世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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既視感

 はやてはアースラの中でそれぞれの戦いを見守っていた。

 記憶を失い、無力となった彩那の救援に間に合った事にホッと胸を撫で下ろす。

 そして、自分達の家族が戦っている相手に目を大きく開かせた。

 

「あの子達は……」

 

 自分の家族である守護騎士達と戦う勇者達を見る。

 それは彼女が知りながら別の存在だ。

 だけどその姿は、はやてが知る少女達だった。

 

「綾瀬さん……それに……」

 

 行方不明になった少女達と似た誰か。

 だけど彼女らは今の自分達よりも明らかに年齢が上だ。

 この光景ととても良く似た戦いを八神はやては知っている。

 

「あれ、は……」

 

 頭の中の霧を払うように何度も頭を振る。

 そんなはやての様子をリインフォースが申し訳なさそうに見ていた。

 

「主……」

 

「リインフォース。綾瀬さんとウチの子らの間に何があったんや?」

 

 きっと、主として自分が知らなければいけないこと。

 しかしリインフォースはそれを拒否した。

 

「あの戦争について語るには、彼女の記憶が必要です。今は語れない無礼をお許し下さい」

 

 リインフォースは画面に映る、記憶を失って怯える少女を見る。

 自分達だけの視点ではどうしても印象に偏りが生じる。

 何よりリインフォース自身が直接経験した者の口からあの戦争の結末を知りたい。

 リインフォースはモニター越しに映る鍵となる少女に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マテリアルに窓を破られ、外へ移動した敵を追って戦闘に向かったなのはとフェイト。

 それと入れ代わるようにユーノが綾瀬親子に近づく。

 

「治療に入ります! 大丈夫だから!」

 

 ユーノが彩那の母親の治療に入る。

 魔法による身体の検査を行う。

 綾瀬瑶子の容態は見た目ほど酷くない事にユーノは安堵した。

 

「頭を少し切ってるのと、軽度の打撲だね。このくらいならすぐに治るよ!」

 

「ほんとう?」

 

「うん! 任せて!」

 

 ユーノの話を聞いて安堵する彩那。

 その普段と違う様子にやはりユーノも戸惑うが、今はそんな事を考えている場合じゃない。

 

(そっちは任せたよ、なのは、フェイト……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 室内から空中戦に移行し、4人2組の衝突が行われている。

 左右から向かってくるマテリアルになのはとフェイトは背中合わせになって迎え撃つ。

 

「シュートッ!!」

 

「ファイアッ!!」

 

 アクセルシューターとプラズマランサーを発射し、マテリアルの行動を制限する。

 シュテルは相殺。レヴィは回避を選択して対応した。

 フェイトのランサーを突破して突っ込んできたレヴィが苛立たしい声でバルディッシュに似たデバイスを振るってくる。

 

「もう! 僕達の邪魔になる悪者をやっつけたいだけなのに! 邪魔するなよ!」

 

 ボーイッシュな喋り方をする自分と似た少女の言い分にフェイトは眉間にシワを寄せながらも攻撃を回避する。

 

「そんな事はさせない!」

 

 なのはもシュテルと撃ち合いながら、対話を試みる。

 

「どうして彩那ちゃんを襲ったの! なにか理由があるなら話して!」

 

「彼女は我々の目的である砕け得ぬ闇の復活に対する最大の障害です。最優先で排除するのは当然の事」

 

 炎を宿した砲撃魔法を回避するなのは。

 なのはとフェイトがマテリアルと意思疎通を行うのは本人の性格に依るところが大きいが、相手が何らかの目的を持って行動しているからだ。

 友達(彩那)を傷付けようとしたことは許せないが、それはそれとして困っているのなら力になりたいという想いもある。

 もしかしたらそれを聞けば戦わずに済むかもしれないという考えもあった。

 管理局としても、魔力による過去の再現ではなく独自の意志を持って動く彼女らの目的を知る必要がある。

 戦闘を続けながら2人は訴えを続ける。

 

「今のアヤナは戦えないんだよ! それにアヤナの母さんまで巻き込むなんて!」

 

「そんなの知らないよ! 僕達にはかんけーないことさっ!!」

 

 爆発的な加速で迫ってくるレヴィ。

 性能(スペック)はほぼ同等だが、思いっきりが良い分、レヴィの方が直線的な動きや1撃の威力が優れている。

 対してフェイトは機動力などの動きの柔軟性と対応力では上である。

 

「いっくよー! バルニフィカスッ!!」

 

 バルディッシュのザンバーモードのような大剣へとデバイスが変化し、フェイトに襲いかかる。

 大振りで振るわれる雷光の剣をフェイトは軽やかに避ける。

 

「このっ!? ちょこまかとうっとーしいな! 気持ちよく斬られてよ!」

 

「そういう訳にはいかないよ!」

 

 回避しながらフェイトはこの状況に既視感を覚える。

 すぐに記憶は掘り返され、フェイトはレヴィの攻撃を回避しながら頭の中で戦術を組み立てた。

 

「これで決まりだぁああああっ!!」

 

 高速で接近して袈裟斬りでデバイスを振り下ろしてくるレヴィ。

 それに対してフェイトはバルディッシュを上へと放り投げる。

 フェイトの行動に驚いたが、レヴィが本当の意味で目を丸くしたのはこの後の事。

 手の平に小さくシールドを展開してレヴィの剣を挟んで止めた。

 

「ウソォッ!?」

 

「ランサーッ!!」

 

 少し前に模擬戦で彩那にされた防御方法。

 即座にプラズマランサーを2発用意してレヴィに当てる。

 プラズマランサーが当たり、強制的に後退させられると同時にバルディッシュをキャッチしてバインドを展開する。

 

「なぁっ!?」

 

 手足を伸ばす形で拘束されるレヴィにフェイトはデバイスを突き付ける。

 

「時空管理局として。レヴィ、貴女を拘束します!」

 

 

 

 

 

 

 フェイトがレヴィと戦闘をしている中でなのはもシュテルと激闘を繰り広げていた。

 

「エクセリオンバスターッ!!」

 

「ディザスターヒートッ!!」

 

 互いに砲撃魔法をぶつけ合う。

 相殺すると同時にシュテルが次の行動に出た

 

「パイロシューターッ!」

 

 炎の球がなのはに迫るが、距離を取ってから射撃魔法で撃ち落とす。

 その間にもなのはは対話を試みる。

 

「ねぇ! 砕け得ぬ闇ってなんなの? どうしてそれを蘇らせる必要があるのかな? 誰かを傷つけてまで!」

 

「質問ばかりですね。ですが、すんなりとその問いに答える必要はありません」

 

 シュテルが周囲に誘導弾を生み出して自身と共に接近してくる。

 互いの杖がぶつかると用意していた誘導弾がなのはの背後から襲いかかってくる。

 なのははシュテルの胸を押した反動で大きく後退して誘導弾の隙間を通って避ける。

 体勢が整う前に砲撃魔法を撃とうとするシュテルだが、なのはの触れた胸から時間差で発動するバインドが展開されて縛られた。

 

「ごめんね。今は大人しくしてて。後で事情を聞かせてもらうから」

 

 フェイトとなのはが同時にマテリアル2人を拘束に成功する。

 ここはフェイトに任せて彩那とその母親の様子を確認したくて場を離れようとすると、シュテルがポツリと呟く。

 

「いいえ。我らはまだ敗けていません」

 

「え?」

 

 シュテルの言葉と同時に紫色の砲撃魔法が降ってきた。

 唐突な攻撃に対応しきれずに直撃するなのはとフェイト。

 

「まったく、情けないぞ、シュテル、レヴィ」

 

「王さまーっ!」

 

「申し訳ありません、王よ。不覚を取りました」

 

 シュテルの謝罪にうむ、と返す第3のマテリアル。

 下りてきたのははやてにそっくりな少女だった。

 バリアジャケットは白と黒を基調としたはやてと違い、紫と黒を基調にしており、髪は灰色に毛先が黒。

 はやてに似た少女はデバイスをなのはとフェイトに向ける。

 

「我は王のマテリアル。ロード・ディアーチェ。塵芥共に我が臣下を傷付けた礼をしてやろう」

 

 新しい敵の登場になのはは少しだけ思考をズラす。

 

(彩那ちゃんのそっくりさんとか出てこないよね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海鳴の別の空では、闇の欠片に依って生み出された勇者を夜天の騎士達が迎撃に当たっていた。

 

「イフリートキャノンッ!」

 

 冬美が撃った炎の砲撃魔法を回避するザフィーラ。しかし砲撃魔法の直線に彩那が空に撒いた凧型の盾に当たると横へと曲がる。

 その先にはシャマルが居る。

 

「くっ!?」

 

 肩を掠めるがどうにか直撃を避ける。

 

「シャマル、無事か!」

 

「えぇ!」

 

 肩を押さえつつ治療に入るシャマル。

 シグナムとヴィータも苦戦を強いられている。

 

「でりゃあああああっ!!」

 

 ヴィータがアイゼンのロケットを噴かせて璃里に接近しようとするが、周辺に散らばる爆発する鎖の束が邪魔をして上手く近づけない。

 

「ヴィータ! 後ろだ!」

 

 シグナムの警告にヴィータは体を回転させて近付いてきた渚を弾く。

 逆に迫ってきたシグナムに対して璃里が鎖を伸ばして接近を止めさせる。

 空という広大なフィールドである為に仕方ないが、目まぐるしく対戦相手が変わる状況に守護騎士為は抑え込まれている。

 足し算ではなく掛け算に出来るのが連携(チームワーク)の真髄だ。

 守護騎士の連携が拙い訳ではないが、やはりチーム戦では向こうが上手と認めざるをえない。

 

(クソ! バラけさせようとしても、誰も孤立しやがらねぇ!)

 

 必ず4人1組か、2人2組を崩さずに行動する。

 しかも組み合わせが変わると連携のパターンも変わる為、頭がこんがらがってくるのだ。

 それに────。

 

「あーもう! やっぱり強いなぁ! うんざりするね!」

 

 最初は人形のように虚ろだった瞳が時間が経つ事に眠りから覚めるように人格を取り戻していく。

 それに応じて連携も上がるのだから始末に負えない。

 

「璃里! フォーメーションYで行くよっ!」

 

「いや、知らないからね! そんなの!」

 

 そう言いつつ目眩ましの閃光が発生する。

 一瞬だけ視界が奪われると渚が突っ込んできた。

 

「せいやぁ!!」

 

「ナメんなっ!」

 

 ヴィータが迎え討つつもりでアイゼンを振るう。

 しかし、アイゼンの槌は渚の体を空振った。

 

(幻術魔法!)

 

 そう頭が過ったと同時に背中に痛みが走る。

 空に鮮血が舞う。

 

「ヴィータッ!」

 

 シグナムが援護に入ろうとすると、無数の炎の剣が襲いかかる。

 

「くっ!?」

 

「お前達ベルカとの戦いも終わらせて、こっちは帝国との戦いに備えなきゃならないのよ。大人しくここで消えなさい」

 

 苛立たしげに宣告する冬美。

 いつの話をしてんだ! と思わなくもないが、そんな事を口に出す余裕がない。

 そこで状況に変化が起こる。

 

「捕まえたっ!!」

 

 突如、璃里の胸から手が生え、そこにはリンカーコアが握られている。

 シャマルが動きを止めた璃里のリンカーコアを捉えたのだ。

 動いていては難しいが、動きを止めてしまった為に、敵のリンカーコアを捕捉し、このまま破壊する事を可能にした。

 

「ごめんなさい……」

 

 目を瞑ると同時に手を閉じて、璃里のリンカーコアを破壊する。

 

「あ……」

 

 リンカーコアを破壊した事で璃里の存在が掻き消える。

 心が戻ったからこそ仲間がやられた事に動揺する勇者達。

 その動揺を突いてザフィーラが冬美の首根っこを掴んだ。

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

「このっ!? 調子に乗るなっ!」

 

 ゼロ距離で砲撃魔法を撃ち込もうとする冬美。

 しかしそれよりもザフィーラの魔法の方が早かった。

 

「鋼の軛ぃっ!!」

 

 冬美の内側から無数の棘が生え、体の中から貫いていた。

 ゴフッと血を吐いてザフィーラが手を放して落下していく間にその体も消えていった。

 

「こんのぉっ!!」

 

 怒りと焦りに身を任せた渚がシグナムに剣を振るう。

 それを鞘で受け止めると同時に押さえ込むシグナム。

 

「……再び、本当のお前達と戦ってみたかったが、残念だ」

 

 カートリッジを消費してレヴァンティンが炎に包まれる。

 

「紫電一閃」

 

 シグナムの刃が渚の体を斬る。

 落ちて消えていく渚を見ながらシグナムは呟いた。

 

「だが、お前達との戦いは愉しかったぞ」

 

 

 仲間がやられたのを見て残された彩那が信じられないと言った様子で震えている。

 

「璃里ちゃ、冬美ちゃん……渚ちゃん……っ!?」

 

 動きを止めた彩那にヴィータが接近する。

 とっさにバウンドシールドを展開してヴィータの攻撃を止める。

 打撃攻撃に対して絶大な防御力を誇る盾。それをヴィータはアイゼンの中に残っている全ての弾丸を消費する。

 

「ぶっ壊れろぉおおおっ!!」

 

 バウンドシールドを破壊して彩那の胸を穿つ。

 路面に向かって叩き落とされる彩那。

 血を吐いて地面に剣を突き立てて杖代わりにして立ち上がる彩那。

 

「わた、し達は……帰るんだ……みんなで、海鳴に……」

 

 あぁ。なんて勘違い。

 今居る此処こそが海鳴だと言うのに、彼女達はその事に気付いていない。気付くことが出来ない。

 未だにあの世界で戦争を続けているのだ。

 

「……あの時とは、逆になっちまったな」

 

 自分達が主を連れて逃げたあの森での戦いのこと。

 

「もう戦争は終わったんだ。だからもう寝とけ……」

 

 この悪夢から解放してやらなければならない。

 たとえその存在が魔力で生まれた贋作(ニセモノ)でも、仲間を失った悲しみと戦争をしている苦痛は本物だから。

 

「じゃあな」

 

 アイゼンを彩那の胸に振り下ろして決着をつけるヴィータ。

 彩那の贋作が消えたことを確認すると、リンディから通信が入る。

 

『お疲れさま。と言いたいのだけれど、まだ事態は解決していません。疲れているところ悪いけど、なのはさんとフェイトさんの援護に向かってくれるかしら?』

 

「了解しました」

 

 将としてシグナムが答える。

 ヴィータは彩那が消えた痕を見つめていたが、後味の悪さを切り換えるように空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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