世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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stsってスバルよりもティアナの方がサブ主人公っぽく感じる。
長くなりそうなので分けます。
アンケートでヴィヴィオ&アインハルトが票をぶっちぎってるの意外でビックリした!


番外編1ー2:お食事会【前】

「さて、申し開きがあるなら聞きましょうか?」

 

 バインドでぐるぐる巻きにされたティアナとスバルはスターズの隊長であるなのはとヴィータの到着と同時に尋問のような物を受けている。

 

「身体を休める時間を削っての無理な自主訓練。それも数日に渡っての。周囲の人もそれとなく止めていた筈よね?」

 

 王剣を地面に突き刺して仁王立ちする彩那に2人は視線を逸らす。

 ここ最近、明らかに無茶な訓練を続ける2人に輸送係のヴァイスを始め、何人かの隊員がそれとなく止めるように忠告したが、届くことはなかった。

 

「知ってるかしら? 訓練場を使用する場合、無条件に仕事扱いになってお給金が発生するのを。この場合は残業扱いで記録されるし、これ以上は労働規定に引っかかるのだけど?」

 

 正確には訓練場の設備(照明含む)などを使用すると、自動的に中の職員の労働時間が加算される。

 普段の訓練では教導に当たっているなのはやヴィータが休憩時間などを報告して記録された訓練時間から休憩時間を差っ引いて給与に反映される。

 これらを下手に後から弄ると書類の改竄が疑われて後々に少々面倒な事になるのだ。

 

「今回は貴女達の監督不届きよ、高町一尉にヴィータ三尉」

 

「すみません……」

 

 教導官としても、スターズの隊長としても謝罪するなのは。

 彩那となのはは階級は同じだが、六課内での権限は彩那の方が上である。

 

「とにかく、明日から2日間、貴女達には休みを取って貰います。朝はシャマル医務官のところで簡単な検査と、デバイスはメンテナンスを兼ねて提出。いいわね?」

 

「ま、待ってください!」

 

 バインドを解除して決定事項を伝えるとティアナが意見する。

 

「もう少しだけ! もう少しだけ時間をください! スバルとの連携もようやく形になってきたんです! だから──―」

 

「ちょっと、ティア〜ッ!?」

 

 これ以上はマズいと思ってスバルが止めに入るが、当の本人は止まってくれない。

 そんなティアナに彩那は呆れから息を吐いてジロリと睨んだ。

 首から上を包帯でぐるぐる巻きという異様な姿の彩那に睨まれてティアナが怯む。

 

「何を勘違いしてるのかしら? 私は貴女達に休んで、とお願いしてる訳じゃないの。休みなさいと命令してるのだけど。これ以上駄々をこねるつもりなら、しばらくは現場への出動も無しになると思いなさい」

 

 彩那の警告にスバルは驚きから瞬きをし、ティアナは不満そうに唇を噛んだ。

 

「……言う事を聞かない奴は使わない、ということですか?」

 

「ランスター二士。貴女は疲労と睡眠不足が見て取れる人間に車の運転をさせるの? 貴女達が今やってるのはそういう事よ」

 

 タクシーやトラックの運転手が目に隈を作っていたとして、そんな人物に運転の仕事をさせるなら、その会社は明らかに問題だろう。

 

「部下のご機嫌取りで事故を起こすかもしれない人間に仕事を任せる程、私達は馬鹿じゃない。まさか陸士学校を優秀な成績で卒業して、災害現場で経験を積んだ貴女達にこんな当たり前の事を言わないといけないとは思わなかったわ」

 

 落胆した仕草を取る彩那。

 彼女をよく知る者からすれば、2人を挑発するような彩那の言動に違和感を覚えるだろう。

 しかし、これまで碌に会話も無かった2人からすれば、自分達の努力を上から一方的に否定し、邪魔しているように感じられる。

 普段ならもう少し頭が回り、言われた事を反省し、一言謝罪すれば済む話だが、焦りと疲労から視野が狭まっているティアナにはそうする余裕がない。 

 

「とにかく、これ以上人件費がかさむだけの無謀な努力は止めなさい」

 

 その言葉が決定打となり、ティアナの中で不満が噴出する。

 

「貴女に……貴女に何が分かるって言うんですかっ!!」

 

 決壊したダムのように感情を吐き出し始めるティアナ。

 

「少しぐらい無茶をしないと、私は周りに追い付けないんです! 特別で優秀な綾瀬副部隊長には私の気持ちなんて絶対に分かりません!!」

 

 ティアナはこの機動六課への配属が決まった際に公開されている隊員のデータには目を通している。

 ホーランド式という珍しい術式を操り、華形ではない質量兵器の捜査を請け負う部署でなのはと同じ一尉へと出世し、六課の副部隊長に収まっている。

 つまりはそれだけ優秀、という事である。

 幼少期には魔法に出会ったばかりのなのはに魔法戦闘の手解きもしたと聞く。

 そんな特別を体現したような人物に自分の努力を無謀と切り捨てられたのだ。我慢出来る筈もない。

 

「なにも失敗したことのない! 失ったことのない貴女に、凡人の私の気持ちなんて理解できないでしょうねっ!!」

 

「ティア! 落ち着いて! ね?」

 

 暴言とも取れるティアナの発言にスバルが腕を掴んで止める。

 彩那の言葉にスバルも思うところはあるが、自分達の非を認めるくらいの冷静さはあった。

 

「お前いい加減に──―」

 

 ティアナの言葉に思うところがあり、苛立ちから前に出るものの、彩那がヴィータの肩に手を置いて制する。

 

「言いたい事はそれだけかしら? で? それが貴女の今の状態に対する言い訳になるとでも?」

 

 くだらないと言わんばかりに冷たい視線を2人にぶつける。

 そこでなのはが彩那に発言した。

 

「綾瀬副部隊長。ちょっと良いですか?」

 

「どうぞ、高町一尉」

 

 ありがとうございます、と礼を言ってからなのはは発言する。

 

「取り敢えず、明日──―あぁ、もう今日か。お昼に模擬戦を行ないますので、その結果を見てから対応を決めるのはどうでしょう? 2日休んだ後だと、せっかく2人が練習したフォーメーションの質が落ちるかもしれませんし」

 

「……それは教導官としての判断と受け取っても?」

 

「もちろんです。もしも問題が起きたのなら、その責任は全て私が負います」

 

 責任は全て自分が負う、というなのはにティアナとスバルは申し訳無さが無条件に襲う。

 

「高町一尉がそう判断したのなら、私がこれ以上言うつもりはないけれど。いいのね?」

 

「はい」

 

 頷くなのはに彩那が引っ込むと、なのはは教え子であり、部下でもある2人に笑みを向ける。

 

「今聞いた通り、お昼の模擬戦で2人の努力の成果を見せて貰うから。それまでちゃんと身体を休める事。良いね?」

 

 これ以上は譲歩しないと釘を刺すなのはに2人は了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の仕事は書類仕事に変更し、昼はスターズによる模擬戦が行われようとしている。

 見学スペースでシグナムを除いたライトニングの3人と、スターズの副隊長のヴィータと彩那が居る。

 そこでエリオが小さく手を上げて質問する。

 

「あの……どうして綾瀬副部隊長がここに?」

 

 滅多に顔を見せない人物がこの場にいる事に、理由なく不安を覚える。

 

「あぁ。早めに書類仕事が終わったからたまには見学にね。気にしないでいいわ。私の事は置物とでも思いなさい」

 

「は、はぁ……」

 

「無茶言わないでよ彩那……」

 

 彩那の言い分にフェイトが呆れた様子を見せる。

 それはそれとして、今から始まる模擬戦はフェイトにとっては、少々憂鬱だった。

 

(最初からそうする予定だったとはいえ、ね……)

 

 腕を組んで模擬戦の見学をしている彩那へ視線を移し、数日前の会議の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。今日の会議やけど……」

 

 部隊長である八神はやてが端末から資料を見るように指示する。

 レリックを狙う、未だに足跡を掴ませない敵。

 この間のホテル・アグスタでの戦闘後の調査結果をまとめた資料がフェイトの口から説明される。

 

「判明しているのは優秀な転移魔法を使える者が向こう側に居る、という事実です。魔力による痕跡から人物の特定を急いでますが、今のところは……」

 

「そっちは頼んどる鑑識待ちやね。それじゃあ次の……たぶん今はこっちの方が問題やから」

 

「と言うと?」

 

「ティアナのことや」

 

 はやての言葉に全員があぁ、と息を吐いた。

 

「ここのところ、深夜まで自主訓練を頑張っているみたいね。褒められる事じゃないけど」

 

 自主的に訓練する事は悪いことではないが、何事にも限度がある。

 訓練ばかりしていて現場に出動出来ませんでは話にならない。

 

「なのはの訓練だって相当キツイ筈だし、流石にこれ以上は……」

 

 2人の体調を心配するフェイト。

 そこでヴィータが発言する。

 

「問題は、スバルはともかくティアナが言うこと聞くかだな。力づくで従わせるって手もあるが、出来ればしたくねぇし」

 

 スバルはティアナに付き合っているだけだからティアナを正気に戻せば問題ない。

 だが、今のティアナは他の人間の意見に耳を傾ける余裕がない。

 力づくで言う事を聞かせても、その不満が任務中に噴出して予想外な行動を取らせないとも限らない。

 

「いっその事、訓練中にもっと追い込んでみるのはどうだ? 自主訓練など行えなくなるくらいに」

 

「簡単に言うなよシグナム。そんな事したら最悪エリオとキャロにまで影響が出んだろ」

 

 シグナムの提案をヴィータが却下する。

 それでティアナが止まる確証はないし、そんな状態では現場への出動はほぼ無理。ついでに同じ訓練を受けているエリオとキャロにまで負担を強いる結果となる。

 そうなれば、この場にいる保護者(フェイト)が黙ってないだろう。

 

「グランセニック陸曹はこの前ランスター二士と話したのでしょう? どうでしたか?」

 

「あ〜。ありゃダメッスわ。自分に自信がないくせに、自分の考えが正しいと思い込んでやがる。下手にアイツの考えに干渉しても、反発されるだけでしょうね」

 

 彩那の質問にヴァイスが首を横に振って返す。

 ヴァイスの言うに、ティアナは凡人だから人より多く努力しなければならないらしい。

 

「魔力は俺の倍以上。そんで近中遠と距離を選ばずそれなりに戦えて、執務官を目指してるだけあって頭も良い。これで自分を凡人扱いとか、他の部署の魔導師に言ったら速攻でハブられるかイジメの的ですわ」

 

「そもそも、この隊に誘われた時点で凡人の評価が不適切過ぎますからね」

 

 機動六課はその性質上、人選にはかなり気を使っている。命の危険が伴い、前線に向かうフォワードは特に、だ。

 本人の自覚が無いのだろうが。

 少なくとも現時点で言えば、フォワード4人の中で1番引く手数多となるのはティアナだろう。

 それだけ彼女の能力は管理局員向きなのだ。

 

「やっぱり1番の問題はコミュニケーション不足や。今思えばティアナには特に気をつけなアカンかったのやろなぁ」

 

「どういう意味、はやて?」

 

「うん。エリオとキャロはフェイトちゃんを始め、わたしらと面識があるやろ。スバルも以前なのはちゃんに助けられたのがきっかけで管理局に入った子やし。だけど、ティアナだけは顔見知りですらないわけや」

 

 指摘されてなのはの顔が後悔に少しだけ歪む。

 なのはからすれば、4人の対応に差をつけたい訳ではないが、それが今回は裏目に出る形になってしまった。

 ここにいる全員が書類上でティアナの生い立ちを知っている。

 彼女が何故執務官に拘っているのかも。

 だからそれだけで相手を知った気になり、ティアナ・ランスターという1人の人間と向き合う機会を減らしてしまった。

 もちろんもう少し信頼関係が構築されれば、今回のような問題にも対応出来たが、そうなる前にこの問題が浮上してしまった。

 そこでアインスが発言する。

 

「そうなるとやはり、プライベートな面も含めて気軽に話し合いが可能な場が必要ですね」

 

「とは言うてもな〜。むりやり部屋に呼び出してなのはちゃんとタイマンさせても意味ないやろし。先ずは凝り固まったティアナの考えを解すところから始めんと……」

 

 う〜ん、と皆で考えていると、ツヴァイが小さく挙手をする。

 

「え〜と、お食事会、というのはどうでしょう? おいしい物を食べれば、きっとティアナも話してくれると思います」

 

 ツヴァイの案にはやてが笑みを浮かべて頭を撫でる。

 

「リインはえぇ子やね。でもそれだけやとちと弱いかなぁ」

 

 いきなり食事会などされても戸惑うだけだろう。

 それにティアナみたいな生真面目なタイプだと反発される怖れもある。

 しかしここで彩那がツヴァイの意見を推す。

 

「いえ、案外良いかもしれません。お手柄ね、ツヴァイ曹長」

 

「ほ、ほんとうですかー!?」

 

「本気なん、彩那ちゃん!?」

 

 意外な人物からの後押しにツヴァイとはやてが驚く。

 

「小さなパーティーとか。そういう雰囲気なら、ランスター二士も弱音を吐き出しやすくなるかもしれません。もちろんその前にある程度冷静さを取り戻させる必要はあるでしょうが。それならむしろどん底に叩き落した方が……」

 

「彩那ちゃん?」

 

 何やら物騒な単語が出た気がする。

 考えが纏まったのか、彩那が案を出す。

 それらを聞き終えて、この場にいる者。特になのはとフェイトにはやてが難色を示した。

 

「それだと、彩那ちゃんが嫌われ者にならんか?」

 

「構いません。私はフォワードメンバーと関わる機会が多い訳ではないですし、こういう時の為の副部隊長()だと思ってます」

 

 ヘイトを買うのは自分の役目と言わんばかりの態度だ。

 実際、一緒に現場に出るなのは達に負の感情を持たれるのはよろしくない。

 部隊長のはやても同様だ。

 その点、彩那なら都合の良い立ち位置なのは事実。

 それに納得出来るかは別にして。

 

「ランスター二士の体調や出動の可能性も踏まえて、そう悠長に構えている余裕は無いと思いますが?」

 

 そう言えば、はやて達がどう決断するのか理解しての発言だった。

 少し悩んだ後に、はやて達は断腸の思いでその案を通すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 要するに、彩那にヘイトを溜め、それとなくなのはかヴィータがフォローする形で入り、模擬戦にこじつける。

 後はなのはが教導官として2人の相手をし、適当なところでお灸を据える意味も兼ねて撃墜。

 後の反省会でやんわりと問題点を指摘しつつどうにかティアナの冷静さを取り戻させる。

 そこからパーティーでティアナの心の内を開ければ良いと思う。

 ついでになのはがどういう方針で訓練を行なっているのかも説明する必要もある。

 

「そろそろなのはも休ませねぇとな」

 

「なのは、部屋に戻ってもずっと皆の訓練映像の記録を見て、動きや陣形のチェックをしてるんだよ。私が言っても中々休んでくれなくて」

 

「なのはさん。訓練中でもずっと僕達のことを見ててくれるんです」

 

 そんな会話をしているとフェイトがハッとなって彩那に念話を繋ぐ。

 

『彩那。もしかして、今回の件でなのはもついでに休ませようとしてる?』

 

『そうね。記録に残らない分、高町さんの方がタチが悪いのよ。それにワーカーホリックに関して言えば、彼女は未遂の要注意人物だから』

 

 以前熱が出る寸前まで管理局の仕事と魔法の訓練を行なっていたなのはだ。その時は彩那が強制的にストップをかけたから大事にならずに済んだが、こういうのは忘れた頃に繰り返す物だと彩那は思ってる。

 

『ありがとうね、彩那……』

 

『テスタロッサさんがお礼を言う事じゃないけど……受け取ってはおきましょう』

 

 そこで念話を切ると、彩那がエリオとキャロに話しかける。

 

「2人共、見学することも大切な訓練よ。分からない事や気になった点があれば、私達に質問して。特にサポートタイプのルシエ三士は視界を広く保って行動できるのは必須だから」

 

「は、はい!」

 

 彩那の言葉に緊張した様子で答える。

 模擬戦の観戦に集中する。

 ただ、あまり褒められた内容ではないが。

 模擬戦を観ていたヴィータが段々と不機嫌そうな顔になっていく。

 3人の模擬戦に首を傾げるエリオにフェイトが話しかける。

 

「どうしたの? エリオ。気になることがあるなら言っていいんだよ」

 

「あ、はい。なんて言うか、危ないなぁって思って」

 

「わたしも思いました。スバルさんが捨て身というか……」

 

 エリオとキャロの感想にフェイトが困った顔で笑う。

 角を立てずに説明しようとするが、上手く纏まらないのだろう。

 そこで吐き捨てるようにヴィータが言う。

 

「正解だ。あんなモンは勝つ為の作戦でもなんでもねぇ! ティアナのヤツ、なに考えてんだ!」

 

 ある程度は予想していたが、思った以上に酷い戦い方にヴィータは不快感を隠しもしない。

 

「ホテルでの件で犯した失態を取り戻そうと躍起になった結果かしら。それでナカジマ二士を危険に晒してたら世話ないわね」

 

 ヴィータの彩那の会話にエリオとキャロが頭に? を浮かべている。

 

「身も蓋もない言い方をするなら、ランスター二士が良い格好する為にナカジマ二士を捨て駒にする戦い方という事よ」

 

「その上、アタシらが教えた技術や戦術をガン無視して模擬戦してやがる! あんな付け焼き刃が通じるわけねぇだろうがっ!」

 

 教えた側からすれば、自分達が教え込んだ事を全否定されているに等しい。

 

「そろそろ決着ね」

 

 正面から向かってくるスバルをなのはは相手にせず、ひらりと回避し、反対側に居たティアナに突っ込んで行った。

 慣れない砲撃魔法の準備に入っていたティアナはそれを取り止めて突っ込んでくるスバルを避けようとするが、なのはがバインドで拘束する。

 

「イタァッ!?」

 

「キャッ!?」

 

 そのまま2人は激突し、体勢を崩すと、ダメ出しとばかりになのはが複数の射撃魔法でティアナとスバルを撃墜した。

 スバルの引いたウイングロードから落ちていく2人をなのはが魔法のネットを作って地面に落ちないようにする。

 2人は意識を失っているのか、微動だにしていない。

 

「ふむ。まぁ過程も含めて概ね予想通りの結果だったわね。ヴィータ三尉からしての教え子の評価は? 5段階評価で」

 

「んなもん0に決まってんだろ! こっから説教コースだよ!」

 

「手厳しいわね。じゃあ私は新しい事に挑戦しようとする意気込みだけは評価して1にしておきましょうか」

 

 そう言うと、軽く伸びをする彩那。

 

「そろそろ戻るわね。八神部隊長の手伝いをしなきゃいけないから」

 

「あ、そうだね。それじゃあ2人共。後でね」

 

「え? フェイトさん?」

 

 この場を離れる彩那とフェイトにエリオとキャロが不思議に思っているが、ヴィータが2人に指示を出す。

 

「わりぃけど、急いでバケツに水汲んで来てくれ。2人分だ」

 

『は、はい!』

 

 ヴィータの指示にエリオとキャロが慌ててバケツに水を汲みに行く。

 

「さってと……」

 

 訓練場の地面に意識を失って横たわる2人。

 もっと長い間無茶な自主練を重ねれば、明日の朝か、早くとも今日の夜まで起きなかったかもしれない。早急に対応したのが幸を成した。

 エリオとキャロが汲んだバケツの水をヴィータが2人の顔にぶっかける。

 冷たい水をかけられて、2人が目を覚ました。

 

「オラ! シャンとしろ!」

 

 ヴィータに怒鳴られて、反射的に背筋を伸ばす2人。

 不安そうにしているティアナとスバルにバリアジャケットを解除したなのはが質問する。

 

「2人共、今日の模擬戦はどういうつもりかな?」

 

 静かだが少し強めの口調で問うなのはに2人は表情を強張らせる。

 

「さっきの模擬戦、スバルへの危険が高いし、ティアナの隙も大きかった。下手をしたら怪我じゃ済まない惨事になってたと思うんだけど?」

 

 2人の連携は前衛をスバルが務めつつティアナが射撃で援護。相手の隙を突いて突破力のあるスバルが敵を撃墜が基本である。

 しかし今しがた行われた模擬戦では、スバルは何度も攻撃のチャンスを逃していたし、ティアナまで接近戦に乗り出す始末。

 おまけに砲撃魔法だ。

 練度の低い技術を作戦に組み込んだせいで足の引っ張り合いになり、足し算どころか引き算になってしまっている。

 

「……今回は時間が足りなくて連携が納得出来る練度に達してませんでした。だけど時間かければ必ず……」

 

「ふーん。それはそれとして、どうして今の連携や近接戦闘に砲撃魔法に関して、一言相談してくれなかったのかな? 質問してくれればアドバイス出来る事もあったと思うんだけど?」

 

 砲撃魔法はもちろん、近接戦闘にせよ戦術にせよ、意見を求められたならなのははちゃんとアドバイスしただろう。

 

「なのはさんとの模擬戦で意表を突く為に黙ってました。いけませんでしたか?」

 

「ティアナ。その考えはちょっとズレてるね。私達の当面の敵はガジェットなんだよ? もちろん対人の戦い方も学んでもらってるけどさ。ティアナは私に勝つ為に訓練をしてたの?」

 

 なのはの言葉にティアナがグッと黙る。

 追い打ちをかける形でエリオとキャロに視線を向ける。

 

「それに、スバルと2人だけで訓練しても、今エリオとキャロが一緒に現場に出て、すぐにその戦術に組み込める? ティアナの頭の中では組み込めても、2人がそれに合わせられないよ。だってそんな事、練習してないんだから」

 

 ティアナはフォワードメンバーの中の頭脳役(ブレイン)だ。

 年齢的にもそうだが、面倒見が良く、的確な指示を送れるティアナだから自然とその役に落ち着いた。

 現場では臨機応変に対応する機転は確かに求められるが、その下地がなければどうしょうもない。

 なるべく角が立たないように話しているつもりだが、ティアナの表情からその不満が読み取れる。

 これはなのはの未熟さ故だ。

 なのは自身、長期的な教導は初めてで、信頼関係を築くのを怠った。

 気持ちが先走って教え子の精神状態を把握しきれなかったのだ。

 思えば、かつてのフェイトや騎士達のような敵対関係ならいざ知らず、仲間内でこうも反抗的な相手というのも初めてな気がする。

 なんだかんだで、事件に対して皆が一丸になって解決しようと走ってきた。

 意見の相違はあっても、感情だけで反発される経験がなのはには乏しいのだ。

 だからなのはも腹を決めて話すことにした。

 

「ちょっと聞いてくれるかな?」

 

 突然話が変わり、フォワードメンバーが瞬きする。

 先ずは完璧な高町なのはのイメージを崩す必要がある。

 

「頑張り過ぎて痛い目をみた私の失敗談を──―」

 

 

 

 

 

 




原作でシャーリィがなのはの過去を明かすのははっきり言って駄目だと思う。
このなのはさんは原作とは別の挫折を味わってる設定。
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