世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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今回からポッと出のオリキャラを投入。


未来と過去と現在と

 一晩間を置いて、未来組は自分達の決断をクロノ達に話した。

 

「それじゃあ、君達4人はこのまま僕らに協力してくれる、という事でいいんだな?」

 

「はい。この子らがやる気ですし、アタシ達が元の時間に戻るには、皆さんに協力した方が良さそうなので」

 

「助かる。正直、手助けはいくらあっても足りないくらいだからな」

 

 闇の欠片の対処に局員達は大忙しな状況だ。借りられる手はいくらあっても良い。

 なのはのレイジングハートのパーツ交換も終わり、戦線に復帰できる。

 スバルが部屋の中を見回す。

 

「綾瀬副部隊長はまだ来てないんですか?」

 

「アヤナはまだ目を覚ましてないらしいです。熱は下がったみたいなんですけど……」

 

 スバルの質問に同じマンションで暮らすフェイトが答える。

 先程お見舞いに行った際に、彩那はまだ目を覚ましておらず、今も眠り続けていた。

 熱が下がったのは彩那の母から聞いたが、前日の戦闘の疲労がまだ抜け切ってないのだろう。

 今は休んでもらう他ない。

 フェイトの返答にスバルが残念そうにする。

 

「そっか〜。残念。せっかく綾瀬副部隊長の戦いが見られると思ったのに。でも、まだ万全じゃないなら仕方ないよね」

 

「皆さんは、彩那ちゃんが戦ってるのを見たことがないんですか?」

 

「はい! なのはさんの魔法戦の師匠だって聞いてはいたんですけど、本人は後方ですし」

 

 見る機会はまだ無いという。

 それにキャロが続く。

 

「前に報告書を提出する時に、そのことを訊いたことがあるんですけど────」

 

『私は余程の緊急事態以外は戦闘に出なくて良いと八神部隊長に言われたからこっちに出向してるのよ』

 

「って」

 

 余程の緊急事態、というのがどれくらいの事態なのかは不明だが、今のところそこまで危険な事態は遭遇していない。

 そこでクロノが話を変える。

 

「仕方ないとはいえ、彩那には訊きたい事があったんだがな……」

 

 難しい顔をするクロノにフェイトが質問する。

 

「なにかあったの? クロノ」

 

「あぁ。闇の欠片から生まれた機械兵器についての情報が聞きたかったんだ。局員が苦戦している。おそらくは彼女の記憶から再現された物だと思うんだが……」

 

「そんなに強いん?」

 

「いや。攻撃力や装甲は大した事はない。が。どうにも敵はAMFの機能を搭載しているらしくてな。上手く戦えない」

 

「それって確か、魔力を無効化するんだっけ?」

 

「正確には、魔力の結合の阻害だな。攻撃魔法は分散され、バリアジャケットを含む防御は脆くなる」

 

 そんな話をしていると、4人が顔を見合わせる。

 

「あの! その兵器の映像ってあります? あるなら見せてもらっても構いませんか?」

 

「? あぁ。もちろんだ」

 

 モニターに局員達が戦っている兵器の映像が映し出される。

 それを見た4人は驚きの表情をした。

 

「ガジェットッ!? ねぇティア! アレってガジェットだよね!」

 

「分かってるわよ!」

 

「知っているのか?」

 

 クロノの言葉にエリオが頷く。

 

「僕達が敵対してる組織が使ってる機械です。ただ、その組織のこと自体はまだよく分かってないんですけど」

 

「そうなると、このガジェット? いうロボットは彩那ちゃんの記憶やなくて、みなさんの記憶から再現された可能性が高いなぁ」

 

 はやての推測にクロノが頷く。

 

「そうだな。すまないが、そのガジェットの性能について教えてくれないか?」

 

 未来の事はなるべく触れないようにしたいが、目の前に脅威として現れた以上、情報を得るのは必須である。

 ティアナ達ももちろんとガジェット・ドローンについて説明してくれた。

 ガジェットの種類やそれぞれの役割など。

 情報を共有未来組が知っている対策を教えてもらった。

 

「敵の性能は把握した。情報に感謝する」

 

「いえ。アタシ達が原因みたいですから」

 

 この時代に来た責任は無くとも、闇の欠片が自分達の記憶からガジェットを生み出しているなら、なおのこと放っておく訳には行かなくなった。

 ティアナとしても、自分達が関われる理由が増えて一種の安堵を覚えていた。

 ガジェットの性能を確認しながら表情を和らげるクロノ。

 

「いや。それを君達が気にする必要はない。むしろ、彩那の記憶から色々再現されるより、良かったかもしれないからね」

 

 彩那達勇者が巻き込まれたかつての戦争。

 話を聞いても、その凄惨さは平和な時代を生きるクロノ達には想像し難いモノがある。

 どんな強敵が現れるか分からないのだ。ならば、機械を相手にする方がずっと楽だ。

 クロノの雰囲気に、キャロが質問する。

 

「あの……どうして彩那副部隊長の記憶が多く再現されると思ってるんですか?」

 

「あぁ。彼女の引き出しが多いのもあるが、半年程前に闇の────今回の事件に深く関わりのあるロストロギアの1番深いところと接触した過去がある。その事件では必要な行動だったが、それが原因で彩那の記憶から再現される可能性が高いと僕達は思っているんだ。実際これまで現れた強敵の大半は彼女の記憶を元にしてる筈だからね」

 

 10年勇者として戦い続けた経歴は伊達ではない。

 どんな敵が現れるのか、本当に想像がつかないのだ。

 必要な情報の共有と作戦指示が終わり、クロノが部屋にいる全員を見回す。

 

「それじゃあ5分後に指定の場所へ向かってくれ。闇の欠片への対処はもちろんだが、リインフォースの捜索と奪還も同時並行で行なう。だが、くれぐれも1人で事に当たろうとしないでくれ。人数はこっちが多いんだ無理をする必要はない」

 

 クロノの指示に全員が"はい! "と返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未来組の4人は、指定された場所でガジェットの群れを討伐していた。

 

「ヤァアアアアッ!!」

 

 前衛のスバルとエリオが次々とガジェットを撃破していく。

 討ち漏らしをティアナとキャロが潰した。

 AMFに対処するならやはり近代ベルカ式の方が相性が良い。

 目の前のガジェットを全て排除した後に、スバルが不思議そうにティアナに話しかける。

 

「ティア。なんかあたし達が知ってるガジェットより少し弱く感じない?」

 

「スバルもそう思う? アンタ達は?」

 

 エリオとキャロに質問を振ると、2人の答えも是だった。

 

「はい。ストラーダで突進して、いつもより脆いなって。最初は勘違いかと思ったんですけど」

 

「わたしもそう感じました。バインドで縛って、いつもより力が弱いと思いました。それに、AMFもわたし達が知ってるより効果が薄く感じます」

 

「そうね。アタシも同感だわ。完全な再現は難しいって事かしら? ま、楽に倒せるならそれに越したことはないけど。それじゃあ、油断せずにこの調子でバンバン倒すわよ!」

 

『はい!!』

 

 ティアナの激励に応えて次々と現れるガジェットを撃破していく。

 通信から、ティアナ達の情報を得た事で、他の局員の戦闘も少しは楽になったようで、続々と撃破の報告が上がってくる。

 ホッと息を吐くと、エイミィから通信が入る。

 

『みんな、気をつけて! そっちに濃度の濃い闇の欠片の反応が出てるよ!』

 

 エイミィの通信に4人は警戒を高める。

 ガジェット・ドローンなら余程の数でない限り、倒せる自信がある。

 

(だけど……)

 

 先日相手にした剣士。

 あんな六課の隊長レベルの敵が出現した場合、倒せる自信がない。

 

「聞いたわね! より一層気を引き締めて当たるわよ!」

 

「うん! 分かってる!」

 

 ティアナの忠告にスバルが返し、エリオとキャロも頷く。

 

『来るよ!』

 

 エイミィからの連絡と同時に集まって出来た魔力の渦が現れ、それが霧散すると、中から全身鎧の20人と少しの集団。

 手にはそれぞれ武器が握られている。

 先頭に立つ、顔の見えないフルフェイスの巨漢がティアナ達の方を向く。

 

「我ら! オーバンス国を守護する騎士団也!! 侵略者共よ! 我らが国を荒らす事は許さぬっ!!」

 

 気迫を乗せた声が威圧となって襲いかかり、ティアナ達は身体を硬直させた。

 

「行くぞっ!!」

 

 リーダーと思しき2メートルを超える巨漢が両手の斧を構えて突進し、後に仲間が続く。

 

「速いっ!?」

 

「スバルッ!」

 

 巨体に似合わず、高速でスバルに接近して斧を振り下ろしてくる。

 スバルはそれに合わせてシールドを展開する。

 

(おっも)っ!?)

 

 予想以上に重たい斧の攻撃にスバルのシールドに亀裂が入る。

 完全に破壊される前に後ろに下がると、追撃されないようにティアナが援護に入る。

 

「このっ!」

 

 8発の射撃魔法を撃ち、リーダー格の巨漢を牽制しようとする。

 しかし────。

 

「うそっ!?」

 

 分厚い鎧に防がれてティアナの射撃魔法は通らない。

 

(今の着弾の感触。バリアジャケットよりも物質を撃った時に近かった)

 

 少ない情報から推測を立てようと頭を回転させる。

 だが、その答えは相手側からあっさりと洩らされる。

 

「驚いたか? この鎧は我が国が開発した魔力攻撃を拡散させる鎧だ。その程度の攻撃では、この鎧に傷を付ける事などできんわ!」

 

 驚きと同時にティアナは頭の中で情報を整理し、作戦を立てる。

 しかし、巨漢の男だけでなく、後ろに控えていた鎧の集団も動き出す。

 

(あれが本物の鎧なら、かなり重いだろうに!)

 

 だが敵の軍勢は速く、機敏に向かってくる。

 

「ティア!」

 

「スバル! エリオ! アンタたちがメインよ! 援護するから、1人ずつ確実に仕留めなさいよね!」

 

「わかった!」

 

「はい!」

 

「殺れ! 我が精鋭達よ! 女子供といえど容赦するな! 侵略者を蹂躙せよっ!!」

 

『オオオオオオォッ!!』

 

 リーダー格の巨漢に呼応して鎧の兵達は雄叫びを上げる。

 それぞれの武器を持って襲いかかろうとしてくる。

 2つの集団がぶつかろうとする直前に、間を割るようにして1本の剣がコンクリートの地面に突き刺さる。

 

「これはまた、懐かしい部隊ね。そうでしょう? バーン・イドロ将軍……」

 

 トン、と軽やかに剣の横に綾瀬彩那が着地し、刺した剣を抜く。

 

「綾瀬副部隊長っ!?」

 

「無事ですね。間に合って良かった」

 

 ホッとした様子でティアナ達を見る彩那。

 しかしその視線はすぐに敵の方へ移る。

 

「中々厄介な敵が再現されたわね」

 

「知ってるんですか!」

 

 スバルの問いに首を縦に動かす。

 

「ミッドやベルカとは違う魔法体系の騎士達。細かな説明は省きますけど、あの魔力を拡散させる鎧と接近戦。特に将軍であるあの老人は、古代(エンシェント)ベルカの騎士であるシグナム達にも引けを取らない強者(つわもの)です」

 

 シグナムと引けを取らない、という彩那の説明に4人は息を呑む。

 より一層気を引き締めていると、将軍と呼ばれた男が両手の斧を構える。

 

「その剣……知っている……知っているぞ! 貴様はあの忌々しいホーランドの勇者か……!」

 

 明らかな怒気を含む声。

 そして次にティアナ達は一瞬硬直する。

 

「我が息子の首を、討ち取った敵だ」

 

「……」

 

 将軍の言葉に彩那はなにも返さずに剣を構える。

 

「皆の者! ホーランドの勇者の首はわしが取る! 手を出すな!」

 

 一騎討ちを宣言する将軍。彩那はそれを懐かしそうに目を細めた。

 

「相変わらず熱いご老人ね」

 

「あの……」

 

 スバルがどういう事なのか訊こうとするが、それより前に彩那が撤退を指示する。

 

「ここは下がっていいですよ。彼らは私の記憶から再現された者達ですし、責任を取って片付けますから。だからそちらは他の場所に行ってガジェットとかいう機械の排除をお願いします」

 

「なっ!?」

 

 その言葉は、戦力外だと言われたようで、反射的に言い返す。

 

「そんなこと出来ませんよ!」

 

 未来では上司でも今はまだ小さな女の子。それを見捨てて逃げるなら、最初から手伝う申し出なんてしていない。

 

「私に命令する権限はないので、無理やり下がらせるつもりもありませんが、覚悟しておいた方がいいですよ。彼ら全員がかなりの使い手達です、からっ!」

 

 同時に飛び出し、将軍との一騎討ちを開始した。

 彩那は2つの斧を捌きながら、独り言を漏らす。

 

「……あの時は3人がかりだったわね」

 

 勇者時代にバーン・イドロ将軍と戦った時の勇者達はまだまだ発展途上。

 だから彼1人を殺すのに3人の勇者が必要だった。

 

「今はどうかしら?」

 

 別に戦う事は好きではないが、1人でこの男を倒せるのかには興味がある。

 

「わしとの一騎討ちを受けてくれた事には感謝するぞ、ホーランドの勇者よ。これで……これで孫娘の涙を止める事が出来る!」

 

「あの時も、貴方はそう言っていたわね……良いでしょう。私の首を狩れると思うなら……挑んできなさい、過去の英傑よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(強いっ!?)

 

 将軍を除いた騎士達の相手をしているティアナ達。

 その実力は、1人1人が自分達に近いと判断する。

 今は機動力と突破力のあるスバルと、雷の魔力変換資質を持つエリオが撹乱と足止めしてくれてるお陰でやられていないが、かなり厳しい。

 ティアナに出来るのも、幻術魔法で数を増やし、少しでも敵の注意を引きつけるくらいだ。

 そんな考えをティアナは頭の中で叱咤する。

 

(卑屈になるな! 自分に出来る事を考えろ!)

 

 純魔力攻撃が効き難いなら、小賢しい頭で工夫しろと頭を動かす。

 

「エリオくん!」

 

「しまった!?」

 

 その僅かな思考の間に、エリオが地面に身体を叩きつけられる。

 ティアナはすぐにエリオに剣を振り下ろそうとする敵に狙いを定める。

 

「女子供といえど、侵略者は排じょっ!?」

 

 剣が振り下ろされる前に、敵の頭が射撃魔法で撃ち抜かれる。

 ティアナではない。

 飛んできた方角を見ると、そこには空中戦に移行した彩那が映った。

 

(まさか、あの位置から?)

 

 ティアナの疑念に答えるように彩那は防御や回避運動のついでにこちらへ射撃魔法の援護をしていた。

 その事実がありがたいと同時に本当に足を引っ張っている事実に唇を噛む。

 だけど同時に敵への対抗手段も見つける。

 

(そうよ。あの鎧は拡散であって無力化じゃない! 拡散するより魔力を圧縮して固めれば……!!)

 

 普段よりも魔力の圧縮を強くイメージして撃つ。

 すると、ティアナの弾丸は敵の鎧を撃ち抜いた。

 

「ティアッ!」

 

「喜ぶのは後よ! これ以上、綾瀬副部隊長に迷惑かけられないんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大量に居たガジェットを斬り捨てて、シグナムは次の標的へと移ろうとする。

 しかし、武装局員の1人が話しかけてストップをかける。

 

「シグナムさん。ここはもう大丈夫です。貴女は、他の場所への援護を」

 

「分かった」

 

 確かに、ガジェットの相手を自分だけで済ませるのは良くない。

 武装局員達も闇の書事件より格段に腕を上げている。残り数体くらい問題ないだろう。

 

(しかし、不思議な物だな)

 

 数ヶ月前に敵対していた管理局だが、今は特に蟠りもなく職務を遂行しようと力を合わせている。

 その事がシグナムにはこそばゆいというか、違和感が消えないのだ。

 

(殺伐とした時間が長過ぎたからな)

 

 はやてが主になる前には闇の書の完成の為に戦うか、戦力として戦争などに投入されるかの毎日だった。

 当然戦う相手には騎士達を恨んで向かってくる者も居た。

 それをただ無感情に排除する。

 そんな時間が長過ぎて、今の環境にまだ馴染まない自分がいた。

 

「と、今はそんな事を考えている場合ではないか」

 

 シグナムは次の場所に向かおうとするが、そこで魔力が集まってくる感覚を覚えた。

 

「新しい闇の欠片か。さて……もう少し手応えのある敵を望むが……」

 

 強者との戦闘を好む彼女は無意識に自分の願望を口にした。

 そして魔力が形となったのは────。

 

「あなた、は……」

 

「シグナムか……どうしてここに居る? 弟を逃がすように命じた筈だ」

 

 その人物を覚えている。

 彼はかつて彼女達雲の騎士の主────その兄上だった青年だ。

 

「ラインハルト王子……!」

 

 思っても見なかった人物にシグナムのレヴァンティンを握る手が震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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