世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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消える勇者

「酷い……」

 

 ベルカ・ヒンメル王国の首都へ侵攻したホーランド軍。

 街の惨状を見て璃里が呟いた。

 誰もが疲れた顔で痩せこけ、ボロ布を身に纏っている。

 

「投降したベルカの兵から街の現状は聞いていたけど……」

 

 冬美も苦い表情で辺りを見回す。

 街の住民は不安半分期待半分と言った様子で進行するホーランド軍を見ていた。

 街の門を開けたのはここの民衆であり、もうどれだけこの国の為政者は民から見放されているのか解る。

 そこで渚が念話で話しかける。

 

『んじゃ、ボクと彩那は城に行くから、冬美と璃里は外からの見張りとここの人達の対応よろしく!』

 

『うん。ヴォルケンリッターには気を付けて』

 

『彩那。どうせ渚がいつも通りバカをやらかすだろうから、出来る限り制御しなさい。それが貴女の仕事よ』

 

『分かってる』

 

『……2人共酷いこと言ってる』

 

『あはは……』

 

 話を終えると彩那が続く兵に命令を出した。

 

「第二、第三部隊は私達に付いてきてください! 城へ向かいます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城門を前にする彩那達。

 人が空を飛べるこの世界では、城を囲う門と空中には見えないバリアが展開されている。

 バリアを破壊することも出来るが、労力が大変な上に目立つので空から攻めるのは論外だ。

 

「どうする? 正面は第二部隊に任せて、第三部隊を分けて左右から攻める?」

 

 正面は勿論多くの兵を割いているだろう。

 引き付けて貰って、左右から王族の確保が最も被害が少ないと考える彩那。

 

 その考えを渚が否定する。

 

「いやいや。もうどう見ても敗北確定なんだから、ちょっと脅して降伏勧告しようよ。きっと皆白旗挙げるって」

 

「え? 渚ちゃん!」

 

 渚の考えに彩那は勿論のこと、後ろの兵もそんな馬鹿な、と言わんばかりの顔になる。

 鼻唄を唄いながら門の前に立つと霊剣を振るって城門を斬り裂く。

 

「えい!」

 

 斬った門を蹴り倒すと、舞い上がる砂塵。

 

「者共ぉ! 出会え出会えぇい!」

 

「渚ちゃん。それ違う」

 

 砂塵が晴れると庭園には40程の魔導師が待ち構えていた。

 殺気立っているベルカ兵を前に渚が努めて軽い口調で話しかけた。

 

「みなさ~ん! もう勝ち目も在りませんよー! 大人しく投降しませんかー? そっちの安全は保証しますよー!」

 

「あーもうっ!!」

 

 渚の勧告に相手は攻撃を返し、彩那が渚の前に出てシールドを張った。

 

「いつもいつも思いつきと勢いで行動して!」

 

「ごめんごめん。流石に降伏すると思ったんだけどなぁ……」

 

 頬を掻いて誤魔化す渚。

 今更簡単に降伏するならこんなところに残ってないのだ。

 

「左お願い!」

 

「任された!」

 

 射撃が薄くなった一瞬を狙って渚が彩那のシールドから飛び出す。

 

「勇者斬りぃっ!」

 

 Vの字に霊剣を振るって相手の腕を斬り、戦闘不能にさせる。

 彩那も敵兵を殺害した。

 

「私達は城の中で王族を押さえます!」

 

「皆はこの場をよろしくねー!」

 

 それだけ言ってこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城の内部に突入すると、やはり敵兵は必死な抵抗を見せる。

 しかし彩那は違和感を覚えていた。

 

(守護騎士達が現れない?)

 

 そろそろ、いや庭園の時に現れても良い筈だが、未だにこの国の最高戦力である筈のヴォルケンリッターが現れない事を不思議に思う。

 もう、王の間に到着しそうなのに。

 

「ここだね」

 

 渚が玉座に扉を眺める。

 

「ようやく、この国との争いも終わる。それが終われば、帝国との本格的な戦いで」

 

「それを終えて、ボク達の世界に帰れる」

 

 お互いが頷き合い、扉を開いた。

 中の部屋には成人するかしないかくらいの男性が1人玉座に座っていた。

 その容姿から、相手を確認する為に1歩前に出る渚。

 

「貴方が、ラインハルト王子?」

 

「そうとも。私がこの国の第一王子のラインハルトだ」

 

 疲労した顔の王子に彩那は質問を続ける。

 

「ヴォルケンリッターはどうしました」

 

「役に立たない騎士なぞ不要。既に首を刎ねてやったわ。さぁ、終わりにしようか」

 

 ヴォルケンリッターの首を刎ねたという言葉に驚いていると、ラインハルトの槍からカートリッジシステムの薬莢が吐き出される。

 増強した魔力を使っての突進。

 その勢いのままに彩那を弾き飛ばした。

 

「彩那っ!?」

 

 心配する一瞬にラインハルトは渚に向けて槍を振るった。

 

「こ、のぉっ!」

 

 1撃目は避け、2撃目を受け流す。

 渚はラインハルトとの剣激を演じながら苛立ちをぶつける。

 

「いい加減降参しなよ! これ以上意地だけで暴れても、心象悪くするだけだよ!」

 

「そうしたい気持ちもあるが、生憎と私にも退けない理由が有ってな!」

 

 カートリッジを3つリロードし、攻撃に転ずる。

 渚は敢えて力まず、態と弾き飛ばされた。

 壁に着地した渚は膝のバネを利用してラインハルトまで真っ直ぐに跳ぶ。

 

「ハァッ!」

 

 高速で突っ込んでくる渚にラインハルトは槍で防ごうとするも、渚は槍の長柄を斬る。

 ラインハルトを通り過ぎて着地した渚。

 破壊された柄を捨ててラインハルト短くなった得物を逆手に持って渾身の力を込める。

 

「しつこい、なぁっ!」

 

 霊剣で防御した渚は力比べを演じるが付き合う気はなく蹴り飛ばそうとする。そこでラインハルトの背後に近づいた彩那の剣が迫る。

 彩那が振るった聖剣がラインハルトの首を通過し、血飛沫と共に宙を舞う。

 

「渚ちゃん大丈夫!」

 

「あ、うん。彩那、助かったよ」

 

 倒れたラインハルトの遺体を抱き止めて彩那に礼を言う。

 遺体を床に置いて立ち上がると彩那が呟く。

 

「強かったね……」

 

「そうだけど。それ以上に、何か、鬼気迫るモノがあった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人が住んでいない無人世界と呼ばれる世界で彩那は空に浮かびながら雲を眺めていた。

 バリアジャケットに該当する勇者服を纏い、手には霊剣を持って腕を垂らしている。

 少し離れた位置にいるフェイトは真剣な表情で新型のバルディッシュを手にしている。

 ようやく彩那の左腕が完治し、以前約束した模擬戦の約束が叶う形となった。

 地球からリンディとエイミィがモニターしており、なのはとアルフは現地に居る。

 クロノとユーノは闇の書の情報を探す為に2日前に無限書庫の在る本局だ。

 クロノが居たらこの状況で模擬戦なんてと苦い顔をしそうなので、都合が良かったとも言える。

 

『それじゃあ、2人共、準備は良い?』

 

「いつでもどうぞ」

 

 エイミィの問いに単調な言葉で返す彩那。

 しかし、フェイトの方で待ったがかかる。

 

「ちょっと待って。アヤナ、包帯外さないの?」

 

 いつも通り顔に包帯を巻いている彩那にフェイトが問いかける。

 リミッターがかかった状態では本気で、という約束に反する事となる。

 

「別に包帯(これ)を取ったからって劇的に強くなる訳でなし。それにね、全力っていうのは出して貰うモノじゃなくて出させるモノよ。手加減されてると思うなら、外させて見せなさい」

 

 挑発とも取れる彩那の発言にフェイトはムッとする。

 侮られている。

 そう感じたフェイトはバルディッシュを握り締めた。

 再度エイミィからの合図がかかる。

 

『模擬戦、始めるよ! よーい、スタート!』

 

 模擬戦が始まると同時にフェイトが高速で動いて彩那に接近した。

 バルディッシュを振り下ろす。

 体を横にズラして避け、追いかけるように横薙ぎに振るうバルディッシュが勢いづく前に足で押さえる彩那。

 身動きが取れなくなった一瞬に霊剣の峰打ちで肩を打つ。

 

「うぐっ!」

 

 痛みで呻くと彩那が下がって距離を取る。

 それを追いかけてフェイトも攻撃を繰り出す。

 

「バウンドシールド」

 

 バルディッシュと彩那のシールドがぶつかり、1秒後にフェイトが弾かれる。

 

「なら!」

 

 姿勢を直したフェイトがバルディッシュのカートリッジを1つ消費し、魔力の刃を出す大鎌の形態に変化させる。

 これならバウンドシールドで弾かれる心配はないと見越して。

 

「ランサー!」

 

 雷の槍も左右に展開して3方向から接近する。

 先ずは先行する2本の槍を回避する彩那。

 態と避けさせて彩那の動きを制限し、近づくフェイト。

 その大鎌が振るわれようとする瞬間に彩那は手にしていた霊剣を上へと投げ、両の手の平にシールドを展開すると、バルディッシュの魔力刃を挟み込んだ。

 

「えぇっ!?」

 

 あまりにも予想外の防御方法にフェイトが驚きの声を上げる。

 

「……バルディッシュみたいな大きな武器。それも手足の伸びきってないテスタロッサさんはどうしても大振りな動きが多くなる。至極読みやすいのよ」

 

 言うと、マントの裏側から誘導弾が飛び出してフェイトに直撃する。

 上に投げた霊剣をキャッチするが、明らかに隙だらけなフェイトを追撃してくる様子はない。

 その余裕に苛立ちが強くなる。

 

(でも、やっぱり強い!)

 

 防御と回避という点だけならシグナムよりも巧いと確信する。

 彼女のようなパワーは無いが、まるで飛んでいる布を叩いているようだった。

 

(なら────)

 

 フェイトは切り札を切る覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト! そこだ! いけいけーっ!!」

 

 少し離れたところでフェイトを応援しているアルフになのはは苦笑いを浮かべている。

 なのはからすれば、どっちにも勝って欲しいし、どっちにも負けて欲しくないと言ったところだ。

 そんな結果はあり得ないとは理解しているが。

 

「それにしてもアヤナの奴、完全にフェイトをナメてかかってるね! ムカツクったらないよ!」

 

 アルフが不満なのはそこだった。

 彩那は先程から対して攻撃せずにフェイトの攻撃を受け流す事が大半だ。

 その手加減がご主人様を馬鹿にされていると感じているのだ。

 

「別に彩那ちゃんはフェイトちゃんを下に見てる訳じゃないと思いますよ?」

 

 手加減しているのは間違いないが、馬鹿にしているとかでは無いだろう。

 

「でも、ちょっとはアヤナの鼻を明かしてやりたいじゃないか。もう少し、こっちを頼ってくれても良いんだし」

 

 確かに、どうにも彩那は過保護なところがあると思う。

 

「うん。それには賛成、かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人の模擬戦はフェイトが仕掛けるも全て彩那に受け流されていた。

 

「ハーケンセイバー!」

 

 振るったバルディッシュから三日月状の刃が高速回転しながら接近してくる。

 同時にフェイトは彩那の背後に回り、別の魔法を使う。

 

「プラズマスマッシャー!」

 

 雷の砲撃が彩那に向かって放たれる。

 急上昇して回避すると迎え撃つ形でフェイトが待っていた。

 フェイトの攻撃を防いで鍔ぜり合いになる。

 そこでフェイトが話しかけてきた。

 

「もしかしてアヤナ、母さんの事をまだ気にしてる?」

 

「……そうね。気にしてないと言えば嘘になるわ」

 

 目の前の少女の母親を奪った。

 フェイトにとってプレシアが良き母だったのかは知らないが、彼女なりの愛情が有ったのは知っている。

 だからプレシアを殺した自分は怨まれて然るべきとは思っていた。

 鍔ぜり合いを解くも、2人は目まぐるしく移動しながら交差し、ぶつかり合う。

 

「テスタロッサさん。貴女こそ、その件で私に言いたい事が有るんじゃないの!?」

 

 彩那がフェイトを剣で弾き飛ばすと動きが止まった。

 フェイトは静かに自分の想いを話し始める。

 

「確かに、母さんの事でアヤナに思うところが無いかって訊かれたら、まったく無いとは言わないよ。ううん。もしかしたら、事件の後はアヤナを憎んでいたのかもしれない」

 

「当然の感情ね」

 

 大切な人を殺されたのだ。その人が善人悪人かはともかくとして、大切という理由だけで憎悪する理由になる。

 フェイト自身、しばらくは渦巻く負の感情をコントロール出来ずに苦しんだ。

 

「だけど、リンディ提督やクロノにエイミィ。アースラの皆。ずっと傍に居てくれたアルフ。それに、ビデオレターでやり取りしてたなのは。たくさんの人に支えて貰ったから、こうしてアヤナと向き合える」

 

 もしもただの次元犯罪者として過ごしていたなら、フェイトの憎しみの矛先は彩那に向いていたかもしれない。

 だけど、皆がフェイトの心の癒してくれた。

 優しくしてくれて、諭してもくれた。

 

「それに、海鳴に住んで、なのはと同じ学校に通って、アリサやすずか。他にも友達が出来て。あの事件で母さんがやろうとしたことのせいで皆が居なくなってたかもしれないと思ったら物凄く怖くなったんだ」

 

 アリサやすずか。なのはの家族や彩那の両親。クラスメイトの皆や街の人達。

 自分の母があの人達を消滅()し去る寸前だったと理解して震えた。

 

「だからあの時、母さんを止めてくれたアヤナには感謝してる。母さんにそんな罪を背負わせなかった事を。私は、母さんを止めることが出来なかったから」

 

 勿論、殺人という方法には反対だし、痼が無いと言えば嘘になる。

 だけど────。

 

「あの時、母さんから私とアルフを守ってくれて、ありがとう」

 

 プレシア攻撃からフェイトとアルフを守ってくれた事への感謝を述べた。

 お礼を言われた彩那は複雑そうな顔をしていたが。

 

「母さんの事はこれでおしまい。次はアヤナの事だよ」

 

「私の?」

 

 フェイトの言葉が理解出来ない彩那。

 

「私もなのはも、アヤナの事を知りたいし、知って欲しいって思ってる。だから教えて欲しいんだ、アヤナの事」

 

「……別に、話す事なんて……」

 

 自分の過去。

 勇者として戦争をしていた頃の事を話すのは辛い。

 失った親友達を強く思い出すし、何より。

 

(怖いのね、私は……)

 

 過去の自分を知られてなのはやフェイト達との関係が完全に断たれるかもしれないのが怖いのだ。

 地球に戻ってから執着するモノは無いと思っていたが、失いたくないモノは有ったらしい。

 

「きっと簡単に教えてくれない事は分かるよ。だから先ずはアヤナに認めて貰う事から始めるんだ」

 

 これはある意味、なのはがフェイトにしてくれた事だ。

 あの時とは状況も関係も違うが、それでも認めて貰う為に行動してるのは一緒だと思う。

 そこでフェイトのバリアジャケットが変化する。

 マントが消え、バリアジャケットの形も若干変わっている。

 ソニックフォーム。

 防御を捨ててスピードに特化させたフェイトの新しい形態(ちから)

 

「行くよ、アヤナ」

 

 宣言と同時にフェイトが動く。

 速度に特化したフェイトのスピードは先程の比ではない。

 彩那も意識を防御に全振りしているくらいだ。

 何度も向かっては衝突し、離れていくフェイト。

 しかしそのヒット&アウェイの戦いも1撃の度に彩那は対応力を上げていく。

 

(スピードに慣れられたら負ける! すぐに決着をつけないとっ!)

 

 フェイトは最大速度で彩那に向かって突っ込んだ

 

「ハァアアアアアアッ!!」

 

 相手の気合いに迎え撃つ形で彩那は霊剣を構える。

 交差する2人。

 

「あうっ!?」

 

 振り切れずカウンターを喰らった脇腹を押さえるフェイト。

 彩那の方は────。

 パサリと左頬の包帯が斬られて垂れる。

 

「はぁ……まさか1撃貰うとは思わなかったわ……」

 

 溜め息と共に自分の失態を恥じると、リンディから通信が入る。

 

『2人共、模擬戦はそこまでにしましょう』

 

 時間的にも丁度良いし、フェイトが既にかなり消耗している。

 

「はい……」

 

 少しだけ残念そうな顔をするフェイト。

 するとなのはとアルフが近付いてきた。

 

「フェイトちゃん! スゴくかっこ良かったよ!」

 

「なのは。ありがとう」

 

 手を合わせてはしゃぐなのはと照れているフェイト。

 それを見た彩那は少し前にアリサが言っていた事を思い出す。

 

(すぐに2人でイチャついて困るって愚痴ってたけど。なるほど)

 

「彩那ちゃんも、やっぱり強いね!」

 

「おまけみたいな扱いね」

 

「そんな事ないよー?」

 

 まぁ、今回はフェイトの姿がより印象に残ったのだろう。

 そこでエイミィから帰ってくるように指示が入る。

 

『みんなー、早く帰って来て! お菓子とお茶を用意して待ってるから』

 

 エイミィの言葉にはーい! という返事が返って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンディ達が各世界で蒐集を行う守護騎士を追うも、彼女達は管理局との接触を避ける為にこれまでよりも遠い世界に現れる事が多くなり、中々に足取りが追えないでいた。

 仮面の男の方はあれから現れる様子もない。

 闇の書の頁が埋まっていく中で時間だけが過ぎて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八神さんが入院、ですか……」

 

 帰りのHRを終えて下校しようとすると、別クラスの担任に呼び止められる彩那。

 そこで初めて八神はやてが倒れて入院したことを知る。

 以前から車椅子ではあるものの、休学する程ではないのではないかと思っていたが、想像以上に身体の調子が悪いらしい。

 

「それでね、良かったらなんだけど、近々八神さんのお見舞いに行ってくれないかな? 2人共、仲良いでしょう?」

 

「まぁ、比較的には……」

 

 学校内で孤立している彩那が話すのがたまに学校へやって来るはやてくらいだ。

 だけど友達かと言われれば首を傾げるところでもある。

 しかしはやての事が気になるのも事実だ。様子を見に行くくらいは良いだろう。

 

「分かりました。一度お見舞いに行ってみます。病院は海鳴総合病院ですか?」

 

「えぇ。そうなの。1人でも行ける?」

 

 地球に戻って世話になった病院だ。

 

「はい。大丈夫です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病院に行く前に翠屋へ寄る。

 店内に入ると学校帰りの高校生や大学生。そして何人かの常連が居てそこそこに忙しそうだ。

 彩那に気付いた美由希が近付いてきた。

 

「あれ? 彩那ちゃん? なのはならこっちに来てないよ?」

 

「いえ。今日は高町さんに用じゃなくて……」

 

 仲の良い同級生が入院したのでお見舞いの手土産にここのお菓子を買いに来た事を説明する。

 

「そっかそっか。ちょっと待ってて。おかーさーん、カスタードのシュークリーム2つ、お持ち帰りでー!」

 

 笑顔で注文を取り、厨房へと知らせに行く美由希。

 数分後にはシュークリームが2つ入った箱を渡された。

 

「そのお友達、早く良くなるといいね」

 

「はい。本当に」

 

 注文した品を美由希から受け取って彩那はそう返した。

 八神はやては善い子だと思うし、元気になって欲しいと彩那も思う。

 彩那は病院までの移動時間と面会時間を頭の中でシミュレートしながら翠屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海鳴市に住む小学生の綾瀬彩那ちゃん(9歳)が今日の夕方4時以降の行方が掴めなくなりました。彩那ちゃんが購入したと思われるシュークリームがバス停付近に落ちており、警察は何らかの事件に巻き込まれた可能性が有るとして捜索を────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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