それは、リインフォースの主である八神はやての転校と学年が上がった頃の話だ。
ホーランド式の非殺傷設定を追加する為の作業をしていると彩那から小さな石が数珠繋ぎで糸に通された腕輪を渡される。
「これは?」
「簡単な防犯ブザーよ。危険が迫ったら糸を切りなさい。強引に引っ張れば切れるから」
リインフォースの知識量は膨大であるのに反して戦闘能力は皆無になってしまった。
「管理局ではあなた達の情報を出来る限り規制するみたいだけど、闇の書に恨みを持つ人間がどう接触してくるか分からないし、魔導知識の塊である貴女を狙う犯罪者が今後現れないとも限らない。1番警戒しなければいけないのは貴女なのよ。術式が発動すれば、私に危機を知らせてくれるわ」
説明を終えると、リインフォースは腕輪を通す。
「そうか。感謝する」
「こっちも色々と手伝ってもらってるし、持ちつ持たれつよ」
リインフォースが奪われ、多くの貴重な魔導知識が流出するのはマズいのだ。
管理局としても気を使うだろうが、内側に敵が居ないとは断定出来ない。
可能なら、魔力に頼らない武器なども調達して渡したいが、地球の日本でそんな物を所持していたらあっという間に警察行きだ。
(流石に、拳銃なんて用意出来ないしね……)
物騒な事を考えていると、魔法の勉強をしていたはやてが話に入ってくる。
「それにしてもこの腕輪、装飾品としても結構えぇ感じやね。わたしも欲しいかも」
「スーパーの中にある百均ショップで売ってるわよ」
「これ百均っ!?」
突然リインフォースが拉致られて、はやては大急ぎで追いかける。
(あかん! この距離であの人だけ当てるなんて器用なマネできへん!)
撃った魔法が追いついても、リインフォースに当たる可能性が高過ぎる。
かと言って、移動速度は向こうの方が圧倒的に速いのだ。
歯噛みすると、はやての後ろから魔法が発動する。
「スティンガースナイプ!」
クロノが撃った誘導弾が女の移動を妨害する。
「この!」
女が手にしている銃型のデバイスで撃ち落とし、剣に変化させて斬り捨てるが、その間に追いついたクロノがデュランダルを振るう。
「あ……」
リインフォースは家族で、自分が主だから、自らの手で助けなければと逸ってしまった事を反省する。
クロノが女を足止めしながら警告する。
「彼女を放せ!」
カキン、と小さく響いた金属の衝突音の後にクロノは距離を取って杖を向ける。
「リインフォースを放さないなら、誘拐未遂と公務執行妨害で貴女を拘束する。今ならまだ──―」
返ってきた答えは銃弾だった。
クロノはシールドを張って防ぐ。
「……今ならまだ、そう重い罪にはならない。大人しく武装解除するんだ」
「悪いんだけど、こっちは引くに引けない理由があるのよね」
こちらの指示に従う気のない女にクロノは眉間に皺を寄せる。
銃を剣に変えて襲いかかってくる。
(武器の変形が速い!)
羨ましくなるくらいの速さで武器を形態変化させる女にクロノは警戒レベルを上げた。
2人の戦闘を距離を置いて見ていたはやてはこの場で出来る事を考える。
しかし──―。
(ダメや。なんも思いつかへん)
彩那やクロノのような経験も、なのはやフェイトのような天性の直感もない。
それらをサポートする融合騎だが、そこまでの支援は期待出来ないようだ。
『ごめんなさいです……』
ツヴァイが申し訳無さそうに呟くが、はやては首を横に振る。
「……ううん。わたしが主として未熟なだけや」
しかしどうするかと思案していると、念話が飛んできた。
『八神さん!』
突然念話で呼ばれ、同時に指示を出されると、はやてはデバイスの杖を強く握る。
その間にも戦闘は継続されるが、リインフォースを気にして戦うクロノは女を逃さないようにするだけで手一杯のようだ。
だが、クロノの方にも念話が届いたのか、リインフォースを抱える女に砲撃魔法を撃つ。
「ちょっ!? こっちにこの人が居るの見えないの!!」
慌てて防御するが、その衝撃でリインフォースを抱えている力が少しだけ緩んだ。
そこで、疾風のように翔けてきた彩那がその勢いのままにリインフォースを蹴って、女の腕から蹴り落とす。
「なっ!?」
落下していくリインフォースだが、状況を見ていたはやてが彼女を受け止めて地面への衝突を防ぐ。
「リインフォース!」
「申し訳ありません、主……」
「えぇんよ。リインフォースが無事なら」
腕の部分に触れるとリインフォースが痛そうに表情を歪める。
バリアジャケットも纏ってない状態であの蹴りを喰らったのだ。
見た感じ折れてはいないだろうが、骨に罅くらいは入ったかもしれない。
「よ、容赦がないなぁ」
確実性を選んだのだろうが、もう少し優しく助けて欲しかったのが本音だ。
抱きかかえたリインフォースを近くに下ろす。
視線を移すとクロノと挟む形で彩那が女に剣を向けていた。
「さて、リインフォースを狙った理由を聞かせて貰いましょうか。力づくでも」
彩那の存在に女は苦虫を噛み潰したような表情をする。
次にその口から出た言葉に彩那は驚く。
「私の世界を救う為って言ったら協力してくれる? ホーランドの勇者様」
ホーランドの勇者、という言葉に強張った彩那に女が大剣を振るう。
「くっ!?」
霊剣で防ぐが手の痛みに顔を歪める。
(握り込むのは無理そうね。血も流し過ぎたわ)
今は無理やり塞いでいるが、手に穴を開けた左手を動かすのは難しい。
それに先程の戦闘で致命傷ではないが、それなりに傷を負ったのだ。
血が足らず、攻撃を防ぐたびに衝撃で視界がブレる。
「私の世界を救う為に、どうしても永遠結晶が必要なの! 世界を救った勇者様なら、
高速で変形する武器と、知らない魔法体系に彩那は守りに徹して情報の収集に努める。
その中で相手の言い分に苛立ちを覚えていた。
『突然喚び出された勇者様方を不憫には思います。ですが仕方ありません。ホーランド、延いてはこの世界の為ですから』
『勇者様達のお力が我らには必要なのです。どうかご理解を』
『故郷を想う気持ちは察します。ならば、この戦争を少しでも早く終わらせる為に尽力していただかねば』
過去に何度も言われた事を思い出す。
自分達が大変だから、そうでない者に力を貸してもらえるのが当たり前。
苦境に立っている自分達の為に役立たせて当然という考え。
そんなものは。
「加害者側の、勝手な言い分だわ」
大剣を受け止めると同時にバインドで腕を拘束する。
「この!」
「救援を求めるのではなく、誘拐という暴力行為に走った時点で選択を間違えているのよ」
何故、助けを求める前にリインフォースを誘拐したのか。
その理由もある程度は察せる。
おそらくは、リインフォースに負担をかける行為を行うつもりだろう。
「このまま連行します。下手に抵抗しない方が身の為ですよ?」
首筋に刃を当てて警告するとこちらを睨んでくる。
意識を奪っておくべきか思案していると、エイミィから通信が届く。
『みんな! 気を付けて! 大きな闇の欠片の反応が観測されたよ!』
(こんな時に!)
面倒な、と舌打ちする彩那。
突如集まった魔力が人の形を成していく。
それは彩那の知る、しかし別人だった。
「黒天に座す闇統べる王、復っっ活!! みなぎるぞパワァー! あふれるぞ魔力! ふるえるほど暗黒ぅううっ!!」
はやてに似た、しかしどう見ても別人が自身の出現と同時に高笑いを存在を誇示してくる。
「あちゃー。こんな時にややこしい子が……」
どんどんカオスになる状況にはやては額を押さえる。
ロード・ディアーチェがはやてに視線を移し、ふんと鼻を鳴らした。
「鬱陶しい小鴉が。既に価値のない壊れた融合騎を未だに大事に抱えるか……見苦しい」
「なっ!?」
自分と同じ顔の少女から発せられた家族に対する暴言に、はやては視線を鋭くさせる。
反論しようとしたが、その前にディアーチェへと接近する彩那に気付いた。
「貴様……っ!?」
「消えなさい、邪魔よ」
はやてに意識を向けた僅かな間に背後から刃を突き刺す彩那。
霊剣を引き抜くと、舌打ちする。
「心臓を貫いても即死しないか。やっぱり人間じゃないわね。まぁ、首を落とせば流石に死ぬでしょう」
ディアーチェの首を刎ねようと霊剣を振るおうとする。
しかし、刺された穴から、魔力が噴き出し、彩那を弾く。
「ぐおあぁあああっ!?」
「ちっ! この……!」
制止をかける彩那。
荒れる魔力の流れが収まると、そこにはなのはとフェイトに似た少女が増える。
「あーはっはっはっ!! 王様が蘇って! ボク達が蘇らないなんて道理はない!!」
「ロード・ディアーチェ。救援に参りました」
「
マテリアルが3人揃う。
ディアーチェの口元が緩むが、何かに気付いて眉間に皺を寄せた。
「貴様ら、ここらの魔力と共有リソースを食い荒らして復活したな!」
「んー? そーかもー」
「美味しくいただきました」
「アホか! 復活するなら時と場所を考えんか!!」
「えー? ボクらだって好きで復活したんじゃないもん」
「何かに、呼ばれたような気がしたのです」
そんな呑気な会話をしている3人に、彩那は霊剣を構えると、クロノからの念話が届く。
『殺すな! 彼女達から情報を得たい。捕縛するんだ!』
『言ってる事は分かりますけど……』
血を流し過ぎて、意識が朦朧としてきた。
マテリアル達に意識が向けていたのが災いし、はやて達の状況が動いているのに気付かなかった。
「キャッ!?」
「我が主っ!?」
そちらに視線を動かすと、バインドを解除したピンク髪の女が再びリインフォースを奪おうと動く。
「ごめんね~。ちょっと斬らしてもらったわ」
「ちょっとって……」
はやては斬られた箇所を押さえながらシールドを張りつつ女の攻撃を逃げながら凌ぎ、リインフォースを守る。
すぐにそっちに向かおうと飛ぶが、マテリアルが邪魔してくる。
「王様を傷付けた悪いヤツめ! ボクがせーばいしてやる!」
「邪魔よ……!」
横に振るったデバイスを下降して避けると同時に顎を蹴り上げる。
体勢が崩れたところでバインドで拘束しようとしたが、シュテルが射撃魔法で妨害してきた。
「いった〜!! やったなぁ!!」
「レヴィ、援護します。彼女が最優先排除対象なのは変わりません」
射撃魔法を連射するシュテルの攻撃を回避しようと努めるが、集中力が持続せず、何発か命中する。
「くっ!?」
左腕に当たった痛みに苦悶の表情をする彩那。
「大人しく、ボクに斬られろっ!!」
動きが鈍った彩那に、レヴィの斬撃が襲いかかってくる。
「スティンガースナイプ!」
しかし、クロノが牽制して距離を取らせる。
「無事か!」
「私よりも、八神さんを早く──―」
「君だってもうまともに戦える状態じゃないだろ!」
先程から彩那の動きがおかしい事に気付いたクロノは、先ずは位置が近い彩那を助けるのを優先したのだ。
クロノと2人でマテリアルの攻撃になんとか対処しながらどうするか考える。
向こうが1番排除したいのはやはり彩那らしく、重点的に攻撃を仕掛けてくる。
(
悪くなっていく戦況に焦る。
「あうっ!?」
「はやてっ!?」
女の大剣がついにはやてのシールドを破壊した。
その威力のまま弾き飛ばされたはやてと抱えられているリインフォース。
壁にぶつかりそうなところで
「主っ!?」
そのダメージにツヴァイとのユニゾンも強制解除してしまう。
ツヴァイは目を回して意識を失う。
頭を打って血が流れたはやては、かはっと咳をすると、リインフォースに指示を出す。
「リインフォース……逃げ……や……」
「ここで主を置いて逃げるなど出来ませんっ!!」
何の役にも立たなくても、ようやく巡り会えた優しい主を見捨てて1人逃げる真似は出来なかった。
ましてや彼女は自分を守って血を流したのだから。
指示に従えないでいると、女がすぐ側までやってくる。
「そろそろ、一緒に来てくれる気になったかしら?」
ふざけた口調で問うてくる女にリインフォースは唇を噛んで睨む。
しかし、今ここで自分が取れる選択肢は他にはなく──―。
「そこまでですっ!!」
女に向かって攻撃の雨が降る。
それに気付いた女はまたリインフォースとの距離を離された。
また見知らぬ誰かがリインフォースの前に立つ。
ピンクの女と色違いの同じ格好と同じ武器。
しかし、新たに現れたその女は濃い赤色の長髪を三つ編みに纏めている。
「アミタ!?」
「帰りますよ、キリエ。この時代と世界に、これ以上迷惑をかける事は許しません!」
両手の銃を構えるアミタと呼ばれた女性。
彼女はキリエと呼んだ少女から視線を外さずにリインフォースに話しかけてくる。
「巻き込んでしまってすみません。ですが、妹にこれ以上、貴女方への迷惑はかけさせません!」
そう宣言すると、キリエのところへ飛び立ち、互いの剣がぶつかりあった。
大剣、双剣、双銃が目まぐるしく変化する攻防。
「キリエ! 言う事を聞かないのなら、力づくでも連れて帰りますよ!」
「私はアミタみたいにお行儀良く諦めるつもりなんてないっ! 誰に迷惑を掛けても、そこに可能性があるなら──―」
「キリエッ!!」
アミタが妹を怒鳴りつける。
この2人にしか分からない事情は後で聞けば良いと、彩那とクロノはマテリアルの対処に集中する。
はやてとリインフォースの危険度が下がった以上、マテリアルの捕縛に専念できる。
先ずはシュテルとレヴィから。
あの赤髪の女性が味方とは限らないので、早めに無力化したい。
「前回とは随分と様子が違いますね。ですが、貴女とこうして武器を交わすことが出来て、正直高揚しています」
その言葉に彩那は前回母と共に襲われた事を思い出す。
別に忘れていた訳ではなく、意識しないようにしていただけだが。
「そして、砕け得ぬ闇を手に入れる為に貴女は私が滅しましょう」
「黙ってなさい。その顔と声で貴女達が話すのは、不愉快なのよ」
なのは達の姿と声で、殺害を示す言葉を聞くのは神経に障る。
クロノから捕えるように言われたが、今すぐに斬ってしまいたい。
クロノの方も、フェイトと同じ姿でありながら、全く違う存在に僅かな困惑を見せていた。
「コラー! 逃げてないで、正々堂々と勝負しろー!」
「少し黙っていてくれ!」
性格はともかく、能力はなのはとフェイトのコピーなだけあり、簡単に無力化出来る相手ではない。
彩那は負傷しているなら尚更だ。
正体不明の姉妹も激しい戦闘を継続させている。
「こんな事をして、お父さんが喜ぶと思いますか!!」
「いつもそう良い子ぶって! それでパパの病気が良くなるの! 永遠結晶を手に入れて、私が必ずパパもエルトリアも助けるんだから!!」
混戦になっている戦場。
頭を打って混濁していたはやての意識がはっきりする。
状況を見渡すと、迫る危機に気付く。
『彩那ちゃん! クロノくん!』
『分かってる!』
『はやてはリインフォースをっ!!』
それぞれ戦闘に集中してる間に、ディアーチェは魔力を練り上げ、魔法を構築していた。
「我が闇の力に絶望せよ……ジャガーノート!!」
ベルカ式の魔法陣から放たれる魔法。
一定の距離まで移動すると爆発する魔法らしいが、その1射1射に込められている魔力がかなり大きい。
戦争の空爆のような凄まじい爆発の連続に結界内の建物が破壊され、吹き飛ばされる。
その攻撃が終わり、ディアーチェが息を吐くと、仲間であるシュテルとレヴィが弟子に近づく。
「ひどいよ王さま〜。いきなりあんな派手な攻撃するなんて〜!!」
「敵諸共消し飛ばされるかと思いました」
「我の攻撃を喰らう間抜けではなかろう。お主らなら避けると踏んだまでよ」
信頼していたと遠回しに言うディアーチェ。
それを読み取って2人も表情を柔らかくする。
少し離れた場所で爆撃の巻き添えを喰ったキリエは感じる重みから途切れていた意識を繋ぐ。
「いった〜。なんて無茶を……──―っ!?」
そこで爆撃が届く瞬間に自分を庇ったアミタが倒れているのに気付く。
「お姉ちゃ……」
起こそうとする手を止めてアミタの体を退かすと、キリエはマテリアルの下へ飛ぶ。
「初めまして。ちょ〜っとお話を聞いてもらっても良いかしら?」
「断る。下郎と話す口は持たぬのだ。何より貴様は得体が知れぬ」
取り付く島もない様子のディアーチェだが、キリエの次の発言に表情を変える。
「それが砕け得ぬ闇。システムUーDの事だとしても?」
「それって、ボクたちがずっと探してた」
「貴女達と闇の書の管制人格が揃えば、砕け得ぬ闇を目覚めさせる事も可能だと思うんだけど?」
「貴様、何を知っている?」
鋭い視線と杖の先端を突き付けるディアーチェ。
そこでシュテルが進言する。
「王よ。話だけでも聞いてみるべきでは? こちらは情報が少ないのですから。もしも嘘を並べたなら、その時は然るべき制裁を与えれば良いだけです」
「……臣下の言葉を聞くのも王の務めか……良いだろう、貴様の提案に乗ってやる。だが、その言葉が虚言であった時は、覚悟せよ」
「いやん。そんな怖いこと言わないで〜」
おどけた後にキリエは、地上にいるリインフォースに視線を向ける。
「それじゃあ、あの人にも手伝ってもらいましょうか」
4人がリインフォースの居る場所へと下り立つ。
「今度こそ、一緒に来てくれるわよねぇ?」
「……っ!」
お願いに聞こえて実質命令にリインフォースは唇を噛む。
キリエが無理やり連れて行こうとすると、背後から射撃魔法が撃たれる。
「綾瀬……」
気付いたシュテルが防ぎ、全員がそちらの方向を向く。
そこには鎧も生身もボロボロになった彩那が剣を杖代わりにして立っていた。
「リインフォース、から……離れなさい……!」
ディアーチェの攻撃にクロノが彩那を庇いつつ突き飛ばしたお陰で最小限のダメージで済んだのだ。
よろよろと向かってくる彩那にキリエが頬を引き攣らせる。
「うわー。さすが勇者様、タフねー。でもね──―」
彩那の所まで跳んだキリエが髪を掴んで腹を膝で強く蹴る。
「──―つっ!?」
「邪魔だから、もう寝ててね?」
蹴られた衝撃に膝を折るが、それでも剣を支えに倒れようとせず、4人に鋭い視線を向ける。
シュテルが前に出る。
「もう戦う力は残ってないようですね。ここで滅しましょう」
「あ、ならボクが! カッコよくとどめを刺すよー!!」
「あぁ。こやつだけはここで──―」
「待て!」
声を上げるリインフォース。
全員が振り向くと、彼女は自分の首に割れた硝子の破片を当てていた。
「お前達が用があるのは私だろう? さっさと連れてゆくといい。これ以上ここに居る者を1人でも傷付けたら、私はこの場で自死を選ぶ。そうなれば、お前達も困るのではないか?」
「リインフォース……」
「もういい。今はもう休め。ありがとう、綾瀬」
力を失った自分がこの場で唯一出来る選択。
リインフォースの首筋には既に一筋の血が流れ落ちている。
それを見たディアーチェはふん、と鼻を鳴らした。
「良かろう。この場は貴様の意気に免じて見逃してやる」
「いいの? 王さま」
レヴィの確認に頷くディアーチェ。
それを見てキリエも安堵の息を吐いた。
「それじゃあ、抵抗しないでね〜」
「潜伏場所の目星は付けてます。行きましょう」
「さっすがシュテるん!」
「えっへん」
大人しく連れて行かれるリインフォース。
彩那は膝をついたまま見ている事しか出来なかった。
『救護班、クロノ君達の回収を急いで!! 治療の準備も早く!!』
通信から聞こえるエイミィの声がやたら遠く感じた。
次回は未来組との会話とかアミタへの事情聴取。