した後に、近くの人気のない公園で高町なのはとユーノという名の喋るフェレットから事情を聞いた彩那は顔を手で覆う。

 

 事故により海鳴市にばら蒔かれたジュエルシードというロストロギア。

 それを回収するために魔力資質の高い高町なのはに協力してもらっているらしい。

 

「1つ確認したいのだけれど、本当に自分から協力を申し出たのね?」

 

 包帯越しに真剣な表情で問いかける彩那になのはは思わずコクコクと頷く。

 事情を話す前に簡単な自己紹介は既に済ませ、互いが同い年であると分かっている。

 

「う、うん。ユーノ君が困ってたし、わたしが力になれるならって」

 

「それなら、良いのだけど……」

 

 私達の時はそうじゃなかったから、と呟くがそれは相手には聞こえなかった。

 そこで喋るフェレットのユーノが問いかける。

 

「あの。あなたが使っていた魔法。僕達が使うミッド式とは違う魔法体系のようですけど、アレはいったい」

 

 目の前のフェレットが本来の姿じゃないなと思いつつ、そこは無視して話を進める。

 

「ホーランド式。私はそう呼んでる」

 

「ホーランド……」

 

 聞き覚えが有るのか無いのか。ユーノはその名を口にしつつ記憶を探る。

 

「ねぇ。高町さん? 話を聞いてると貴女、魔法も戦闘も素人の様だけど、このままそのジュエルシードとやらの封印を続けるつもり?」

 

「え? う、うん……」

 

 相手の重たい口調に何か悪いことをした気分になるなのは。

 しかしそれでも彼女の意思は固く、自分の想いを口にする。

 

「ユーノ君の力になりたいっていうのもあるけど、ジュエルシードで大変な事件が起きるのならわたしはそれをどうにかしたいの」

 

「なのは」

 

 少し躊躇いがちだが、真っ直ぐ彩那を見つめて答えるなのは。

 その瞳に彩那は。

 

「似てる……」

 

「え?」

 

 そこで話は終わりと彩那立ち上がった。

 

「あ、あの……」

 

「もしもジュエルシードの発動を感知したら、私も出来る限り現場に向かうわ。それと、困った事が有ったら念話で連絡を取りましょう」

 

「念話?」

 

 なのはが首を傾げると彩那はユーノに視線を向ける。

 

「はい。大丈夫です。なのは、念話については後で。あの、手伝ってくださるという事で良いんですよね?」

 

「えぇ。この町で起きている以上、他人事では居られないもの。あぁ、もちろん私が先にジュエルシードを見つけた場合もそちらに渡すと約束するわ。変な揉め事はゴメンだから」

 

 ユーノからすれば破格の好条件な提示だった。

 なのはは魔法の才能はピカイチだが、やはり経験という面では不安が残る。

 先程の動きを見るに、彩那はかなりの経験豊富に見えた。

 だからこそ、管理外世界の彼女が何故魔法と関わったのか疑問なのだが。

「あ、あの! ありがとう、彩那ちゃん!」

 

「えぇ。それじゃあ高町さん。また会いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからジュエルシードが発動したら現場で合流という形で協力する事となった魔法少女と元勇者。

 数回の共闘で基本的に彩那が敵を抑え込み、なのはが封印という戦術が自然と出来上がっていた。

 

 最初の出会いから少し経ったある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、酷いわね」

 

 大きな樹木の幹が町の1部に広がっている。

 不幸中の幸いなのは、幹が動いて破壊活動をしたり、今より広がって被害が広がる様子が無いことか。

 

「手早く終わらせるに越した事はないけどね」

 

 誰に告げるのでもなく呟く彩那。

 4枚あるカードの内、1枚を取り出す。

 そこで、誰かの声が聞こえた。

 辺りを見渡すと、自分と同じくらいの女の子が樹の幹の上に居た。

 尤も、それほど高い位置ではないが、すぐ側に車椅子が転がっていることから、足が不自由なのかもしれない。

 

「大丈夫ですか?」

 

 近くに寄ると向こうもこちらに気付く。

 取り敢えず幹から下ろすかと女の子がいる場所に登った。

 

「ゴメンなさい。少し我慢して」

 

「え? あっ!?」

 

 座っていた彼女を抱きかかえてそのまま飛び降りた。

 出来る限り衝撃を抑えて着地すると、向こうがマジマジと彩那を見る。

 包帯で顔を覆っているのだから当然かと思っていると、返ってきたのは意外な言葉だった。

 

「あの、もしかして綾瀬さん?」

 

「は?」

 

 突然名前を呼ばれて驚いていると、向こうが情報を足してくる。

 

「わたし、去年同じクラスやった八神はやてやけど。覚えてへん?」

 

「……ごめんなさい、覚えてないわ」

 

「あはは。仕方ないなぁ。ほとんど話した事ないし」

 

 八神はやてが苦笑する。

 去年1ヶ月程行方不明だった綾瀬彩那。

 彼女が復学した際には顔を包帯で覆うという非常に目立つ風貌でやって来た為に、同じクラスだったはやても覚えていた。

 ただ、入れ替わるようにはやては身体の調子を理由に休学したので、彩那とその友人だった少女達が行方不明になる前は顔を合わせれば挨拶するくらいでまともに話した事はなかった。

 

「ありがとな。まさか、綾瀬さんに助けられるとは思わんかったわ」

 

「いいえ。それよりも────」

 

 そこでなのはから念話が入る。

 

『彩那ちゃん、ごめんなさい、わたし!』

 

 何やら焦っているような声音だ。

 

『この事態もジュエルシードに因るモノよね? 私も手伝いたいけど、巻き込まれた人が居て。その子を安全な場所まで送りたいのだけど。そっちは任せて良いかしら?』

 

『────っ!?』

 

 巻き込まれた、という台詞に息を呑むなのは。

 

『わ、分かった! こっちは何とかするから、その人をお願い!』

 

 念話が終わると八神はやてが不思議そうにこちらを見ている。

 

「ごめんなさい。この事態にちょっと困惑してて」

 

「あーうん。なんやろなコレ?」

 

「さぁ?」

 

 適当にしらばっくれて、八神はやてを車椅子に乗せる。

 幸い車椅子は壊れていなかった。

 

「取り敢えず、安全な場所まで送るわ。また何かあったら大変でしょう。自宅、でいいのかしら?」

 

「ありがとうございます」

 

 そのまま八神はやてを自宅まで送り届ける。

 目的地まで着くと、大樹が消えていった。

 八神はやてにはお礼にと家に招かれたが、まだ被害に遭った人が居るかもしれないからと断った。

 

 現場に向かう途中でユーノから念話を貰い、それに従いつつも被害に遭った人が居ないか確認しながら人気のない空地に移動すると、そこにはジュエルシードの爪痕が見える場所で高町なのはは佇んでいた。

 

「高町さん」

 

 声をかけるとなのははビクッと肩が跳ね、こちらへ振り向く。

 

「あ……わたし……」

 

 気落ちしている様子のなのはがポツリと話始めた。

 今日のお休みで、ジュエルシードの存在を感じ取りつつも気のせいだと思って無視してしまった事。

 そのせいでこの事件が起きてしまったと後悔を口にした。

 それを黙って聞き終えると彩那は分かったわ、頷く。

 

「高町さん」

 

「っ!?」

 

 平手打ちのポーズを取る彩那になのはは思わず目を瞑る。

 ペチン。

 しかし当たったビンタは、痛みなどない。撫でるようなモノだった。

 

「……」

 

 頬を押さえて目を丸くするなのは。

 

「これで制裁は終わり。貴女も、これ以上引きずるのはやめなさい。それだけ反省すれば充分よ」

 

「でも!」

 

 尚も罰を求めるなのはの頭に彩那は手を置く。

 

「高町さん。貴女は良くやっている。充分頑張ってる。それは私が保証する。だから不必要に自分を責めないでほしい」

 

「彩那ちゃん……」

 

 笑顔を浮かべる訳でなく、ただ頭を少し撫でると手を離した。

 しかしその表情は本心からなのはを労っていることが分かる。

 

「何だか彩那ちゃん、同い年とは思えないんだけど……」

 

「そうかしら?」

 

「ねぇ彩那ちゃん」

 

「ん?」

 

「ありがとう」

 

 彩那にお礼を言うとなのはは待機状態のレイジングハートに触れる。

 次はこうはならないようにと自分を戒めながら。

 

 

 

 

 

 

 

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