むかしむかし、みんなを困らせるとてもわるい国がありました。
てい国はたくさんの国でわるさをしてみんなをキズつけて、困らせていました。
みんなをキズつけるてい国のふるまいに、多くの国がおこります。
しかしそれいじょうに、てい国のおそろしさにみんながふるえました。
こわくてふあんで、いろんなお国がまわりの国をしんじられなくなってしまったのです。
仲がわるくなった国どうしでもあらそいがはじまりました。
これはいけないとおもった大きな国の王さまは、べつのせかいにたすけを求めました。
その声にこたえてくれたのは4人の仲よしな女の子たちでした。
身をよせあう女の子たちに王さまはこのせかいのことをせつめいして手をかしてほしいとおねがいします。
はなしをきいた女の子たちはそれはひどいとこのせかいのことをかなしみ、きょうりょくをやくそくしてくれました。
これが、ほーらんどのゆうしゃとよばれる女の子たちのたたかいのはじまりでした。
まず、ゆうしゃさまたちは、仲がわるくなってしまった国々を王さまといっしょにもういちど仲よくしましょうとせっとくして回りました。
そしてわるいてい国をこらしめましょう、と。
ゆうしゃさまたちのがんばりのおかげで、あらそっていた国々はすこしずつ手をとりあうようになったのです。
たくさんの国のちからがあわせて、てい国のぼうりょくをとめようと声をあげました。
だけど、てい国はとてもつよくて、おそろしくて、ひきょうで。
いちばん前でたたかってくれたゆうしゃさまもひとり、またひとりとたおれてしまいました。
のこされたさいごのゆうしゃさまはともだちをなくしたことに泣きながらもてい国をとめようと立ちあがってくれました。
そして、てい国がときはなったあくまをうちたおし、ほんとうのへいわをもたらしてくれたのです。
すべてをおえたゆうしゃさまは、のちのへいわを王さまにたくし、じぶんのせかいへとかえっていきました。
だけど、もしもこのせかいがふたたびおおきなわざわいに包まれるのなら、きっとゆうしゃさまはわたしたちを救ってくれるのでしょう。
モニター越しで聞いたアミタの言葉に、なのは達は驚きの表情をしてから、椅子に座って話を聞いている彩那に視線を向けた。
2回もホーランドに召喚されたなどという話は聞いてないし、そう匂わせるニュアンスも無かった筈だ。
それはつまり、彩那にとっても未来の出来事なのではないか?
モニターの映像からは彩那は顔を手で覆って表情を窺えないのが余計に不安を煽る。
「あの……今の話だと、綾瀬副部隊長は……」
「ごめん。私たちからはちょっと話せない」
エリオの質問にフェイトがそう言って遮る。
彩那の過去は個人としても管理局としてもかなりデリケートな問題だ。
ここで本人の許可無くペラペラ話すのは憚られる。
なのは達の緊張が未来組にまで伝わる。
『その話には興味がありますが、今回の件とは関係なさそうなので後にしましょう』
そう、自分の今後に関わる筈の話を横に置いた。
(最悪だわ……)
また、あの時代と世界に喚び出される可能性に彩那は小さく息を吐く。
根掘り葉掘り訊き出したいところだが、未来の情報はなるべく知らない方が良いと先程決めた方針だ。
それをすぐに破る訳にはいかないし、未来の情報を考えなしに得ない方が良いという意見にも賛成だった。
取り敢えず、今は心を落ち着ちつかせる為に時間を置きたいのが本音。
「それで、何処までそちらの事情を話してくれましたかね? あぁ、ホーランドと交流があったところでしたね」
「はい。ホーランドからの支援はありましたが、もう打ち切られる寸前、と言ったところです」
「それは何故ですか?」
重ねる彩那の質問にアミタは視線を落として組んでいる手を見た。
「研究の中心だった父が病に倒れて、研究自体が立ち行かなくなったからです。今では、起きていられる時間の方が少ないくらいです」
アミタの言葉に彩那は納得する。
それだけ劣悪になった惑星で、病気になる可能性はかなり高いだろう。
「ずっと前からエルトリアの再生を諦めて惑星デミアに来るようあちらから打診されてて。だけど父は研究を続ける旨を変えませんでした。その結果、父は身体を壊して。幸い、ホーランドは私達の移住を快く受け入れてくれました」
「そうですか……」
1つの家族くらいなら大した負担ではないし、星を隔てて交流する方がデメリットが多いと判断したのかもしれない。
「でも、その決定に反対したのが妹のキリエでした。あの子はこれまで行なってきた父の
時間をかける訳にはいかなかった、という事か。
「説得して納得してくれたと思っていたのですが。以前から調べていた永遠結晶───砕け得ぬ闇について。その入手する場所としてこの時代の地球へと跳んだのです。出来れば止めたかったのですが、不覚を取って拘束された挙げ句、物置小屋に閉じ込められてしまいました」
後悔から大きく息を吐くアミタ。
そこで彩那が質問する。
「すみません質問が。アミタさんのお父さんはどうしたのですか? そんな状態なら、放ってこっちに来る訳にもいきませんよね?」
「あ! 今は母が看てくれています。私を解放してくれたのも母です。時間を跳ぶとはいえ、あの状態の父を放っておく訳にはいきませんから」
「そうですか」
他人事ながらホッとする彩那。
どこまで正確な時間が可能なのかは知らないが、看てくれる人が居ない状況でこっちへ来るのは現実的ではないと思う。
心情的にも苦しいと思う。
彩那は質問を重ねる。
「それで、1番大事な事ですが、砕け得ぬ闇とはなんなのですか? それにどうしてそんな情報が惑星エルトリアに?」
「そこは、なんとも……調べていたのはキリエですし。あの子がこちらへ赴いた時には大事な情報は全て抜かれていたんです。時間があれば調べられましたけど、居ても立っても居られず」
すぐに地球に来たという事らしい。
両手の指を意味なく絡ませて視線を逸らすアミタ。
取り敢えず今はこんなところか。
『ハラオウン執務官。これくらいでよろしいでしょうか? 大まかな事情は把握出来ましたし、正直治療を終えたばかりなので体力的にもこれ以上はキツイのですが』
『あぁ、すまない。切り上げてくれてかまわない』
『ありがとうございます』
念話を切り、話を終わらせようとする前に、アミタが組んでいる手を見つめながら悔やむように口を開く。
「妹は……あの子なりにエルトリアを救おうとしているんです。故郷の再生を諦めてしまった私達の代わりに。キリエなりの覚悟を持っ───」
「覚悟?」
それを遮る形で彩那が疑問を口にする。
アミタが視線を上げるとそこには不思議そうに首をかしげているのに、眼だけは怒りを宿した彩那の顔があった。
「何の話し合いもせずに他所様の家族を連れ去り、用が済んだら素知らぬ顔でこの
キリエの言い分が勇者を召喚したホーランドと重なったのもあり、彩那は静かに怒りを露わにする。
「それは……」
彩那の指摘にアミタは視線を逸らす。
ここで彼女を責めても仕方ないと話を切る事にした。
「一旦ここまでにしましょう。妹さんの件は、こちらも出来る限り配慮してもらえるよう、責任者に話しますので。但し、あくまでも連れ去られたリインフォースの無事が条件ですが」
「はい。御厚意、ありがとうございます……」
気落ちした様子のアミタ。
出て行く前に彩那は訂正を口にする。
「それと、貴女がホーランドの勇者にどんな想いを抱いてるかは知りませんが、私達はそんな憧れるような存在じゃありませんよ」
どう取り繕おうと、結局自分達は戦争の道具。
それに、少なくとも彩那が戦争に加担したのは、あの世界の平和を願っての事ではなく、故郷へ帰るのが目的だった。
ホーランドで書かれた本がどのように書かれているのかは知らないが、英雄譚なんて呼べる程に綺麗な物語ではない。
言いたい事だけ言って彩那は部屋を出て行った。
「ただいま……」
「お、おかえり……」
事情聴取の内容を聞いていたなのは達には困惑した表情をしていた。
それでも質問したのはフェイトだった。
「アヤナ。アミティエって人に、ちゃんと聞かなくてよかったの?」
何が、とは言わない。もしかしたらまた過去の別世界に跳ぶ可能性についてだ。
「聞いたところでね。前もって対処出来る問題でもないし。今は目の前の事に対処するのが先決でしょう? それに、未来の情報は悪戯に得るべきじゃないと決めたばかりじゃない」
驚いたが、勝手知ったる世界だ。
それに、あの帝国を潰した後がどうなったのか、気にならない訳でもない。
再び喚び出されるのならその理由も気になる。
「大丈夫。なんとかして見せるわ」
「なんとかって……」
曖昧な返事になのはが不満そうに眉を動かす。
そこでキャロがおずおずと手を上げて質問する。
「あの……さっきの会話からだと綾瀬副部隊長は、その……」
「申し訳ないのだけど。詳しい事は未来の私から聞いてちょうだい」
未来でどれだけ仲が良いのかは知らないが、今の彩那からすれば、未来組とはさっき会ったばかりの間柄。
自分の過去をペラペラ話す気にはなれない。
そこでツヴァイが彩那に近付く。
「あの、彩那さん……」
どうやら、この子は何かを知っているらしい。
おそらくは未来で体験する何かを教えようとするツヴァイに彩那は首を振って拒否する。
下手に未来の出来事を知れば、それだけ動き辛くなる可能性があるし、今優先しなければならないのはそんな事ではない。
「闇の欠片は今も発生してるのかしら?」
彩那が呟いた質問に、シャマルが答える。
「はい。強さも出現場所もバラバラですけど、結界を張って武装局員の方々が対処してくれてます。私を除いたヴォルケンリッターはこれからすぐに応援へ向かう手筈です」
シャマルは治療班としてここに残り、負傷した彩那とフェイト。そしてこれから出るだろう負傷者の治療にあたる。
怪我の浅いアルフも同様だ。
「わたしもお手伝いしたいけど、レイジングハートがメンテナンス中だから……」
カートリッジの弾丸を消費して放ったスターライトブレイカー。
その影響でレイジングハートはメンテナンスに出している。
パーツの交換や弾丸の補充に時間が必要だ。
それに、目に見えなくても、なのは自身もかなり負担をかけた戦闘だった。今は休息が必要だろう。
フェイトも左腕を刺された傷を治す為にシャマルが付きっきりで治療する。
はやての怪我は大した事なかったが、念の為に待機だ。
そこでスバルが挙手をする。
「あの! 良ければあたしたちもっ!?」
しかし、その口をティアナが強引に塞いだ。
「手伝いたい気持ちはありますが、先ずはアタシ達だけで相談させてください。正直どう動くにせよ、ちゃんと話し合ってから決めたいです」
未来から来た自分達だけで話し合いたいと望むティアナ。
リンディにもその旨を伝え、許可を取っている事も伝える。
「分かりました。確かにその方が良さそうですね。なら───」
そこで彩那の身体が揺れ、近くに立っていたヴィヴィオにもたれかかる。
「ごめんなさい……」
「いえ……って熱っ!? 熱ありますよね!?」
額に触れると明らかに平熱ではなかった。
「治療したばかりで辛かった筈ですから。色々とショッキングな話もありましたし。熱が一気に上がってもおかしくありません」
「シャマル。彩那ちゃんを一先ず家に送って休ませてあげてな」
「はい。掴まってください、彩那ちゃん」
「世話をかけるわね……」
シャマルに支えられて退場する彩那。
座っていたヴィータが椅子から降りる。
「それじゃあアタシらは他の奴らの応援に行ってくる。リインフォースも捜さねーとだしな」
「主はやて達は休んでいてください。休息を取るのも、戦う者に必要な事です」
「うん。分かってる」
「シグナム達も気をつけて。アルフも、怪我しないでね」
「あぁ、心配するな」
「フェイトは安心して休んでな!」
休憩組と応援組に分かれて行動する。
なのはも一旦家に戻る手筈だ。フェイトとはやても一緒に。
「それじゃあ、わたしらは失礼しますので。ゆっくり話し合ってください」
はやてがそう言うと、皆が部屋を出て行くと、中には未来組だけが残った。
何故かはやての肩に乗ったツヴァイを除いて、だが。
スバルが不満げにティアナに話しかける。
「ティア〜。なんでさっきは止めたの? あたし達もなのはさん達のお手伝いをしようよ」
「あのね……ここはアタシらの居た時間より前の時間なのよ? 慎重に行動するのは当たり前でしょうが!」
ティアナ自身も勿論、未来の上司であるなのは達を手伝いたい気持ちはある。
だけど自分達はイレギュラーな存在だ。どんな影響があるのかも分からないのに、勢いだけで決める事ではないと思う。
「アンタ1人で突っ走る前に、先ずは皆の意見を聞きましょ。エリオとキャロは?」
話を振られてエリオとキャロは背筋を伸ばす。
先に意見を口にしたのはエリオだ。
「僕は、フェイトさん達を手伝いたいです。ティアさんの懸念も分かりますけど。それでも……」
「わたしもエリオくんと同じ考えです。目の前でフェイトさん達が戦ってるのに、見て見ぬふりなんて出来ません!」
今はまだ出逢ってなくとも、2人にとってフェイトは恩人だ。
その使い魔であるアルフは勿論、なのはやはやてにも世話になった。
お世話になった人達が困っていて、力になれる事があるなら力になりたい。
それが2人の本心だった。
「分かったわ。それでヴィヴィオ、と……そこのアインハルトは?」
ティアナの質問にヴィヴィオとアインハルトは互いに目を見合わせる。
それは決して前向きな表情ではなかった。
アインハルトが顔を伏せたまま話す。
「……ごめんなさい。今すぐには決められません。お役に立てる自信がないんです」
綾瀬彩那と闇の欠片との戦闘。
それを見ながら2人は動く事が出来なかった。
2人の殺気に足が竦んだ。血を流す姿に恐怖を覚えた。
実力の違いに直感的に無理だと思ってしまった。
彼女達は年齢以上の勇気を持ち合わせている。
しかし、彼女達は局員ではなく競技者だ。
簡単に命を懸けられる勇気を持ち合わせてはいない。
もしも鉢合わせたのが綾瀬彩那と闇の欠片で再現されたシグナムとの戦闘だけなら勇気を奮い立たせて戦う選択を出来たかもしれない。
だが今のぐらついたままの心では、足を引っ張る結果しか見えない。
(情けない……)
自分の手の平を見つめて苦い表情をする。
過去の覇王の記憶から戦いの恐怖を知っているつもりだった。
本当の強さを求めてストリートファイトなどにも興じた。
だけど、自分の経験してきた戦いがあくまでも互いの命に危険を及ぼさないモノだと突きつけられた。
助けになりたいのに、恐怖と躊躇いを宿した拳では戦う事が出来ない。
ヴィヴィオもまた、アインハルトと同じ気持ちだった。
あの戦いは、自分達が経験した戦闘とは別物だと感じたから。
「わたしも、今は戦える自信がありません」
「そう。分かったわ」
2人の返答にティアナはそう返す。
「考えてみれば、2人は局員じゃないんだもの。そう判断してくれて安心したわ」
ティアナからすれば、局員ではない2人を無理に戦わせるつもりはなかった。
競技者として優秀でも、実戦で戦えるかは別問題だし。
「ティアはどうなの? やっぱり反対?」
「そう言いたいけど、どうせアンタ達はなのはさん達がピンチになったら、考えなしに飛び出しちゃうでしょ。なら、誰かがコントロールしないとダメじゃない」
「ティアさん!」
ため息を吐いて賛成の意を示すティアナ。
「でも、やるからにはアタシの指示に従ってもらうわよ。いいわね?」
「つまり、いつも通りってことだよね!」
そうティアナがフォワードメンバーの指示をして戦う。
4人にとってはいつも通りだ。
話がまとまると、ふとティアナは別の事に考えを向ける。
「どうしたの、ティア?」
「うん。なんていうか、綾瀬副部隊長が気になって……」
「はい。熱、早く下がると良いですよね……」
「それもあるけど……」
「?」
ティアナが気になっているのはその事だけではない。
「なのはさんもフェイトさんも、八神部隊長もまだ子供じゃない? でも、同い年の筈の綾瀬副部隊長だけは雰囲気が……」
この時代でなのは達と会って、話をして、多少大人びているがやはり子供だと感じた。
「でも、綾瀬副部隊長だけは子供だとは思えないっていうか。まるで大人が子供の姿を取ってるみたいに感じて……」
あの場を仕切っていた彩那があまりにも子供らしくなかったなと思うティアナ。
「分かる分かる。あんなにちっちゃいのに、年上かと思っちゃったもん」
「いや、笑ってないでちょっとは変に思いなさいよスバル」
こっちに危害を加えるとは思ってないが、彩那の異質さがどうしても気にかかるティアナ。
それは、モニター越しに聞いたホーランドの勇者の話にも関係があるのかもしれない。
結局答えは出ずにその疑念をティアナは頭の隅に追いやった。
リインフォースを拉致したキリエとマテリアルが拠点としたのは、既に廃業になった元クリニックの建物だった。
残されたベッドに座らせられ、リインフォースは首と腕にコードの付いた針を刺されている。
「……なにをするつもりだ?」
「やーん。そんな怖い顔しないでぇ。大人しくしてくれたら、危害を加える気はないんだから」
空間に端末が出現し、色々と調べ始める。
「それで、システムUーDを手に入れる事が出来るのか?」
「あくまで、鍵を手に入れるだけよ。本体はまた別の場所で……ありゃ?」
「どうしました?」
「思ったよりセキュリティが堅いわねぇ。なら一旦───」
そこで繋がれているコードから強い電流が流れた。
「つあ!?」
「ごめんなさいね〜。今のままだと、鍵を見つけるのは難しそうだから、ちょっと荒っぽいけど強制的に眠ってね?」
流された電流によって強制的にリインフォースの意識は暗闇へと落としていった。