世界を救った勇者は俯きながら生きている。   作:赤いUFO

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残念!番外編でしたー!
すみません、本編は半分くらいは書き上がってますので、もう少し待ってください。息抜きで書いたら出来ちゃったんです。
もしも彩那が戻ってきたのがsts時代のミッドチルダだったら?です。


番外編6:ズレた世界線(1)

 身体が10歳前後のそれに戻らされたが、そんな事はどうでもよかった。

 今は目の前の────この戦争の原因の1人である科学者を斬り捨てなければならない。

 

「ボイ、ド……マーストンッ!!」

 

 綾瀬彩那が敵を斬り捨てようと動いた瞬間、白い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レリックと呼ばれるロストロギア回収を主な任務とする時空管理局の部隊である機動六課。

 今はそのレリックを狙う犯罪者が使役する無人兵器。ガジェットと交戦していた。

 

「ハァッ!!」

 

 ライトニング小隊の副隊長であるシグナムが空で次々とガジェットを切り捨ててゆく。

 

「ヤァッ!!」

 

 同じくライトニングの隊長であるフェイトも反対方向でガジェットを雷を砲撃で複数機撃ち抜く。

 地上ではフェイトの親友である高町なのはの教え子である新人のフォワード達が頑張ってくれている。

 AMFと呼ばれる魔法に対する天敵のような装備を持つ機械を相手にも優位な戦闘を繰り広げていた。

 

(なのはにも見せてあげたかったな。きっと喜ぶよね)

 

 新人の戦闘を記録しつつ自分の戦いもこなすフェイトはそう考える。

 なのはは今回の出動は別件で参加出来なかった。

 間近で教え子の成長を見れなかった事を悔しがるだろうなと内心で苦笑する。

 そこで、バックヤードから連絡が入る。

 

『フェイトさんっ!?』

 

「どうしたの?」

 

『気をつけてください! 現場付近に途轍もない魔力反応がっ! 何これ!? 全然知らない術式っ!?』

 

「落ち着いて!! 情報は正確にっ!!」

 

 要領を得ないバックヤードの報告にフェイトは警戒を強める。

 何かイレギュラーな事態が起こっているのは確実なようだ。

 周囲を見回すとフォワードメンバーが戦闘を行なっている場所と少しズレた地点で爆発────いや、膨大な魔力の奔流が発生した。

 

「エリオッ!? キャロッ!?」

 

 思わず自分が後見人となった子供の名前を叫びつつ、念話で無事の確認を行なった。

 

『みんな、無事っ!?』

 

 答えたのは4人の実質リーダーを務めるティアナだった。

 

『はい! 全員無事です! いったい何が!?』

 

『分からない! 警戒を怠らないで!!』

 

 そう指示を飛ばすと同時に魔力の奔流が晴れてゆき、その中心が明らかになる? 

 

「子供……?」

 

 顔はよく見えないが、体格からエリオやキャロと同じかもう少し下くらいの子供に見えた。

 処々破損したバリアジャケットと思われる鎧。

 離れた位置で飛ぶフェイトからも見える純白の剣を支えにしてどうにか立っている様子だ。

 

「っ!? マズイッ!!」 

 

 その魔力に反応してか、ガジェットがその子供に向かって行く。

 急いでフェイトが助けようと動くが、シグナムに止められた。

 

『この位置からなら私の方が近い! テスタロッサは空の敵を頼む!』

 

 新人に任せるにしても、あの子供は未知数だ。出来れば隊長の誰かが先に接触したい。

 

『お願いします、シグナム!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、見知らぬ街並みだった。

 近代的なビルが建ち並ぶその風景は、彩那の知らない物だ。

 

「ここは……?」

 

 痛む身体に鞭打ってどうにか周囲を見回すが、やはり覚えはない。

 混乱しつつも浅い呼吸を繰り返す彩那。

 とにかく何処かと連絡を取ろうとすると、機械の動く音が彩那の鼓膜を刺激する。

 見ると、縦長のカプセル状の機械が浮いた状態で迫って来ていた。

 

「なによ、アレ……」

 

 警戒して手にしている神剣を構えていると、カプセル状の機械の中から触手のような物が伸び、彩那を襲う。

 

「ちっ」

 

 舌打ちと同時に触手を回避と同時に地を蹴って接近し、1振りで2体の機械を斬り伏せた。

 

「帝国の新兵器? それにしては大した事はないけど」

 

 そこまで考えたが、そんな事は後で考えれば良いと目の前の脅威に集中する。

 

「くそ……っ!」

 

 ここに来る前までの戦闘で負った傷や疲労が思ったより重い。

 

(なにより、もう長くは戦えないわね!)

 

 もういつ意識を閉ざしてもおかしくない。

 今も気を抜けばすぐに倒れてしまうだろう。

 だけど────。

 

(私がまだ戦う理由ってなに?)

 

 本当ならあの戦闘で死ぬつもりだった。死んでも良いと思っていた。

 なのにどうして今の自分は剣を握って戦っているのだろう? 

 そんな思考とは裏腹に、身体に染みついた経験が目の前の機械を一掃していく。

 

「オォオオオッ!!」

 

 炎を纏った神剣を振るい、彩那は敵の機械を全て葬り去る。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 普段なら息1つ乱さない戦闘も今は身体が鉛のように重く伸し掛かる。

 

「驚いたな。あれだけのガジェットを瞬殺とは……」

 

 聞き覚えのある声に彩那は目を大きく開いて顔を上げた。

 薄紫のポニーテールに手にしている片刃の剣。

 身に着けている騎士甲冑は異なるが、鋭い眼光の美女を彩那は知っている。

 

「失礼。私は────」

 

「闇の書の騎士……烈火の将ォッ!!」

 

 その姿を見て、彩那が跳躍と同時に飛行魔法を使ってかつての敵に斬りかかる。

 

「なっ!?」

 

「なんで貴女がここに居るっ!? 闇の書は新しい主に転生したのかっ!!」

 

「待てっ! 私はっ!!」

 

 説得のような事を始める烈火の将だが、彩那は構わず剣を振るう。

 回転して振るった彩那の剣を烈火の将は自身のデバイスで受け止めるが、彩那の神剣は敵の武器を両断した。

 

「なっ!?」

 

 オーバーSランク5人分の魔力による力技。

 驚愕している烈火の将の首を掴んで急降下し、地面にその体を叩きつけた。

 

「っ!?」

 

 当然苦痛に悶える烈火の将に彩那は剣を突きつける。

 

「なんでもいいわ。貴女達は、存在してはいけない()よ。大人しく消えなさい」

 

 首を刎ねようと神剣を掲げる彩那。

 刃を振り下ろす瞬間に、彩那の体はバインドに拘束される。

 

「武器を下ろして、シグナム副隊長から離れなさい!!」

 

 見ると、彩那に向けてピンク色の髪の少女が鎖型のバインドを施し、オレンジ色の髪の少女が銃型のデバイスを向けて警告してくる。

 そして左右には、青髪の少女と赤髪の少年がそれぞれ警戒して構えている。

 

「止せ、お前ら! コイツは────」

 

 烈火の将が仲間に退くように警告する。

 彩那は邪魔なバインドを破壊した。

 

「えぇっ!?」

 

 バインドを難なく破壊されたのが意外だったのか、ピンク色の髪の少女が驚きの表情になる。

 いや、それはこの場にいる4人共か。

 

「悪くはないけど、私を捕えるには実力不足よ」

 

 邪魔だと判断した彩那は先ずは自分と烈火の将を外からの攻撃を阻む為のシールドを展開する。

 そして今度こそ烈火の将の首を刎ねようとした。

 

 が。

 

「ごふっ!?」

 

 彩那の口から夥しい量の血が吐き出された。

 同時に目が霞み、スルリと手にしていた神剣が抜け落ちる。

 

(限界ね……)

 

 何処か頭の中の冷静な部分がもう駄目だと判断する。

 烈火の将は気を失った自分を殺すだろう。

 

「はぁ……まぁ、もういいかな……」

 

 締まらない自身の結末に心の中で自嘲しながら、綾瀬彩那は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然シグナムに斬りかかった少女は管理局お抱えの病院。

 大きな怪我や即治療が必要な犯罪者や危険と判断された人物を収容する病院に担ぎ込まれた。

 その少女は今も意識不明なまま、病院のベッドで眠っている。

 ライトニングの隊長2人から報告を受けた部隊長の八神はやては長い息を吐いて椅子の背に体重を預ける。

 

「大体事情は分かった。あぁ、いや。まだ何にも解ってないけど……」

 

 シグナムが突然斬りかかられた理由は不明。

 何処から現れたのかも不明。

 その少女が使っていたデバイスに至っては、ミッドチルダ式ともベルカ式とも違う術式で碌に解析も出来てない。

 つまりは全部が不明、の状態だ。

 

「その子はシグナムを闇の書の騎士言うたんやな?」

 

「はい。確かに。闇の書だった我らに恨みを持つ者と考えるのが妥当かと」

 

「ん〜? それはどやろなぁ? あの子の年齢からちょっと考えられんよ」

 

 闇の書が夜天の魔導書に戻り、ヴォルケンリッターがはやてと共に時空管理局で活動して既に10年だ。

 六課の後見人の1人であるクロノと同じか、それより上の年齢でもない限り、闇の書に恨みを持っているとは思えない。

 ヴォルケンリッターのような歳を取らない魔法生命体の可能性も考えたが、検査の結果、その少女は間違いなく人間であるのは判明している。

 

「気になるんは、その子のリンカーコアが尋常やない負荷がかかっていた事と、何の効果かはまだ解らへんけど、何らかの薬物を投与された可能性が高いゆう事や」

 

「薬物……」

 

 まだ幼い子供に薬を投与されたという可能性にフェイトが明らかに嫌悪の表情を示す。

 シグナムに斬りかかった事はフェイトも怒っているが、それはそれ。これはこれだ。

 

「とにかくその子が目を覚まさんと何にも解らんなぁ。一応六課の預かりにしてその子の状態が変わり次第連絡してくれるよう頼んだ。シグナム」

 

「はい。主はやて」

 

「レヴァンティンの修理は?」

 

「刀身を切断されましたからね。フィニーノは頑張ってくれてますが、しばらく出動は無理かと。すみません」

 

 申し訳無さそうに謝罪するシグナムにはやてはせやろなー、と頭を掻く。

 ここで隊長陣を1人現場に出せないのは痛いが、デバイス無しで出撃しろ、などとは言えない。

 かと言ってシグナムを責める気もない。

 それだけ相手がイレギュラー過ぎたのだ。

 突然の予想外にはやてはもう一度長く息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ……生きてるのね……)

 

 意識はとっくに取り戻していたが、五感が全て閉ざされ、数日過ごしていた為に、生きているのかイマイチ確証が持てなかった。

 しかし次第に痛みが襲い、聴覚や嗅覚が戻り、こうして視界が開けば嫌でも生を実感できる。

 

(ここが地獄なら、手厚い待遇に涙が出そうだわ)

 

 そんな訳ないな、と心の内で思った冗談を自分で捨てる。

 

「かは……っ!?」

 

 無理やり上半身を起こしてベッドに座った彩那は自分に填められている手錠をボーっと見つめる。

 看護師らしき人が入って来たのはその数分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 謎の少女が目を覚ました、と報告を受けてから数日。

 その間に身体の状態を診て、短い事情聴取ならと医者からの許可が下りた。

 

「時空管理局執務官フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。今回は貴女の事情聴取を担当します。よろしくね」

 

「……」

 

 フェイトの挨拶に少女は特に反応を返さない。

 警戒しているのではなく、心此処に在らず、と言った感じだ。

 フェイトがこの事情聴取の担当になったのは彼女自身が強く希望した事と、闇の書が関連している以上、初手から八神はやてを会わせるのは危険と判断されたからだ。

 しかし当初は暴れられるのも覚悟していたフェイトだったが、相手は拍子抜けする程に無気力状態。

 目を開けたまま寝ていると言われても信じてしまいそうだ。

 

(それにしても)

 

 フェイトはまじまじと少女を見る。

 入院着の隙間から見える傷痕。カルテから隠れている服の下にも大小多くの傷痕が確認されている。

 それと真っ先に目が行くのは、顔と首に刻まれた4つの刺青だ。

 どういう意図かは不明だが魔法技術によって付けられた魔法陣の刺青なのは解っている。

 この少女に何があったのか。想像して悲しみと同情。そしてこんな目に遭わせた誰かに怒りを覚える。

 

「先ずは君の名前を教えてくれるかな?」

 

 なるべく刺激しないように優しく話しかけるフェイト。

 今はまだ、簡単なところからこの少女の事を知ろうと思って。

 事件に関わる何か、は仲を深めてからでも遅くはない筈だ。

 フェイトの質問に対して少女は数秒遅れてから聞き逃しそうな微かな声で答えてくれた。

 

「あやせ、あやな……」

 

 その名前にフェイトは驚く。

 名前に聞き覚えがあった訳では無い。

 ただ名前のニュアンスがこことは違う世界の国。日本人の名前のように聞こえたのだ。

 それに意識して見ると、少女が日本人に見える。

 

「あの……」

 

 その事を訊こうとするフェイトだが、あやせあやなと名乗った少女は虚ろな瞳で呟く。

 

「なんで、わたしが生きてるの……?」

 

 さっきよりもはっきりと喋るが、その短い言葉にフェイトはギョッとした。

 まだ10になるかどうかの少女が発するにはあまりにもその声と瞳が絶望に満ちていたからだ。

 手錠を眺めながらあやなは自問する。

 

「なぎさちゃん。りりちゃん。ふゆみちゃん。てぃふぁな王女……わたし、死ななかった……生き残っちゃったよぉ……! なんで……?」

 

 言葉を口にしている内にポロポロと涙を流して嗚咽するあやな。

 フェイトが声をかけようとするが、そこで念話による通達を受ける。

 

『ハラオウン執務官。今回はここまででお願いします』

 

 この聴取は病院側も防犯カメラで見られて行われている。

 故にドクターストップがかけられればフェイトは退出しなければならない。

 

『あの、もう少し続けさせてください』

 

 だが泣いている子供を放って帰るなどフェイトには出来ない。せめて泣き止むまで傍に居てあげたかった。

 しかし病院側はそれを許可しなかった。

 

『駄目です。情緒不安定になったその少女が執務官に襲いかかったら目も当てられません。事情聴取は後日にお願いします』

 

『……分かりました。彼女をよろしくお願いします』

 

 どうにか傍に居てあげたかったが、ここで無理に居残り、心象が悪くなって明日から出入り禁止になっては本末転倒だ。

 

「また明日来るね」

 

 それだけ告げてフェイトは病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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